本日発売 『紙の爆弾』2021年1月号! 菅義偉「空虚な政権」の正体を暴く!

◆北海道の「核廃棄物」動乱

 
本日発売! 月刊『紙の爆弾』2021年1月号!

横田一は北海道寿都町の「核のごみ処分場反対住民の反転攻勢」をレポートする。反対派「町民の会」の講演会に、小泉純一郎元総理が講演者として来町。その講演会に「勉強のために」参加するはずだった片岡町長はドタキャンしたのだった。

11月13日には臨時町議会で、住民投票条例の審議と採決が行われ、賛成と反対が4対4。議長採決で否決された。反対派住民と町長・町議会の対話は閉ざされたのである。住民の意見を聞かない行政には、地方自治体法違反の可能性が高いと、横田は指摘する。

ところで、問題なのは鈴木直道北海道知事の動向である。コロナ防疫については早期に緊急事態宣言を発し、親分にあたる菅義偉のGoToキャンペーンにも異を唱えるなど、硬骨漢ぶりを発揮している若き鈴木知事も、この問題では弱腰である。法政大学の後輩で、菅義偉に太いパイプを持っているのだから、もっと存在感を発揮して欲しいものだ。町レベルでは町長リコールの動きも活発だという。今後も横田のリポートに注視したい。

◆ポンコツ答弁の「影」を暴け!

喉頭がんによって喋る力を失った浅野健一は、しかし健在である。菅義偉総理のポンコツ答弁をささえる、背後で動かす「影」を実名報道せよ! というものだ。

浅野は詳細に記者会見、およびぶら下がり取材(菅の官邸はこれを記者会見というらしい!)を検証しているが、国会答弁でのポンコツぶりは国民を唖然とさせるものだった。

およそそれは、必要な予習をしてこなかったばかりか、宿題を忘れた劣等生が困り果て、優等生(秘書官)のメモで答弁するという珍無類の光景だった。さんざん指摘してきたとおり、安倍晋三ほどの演説力(関係のないことを、延々と喋る能力=じつは、これが政治家の真骨頂である)がない菅総理において、秘書官の機敏な動きは不可欠なのである。サブタイトルの「自助で国会答弁できない菅首相」とは、言いえて妙である。

「学術会議などでの菅首相の国会での答弁は見ていて哀れだ。活舌も悪く、安倍前首相のほうがまともに感じられるほどだ」(記事中)。まったく同感である。

菅総理の秘書官は、新田章文という筆頭秘書官(菅事務所)のほかは、いまだ氏名不詳であるという。この「影」を暴くことこそ、われわれの当面の任務ではないだろうか。

◆注目のレポート記事

現地ルポは、西谷文和の「中村哲さん殺害から一年 なぜアフガニスタンの戦争は終わらないのか」である。中村哲の思い出のいっぽうで、変わらないアフガン。いや、ますます罪のない子供たちに犠牲を強いるアフガンの現実。憤りと涙なくしては読めない。

黒薮哲也の「日本禁煙学会が関与した巨額訴訟の行方」は興味ぶかく読めた。団地の住民が、タバコの副流煙で損害賠償を提訴した事件のレポートだ。筆者も十数年前にタバコをやめ、マンション暮らしゆえにベランダでの喫煙で隣人と軋轢があった(話し合いで解決)。集合住宅での喫煙・副流煙問題は当事者(喫煙者にも、非喫煙者にも)には深刻な問題だ。

今回のレポートでは、日本禁煙学会の理事長が関与した杜撰な提訴に、裁判所が被告(喫煙者)と原告の被害に関連性なしと判決。それを受けて、被告側が訴訟による被害を反訴したものだ。隣人訴訟に圧力団体が関与した例として、今後の展開が注目される。

近藤真彦への不倫処分と紅白私物化の、ジャニーズ事務所の実態を暴露するのは、本誌芸能取材班。NHK「あさイチ」とジャニーズの関係(ネックは視聴率)が興味ぶかい。

◆拙稿、朝田理論の検証について

手前みそだが、紙爆9月号の「士農工商ルポライター稼業」について、わたしの意見を掲載していただいたので紹介しよう。

本通信(11月12日および11月17日)では、井上清の『部落の歴史と解放理論』の検証、とりわけ部落差別の三位一体論(部落差別の存在・地域差別・職業差別)の妥当性を論じてみた。

歴史検証としては、井上清の論考が果たした役割が大きく、その検証が今日的にふさわしいからだ。

紙爆1月号の記事では、黒薮哲哉さんの12月号の論考に対する見解、および解放同盟の朝田善之助さんの「朝田理論」を検証してみた。

論点はいくつかあるが、まずは現在の日本社会が差別社会かどうか、差別の存否から議論しなければならないであろうこと。そのうえで、差別かどうかは部落民が決めるという朝田理論の時代性、糾弾権の問題などである。このあたりは、本通信の松岡利康の経験的な見解も併せてお読みいただきたい。時代とともに。解放同盟も変っているはずなのだから。

いずれの拙論においても、結婚差別が現代に残された最も深刻で、かつ「解消」という新たな問題をはらんだものと考えている。鹿砦社が解放同盟中央本部と議論する過程で、この論点をともに検証したいと考えている。それが70年代の苛烈な部落解放運動を、その末端で支持・共闘してきた者としての役割だと考えるからである。
ほかにも興味を惹かれる記事満載、買って損はしない「紙爆」年末号である。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

新型コロナウイルスの問題から、次の生き方を再考する〈4〉医療崩壊

3回にわたって新型コロナウイルスに関し、検査数の増加は可能であり、治療薬やワクチンというものは利権構造にまみれやすいということを述べたうえで、この社会ならではといえる「強制」と「任意」についても考察してきた。ワクチンについては2020年11月25日、アメリカのアザー厚生長官が、早ければ12月10日以降に供給が始まるとする見通しを示している。11月20日、「ファイザー」はFDA(アメリカ食品医薬品局)に緊急使用を申請しており、許可がおりれば米国内で640万回分が配布され、12月半ばから接種が開始されるそうだ。「モデルナ」も申請の方針を明らかにしているという。


◎[参考動画]米ファイザー コロナワクチンの使用許可を申請(TV東京 2020年11月21日)

今回は特に、現在大きな問題となっている医療崩壊について取り上げたい。

◆「安全な国・地域」という評価の背景にあるもの

11月24日、『Bloomberg(ブルームバーグ)』で、「コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域-レジリエンス(耐性)ランキング」が発表された。このランキングでは、「経済規模が2000億ドル(約20兆9100億円)を超える53の国・地域を10の主要指標に基づいて点数化した。その基準は症例数の伸びや全体の致死率、検査能力、ワクチン供給契約の確保状況などだ。国内医療体制の能力、ロックダウン(都市封鎖)などコロナ関連の行動制限が経済にもたらす影響、市民の移動の自由も考慮した」そうだ。

結果は、ニュージーランドに次いで、日本が2位となっている。「ロックダウンを強制する法的手段がないが、別の強みを素早く発揮した。過去に結核が流行した日本は保健所制度を維持しており、追跡調査が新型コロナでも迅速に採用された。高いレベルの社会的信頼やコンプライアンス(法令順守)を背景に国民は積極的にマスクを着用し、人混みを避けた」と評価されているのだ。3位は台湾、4位は勧告、5位はフィンランド、6位はノルウェー、7位はオーストラリア、8位は中国、9位はデンマーク、10位はベトナムなどとなっている。

「コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域-レジリエンス(耐性)ランキング」(2020年11月24日付けBloomberg)より

この記事に対し、「元の英語記事見ると(略)日本が台湾越えなのは、全10項目中2項目のみで『ワクチンへのアクセス数』と『皆保険制度(これが世界1位)』の数値のみ。医療機関様様」というコメントがつけられていた。そこで、元となった10項目を確認してみよう。原文、さらに背後にある方法論にまで翻る。

1番目は「過去1カ月間の10万人あたりのコロナ症例」。2番目は「過去1カ月間のコロナの死亡率」。3番目は「パンデミックの開始以来、100万人あたりの死者数」。4番目は「最新の入手可能なデータに基づき、コロナ・テストで再び陽性と判定された割合」。5番目は「フェーズIII(第III相)ワクチン候補の供給契約の数」。6番目は「社会的・経済的活動が政策によって制限されている度合い(高いほど混乱した生活を経験していることとなり、ランクが下がる)」。7番目は「パンデミック前の基準値と比較した、オフィスや店舗への人々の移動」。8番目は「2020年の前年比GDP変化予測」。9番目は「小児期の予防接種のような予防措置から癌のような深刻な病気の治療にいたるまで、健康保険の23の側面の有効性から導き出された医療制度の強さ」。10番目が「平均余命・教育へのアクセス・1人あたりの収入という3つの指標によって定義される『幸福』な人の数」だ。

そして実際、日本が台湾を上回るのは確かに、5番目「フェーズIII(第III相)ワクチン候補の供給契約の数」つまり「ワクチンへのアクセス数」と、9番目「小児期の予防接種のような予防措置から癌のような深刻な病気の治療にいたるまで、健康保険の23の側面の有効性から導き出された医療制度の強さ」つまり「皆保険制度」の2点のみだ。

だが、ワクチンは開発競争に破れた。『ニューズウィーク日本版』の「世界のワクチン開発競争に日本が「負けた」理由」の記事によれば、この背景が挙げられている。ワクチンの開発は、軍事以上に国際政治に影響し、そこには安全保障投資の意味もある。だが、日本ではウイルスに対する警戒心が薄く、政府の資金的支援も不十分だという。なるほど、戦争への備えとウイルスへの備えには共通点があり、いずれも日本ではアメリカなどの海外頼みで金を払わされて解決させられるという仕組みがあるのかもしれない。ただし、単純にワクチン開発の予算を拡大することにも、慎重になったほうがよさそうだ。

◆皆保険制度と保健所の歴史

では、日本が台湾以上の評価を受けた皆保険制度は、どのようにつくられたのだろうか。東京都保健福祉局のサイト内にある「◆1.国民健康保険制度の創設」によると、1938年までに健康保険制度は制定されていたが、当時、対象は一部の工場などの労働者に限られていた。そこで、「農村等の窮状に対応するため、国民健康保険制度は創設され」たが、それでも加入は任意だったという。戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の勧奨などを受け、強制加入とされた。59年には新国民健康保険法が施行され、61年に皆保険が達成されたそうだ。

また、社会にとって、保健所の存在も大きい。『47NEWS』の「新型コロナ、日本独自戦略の背景に結核との闘い 対策の要『保健所』の歴史から見えるもの」によれば、関西大の高鳥毛敏雄(たかとりげ としお)教授(公衆衛生学)は「日本は遅れて産業化を進めたために、近代国家の建設時期と結核の流行拡大が密接な関係にありました」「結核の罹患者は青年層であり、国の重要な労働力と兵力の生命を失うことにつながります。その結果、国家、社会をあげて取り組むことが必要となりました」「高度経済成長後、結核患者や死亡者が減少してきたことで、保健所数は減らされ、弱体化していましたが、それに歯止めをかけたのも結核でした。90年代に結核の再流行があったことにより、保健所が再強化されたのです」と説明している(この記事の内容は、全体的に大変興味深い)。

結局、この社会で新型コロナウイルスに関して優れている点は、医療制度や医療機関、医療にかかわる手配ということだろう。

◆「医療現場ひっ迫」の深刻化

先出の高鳥毛教授は、1897年に制定された「伝染病予防法は、患者の人権を無視する『社会防衛』の考えが根幹にあります」、「感染症の指定医療機関が整備されはじめたのは、99年に『感染症法』が施行されてからの話。新型コロナウイルスの感染拡大時に病床数の不足が問題となった理由がここにあります」ともいう。改正(「感染症法」施行)も、薬害エイズ訴訟や「らい予防法」違憲訴訟の影響でようやく重い腰を上げたような形だ。

また、2008年夏季オリンピック誘致の影響で、02年に大阪市が市立十三市民病院(淀川区)に西成区の結核対策として結核病床を設置した。ここが現在、新型コロナ専門病院として活用されているとも語る。「感染症の流行監視・制御する部門の設置が一部にとどまって」おり、「保健所が間に入り、〝門番〟として病院の機能を守ることが大切とされてい」ると言う。だが、この保健所が都市で減らされているため、増える医療機関での対応を拡大することが現実的だそうだ。

ちなみに、「欧米先進国の多くは、第二次世界大戦の戦勝国であることから、戦前の感染症対策のフレームワークをベースにした体制を維持しています」と添えるが、敗戦国である日本ではコロナ対策として市民を取り締まることは難しいという。そして、日本の目指すべき方向として、「地方自治体と国民とが主体的に関わり、協働して進めていく仕組みを進化させるしかありません」「自治体と国民の感染症のリテラシーを高めていけるかどうかにかかっています」とも語る。

ところが、冒頭に伝えたように現在、医療機関が悲鳴を上げている。

NHKは11月24日、都内の医療機関では重傷者向けの病床が埋まり始め、危機感を募らせていると報道。例えば東京医科歯科大学病院の場合、「重症患者のベッドは、8床あるものの、治療には医師や看護師などの一定の人手を要するため、現在使用しているのは7床。そのすべてが埋まっていて、それ以上の受け入れは断らざるをえない」とのことだ。加藤勝信内閣官房長官は、「各都道府県では、地域の感染状況に応じ、計画に沿って病床の確保を進め、医療提供体制の整備に努めていただきたい。政府としては、引き続き、自治体と緊密に連携し、自治体の感染拡大防止に向けた取り組みをしっかりと支援していく」と述べるにとどまる。

以降、NHKでは「医療現場のひっ迫」が全国で深刻化していることを報道。また、個人やメディアを問わず、医療現場の現在の状況が伝えられ始めた。さまざまな医師が感染拡大の現実や警告をインターネット上に書きこみ、感染症専門医の忽那賢志氏は医療従事者の精神的な負荷を訴えて、医療法人社団 慶友会 吉田病院(北海道旭川市)は市や医大病院の対応に疑問を投げかけている。大阪市立十三(じゅうそう)市民病院(同市淀川区)では医師や看護師が次々と退職した。


◎[参考動画]コロナ専門病院、職員の負担増、外来は戻らず 十三市民病院のいま(朝日新聞社 2020年12月2日)

多くの医療機関が人とベッドとを限界まで稼働させているにもかかわらず、政府は経済や、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案などを優先させている。たとえ、立派な医療制度や医療人がそろっていても、それに頼りきりでは、すぐに限界は露呈する。

わたしは月刊誌『紙の爆弾』12月号の誌面上で、菅政権の「自助・共助・公助」発言を批判した。民間の努力は限界に達し、地方自治体や地域の大病院も対応しきれていない。政府が本当に「自治体と緊密に連携」したら、経団連のほうばかり見ていられないはずだ。現場の努力頼みであるこの国の「お家芸」を放置していたら、医療従事者は心身共に疲弊し、医療崩壊も間違いなく進む。だが、いろいろな背景はあろうとも、皆保険制度や保健所はつくられた。

次回以降も引き続き、医療従事者の感染、問題の深刻度、併発と原発被害との比較、対策と公衆衛生学、情報開示、補償と財政などについて触れていきたい。そして、原発、台風、コロナなどの問題を総合的に考えた際、導き出される人類の次の生き方についてまで、書き進めていきたいと考えている。

◎新型コロナウイルスの問題から、次の生き方を再考する
〈1〉 〈2〉 〈3〉 〈4〉

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)

フリーライター、労働・女性運動等アクティビスト。月刊誌『紙の爆弾』12月号「『自助・共助・公助』から見える菅政権の新自由主義路線」寄稿。医療・看護・介護に関連した出版・ウェブ媒体の取材・執筆・編集も手がけてきた。

月刊『紙の爆弾』12月号

《NO NUKES voice》美浜・高浜再稼働反対!関西電力は老朽原発うごかすな! 大阪市と福井県美浜町を繋ぐ12月9日リレーデモにご参加を! 尾崎美代子

関西電力は、運転開始から40年足った老朽原発3基について、来年1月美浜3号機、3月には高浜1号機の再稼働を目論み、準備を進めている。

福島県浪江町から兵庫に移住した菅野みずえさん(写真提供=EijiEtohさん)

3基については、すでに原子力規制委委員会の安全審査で最長で20年の延長運転が認められており、焦点は地元同意に移っている。

高浜町では、11月12日町議会の臨時本会議で、高浜原発1、2号機の再稼働を求める請願を賛成多数で採択したが、「立地地域の振興や原発の安全管理の徹底を求める」意見書を議決し、経産省などに提出、25日議会全員協議会で高浜原発1、2号機の再稼働について同意すると表明、野瀬豊町長に伝えられた。

一方、美浜町は、12月9日に原子力安全特別委員会を開き、11月30日開会の議会本会議の最終日(12月15日)に、美浜3号機の再稼動への同意を強行しようとしている。

この12月9日に向け、大阪市内から美浜町まで200キロのリレーデモを行い、沿道の住民たちに「危険な老朽原発動かすな」と訴えるとともに、ルート途中の自治体に申し入れを行っていく予定である。

11月23日、大阪市内の関西電力本社ビル前でリレーデモの出発式を兼ねた集会が開催され、約550人が参集、市民団体、労働組合、全国各地で闘う仲間、そして福島県浪江町から兵庫県に避難する菅野みずえさんからアピールがなされた。

その中から今回は、福井県地元からかけつけたお二人の発言をご紹介したい。

◆中嶌哲演さん(「原発に反対する福井県民会議」)

中嶌哲演さん(筆者撮影)

私は若狭と関西周辺の肩を結ぶ立場から、あまり皆さんが触れられていない2つの問題点に絞ってお話します。

1つは実質的に3基の老朽炉を止めていく上での問題です。昨年私は9月末から12日間断食抗議をしましたが、2つの目的をもっていました。1つは高浜1、2号機に2160億円、美浜3号機に1650円の巨費を投じて安全対策工事を強行していました。私はその工事の中止を求めました。当時工事の進捗率19%ないし20%に過ぎませんでした。一方、廃炉費用は高浜で450億円、美浜で490億円見込んでいますから、工事を中止して残った予算を廃炉の準備費用にまわすべきと訴えました。残念ながら工事は、コロナの影響のある今年のような様子を見せていませんでした。

コロナを通じて皆さんどうでしたか? 国民の命を守ること、そのために経済活動を控えなくてはいけなくなった、しかしそれによって生じる損失は、国の責任で補填するとなった。あれやこれやではなく、両方をむすびつけてやっていく、そういうことが国民の意識に浸透してきた。原発政策も同じではないですか? 原発を止めることによって、まず国民の命と安全を守る。しかしそれによって原子力ムラや地元の経済界が「経済が止めるのでは」と不安を抱える。しかしそうではないということを、昨年の断食の2つめの目的に掲げました。それは国会に上程されている「原発セロ法案」です。それを実質的に審議していけば、老朽炉を廃炉にすることなど実質的に審議していくなかで、様々な問題も十分解決できるという確信があったので、私は断食をやりました。当時すでに2000~3000人の人が高浜、美浜で働いていました。私が抗議の断食をやることが、彼らの生活の糧を奪うのではないかというジレンマを持ったわけですが、「ゼロ法案」の問題があるから私は確信をもって断食をしました。

2つめは、どんなに無茶なことでも横車を押して原子力ムラと行政はゴリ押しをしていました。地元高浜、美浜など立地自治体の議会の承認を得れば大丈夫ということでしゃにむになってやってきた。しかしその土俵の外におかれてきたのが私たち小浜市民や若狭町の自治体、嶺北の自治体です。知事には発言権はありますが。よもや関西の皆さんは全く土俵の外、単なる観客にすぎない。そういう土俵の外に除外された私たちが団結して迫っていく必要があると考えています。最後に私がずっと詠み続けてきた坂村真民の「あとから来る者のために」という詩を読み上げます。

あとからくる者のために
苦労をするのだ
我慢をするのだ
田を耕し
種を用意しておくのだ

あとからくる者のために
しんみんよ お前は詩を書いておくのだ
あとからくる者のために
山を川を海を きれいにしておくのだ

ああ あとからくる者のために
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
未来を受け継ぐ者たちのために
みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ

山本雅彦さん(筆者撮影)

◆山本雅彦さん(「原発住民運動福井・嶺南センター/事務局長」)

報道されているように、美浜原発で関電の社員らがコロナに感染するという事態になっています。もし稼働している最中に運転員や機械などの保守にあたっている労働者の方がかかったら、原発は本当に安全に運転できるのか?もうこんな危険な綱渡りの運転はやめるべきではないか、そのことをまずお伝えしたいと思います

40年超えの老朽原発の危険性は皆さんが指摘するとおりです。しかし地元美浜・高浜町議会では、請願を採択するという形で同意しようとしています。まだ同意はしていません。これからもまだ止めることができます。

これまでの経過では、高浜町の商工会議所、自民党高浜支部が推進の請願をだし、これを採択するという形で再稼働を進めようとしています。高浜町議会に原子力政策委員会があり、ここで委員長を務めている元高浜町職員の松岡さんという方がいます。

山崎さんの話の途中「この関電です」のあとに。関電本社ビルに向かって「老朽原発うごかすな!」と訴える参加者(写真提供=EijiEtohさん)

彼は「私は再稼働の是非の議論はしたくない。高浜町に住む多くの人たちがどう思っているか、大方の人は賛成はしていない。また、私は継続審議をしたいといったが、関電の元社員である井上(井上順也)や小幡(小幡憲仁)議員らが『どうしても再稼働する。そしてその意見書をもって国にいき、経済的支援をしてもらうということで進められているのだから、絶対再稼働しないと困る』という圧力をかけてきたそうです。

松岡委員長は『それだったらあなたたちが意見書をつくればいい。私はやらない』と返事をしたそうです。その結果、高浜町の職員や関電の元社員の議員など少数の人たちによって意見書がまとめられ、再稼働の採択がなされたのです。こうしたことが、この間皆さんが抗議や要請行動をしてくださるなかでわかったことです。

皆さん、高浜町や美浜町の町民でさえ再稼働を認めていない、危険な原発は運転しないでと願っている。これに対して再稼働をしゃにむに進めようとしているのが、目の前の関西電力です!!

意見書を見ますと、高浜町の皆さんも本当に悩んでいるのがわかります。最後に再稼働をするにあたって、高浜町民が国民から非難されることがないようにということが書いてある。

再稼働に多くの国民が反対している。高浜町民の多くも止めて欲しいと願っている。賛成すれば国民に批判されるとわかっている。そういう再稼働は本当に止めにしなければいけません!皆さん、ともに頑張りましょう!

★リレーデモ最終日 12/9(水)の行動予定★
13:00 美浜駅前集合 → 美浜町内デモ行進
→ 美浜町役場まえでアピール行動および美浜町長議会へ申入れ → 美浜町内デモ行進
→ 関西電力 原子力事業本部 包囲 抗議行動 16:00 現地解散 
のぼり、旗、パネル、鳴り物など持ってご参加ください

★リレーデモへご支援のお願い★
郵便振替からのご入金
加入者名 : 老朽原発うごかすな!実行委員会
口座記号・番号:00990-4-334563
通信欄に「老朽原発うごかすな!行動へのカンパ」とお書きください

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

NO NUKES voice Vol.25
私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

映画のモデルになった「凶悪」事件の“先生”が私に訴えていたこと 片岡 健

10月22日の当欄では、私が8月に立ち上げた“一人出版社”から発行した書籍『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」の告白』(著者・久保田祥史、発行元・リミアンドテッド)について紹介させて頂いた。同書はおかげさまで、Amazonの裁判関連部門で売れ筋ランキング1位になるなど好調な売れ行きだ。

我が田に水を引くような言い方で恐縮だが、同書は平成の大事件の知られざる加害者側の内実について、実行犯が綴った手記により明るみに出した内容だ。それゆえに多くの人に関心を持ってもらえたのだろう。

私が現在取材中の事件の中には、このほかにもう1件、映画になるほど有名な事件でありながら加害者側の内実がほとんど知られていない事件がある。今回はその事件について紹介したい。

◆手紙で取材依頼をしたら、丁寧な返事の手紙が届き……

〈此の度は、私の事件に於いて、関心を抱き、御丁寧に手紙を頂いたことに感謝申し上げます〉

これは、2014年2月中旬のある日、山形刑務所から私のもとに届いた手紙の一節だ。丁寧な礼の言葉を綴っている差出人の名は、三上静男(71)。山田孝之主演の映画『凶悪』(2013年公開)でリリー・フランキーが演じた殺人犯“先生”のモデルになった男だ。

三上は茨城県で不動産業を営んでいた男だが、その疑惑が表面化したのは2005年のことだった。殺人罪などで死刑判決を受けた元暴力団組長の後藤良治(62)が月刊誌『新潮45』に対し、「三上という男と一緒に金目的で人を殺した余罪が3件ある」と告白。これが同誌で記事になったのを機に警察も動き、検挙された三上は2010年に裁判で無期懲役刑が確定したのだ。

そんな事件が題材の『凶悪』は公開時、“先生”役のリリーの怪演が話題になった。とくに保険金目当てに初老の男を殺す場面では、笑いながら被害者に何度もスタンガンをあて、いたぶる演技が圧巻だった。こんな冷酷な男なら、いくらでも金目的で人を殺すだろうと観客の誰もが思ったことだろう。

だが、実は三上本人は取り調べや裁判で、「後藤の告白はデタラメだ」と訴えていた。私がその主張を聞きたく思い、三上に取材依頼の手紙を出したところ、冒頭のような返事の手紙が届いたのだ。

三上から届いた手紙

◆自分について書かれた雑誌の記事を「真実がない」と主張

三上の手紙には、『新潮45』の記事について、こう書かれていた。

〈読みましたが、真実がないので、笑ってしまいました。私は現在まで新潮45の記者から取材を受けたことはありません〉

要するに、三上は「自分は無実なのに、『新潮45』は自分に取材もせず、いい加減な記事を書いたのだ」と言いたいわけだ。さらに手紙には、こんなことも書かれていた。

〈当時、証拠開示された調書が2m程の高さになりましたが、何度も読みましたが、司法取引がされている調書が散見されております〉

三上と後藤が主犯格として罪に問われた保険金殺人事件では、実は共犯者とされた後藤の舎弟たちが検察に起訴されていなかった。弁護側はその点を問題視し、「検察は後藤の舎弟たちと違法な司法取引をし、罪を見逃す代わりに無実の三上に罪を押しつける証言をさせたのだ」などと主張していた。三上は手紙で、改めてそのことを私に主張したわけだ。

弁護側の主張によると、「そもそも、後藤は自分の死刑を先延ばしにするために事件をでっち上げ、無実の三上を巻き込んだのだ」というのが事件の真相だとのことだった。

◆不自然な内容だった死刑囚の告白

実際、三上の周辺を取材してみると、三上の評判は意外に悪くなかった。

「いい人そうに見えたけどね。魚やワカメを持ってきてくれたこともあったしね(笑)」と話してくれたのは、茨城県にある三上の自宅近くで小さなストアを営む店主の男性だ。また、山形刑務所で以前服役し、獄中で三上と親しくしていた男性もこんな話を聞かせてくれた

「三上さんは面倒見がよく、僕も服役中は親切にしてもらいました。刑務所で知り合った者同士は出所後、手紙のやりとりや面会を禁じられているのですが、また三上さんに会えるものなら会いたいですよ」

さらに取材を進めたところ、裁判で三上の弁護を手がけた弁護士から興味深い話を聞かせてもらえた。三上は今も無実を訴えており、再審請求を考えているというのだ。

「後藤の供述の内容は、三上さんが妻子と一緒に暮らす自宅で被害者を何日も軟禁し、その挙げ句にリンチをして殺害したという不自然なものでした。妻子と暮らす自宅で普通そんなことはしませんよ」

言われてみればその通りで、たしかに後藤が供述する殺人の筋書きは違和感がある。

三上は私にくれた手紙で、冤罪を訴える冊子を自費出版する意向も明かしていた。私はこの事件の取材を今も続けているので、何かめぼしい新事実が見つかれば、当欄でも報告させてもらうつもりだ。


◎[参考動画]三上がモデルの役を怪演したリリー・フランキー。『凶悪』予告編動画より

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。創業した一人出版社リミアンドテッドから新刊『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(著者・久保田祥史)を発行。

最新刊『紙の爆弾』12月号!
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

大阪府が敗訴!! 「あいりん総合センター」周辺の野宿者強制立ち退き問題の行方

◆大阪府敗訴!! ──ホームレスの占有を認めて勝たせた初の事例!!

日雇い労働者の町・釜ヶ崎(大阪市西成区)の「あいりん総合センター」(以下、センター)の建て替え問題を巡って大きな動きがあった。建て替え工事を進めるため、周辺の野宿者を強制立ち退きさせようとした大阪府の仮処分の訴え(土地明渡断交仮処分命令申立事件)が、12月1日、大阪地裁(内藤裕之裁判長)で却下されたのだ。弁護団(武村二三夫、遠藤比呂通、牧野幸子)の遠藤弁護士によれば「ホームレスの占有を認めて勝たせた事例は初めてのこと」だそうだ。

◆「耐震性に問題がある」と始まった建て替えだが……

昨年センター閉鎖後も、上で営業を続けていた「医療センター」は、11月末閉鎖され、昨日フェンスで囲われた

2019年4月24日、強制的に閉鎖されたセンターの周辺には、それ以降も多くの野宿者が生活していた。閉鎖されたセンターは、閉鎖後も上で営業を続けていた「医療センター」が移転したのち解体をはじめ、2025年新センターを完成する予定だという。

大阪府は4月22日野宿者らに対して「立ち退き訴訟」の本裁判を提訴したが、これが長引いた場合、解体や業者の入札などに遅れが生じるためと、一気に仮処分を断行し、強制立ち退きしようと目論んできた。仮処分裁判は10月末までに2度の審尋(非公開)を終え、裁判所は11月以降決定を下すとしていた。そこで出された決定が「債権者(大阪府)の申し立てを却下する」であった。敗訴した大阪府(債権者)の主張について、大阪地裁がどう判断したか見てみよう。

大阪府はセンター建て替えの最大の理由を「耐震性に問題がある」としてきた。これに対して決定文は「本件建物の耐震性に問題があるとの指摘は平成20年(2008年)になされたところ、それにもかかわらず債権者(大阪府)及び大阪市は本件建物について、その後10年以上も補修を重ねながら利用を維持してきたこと、令和2年12月に終了予定であるとはいえ、同建物内において本件医療施設が稼働している状態にあること、本件建物の建て替えなどにあたって、本件建物の耐震性を喫緊の課題であると認識していたとはうかがわれない」と大阪府の主張を否定した。

◆「西成特区構想」を進めるまちづくり会議

確かに、耐震診断を行った2008年から13年も経過しているが、大阪府が「一刻も早く建て替えを」などと動いた形跡はない。じつは耐震診断後、建て替えだけでなく、耐震補強工事案も出ていたが、「建て替えを」に一挙に変わったのは、2012年、当時大阪市長だった大阪維新の橋下徹氏が「西成特区構想」を打ち出してからだ。大阪維新の西成特区構想を進める形でセンターをどうするかが話し合われてきたことは、解体後の跡地をなるべく広い、使い勝手の良い跡地にするため、耐震性に問題のない第二市営住宅まで解体・建替えすることからも明らかだ。

しかしまちづくり会議において、センター解体後の広大な空き地の南側に「新労働施設」(西成労働福祉センターとあいりん職安)を新設することは決まったものの、跡地全体をどうするかの具体例は示されていない。それについて決定文は「おおまかな方針(利用イメージ案)は示されたものの、その内容は、概略的なものにとどまっており、同施設自体の規模や機能といった基本的な計画さえもいまだ定まっていないこと、本件敷地全体については、利用イメージ案が示されているにすぎず、個々具体的な利用計画に関しては,未だまちづくり会議において検討の基礎とされる案が行政機関からも示されていない段階にある」として、「債権者がその遅れを懸念する本件建物の建て替え計画について、それ自体が将来にわたる不確定要素を多く含むものといわざるをえない」と批判的に捉えている。

さらに大阪府は、建て替え計画が遅れることで、大阪府とまちづくり会議に参加する委員との信頼関係が損なわれると主張していたが、決定文は「会議の経過やその内容等によると、そもそも、まちづくり会議の参加団体などと債権者の間の信頼関係なるものは、きわめて抽象的かつ主観的なものにすぎないといわざるをえない」「これまでも会議を開催するたびに、スケジュールが度々変更されていること、まちづくり会議の委員の中には、本件建物の解体工事に伴う野宿生活者の排除について懸念を示す者もいたこと」などから「本訴訟の帰趨によって再びスケジュールが変更されても、大阪府とまちづくり会議の委員らとの信頼関係に悪影響がおよぶとは考え難い」として、大阪府の主張を退けている。

広大な跡地を確保するため、耐震性に問題ない第二市営住宅(右)まで解体され、隣(左)に新設中だ

◆センターより耐震性に問題がある南海電鉄高架下の仮庁舎

非破壊検査で鉄骨が入っていないことがわかった南海電鉄高架下の仮庁舎の橋脚。大勢の労働者が出入りする

「耐震性に問題がある」として、センターの建て替えと仮移転先を南海電鉄高架下に決めたのはまちづくり会議の場であり、反対したのは稲垣浩(釜ケ崎地域合同労組委員長)委員たった一人だった。

7億5千万円の血税をつぎこんで造った仮庁舎の建設費用を巡っては、住民訴訟が提訴され、なぜ入札ではなく、南海電鉄傘下の南海辰村組に随意契約したか、操業から80年以上経つ南海電鉄高架下が安全であるかなどを争っている。後者の南海電鉄高架下の安全性について、先日大事件が発覚した。原告の一人が、専門業者に依頼し、高架下に入る西成労働福祉センター仮庁舎の橋脚6本の非破壊検査を行ってもらったところ、南海辰村組と大阪府が「入っている」と何度も主張した鉄骨が入っていないことが判明した。住民訴訟の弁護団(武村二三夫、遠藤比呂通、牧野幸子)は、調査結果を大阪地裁に証拠提出し、裁判長は大阪府に事実を明らかにするよう求めている。

次回裁判は12月18日。南海電鉄はこれまで「仮庁舎の入る場所は耐震補強工事をしなくていい場所だ、何故ならRC柱(鉄筋コンクリート造り)ではなくSRC柱(鉄筋鉄骨コンクリート造り)だからだ」と主張し、裁判所にイラストまで証拠提出していたが、あれは嘘の証拠だったのか?仮庁舎を使用する労働者や職員の命だけではなく、上を走行する南海電車を利用する1日何十万人もの利用者の命がかかっているのだぞ!

◆「死ぬのは嫌だ」

先日、センター裏で野宿していた男性が亡くなった。時々弁当を届けていた男性だ。痩せてがりがり、最後は米粒どころか飲み物も受け付けなくなっていた。先週、救急隊員と役所の職員らに「救急車に乗って病院に行こう」と2時間近く説得されたが「病院にはいかない」と頑なに断っていた。

救急隊員が帰ったあと、職員に「どうしたらいいか?」と尋ねると「意識がなくなったら(交通事故のように)救急車を呼べる」と聞き、翌日朝と昼に声をかけた。しかし男性は、やせ細った身体を震わせ「嫌だ」と拒否した。施設や病院、あるいは行政の世話になることを拒否しているようだ。職員に「このままだと死ぬよ」と言われ「死ぬのは嫌だ」と答えていたという。死ぬのは嫌だが、それと同じくらい病院に行くのも嫌だと野宿を続けた男性。野宿がいいか悪いかの問題だけではない。冷たいコンクリに直接敷いた布団の上で、自分の吐しゃ物にまみれた頭を震わせ「嫌だ」と振り絞るように上げた男性の声が忘れられない。(※この詳細は尾崎美代子のFacebookを参照ください)

搬送された病院で死亡が確認された野宿の男性が住んでいた場所。コンクリートに布団を直に敷いた寝床でも、男性は「離れたくない」と訴えていた

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

月刊『紙の爆弾』12月号
NO NUKES voice Vol.25

なぜか捜査を受けない竹中平蔵の脱税疑惑 ── 持続化給付金と規制緩和の利益誘導で私腹を肥やす? 横山茂彦

新自由主義のミスリーダー、竹中平蔵の利益供与、脱税疑惑が再燃している。

竹中は小渕内閣の経済戦略会議に参画して以降、森内閣でのIT戦略会議、小泉政権では経済財政政策担当大臣と金融担当大臣兼任するなど、いわゆる構造改革・新自由主義の旗振り役として政権の一端をになってきた。安倍政権下においても、ブレーンとして重きをなしてきた。その「業績」は郵政民営化、および格差を拡大した「労働ビックバン」であった。

あの郵政民営化の成果は、違法な保険商品勧誘やマスクも満足に届けられない配達システムの崩壊であった。労働ビックバンにおいては、満足な保証のない派遣労働者の増加をもたらしただけである。国民にふたつの不満をもたらしたのだ。

とりわけ労働ビックバンは、「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」というマーガレット・サッチャーの思想を援用して「高い所得を得ている人がいること自体は解決すべき問題ではなく、努力しても貧しい人たちに社会的救済が必要である」と言いながら雇用問題にすり替えたのである。そこで示した「正社員をなくせばいい」という発言は、わが国の経済不況の核心部、購買力の低下・消費の低迷をもたらした。


◎[参考動画]”日本版オランダ革命”に取り組め/同一労働同一賃金(竹中平蔵のポリシー・スクール 日本経済研究センター2009年)

◆浅薄な経済理解による経済崩壊

 
堀江貴文+竹中平蔵『竹中先生、「お金」について本音を話していいですか?』(ワニブックス 2015/2/27)

「格差が問題なのではなく、貧困論を政策の対象にすべき」としてきた結果は、中間層までも不安定な雇用関係に陥らせる格差の拡大、大企業の内部留保(500兆円)だった。いまや、消費の低下が国民経済を最悪のところまで至らせている元凶となるものが、この竹中による構造改革・労働政策だったというほかにない。

その竹中平蔵がいままた、菅政権の中心的なブレーンとして成長戦略会議に参画している。社会保障を切り捨てる、一知半解のベーシックインカムを提言して反発を買ったのは既報のとおりだ。「とんでもないことをするかも内閣 菅政権の発想が浅薄すぎる件について」(本通信2020年10月27日)を参照。

上記のような雇用の構造改革、派遣労働の法的整備のなかで、ほかならぬ推進役の竹中平蔵が、派遣会社パソナグループ(傘下に70社をかかえる)に天下ったのは、自民党内からも激しい批判が上がったものだ。低賃金の派遣労働者から、みずから経営陣になることで、その血と汗を搾取するという立場に君臨してきたのだ。

そしていままた竹中平蔵は、持続化給付金という政策利権に手を染めているのだ。

◆持続化給付金を吸い取ったのは、竹中平蔵だったのか

持続化給付金の業務が、サービスデザイン推進協議会に769億円で委託され、そこから電通に749億円で再委託されていたこと。その段階で約20億円を中抜きし、電通からはさらに下請け孫請けで実務が行なわれていた。あまりにも複雑怪奇な外注に、自民党の政策担当者も驚かざるをえなかった。

そして、この持続化給付金の業務委託を実質的に請け負った主要企業の一角が、竹中平蔵が会長を務めるパソナだったのである。いや、一次請けの「サービスデザイン推進協議会」それ自体が、元電通社員・パソナの現役社員が名を連ねる、最初から最後まで、税金を中抜きする構造だったのだ。

立憲民主党の川内博史議員は、国会においてこう指摘している。

「社団法人を通じて、電通をはじめとする一部の企業が税金を食い物にしていたわけです。持続化給付金事業に限らず、経産省の事業ではそうしたビジネスモデルが出来上がっている」と。

元国税庁職員だった大村大次郎(経営コンサルタント、フリーライター)は、2020年10月1日付けのメルマガで、以下のように指摘する。

「サービスデザイン推進協議会の中心企業であるパソナは人材派遣企業の最大手の企業です。このパソナは創業以来、大々的に官僚の天下りを受け入れており、典型的な政官癒着型の企業なのです。」

ジャーナリストの佐々木実による竹中氏の評伝『竹中平蔵 市場と権力』は、次のように指摘する。竹中平蔵の本業は慶應義塾大学総合政策学部教授だったが、副業を本格的に始めるために〈ヘイズリサーチセンター〉という有限会社を設立した。法人登記の「会社設立の目的」欄には次のように記されている。
「国、地方公共団体、公益法人、その他の企業、団体の依頼により対価を得て行う経済政策、経済開発の調査研究、立案及びコンサルティング」

フジタ未来経営研究所の理事長、国際研究奨学財団の理事というふたつのポストを射止めた段階で、副業はすでに成功していたといえる。竹中個人の1997年の申告納税額は1958万円で、高額納税者の仲間入りを果たしている。総収入は6000万円をこえていただろう。

小泉政権の閣僚となる前年の2000年の納税額は、じつに3359万円に達している。所得はおよそ1億円程度と推測される。ほかにヘイズリサーチセンターや家族などに分配された利益があるので、政策コンサルタントとして稼いだ収入は莫大なものだ。

そしていまや公然と、派遣最王手パソナグループの会長として、政治を操りつつ蓄財する、いわば政商である。企業人・経済人になるのならそれでもいい。だが、彼の蓄財の源泉は税金なのだ。


◎[参考動画]竹中平蔵 【菅政権の経済ブレーン語る!日本経済復活の処方箋】報道(BS-TBS公式チャンネル 2020/9/23放送)

 
竹中平蔵『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社プラスアルファ新書 2018/6/21)

◆看過できない竹中の脱税疑惑

こうしてみると、竹中平蔵は政界と大企業、および学界にまたがり、国民の血税をかすめ取る吸血鬼のような男ではないだろうか。その竹中平蔵の脱税疑惑は、小泉政権当時から指摘されていた。

前出の大村大次郎は、こう批判する。

「竹中平蔵氏が慶応大学教授をしていたころのことです。彼は住民票をアメリカに移し日本では住民税を払っていなかったのです。住民税というのは、住民票を置いている市町村からかかってくるものです。だから、住民票を日本に置いてなければ、住民税はかかってこないのです。
 もちろん、彼が本当にアメリカに移住していたのなら、問題はありません。しかし、どうやらそうではなかったのです。彼はこの当時、アメリカでも研究活動をしていたので、住民票をアメリカに移しても不思議ではありません。でもアメリカで実際にやっていたのは研究だけであり、仕事は日本でしていたのです。竹中平蔵氏は当時慶応大学教授であり、実際にちゃんと教授として働いていたのです。」

ようするに、日本で仕事をしながらアメリカに住人票を置いて、竹中は「節税」をしていたのだ。つまり脱税である。

「竹中平蔵氏は、住民税の仕組みの盲点をついていたのです。住民税は、1月1日に住民票のある市町村に納付する仕組みになっています。1月1日に住民票がなければ、どこかの市町村がそれを知ることはないので、どの市町村も納税の督促をすることはありません。だから、1月1日をはさんで住民票をアメリカに移せば、住民税は逃れられるのです。」「しかし、これは明らかな違法であり、脱税なのです。」

国会でこの件を批判された竹中は、「住民税は日本では払っていないがアメリカで払った」と国会で主張している。しかし、最後まで納税証明書を国会に提出しなかったという。
いた、提出できなったというのが正確なところだ。なぜならば、アメリカにおいても住民税は所得税に連動している。

したがって、「内で所得が発生している人にだけ住民税がかかるようになっているので、アメリカで所得が発生していない竹中氏が、住民税だけを払ったとは考えにくいのです。」(大村氏)

さらに引用しよう。

「当時、税制の専門家たちの多くも、竹中氏は「ほぼ黒」だと主張をしていました。日本大学の名誉教授の故北野弘久氏もその一人です。北野教授は国税庁出身であり、彼の著作は、国税の現場の職員も教科書代わりに使っている税法の権威者です。左翼系の学者ではありません。その北野教授が、竹中平蔵氏は黒に近いと言われているのです。」(前出)

もはや疑惑はかぎりなく黒に近い。脱税をしている人間が、わが国の経済政策を任せられているのだ。しかも血税の使用方法を差配しようとしているのだ。

「泥棒に警察庁長官をさせるのと同じことです。そのことに、マスコミも世間も気づいていなかったのです。そして、結局、このことをうやむやにしてしまったことが、その後の日本に大きな災いをもたらすことになるのです。今回の持続化給付金問題なども竹中氏につながっているのです。」(前出)

諸々の批判に、竹中は「成功者の足を引っ張る」などとうそぶいてきた。いまこそ、あの尊大なまでに柔和な表情が引きつる批判に晒さねばならないだろう。


◎[参考動画]竹中平蔵氏【後編】アフター・コロナに勝ち残るために Part2. 2020年9月17日(木)放送分 日経CNBC「GINZA CROSSING Talk」(ソニー銀行)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

最新刊!『紙の爆弾』12月号!

《12月のことば》今日だけがんばれ 鹿砦社代表 松岡利康

《12月のことば》朝陽は昇るよ ゆるやかにね 今日だけがんばれ(鹿砦社カレンダー2020/龍一郎・揮毫)

2020年のカレンダーも最後の1枚となりました。本年は新型コロナに振り回された1年間でした。知人のお店で、遺憾ながら無念の閉店をした所もありました。コロナさえ来なければ、悠々と営業を継続していた店でした。

人生いろいろありますが、こういう疫病で挫折するとは思ってもいなかったということです。

このご時世ですから明日のことはわかりませんが、まずは「今日だけがんばれ」。鹿砦社の社是である「日々決戦 一日一生」に繋がります。

来年2021年は、東日本大震災から10年です。福島原発爆発に触発されて、大学の後輩の書家・龍一郎の力を借りて開始した「鹿砦社カレンダー」もちょうど10年となります。このかん多くの方々に支持されてきました。

ところが今夏、龍一郎が突然病に襲われ1カ月の入院を余儀なくされ制作が懸念されましたが、執念で筆を取り完成させることができました。月刊『紙の爆弾』(12月7日発行)定期購読の方から同誌1月号と共にお届けいたします。次は『NO NUKES voice』26号(12月11日発行)の定期購読者の方々に。ご期待ください!

最新刊!『紙の爆弾』12月号!
NO NUKES voice Vol.25

親日家だった元エリートの中国人死刑囚、書簡に綴った「転落の軌跡」【後編】

2009年5月、愛知県蟹江町で母子3人を殺傷し、2018年に最高裁で死刑が確定した中国人の林振華(37)。中国の名門高校を卒業後、焦がれの日本に留学したエリートは、なぜ異国の地で凶悪犯罪に手を染めたのか。

死刑確定が間近に迫った頃、林は私に宛てた計6通の書簡で、来日後に空腹のためにおにぎりを万引きし、日本語学校で孤立してしまったことを明かした。それでもなお、大学入学のために勉強を続け、国立の静岡大学に合格した林だったが――。

ここで再び、落とし穴に落ちるのだ。

◆万引きが招いた「合格した大学に入学できない」という悲劇

「入学には、高校卒業時の成績表が必要なので大至急用意にするように」

合格発表後、林は静岡大学側からそう告げられ、驚いた。入学のために高校卒業時の成績表が必要という話は聞いたことがなかったからだ。急遽、中国にいる父が動いてくれたが、審査などに時間を要して期限までに必要書類が揃わず、結局、静岡大学に入学できなかった――。

〈後で分かったが、普通、みんなそれを受験前に予め用意するのだけど、先生とも先輩ともコミュニケーションを取らなかった私はそのこと自体を知らなかった。それも後の祭りです〉(※〈〉内は、計6通の書簡のいずれかから引用。以下同じ)

おにぎりを万引きしたことが、合格した大学に入学できない悲劇を招いたのだ。

林が「転落の軌跡」を綴った6通の書簡

◆空き巣に入った家で3人を殺傷

その後、林はコンピュータの専門学校に1年通い、三重大学に合格する。しかし、再び手違いがあった。

〈私が間違ったのか、事務方のミスなのか、経済学科を希望したのに、入ったのは文学学科でした。今でも謎です。でも一つ確かなのは、それが私の学業に対するモチベーションの低下に繋がりました〉

飢えの恐怖を覚えていた林は三重大学入学後、コンビニ、ホンダの工場、焼き鳥屋、ラーメン店、割烹料理の厨房など、様々なアルバイトを掛け持ちした。学業も両立したため、寝る時間がほとんど無く、2年生の時についに倒れてしまった。

〈学校にも、仕事にも、しばらく行けなくなりました。動かないとお金が入りません。しかもその間も学費がべらぼうにかかります(年間53万円)。私はまた金欠になり、その日その日の生活になりました〉

林は再び、万引きに手を染め、警察沙汰に。罰金刑を言い渡されると共に「罰金を払わない場合、労役所に留置し、作業をさせることになる」と説明を受け、うろたえてしまったという。

〈そうなったら、学校を退学させられます。自分のキャリアはもちろんパーになるし、両親の期待も裏切ってしまいます。私は必死でお金を工面しようとしました。しかし3月末に学費を払ったばかりで、その時もアルバイト先のコンビニの店長にいくらか貸してもらったぐらいお金に困っていたので、どうしようもありませんでした〉

労役所に留置されたからといって、本当に大学を退学になるかは疑問だが、当時の林はそう思い込んだ。そして金を得るため、最悪の選択をしてしまうのだ。

〈思いついたのは空き巣でした。何日も眠れない日が続き、頭が混乱したのと、よくテレビニュースで見かけるからです。鉄レンチを持って行ったのは、窓ガラスを割るためでした。初めてのことだから心細く、小刀も持って行きました。それらは結局、事件を起す凶器になってしまいました〉

こうして林は空き巣に入ったはずの被害者宅で、家族たちに鉢合わせし、3人を殺傷してしまった――。

〈母が法廷で、「もし可能なら私が息子に替って罰を受けたいと思います」と言いました。両親が今でも私のことを愛してくれたなと思いました。その反面、自分はとんでもない親不孝だなと思いました〉

筆者が原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』分冊版第13話でも、林の「転落の軌跡」は詳細に描かれている  © 笠倉出版社/片岡健/塚原洋一

◆「罪を犯したら罰を受けるのは当然」

実を言うと林は死刑が確定前、獄中で首を吊ったり、鉛筆削りの刃で静脈を切ったりするなど自殺を試みている。

〈結果として命は助かったが、病院で酸素マスクを付けて目が覚める時、白い天井を見上げて、走馬燈が頭の中で走り巡らせるうちに(ママ)、自分が一度死んだ感覚でいます〉

林はそのため、死刑確定が間近に迫った時期も〈死ぬことは怖くないです〉と達観していたが、一方で苦痛を感じることもあることを明かした。

〈時々、後悔、被害者、両親、恋人などに対する申し訳ない気持ち、嘆きがいっぺんに押しかけて、押し潰されそうになる。毎日歩く屍のような感じです〉

では、夢を追って留学したはずの異国で死刑囚となり、人生の最期を迎えることをどう思うのか。

〈寂しいと思います。私は犯罪を犯すために日本に来た訳ではありません。自分の力で中日友好の架け橋役になれたらいいなと思いました。日本は法治国家です。罪を犯したら罰を受けるのは当然です。それについては文句を言うつもりはありません。でも、両親に会えなくなるのは、やっぱりすこし心許ない気持ちです〉

そんな林がこれまでの人生で楽しかった思い出とは――。

〈中学と高校の濃密な受験勉強の時間かなと思います。一生懸命頑張って、いい成績が取れて父と母に褒められる。単純だけど楽しい時期だと思います。あとは彼女と付き合う日々です。遠距離恋愛だけど、毎晩モニターを挟んで語り合い、ふたりの将来の設計図を描く。自分は一人じゃないなと実感する幸せな時間でした〉

もっとも、もしも時間を過去に戻せるなら、この「幸せな時間」よりもっと戻りたい時があるという。

〈初めて万引きする自分にストップをかけたい。「その初めの一回はだめだよ」と〉

異国の地で一度の万引きをきっかけに人を殺め、死刑囚となった林振華。死刑執行を先延ばしにすべく再審請求を繰り返す死刑囚は少なくないが、林は潔く死刑を受け入れそうだ。

◎親日家だった元エリートの中国人死刑囚、書簡に綴った「転落の軌跡」
【前編】
【後編】

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』(画・塚原洋一、笠倉出版社)がネット書店で配信中。分冊版の第13話では、林振華を取り上げている。

最新刊『紙の爆弾』12月号!
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

打倒ムエタイ路線を貫いて10年目のKICK Insist! 堀田春樹

ファイタータイプのタイ選手が日本人チャンピオンを苦しめた試合が続いた。

瀧澤博人は僅差の判定勝利ながら、新たなチャンピオンベルトを巻く。今後、ジャパンキックボクシング協会のエースの一角として負けれない立場となる。

チャンピオンとして存在感増してきた永澤サムエル聖光もムエタイ戦士に攻略される展開。

閉鎖された目黒藤本ジムからKICK BOXへ移籍した内田雅之は、テクニシャンのベテランムエタイ戦士と対戦。今一つ攻められない、もどかしい引分けに終わる。

昨年11月9日、JKAバンタム級チャンピオンとなった翼は交流戦で、一つ上を行くチャンピオンの一航に悔しい敗戦。

◎KICK Insist.10 / 11月22日(日)後楽園ホール 18:00~21:15 
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第10試合 WMOインターナショナル・フェザー級王座決定戦 5回戦

JKAフェザー級1位.瀧澤博人(/ビクトリー/ 57.15kg)
   vs
ジョムラウィー・レフィナスジム(元・タイ国TV9chバンタム級C/タイ/ 56.5kg)
勝者:瀧澤博人 / 判定2-1
主審:チャンデー・ソー・パランタレー
副審:椎名48-49. アラビアン49-48. ナルンチョン49-48
スーパーバイザー:ナタポン・ナクシン

ジョムラウィーの飛びヒザ蹴り、瀧澤は苦戦の流れ

ローキック中心に前進するジョムラウィー。距離を詰められ下がり気味の瀧澤博人。ジョムラウィーが圧力強めて出て滝澤の蹴りに怯まず、蹴り返しや足払いに行くようなローキックを返す。瀧澤博人は劣勢な印象を受けるが、長身を活かしたパンチやハイキックで距離を保つ。首相撲にいく流れはほとんど無いが、パンチとローキックで前進を続けたジョムラウィーの優勢かと思われたが、下がりながらも高めの蹴りが多かった瀧澤博人にタイ人ジャッジ2名の支持が勝り王座獲得となった。

劣勢に見えても要所要所で長身を活かしたハイキックで攻める瀧澤博人
瀧澤博人も飛びヒザ蹴りでお返し

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン.永澤サムエル聖光(ビクトリー/ 61.9kg)
    vs
シラー・ワイズディー(元・ラジャダムナン系バンタム級C/タイ/ 62.0kg)
勝者:シラーY’ZD / 判定0-3
主審:少白竜
副審:松田28-29. 和田28-30. 仲28-30

永澤のローキック、頑丈なシラーは構わず前進し距離が詰まる

初回は永澤がパンチでやや有利な流れ。シラーは第2ラウンドに入ると蹴りやパンチの攻防の中、前進を続け永澤を上回っていった。約300戦以上の戦歴を持つシラーは、多少蹴られてもパンチを受けても体幹が崩れない。永澤もパンチやヒジのヒットを狙うが下がり気味。永澤のヒットで左眉尻をわずかに切られたシラーだが、第3ラウンドも主にパンチで永澤を追う展開で優勢を保った。在日タイ人としてのトレーナーが本職か、日本の応援団が多かったシラーはしっかり日本語で応援に感謝を叫んでいた。

日本人応援団も多いシラーは次第に調子を上げてくるが、永澤も打ち合いに応じる

◆第8試合 54.0kg契約3回戦

JKAバンタム級チャンピオン.翼(ビクトリー/ 53.75kg)
    vs
WBCムエタイ日本バンタム級チャンピオン.一航(新興ムエタイ/ 54.2→53.9kg)
勝者:一航 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:松田27-30. 少白竜27-30. 仲27-30

ボディーブローから接近すると、すかさずヒザ蹴りに入る一航

パンチと蹴りの様子見から隙を狙った素早い攻防が続く。第2ラウンドには距離が詰まりパンチの攻防も増えていく中、ボディーブローからヒザ蹴りに持ち込む一航が有利なヒットを何度か見せるが、翼のパンチも幾らか貰い鼻血を流す一航。第3ラウンドには接近戦でのパンチの交差で一航の左フックがヒットし翼がノックダウン。決定的な流れを掴んだ一航が攻勢を維持し、大差判定勝利を導いた。

距離が詰まり互いの蹴りが増える中、一航の右ミドルキックがヒット
今野はローキックを連発して清水のリズムを狂わせた

◆第7試合 72.8kg契約3回戦

JKAミドル級チャンピオン.今野顕彰(市原/ 72.7kg)
    vs
清水武(元・WPMF日本SW級C/Sbm TVT KICKLAB/ 72.55kg)
勝者: 今野顕彰 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:椎名30-28. 少白竜30-28. 仲30-29

終始、今野のパンチとローキックで清水の前進を止め、清水がパンチや蹴りは出しても強いヒットは無いまま調子掴めず、今野が攻勢を維持したまま終了。

今野顕彰が攻勢を続ける中のボディーブロー

◆第6試合 ライト級3回戦

リク・シッソー(トースームエタイ/ 61.1kg)
    vs
JKAライト級1位.林瑞紀(治政館/ 61.1kg)
勝者:リク・シッソー / TKO 2R 1:51 / 主審:松田利彦

第2ラウンド半ば、パンチの交錯の後、林が異常を訴え、ノックダウン扱いでノーカウントのレフェリーストップ、左腕骨折の疑いによる。

◆第5試合 62.0kg契約3回戦

内田雅之(KICK BOX/ 61.4kg)
    vs
ペットワンチャイ・ラジャサクレックムエタイジム(タイ/ 61.7kg)
引分け0-1
主審:仲俊光
副審:椎名29-29. 松田28-29. 和田29-29

◆第4試合 ライト級3回戦

JKAライト級2位.興之介(治政館/ 60.9kg)
    vs
同級6位.睦雅(ビクトリー/ 61.0kg)
勝者:睦雅 / TKO 1R 2:34 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

◆第3試合 54.0kg契約3回戦

JKAバンタム級1位.幸太(ビクトリー/ 53.75kg)
    vs
NKBバンタム級2位.高嶺幸良(真門/ 53.8kg)
勝者:幸太 / TKO 3R 0:22 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆第2試合 ウェルター級3回戦

大島優作(RIKIX/ 66.68kg)vs 鈴木凱斗(KICK BOX/ 66.2kg)
勝者:大島優作 / TKO 3R 0:42 / ヒジ打ちによるカット
主審:和田良覚

両陣営セコンドで旧・目黒藤本ジムのOBの顔触れが見られる同門対決のようなムードが漂う。

◆第1試合 55.0kg契約3回戦

樹(治政館/ 53.8kg)vs ペトウ・タイコン(旭/ 55.0kg)
勝者:樹 / TKO 1R 0:43 / カウント中のレフェリーストップ
主審:松田利彦
遊魔(旭)が負傷欠場でペトウ・タイコンに変更。

《取材戦記》

今年6回の興行予定だったジャパンキックボクシング協会は、コロナ禍により3回に留まりました。

インターネット中継による有料配信を試みた今回の興行。来年の観衆入場制限の解禁見通しが立たない現在、放映は簡単な話ではないが、有料配信継続は一つの運営手段でしょう。

WMOは「World Muaythai Organization(世界ムエタイ機構)」が正式名称。数年前にタイで発祥の認定団体で、タイに於いて幾らか認定される王座戦が行われている模様。世界機構はいろいろあるが、「そう言えばあのタイトルどうなった?」と言われないように活性化を切に願う。

永澤サムエル聖光は今年1月5日に興之介(治政館)をTKOに下し、ジャパンキック協会ライト級王座獲得し、9月12日に鈴木翔也(OGUNI)に判定勝利し、WBCムエタイ日本ライト級王座獲得(いずれも王座決定戦)。この日、62.0kg契約で永澤(61.9kg)、シラー(62.0kg)ともにライト級リミット(61.2kg)を超えており、敗れても王座剥奪はされません。プロボクシングのシステムだが、ムエタイも確立した団体では採用されているシステムです。

今居るチャンピオン達で盛り上げていかねばならないジャパンキックボクシング協会。そこはビクトリースピリッツプロモーションが年々力を付けて来た運営が今後の鍵を握るでしょう。

◎ジャパンキックボクシング協会2021年興行予定

1月10日(日)後楽園ホール
3月28日(日)新宿フェース
5月 9日(日)後楽園ホール
6月13日(日)市原臨海体育館
8月22日(日)後楽園ホール
11月21日(日)後楽園ホール

久々にチャンピオンベルトを巻いて八木沼広政会長とツーショットの瀧澤博人

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

安倍晋三の政治とカネの無様な実態 検察は自殺者を出さないために、前総理の身柄を押さえて説諭せよ 横山茂彦

◆やはり検察人事介入は訴追を怖れてのことだった

あのとき、安倍元総理は今日のようなことがあるのを想像しただろうか。まさに驕れる者も久しからずだが、これを想定していたからこそ、芸能人による反対運動まで巻き起こり、大きな波紋を呼んだ検察庁法改正案問題があったのではないか。

すなわち黒川弘務検事長の定年延長という、いわば自陣営の審判役を検察トップに確保する人事案を、安倍晋三は冷静沈着にも考えていたのだろう。それは検察庁法改正として課題を先のべにしながら、いまも三権分立を掘り崩す政府の策動として続いている。

最高裁判事の〇×式の投票に「この裁判官が下した判決」および法曹界の賛否両論の併記を書き添えるなど(現状は無意味な氏名だけ)、検察人事も国民投票に付すべきものではないか? 本気で三権分立を実現するのなら、将来は行政の長(総理大臣)もふくめて、国民投票を実施するべきである。


◎[参考動画]高検検事長の『定年延長』は安倍政権の“守護神”だから?(TV東京 2020年2月5日)


◎[参考動画]黒川検事長が辞任へ 森大臣「賭博罪にあたる恐れ」(ANN 2020年5月21日)

さて、桜を見る会前夜祭における安倍元総理のウソが明白となった。5年間で2000万円のうち、安倍事務所が916万円を補填していたというのだ。安倍晋三国会で、かたくなに否定してきた明細書(安倍元総理の政治団体=晋和会あて)をホテル側が保管していたのである。

パーティーへの選挙民の参加費を議員が支払う。これは単なるウソにとどまらず、「選挙民への寄付(買収)」にほかならない。

公職選挙法違反(公職選挙法199条の2の1項)である。そして事務所で支払わなかったとして、政治団体の収支に記載をしなかった。これは政治資金規正法違反(政治資金規正法第12条2項)でもある。

それぞれ、一年以内の禁固又は30万円の罰金(公選法)、5年以下の禁固又は100万円以下の罰金(政治資金規正法)である。安倍晋三は逮捕、起訴、そして禁固刑で収監される「可能性」が出てきたのだ。


◎[参考動画]安倍前総理がコメント “桜”前夜祭補填疑惑(ANN 2020年11月24日)

◆ふつうの論理が通用する社会にもどせ

そもそも11000円が最低価格のホテルパーティーに、参加者が5000円しか支払わなかった時点で、安倍および安倍事務所の虚偽は明白だった。

にもかかわらず、参加者個々人が契約主体であり、そのさいの領収書や明細書は発行されなかった、などと作り話をしてきたのだ。ホテルはいわばサービス業の頂点であり、ニューオータニやANAホテルなど、わが国を代表する高級ホテルは明朗会計を謳っている。その意味では、安倍の「明細書は発行されなかった」という答弁は、ホテル側の名誉を毀損するものでもあった。

日本学術会議の任命を拒否するという、国民を代表しての「義務」を果たさないまま、その理由を明らかにしない。つまり、学問研究への政治介入の現実を認めようとしない菅総理の「強弁」のお手本が、まさに安倍の「明細書は発行されなかった」なのである。

国民の負託による審議の場で、ウソをつきとおす異常な事態は、これ以上続けさせてはならない。いまこそ安倍晋三とその秘書団を逮捕し、ふつうの論理が通用する社会にもどす必要があると指摘しておこう。


◎[参考動画]安倍前総理「桜を見る会」前日の夕食会をめぐる国会答弁(TV東京 2020年11月25日)

◆秘書への責任転嫁をゆるすな

さて、虚偽が明らかになった以上、問題はその責任の取り方である。すでに安倍元総理の周辺は「国会答弁で補填を否定したが、事務所の秘書(公設第一秘書)が安倍氏に虚偽の報告をした」と防衛線を張っている。

慧眼な読者諸賢はすぐにこの言葉で、ある種の危惧を抱くことであろう。虚偽報告をしたとされる秘書が、責任をとって最悪の選択をする可能性である。

すでに安倍政権と財務省高級官僚は、安倍が「私と妻がかかわっていたら、私は総理大臣も国会議員も辞めますよ」という啖呵を忖度し、財務省の職員を死に追いやっているのだ。今回もすべてを秘書に押し付け、国会の証人喚問にも応じない(自民党に拒否させる)可能性が高い。

したがってトカゲのしっぽ切り体質が、新たな犠牲者を出さないとも限らないのである。だからこそ検察はただちに安倍を逮捕して、証拠隠滅や部下の自殺を防止しなければならない。安倍本人に「あなたが政治責任と刑事責任を取り、国民に範をしめしなさい」と。


◎[参考動画]総理「関与なら辞任」 国有地“格安”払い下げ(ANN 2017年2月18日)


◎[参考動画]安倍総理「籠池氏はウソ八百」昭恵夫人の活動を…(ANN 2018年2月5日)

◆菅義偉のポンコツ答弁

その安倍を官房長官として擁護してきた菅義偉総理といえば、あいかわらずポンコツ答弁である。

昨年の内閣員会で、重ねて「領収書を出せばわかること」と問われたときに「ホテルの領収書はない。議事録に残るわけですから、責任は以上のとおりです」と答えていたんは記憶に新しい。

そのみずからの虚偽答弁を問われても、秘書官のメモを片手に、

「わたくしは、そ、総理から言われたことを、答弁したものであります」「そ、総理は、その場に居ませんでしたから」

ようするに、自分は「子供の遣い」だったというのだ。そうではない、虚偽が議事録に残ったことが問題なのだ。ウソは真実をもって、書き換えられなければならない。そして虚偽答弁には、政治責任がとられねばならない。

だが、わが菅義偉は、さらに言葉に詰まりながら、

「そ、それは、そ、総理が説明されることだと思います」「いずれにしましても、いま、捜査が行なわれているかどうかわかりませんが……(ヤジ)、捜査機関の活動に関わることですから……、わたしの立場で、答弁は差し控えさせていただきます」とくり返すしかなかった。

捜査は安倍事務所への聴取として厳正に行なわれているのだから、現役の総理が自分の答弁を説明しても何ら支障はない。すでに安倍元総理は、一部補填(事務所からの寄付にあたる)があったのを認めてもいるのだ。

100歩ゆずって「わたしに訴追の怖れがあるので、答弁は差し控えたいと思います」ならばともかく、である。

秘書官のメモ便りのポンコツ答弁ぶりゆえに、安倍晋三のような大見栄の啖呵を切ることもなく、その分だけ安全運転とはいえる。が、答弁に尻込みする姿は、一国の総理としてはいかにも風格がないと評しておこう。

そして、そのポンコツ総理から「捜査中なので答える立場にないし、仮定の質問には答えられないが、一般論として虚偽答弁であったなら、その時は対応(謝罪)したい」という答弁は得られた(11月25日参院予算委、福山哲郎委員への答弁)。
いずれ事件の概要が明らかになり、安倍元総理が喚問されたうえで、前総理と現総理が首をそろえて国民に謝罪する日も近いかもしれない。


◎[参考動画]“桜前夜祭”巡り…菅総理「事実違えば私にも責任」(ANN 2020年11月25日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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