「親父が死んだんだ」
携帯に弟から電話があって、もちろん驚いたのだが、驚愕、はなかった。
82歳になって、アルコール依存から抜け出せず、正月に訪ねていっても、すでに酔って寝ているのがここ数年、常だった。
「お前は何か、最近書いているのか?」
そんな言葉を投げかけてきても、それ以上、会話が続かない。
もっと以前、健康だった頃だって、迷惑をかけられるばかりで、助けられたり励まされたりしたことは、ほとんどない。
父という者は、自分にはいない者、と、すでになっていた。

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