5月12日「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」なる実質「原発推進法」が成立してしまいました。重要な法案にもかかわらず、国会内内外で充分な議論がなされず短い審議で成立しました。さらに「GX脱炭素電源法」も本稿執筆時点、参議院で審議されています。「GX脱炭素電源法」は原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたものです。

 

6月12日発売 『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

わずか12年前に福島第一原発事故を引き起こし、いまだ「原子力非常事態宣言」を解除できない国が明確な「原発推進」を打ち出すこの国の姿勢は、完全に理性を失っています。福島第一原発事故後は自民党ですらが原発回帰を躊躇っていたにもかかわらず、国の存亡にもかかわる「GX推進法」を大した議論もなく可決させてしまった与野党と、例によって政府と呼吸を合わせたように相応の報道を行わなかった大手マスメディアの劣化し尽くした姿勢に編集部は激烈な怒りを覚えます。

また本誌が発売される頃には、すでに鮮度のないトピックあるいは忘れ去られているかも知れませんが、広島でG7サミットが開催されました。もとよりサミットは「帝国主義者の戦争準備会議」と呼ぶ人がいるほどに、これまでも「軍縮」や「人類平和共存」に貢献したことはありません。

被爆被災地、広島で開催されることに、「核兵器廃絶」など筋違いの期待を寄せる言説も見受けられましたが、それらはもとより的外れ甚だしい妄想でした。案の定、G7期間中にどういうわけかウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪れ、米国などからF-16戦闘機の提供の確約を取り付けました。議長である日本国の首相岸田は「核兵器のない世界実現という理想をG7で共有」したと、功績のように記者会見で語りましたが、これは完全なる虚構です。

そもそも米国を中心とする核兵器保有国が集ったところで「我々は核兵器を放棄します」などと殊勝な宣言が発せられる道理は、最初からありはしないのであり、米国のバイデン大統領は広島入りに際して、これ見よがしに「核兵器発射ボタン」の入ったカバンを随行員に持たせている写真をわざわざ撮影させています。国際平和に貢献する意志があるのであれば、インドなど中立的な国も参加していたのですから、ロシアにも参加を呼びかけ「停戦」の場としたのであれば、それなりの評価に値したでしょうが、日本政府にそのような意思は微塵も見られませんでした。

人間が考えることを人工知能(AI)に代行させることに「G7」各国は熱心なようです。叡智や思索の蓄積を度外視してコンピューターの指示に従いたがる時代にこそ、人間の身体に結び付いた思想と行動の価値が問われているのではないでしょうか。脱原発(反核)・反戦は喫緊の課題です。

2023年6月
季節編集委員会

6月12日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)


〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2023年夏号
NO NUKES voice改題 通巻36号 紙の爆弾 2023年7月増刊

《グラビア》原発建設を止め続けてきた山口県・上関の41年(写真=木原省治
      大阪から高浜原発まで歩く13日間230Kmリレーデモ(写真=須藤光男

野田正彰(精神病理学者)
《コラム》原子炉との深夜の対話

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《コラム》核のゴミを過疎地に押し付ける心の貧しさ

樋口英明(元福井地裁裁判長)
《報告》司法の危機 南海トラフ地震181ガル問題の重要性
《インタビュー》最高裁がやっていることは「憲法違反」だ 元裁判官樋口氏の静かな怒り

菅 直人(元内閣総理大臣)
《アピール》GX法に断固反対を表明した菅直人元首相の反対討論全文

鮫島 浩(ジャーナリスト)
《講演》マイノリティたちの多数派をつくる
 原発事故の被害者たちが孤立しないために

コリン・コバヤシ(ジャーナリスト)
《講演》福島12年後 ── 原発大回帰に抗して【前編】
 アトミック・マフィアと原子力ムラ

下本節子(「ビキニ被ばく訴訟」原告団長)
《報告》魚は調べたけれど、自分は調べられなかった
 一九五四年の「ビキニ水爆被ばく」を私たちが提訴した理由

木原省治(上関原発反対運動)
《報告》唯一の「新設」計画地、上関原発建設反対運動の41年

伊藤延由(飯舘村「いいたてふぁーむ」元管理人)
《報告》飯舘村のセシウム汚染を測り続けて
 300年の歳月を要する復興とは?

山崎隆敏(元越前市議)
《報告》原発GX法と福井の原発
 稲田朋美議員らを当選させた原発立地県の責任

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山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
《報告》原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点

原田弘三(翻訳者)
《報告》「気候危機」論についての一考察

井筒和幸(映画監督)×板坂 剛(作家)
《対談》戦後日本の大衆心理【後編】

細谷修平(美術・メディア研究者)
《映画評》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈3〉
 わすれてはならない技術者とその思想 ──『Winny』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
《報告》今、僕らが思案していること

佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
《報告》亡国三題噺
 ~近頃“邪班(ジャパン)”に逸(はや)るもの
  三重水素、原発企業犯罪、それから人工痴能~

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
《報告》山田悦子の語る世界〈20〉
 グローバリズムとインターナショナリズムの考察

再稼働阻止全国ネットワーク
原発の全力推進・再稼働に怒る全国の行動!
福島、茨城、東京、浜岡、志賀、関西、九州、全国各地から

《福島》古川好子(原発事故避難者)
福島県富岡町広報紙、福島第一廃炉情報誌、共に現地の危険性が過小に伝えられ……
事故の検証と今後の日本の方向を望んでいるのは被害者で避難者です!
《東電汚染水》佐内 朱(たんぽぽ舎ボランティア)
電力需給予備率見通し3.0%は間違い! 経産省と東電は石油火力電力七・六%分を隠している! 汚染水の海洋放出すべきでない! ── 4・5東電本店合同抗議に参加して
《東海第二》志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
運動も常に情報を受信してすぐに発信することが大事
4月5日定例の日本原電本店行動のできごと
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
中電が越えなければならない「適合性審査」と「行政指導」
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」事務局)
団結小屋からメッセージ付き風船を10年余飛ばし続けて
《高浜原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
「関電本店~高浜原発230kmリレーデモ」に延べ900人、
「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」に320人が結集
《川内原発》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会)
「川内原発1・2号機の九電による特別点検を検証した分科会」まるで九州電力が書いた報告書のよう
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
原発延命策を強硬する山中原子力規制委員会委員長・片山規制庁長官
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『3・11 大津波の対策を邪魔した男たち』(島崎邦彦・青志社)

反原発川柳(乱鬼龍選)

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0C6SZ247L/

龍一郎揮毫

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