5月7日、福井県高浜原発前で「5・7高浜原発動かすな!現地集会」が行われた。新緑の美しい季節、山並みには藤の花の薄紫や、遅咲きの山桜がいたるところに見られる。若狭湾の天候は晴天。絶好の観光日和といいたいところだが、「再稼動抗議行動日和」となった。

 

◆昨年とは明らかに様子が違う高浜原発1、2号機

高浜原発の正面玄関前で抗議

高浜原発周辺には、東京、福井、滋賀、京都、神戸などから大型バスで、また自家用車や自転車で目算500名ほどの人が集まった。高浜原発に近づくと1、2号機の様子が昨年と明らかに違う。足場が組まれ大掛かりな作業が行われている。この日高浜原発の正門は三重のゲートが閉じられ、ご丁寧に新品の鉄条網までが巻かれていたが、地元の人によると、最近平日は1日何10台もトラックが出入りを繰り返し、たいそう慌ただしい様子だという。

大阪高裁の「人間性、論理性皆無」な山下郁夫裁判長により再稼働が認められた3,4号機ではなく、既に稼働40年を超える1、2号機の継続運転を企む関西電力が、もうくたびれ果てて本来ならば廃炉にしなければならない事故・故障必至の老朽原発の「補強工事」を行っているのだ。

取水口付近から見た高浜1、2号機

◆集会、デモ終了まで海上には警備船、上空には福井県警のヘリコプター

海上を警備する船舶

高浜を訪れると、過去すべて悪天候にたたられていたので気が付かなかったのかもしれないが、この日は海上には2隻の警備船、そしてはるか上空には、ゲート前の抗議行動から、集会、集会後のデモ終了まで常に福井県警のヘリコプターが飛んでいた。税金の無駄使いであることを指摘しておく。当然機動隊員は常にデモ隊につきまとう。

◆形ばかりの関電「コミュニケーション課長」

正面ゲートから1キロほど離れた広場から正面ゲートに向かいデモが始まった。この日の警備には若手女性の警察官が多数動員されていたのが印象的だった。若手女性警察官の実地訓練のつもりだろうか。デモ隊が原発正面ゲート前に到着すると、中島晢鴛さん、木原壯林さん、柳田真さんら4名が関西電力、コミュニケーション課長吉田氏へ申し入れを行った。

「コミュニケーション課長」と珍しい、あたかも物わかりの良さそうな肩書の吉田氏は直立不動で瞬きもわずかに、申し入れ書を読み上げる各氏を睨みつけ、文章を手渡す際には形ばかりの深い礼で応じた。しかし、その顔には一切の感情もうかがえない。まったくの無表情、つまり形ばかりの「要請文受け取り」だということは、そばで見ていて、一目瞭然だった。話をする気さえないのであれば「コミュニケーション課長」などという紛らわしい肩書など作るな! 関西電力!

原発正面へ向けデモ出発

◆福井原発訴訟(滋賀)原告団長、辻弁護士が「高浜原発大阪高裁決定」を斬る

正面ゲート前での抗議行動が終わると、高浜町文化会館に移動して全国からの参加者の発言や報告が行われた。そして大阪高裁で福井原発訴訟(滋賀)原告団長の辻義則弁護士が「高浜原発再稼働を進める大阪高裁決定を斬る」と題して、かなり詳細に決定の問題点を解説した。

大阪高裁の決定は要するに、「規制基準」を絶対のものとして持ち上げ、住民側の意見を一切聞き入れない不当極まりない、過去の判例に照らしても逆行・反動以外の何物でもない無茶苦茶な決定であることが解説された。山下郁夫という裁判官は安倍晋三並みの人間のようだ。

◆デモ隊を好意的に迎えてくれる通り沿いの住民たち

集会後は文化会館から高浜駅に向けてのデモだ。このコースは狭い民家の間を通過するのが特徴で、私自身は過去に何度か歩いたことがある。その折には文句をいう人がわずかにいたけれども、窓からデモの様子を眺める人、わざわざ玄関の外に出てきて手を振ってくれる人などが印象的だった。この日は好天も幸いしてか、これまでにもまして好意的に迎えてくれるデモコース沿いの住民が多かった。デモ隊に手を合わせている高齢女性の姿は特に印象深かった。

町を練り歩くデモ隊を好意的に迎えてくれる通り沿いの住民も多かった

◆ふざける小学生たちが教えてくれた安倍晋三ら推進派の幼稚性

そして、デモの解散地点高浜駅に着いた時のことだ。駅前は小さなロータリだが、デモ隊が最後の声を上げている姿を小学生数人が道の逆側で見ていた。小学生は物珍しそうにデモ隊を見ながら「原発反対」とか「原発賛成」と小声でふざけていたが、デモ隊が声を出さなくなると、一斉に「原発賛成!原発賛成!」と大声を出しながら路地の中に駆けていった。

あの小学生たちにとっては原発よりも、大声をあげて道を練り歩くデモ、大人の姿が珍しかったのだろうか。それとも小学校や家庭ですでに「原発」信者に仕立て上げられているのだろうか。

その姿を反転して考えてみると、たとえば大阪高裁の山下郁夫や電力会社の経営陣、原子力規制委員会、さらには経産省、安倍晋三らはつまるところ「小学生」だということを高浜駅前での小学生たちは教えてくれた。そうか。奴らは子どもか。なら怒鳴りつければいいんじゃないか。

◆再稼働反対の行動は「5・12高浜原発動かすな!福井集会」へと続く

なお高浜原発3,4号機再稼働に反対する行動は5月12日まで連続で行われる。8日は高浜町、大飯町、小浜市に申し入れ。9日は若狭町、美浜町、関西原電本部、原子力規制委員会(敦賀)申し入れ。10日は敦賀市、南越前市、越前市申し入れ。11日は池田町、鯖江市申し入れ。そして12日は越前町、福井市へ申し入れのあと「5・12高浜原発動かすな!福井集会」へと合流の予定だ。移動の間毎日各地でデモも行う。参加される方の再稼働阻止に向ける熱意に敬服するばかりだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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