まだ生きていたのか! 1月27日の新聞報道を見て声に出してしまった。本当は奴が生きていることは書店で質の悪い月刊誌の表紙などで名前を目にするから知ってはいたのだけども、懲りもせずにまたぞろいじましい老醜をさらしているので、徹底的に叩かせていただく。

歴史改竄主義確信犯で、差別者、日本財団(元日本船舶振興会)の理事を務めたこともある渡辺昇一だ。渡辺は『知的生活の方法』で名前が売れた後に、これでもか、これでもかと歴史改竄運動の先陣を走り続けてきた人物だ。80年代には「またあのアホが」程度にしか相手にされなかったけれども、世情の変遷と共に不幸なことにこのような「法螺吹き」が堂々と闊歩する時代になってしまった。渡辺は「南京大虐殺の被害者は40人から50人」、「沖縄戦での集団自決は左翼に先導された人が騒げば金が出ると堕落した結果」、「ヒットラー、ムッソリーニは共産主義者」、「適度の放射能とは、実際にどのくらいか。著者はおそらく毎時20ミリシーベルトと毎時50ミリシーベルトの間にあるのではないかと推定している」(ちなみに毎時20ミリシーベルト被爆すると全員が死亡する、民間人の法定上限は「年間1ミリシーベルト」だ)などの真顔で述べる人間だ。

◆相も変わらずの「何が何でも朝日新聞憎し」

奴を団長に8700人余名が笑わせてくれる提訴を1月26日、東京地裁に行った。新聞の見出しではこうだ。

「朝日慰安婦報道で国民名誉傷つけた」

ほー、どんな訴えなのだろう記事によると、

「朝日新聞従軍慰安婦報道について、8700人余りの市民が『誤った事実を国際社会に広め、日本国民の人格権や名誉を傷つけた』として、同社に一人1万円の慰謝料と謝罪広告の掲載を求める訴えを起こした。原告には研究者やジャーナリスト、国会議員らも含まれている。追加訴訟で原告数は最大で1万3千人程度になる見込みだという」そうだ。

さらに「訴状では『日本の官憲が慰安婦を強制連行した証拠はない』と主張。朝日新聞が1980~90年代に報じた故・吉田清治氏の証言に基づく記事などを挙げ≪日本軍に組織的に強制連行された慰安婦≫というねじ曲げられた歴史を国際社会に広めた原因になった』と指摘した」としている。

そして原告団長の渡辺昇一は、「朝日新聞が国民に恥ずかしい思いをさせていることに心から怒りを感じている」と述べている。相変わらず渡辺の「何が何でも朝日新聞憎し」の姿勢は変わらないようだ。

私は渡辺昇一の30年来の言論活動に「心から怒りを感じている」。正直早く帰天なさればと思う。

誣告罪(虚偽親告罪)は刑法にしか適用されないから、この提訴は原告敗訴で終わるだけだろうが、にしても税金を使ってまったく意味のない裁判が行われることに「怒りを感じる」。

◆政府と「歴史改竄主義者」の妄動こそが国際社会では恥

「スラップ(SLAP)訴訟」という概念がある。大企業や政府などの力の強い、また経済的に圧倒的な強者が弱者や権力のない個人に対して恫喝や発言の封じ込めを目的に提訴する裁判を意味する。読売新聞が頻繁に利用する手法だ。渡辺らの行動は権力者のそれではないものの、奴らは明確に「表現圧殺・歴史改竄=歴史殺し」を目的としている。原告数を組織動員し学者や国会議員なども加えてることを勘案すれば、この訴訟は分かりやすい「権力者」や「強者」のそれではないけれども、目的と性質は限りなく「スラップ訴訟」に近い。悪質極まりない。

本コラム「『朝日新聞叩き』で進行する『原発事故の本質』隠し」 の中でも触れたが、朝日新聞の「慰安婦報道問題」は全く枝葉末節の事実誤認であり、朝日新聞は謝罪する必要すらない。何故ならば「慰安婦問題」については報道機関ではなく日本政府や日本軍による証拠書類が多数残されており、吉田清治氏の証言は一民間人の発言に過ぎないからだ。

日本国内だけでなく、国連も「慰安婦」についての調査結果を1996年に報告書として発表しており、その際に吉田発言は全く引用されていない。実は昨年10月、外務省の高官が国連に派遣され1996年の国連調査を「訂正してくれないか」と願い出たが、「バカなことを言うな」と国連に一蹴されている。この件は日本国内ではほとんど報道されていないけれども、菅官房長官の意向で「報告書訂正願い」が行われたのだ。ニューヨークタイムスでは「国粋主義者安倍の意向を受けた」や「歴史改竄主義者」と散々な書かれ方をしている。

国際社会で恥をかかされているのは朝日新聞報道ではなく、政府を含めた「歴史改竄主義者」の妄動であることが明確にわかる。

笑わせてくれるのは、「国際社会で恥をかかされたから一人1万円慰謝料を払え」というユスリ同様の要求だ。今8700余名が原告に名を連ねていると言うが、その人々全員の氏名をどこかのサイトで公表してもらえないものだろうか。また、最終的に追加訴訟で原告数が1万3千人程度になる見込みらしいが、その数が不思議なことに「在特会」の推定構成員数と一致しているのはどういう偶然だろうか。

国際社会で恥をかかされて慰謝料が請求できるという論理に則れば、政府の不祥事は全て請求対象になるではないか。殊に東京オリンピックで招致スピーチで完全な嘘を発言した安倍には1億2千万人全員が慰謝料請求を行わなければならない。

歳を取ってボケが進行しているのだろうが、馬鹿もたいがいにしろ!渡辺!

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎イスラム国人質「国策」疑惑──湯川さんは政府の「捨て石」だったのか?
◎人質事件で露呈した安倍首相の人並み外れた「問題発生能力」こそが大問題
◎安倍内閣は「人質の身代わり」に大臣を派遣すべし!
◎「イスラム国」人質事件で見えてきた「人命軽視」の安倍外交
◎「シャルリー・エブド」と「反テロ」デモは真の弱者か?