【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書18】〈差別と暴力〉について 鹿砦社代表 松岡利康

あらためて申し述べておきたいのは、本件リンチ事件もその一つのケースである〈差別と暴力〉についてです。

ここでは、私の大学の先輩が実際に巻き込まれた、1974年11月、兵庫県山間部・但馬地方で起きた「八鹿高校事件」について少し申し述べます。こう言うだけで構えてしまいそうですが、あえて以下記述します。私の意見に反発や批判などあるやもしれませんが、誤解を恐れず、このまま記述を進めます。

◆「八鹿高校事件」のショック 先輩が暴行を受けた!

「八鹿高校事件」とは、部落解放同盟の一団が八鹿高校を襲い、みずからの主張に賛同しない教職員らに対し激しい暴力を加えた事件です。背景には、部落問題についての解放同盟と日本共産党の根深い対立があり主なターゲットは共産党員だったとのことですが、運悪く私の先輩は同校に勤務していました。解放同盟、共産党のどちらにも与しないにも関わらず激しいリンチを加えられています。今「どちらにも与しない」と述べましたが、先輩は学生時代、赤ヘルメットを被り、日本共産党(この下部組織・民青)と激しく対立する全学闘争委員会(文学部共闘会議)の一員で、60年代後半から70年代初頭の学生運動に関わりました。

共産党系のライターが書いた本で被害者リストに先輩の名を発見して大きなショックを受けた記憶があります。今でもネットでは判決文全文が載っていて被害者・加害者とも多くが実名で出ています(いいんでしょうか?)。

この事件はあまりにも有名な事件で書籍や記録なども多くありますので詳しくは述べませんが、残念なのは、解放同盟と共産党のどちらからのものがほとんどで、多かれ少なかれ主観や自己弁護が入り、誇張、歪曲されているので割り引いて読まなければなりません。被害者の大半の教師(とりわけ私の先輩のように共産党に所属しない人たち)の立場、解放同盟でも共産党でもどちらでもない中立の立場からのものはわずかしかありません。

この事件が、わが国の反差別運動に大きな汚点となったことは紛れもない事実です。それでも解放同盟は「暴力はなかった」「リンチはなかった」と言い張っています。本件リンチ事件に於ける李信恵らの詭弁とよく似ています。

この後解放同盟は、いわゆる「糾弾闘争」に走るのですが、これが誤りだということは、10年余り経った80年代半ばに私は、師岡佑行氏(京都部落史研究所所長。日本近現代史専攻。故人)や土方鉄氏(『解放新聞』編集長。作家。故人)ら解放同盟内部の幹部(良識派=非主流派)から「糾弾闘争は誤りだった」との聞き取りを直接得ています。そうした内部からの批判や社会的批判を受け、今では、さすがに暴力的糾弾闘争はなくなってきています。

同時に、当時から狭山裁判など解放運動は時に大きな盛り上がりを見せ、私もたびたび誘いを受け賛同するところはありましたが、実際に参加することはありませんでした。解放運動のみならず反差別運動に私が直接関われない大きな要因に、よく知る先輩が暴行被害を受けた「八鹿高校事件」が精神的な澱になっているからです。

このように、「反差別」運動内部で起きた、「八鹿高校事件」や本件リンチ事件など、暴力によって批判者を封じ込めようとすることは、逆に〈差別に反対する〉という崇高な営みを台無しにするもので、運動からの理解者の離反を招くものです。実際に、「八鹿高校事件」や「糾弾闘争」によって部落解放運動は社会の理解を得られず後退しました。八鹿高校でも、部落研(共産党系)も解放研(解放同盟系)も数年でなくなったといいます。

また、本件リンチ事件が私たちの真相究明(具体的には5冊の出版物など)によって〈真実〉が照らし出され、李信恵らによる「反差別」運動、「カウンター」活動から少なからずの人たちが離れたとも聞いています。

ですから李信恵には、彼女がリンチ被害者・M君に出した「謝罪文」(別掲。1~2ページのみを掲載。のちに撤回)に立ち返り真摯に反省していただきたいと心から願っています。いったんはリンチの存在を認め「謝罪」し活動自粛を約束しつつも、これを撤回するということは、いやしくも「反差別」や「人権」を叫ぶ者のやることではありません。李信恵さん、あなたの態度次第で、この国の「反差別」運動、いや社会運動全般の将来が決まると言っても過言ではありません。きちんとみずからの所業を見据え、胸に手を当て反省してください。

リンチ事件後、李信恵が被害者M君に出した「謝罪文」(2ページのみ掲載。全7ページ)

◆李信恵にリンチ事件への真摯な反省と、リンチ被害者M君への心からの謝罪を求めます

M君の写真を何者かが加工し拡散させた画像。“悪意”を超えて〈殺意〉さえ感じる。これこそ〈ヘイト行為〉ではないのか!?

私たちはこれまで、上記したようなことを対外的にあからさまに述べて来ませんでした。しかし李信恵が反省もなく、実際に李信恵らが関与し起きたリンチ事件(李信恵らは「リンチ」という言葉が嫌いなようですので「集団暴行」事件と言っても構いません)の存在を無かったことにしようとしていることを憂慮しています。間違いを犯したことを率直に認め、真摯に反省し、それを教訓化して今後の運動に関わっていくことを強く望みます。

そうでないと、かつての部落解放同盟の「八鹿高校事件」や「糾弾闘争」により「同和は怖い」というイメージを社会に植え付け、反差別運動(部落解放運動)の真の精神が誤解され、逆にその後退をもたらしたように、李信恵らの無反省な姿勢により、もうひとつの反差別運動(在日差別に反対し権利を獲得する運動)の後退をもたらすことを懸念します。李信恵らの心無い言動と暴力・暴言により、「在日は怖い」というイメージを植え付け(残念ながら、くだんのリンチ事件を見て実際にこう言った方もいました)、多くの在日コリアンの方々が迷惑を蒙っていることを自覚していただきたいものです。こうしたことに無自覚ならば、反差別運動や社会運動などから退くべきでしょう。

◆おわりに

前回も申し述べましたように、このたび、広島原爆被爆二世の田所敏夫さんが、体内被曝の影響と推認されるご自身の体調不良にもかかわらず、気力、体力を振り絞り陳述書を書き、尋問に出廷することを承諾され、また被爆二世ということを公にカミングアウトされたことに触発され、〈差別〉、そして〈差別と暴力〉について思うところをコンパクトに申し述べさせていただきました。

本件訴訟では、勝訴/敗訴ということが本質的な問題ではなく、李信恵が、みずから関与した大学院生リンチ事件について真摯な反省もなく、開き直りのような対抗訴訟を起こしたことを強く批判し、改めて真摯な反省を求めるものです。

私は歳と共に丸くなっていると言われますが(喜んでいいのか悪いのか、「好々爺」と言う人もいます)、李信恵に対しては声高に糾弾するのではなく、仏心から彼女が「反差別」運動のリーダーとして真に悔い改めることを願っています。

長い私の人生の中で、なかんずく破邪顕正の精神を持った出版人として、何がいいことで何が悪いことかの判断ぐらいはできます。そうであれば、李信恵が真摯に反省し公にも謝罪がなされるのならば、万が一私方が敗訴しても、本件リンチ事件(被害者支援と真相究明)やリンチ被害者M君訴訟、本件訴訟(前記した、この訴訟の元々の訴訟含む)に一所懸命に関わってきた目的の一つが達成されたといえるでしょう。

皆様方も血の通った人間ならば、私たちがこれまで申し述べてきた内容をどうか理解され、あれこれ屁理屈を付けた李信恵らの三百代言を歴史の屑カゴに投げ入れられるものと信じてやみません。

最後にもう一言述べさせてください。──

田所敏夫さんにしても私にしても、このリンチ事件を、あれこれ“解釈”しようとするものではなく、この4年余り、〈生きた現実〉から逃げ回る人たち(メディア人、国会議員、学者、弁護士、知識人、活動家ら)とはきっぱり距離を置き、ある時は義絶し、他人事ではなく自分自身の問題として関わり取材・調査に汗を流し事実を積み上げ〈真実〉に迫ってきたつもりです。出版人生の最終ステージでやるべきことだったかどうかは後々誰かが語ってくれたら、これでよしとしますが、目の前にリンチに遭った青年が助けを求めながら相手にされなかったり村八分にされ困っているのを見て黙ってはいられませんでした。果たしてあなたが、こういう場面に直面したらどうしますか? しかとお考えください。

釘バットで威嚇する有田芳生参議院議員。こんな徒輩が「人権」「反差別」を騙る国会議員とは!
取材班の直撃取材に逃げ回る岸政彦教授(李信恵さんの裁判を支援する会事務局長)

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「はだしのゲン」には存在し、テレビや新聞の戦争報道には欠けている重要な視点

今年の夏は終戦75年ということで、テレビや新聞では、戦争の悲惨な経験を伝えたり、平和の大切さを訴えたりする報道が例年以上に多かった。だが、それらの報道は型どおりのものばかりで、重要な視点が欠けている感が否めなかった。

それは、「平和な世の中で平和を訴えることは簡単だが、戦時中に平和を訴えることは難しい」という視点だ。誰もが知ってはいるが、つい忘れがちな視点である。

一方、筆者がこの時期に読み返し、改めて感銘を受けたのが、原爆漫画の代名詞「はだしのゲン」だ。自分自身も被爆者である広島出身の漫画家・中沢啓治が実体験をもとに描いたこの作品には、型どおりの戦争報道に欠けている上記の重要な視点が存在するからだ。

◆戦時中の自分自身のスタンスを語らない「歴史の証人」たち

たとえば、テレビや新聞が毎年夏に繰り広げる戦争報道では、広島もしくは長崎の被爆者が「歴史の証人」として登場し、原爆や戦争の悲惨さを語るのが恒例だ。今年も例年通り、そういう報道が散見された。こういう報道も必要ではあるだろうが、残念なのは、被爆者たちが戦時中、自分自身が戦争に対して、どのようなスタンスでいたのかということを語らないことだ。

その点、「はだしのゲン」はそういうセンシティブな部分から目を背けない。この作品では、原爆の被害に遭った広島の町でも、戦時中は市民たちが「鬼畜米英」と叫び、バンザイをしながら若者たちを戦場に送り出していたことや、戦争に反対する者たちを「非国民」と呼んで蔑み、みんなで虐めていたことなどが遠慮なく描かれている。

テレビや新聞に出てくる被爆者たちが仮に当時、そのようなことをしていたとしても、それはもちろん責められない。当時の日本で生きていれば、そういうことをするのが普通だし、むしろそういうことをせずに生きるのは困難だったはずだからだ。しかし、「歴史の証人」に被害を語らせるだけの報道では、日本に再び戦争をさせないための教訓としては乏しい。

◆必ずしも戦争に反対せず、朝鮮人差別もしていたゲン

「はだしのゲン」がさらに秀逸なのは、他ならぬ主人公の少年・中岡元やその兄たちも戦時中、必ずしも戦争に反対していなかったように描かれていることだ。

反戦主義者の父親に反発していた元。中沢啓治作「はだしのゲン」(汐文社)第1巻28ページより

元の父親は反戦主義者だったため、元たちの家族は広島の市民たちから「非国民」扱いされ、凄まじい差別やいじめを受けていた。そんな中、元も自分たちの置かれた境遇に耐え切れず、父親に対し、「戦争にいって たくさん敵を殺して 勲章もらってくれよ」「戦争に反対する とうちゃんはきらいだ」などと泣きながら、だだをこねたりする。さらに元の兄・浩二は、家族が非国民扱いされないようにするために海軍に志願したりするのである。

父親が反戦主義者のため、元の家族は広島の人たちから差別されていた。中沢啓治作「はだしのゲン」(汐文社)第1巻50ページより

さらに元は他の少年たちから非国民扱いされ、差別される一方で、自分自身も朝鮮人のことを差別する言動を見せている。たとえば、顔見知りの朝鮮人男性と一緒にいるところを他の少年たちにからかわれ、その朝鮮人男性に対し、一緒にいたくないということを直接的に伝えたりするのである。

元が朝鮮人を差別する場面もあった。中沢啓治作「はだしのゲン」(汐文社)第1巻60ページより

この漫画では、元は強さと明るさ、ユーモアを兼ね備え、誰に対しても優しく、分け隔てなく接する少年として描かれている。しかし一方で、このような過ちを犯したりもしているのである。作者自身の実体験に基づいているからだろうが、こういうシーンを読むと、「平和な世の中で平和を訴えることは簡単だが、戦時中に平和を訴えることは難しい」ということを再認識させられる。この1点において、「はだしのゲン」はテレビや新聞の型どおりの戦争報道とは一線を画していると思うし、後世に残すべき作品だと思う。

▼片岡健(かたおか けん)

全国各地で新旧様々な事件を取材している。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』【分冊版】第11話・筒井郷太編(画・塚原洋一/笠倉出版社)が配信中。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書17】あらためて〈差別〉について考える──鹿砦社特別取材班キャップで広島原爆被爆二世の田所敏夫さんのカミングアウトに触発されて 鹿砦社代表 松岡利康

対李信恵第2訴訟が大詰めに近づいています。ここにおいて当方は田所敏夫さん(ペンネーム。鹿砦社社員ではなく、下記に述べるようなことから畏敬の念を持って「さん」付けとしました)と私が陳述書を提出しました。

私は2018年9月5日、19年1月7日、2020年5月14日に続いて、去る8月20日、この日は裁判所が長い“休業”明けで久しぶりに期日が入り、4度目の陳述書を提出しました。

この陳述書に於いて私は、田所さんの陳述書と、8月6日付けの本通信での広島原爆被爆二世であるとのみずからの出自を公にカミングアウトされたことに触発され、この訴訟にも密接にリンクする、〈差別〉、そして〈差別と暴力〉について、私の体験や身近の出来事を中心に思う所を申し述べてみました。

そもそもこの対李信恵第2訴訟は、「鹿砦社はクソ」「クソ鹿砦社」と誹謗中傷した訴訟の終盤になって突如「反訴」として提訴(賠償金550万円と出版差止め等)してきたものですが、裁判所にも考えがあってのことで、「反訴」とはならず「別訴」として独立した訴訟として係争中のものです。

尚、元々の訴訟は李信恵の不法行為が認定され〈鹿砦社勝訴─李信恵敗訴〉が確定しています。

以下は、この「第4陳述書」を下敷きにして、訴訟用語を排し一般向けに書き直したものです。2回に分けて分載します。

◆「反差別」は李信恵らの“専売特許”ではありません

そもそも李信恵らが殊更に「反差別」を叫ぶことで、一般的には「反差別」が李信恵らの“専売特許”のように広まっています。特に朝日新聞はじめ大手メディアが李信恵を、リンチ事件に関わったことを隠し、事あるごとに持ち上げることで、李信恵がリンチ事件に関わったことが隠蔽され、闇に葬られつつあることは遺憾なことです。

確かに私たちは実際に反差別の運動や組織に関わっているわけではありません。しかし、だからといって私たちが〈差別〉について考えていないということではありません。私たちなりに考え、悩み、差別解消へみずからの身の回りから努めてきたつもりです。世の中、ほとんどの人々が“もの言わぬ大衆”で、“もの言わぬ大衆”が〈差別〉について考えていないということではありません。

また、私たちが李信恵らの「反差別」運動を批判することをもって、私たちが〈差別〉について考えていないように意図的に喧伝する者がいますが、とんでもありません。私たちはあくまでも李信恵らの“歪曲された反差別運動”を批判しているのであり、だからといって、反差別運動全般を否定しているわけでも“反差別に反対”しているわけでもありません。これまでは「あらゆる差別に反対する」とファジーに述べてきましたが、このたび勇気を持ってみずからの差別体験をカミングアウトした田所敏夫さんらの存在を明らかにすることで、私たちの差別に対するスタンス、これを元に李信恵の「反差別」の言動に対する違和感を示します。

◆広島原爆被爆二世の田所敏夫さんの想いと怒り

今回、田所敏夫さんが、陳述書を書いてくれ、また尋問に出廷することを承諾されました。

彼の〈差別〉に対する想いと怒り、感情と認識は、彼が広島原爆被爆二世という出自に基づいています。私たちは内々に聞いていて、私たちの〈差別〉に対する考え方に大きく影響しています。つい最近、彼は李信恵の提訴の一部になっている「デジタル鹿砦社通信」に於いて、2020年8月6日、広島原爆投下75年の日に公にカミングアウトしました(同通信参照。この文をはじめ田所さんは常々ペンネームの「田所敏夫」を使っていますが、これは、実生活での不利益を最大限防止するためと、大学職員時代の上司〔故人〕の、権威に屈しない精神と遺志を継承するという決意から来ています)。

広島原爆被爆者や、その二世、三世は、戦後75年間ずっと〈差別〉に晒されてきました。「マイノリティ」という、李信恵らが頻繁に使う言葉を借りれば、原爆被爆者や、その二世、三世は日本の人口からすれば「マイノリティ」です。李信恵ら在日コリアンよりも圧倒的に少数です。

田所さんは、多くの病気を罹患され、最近ではがんを罹患されています。そうした症状は、原爆被爆二世(からくる体内被曝)から来ることは容易に推認されることで、容貌にも表われています(田所さんは白内障や顔面皮膚疾患も患っており、よほど親しい間柄でない限り写真の撮影を断っていました)。

こうしたことを顧みず、李信恵を支持し連携する野間易通という者が、田所さんの本名や職歴(大学職員)などと共に顔写真を意気揚々とネットに晒しましたが、田所さん本人や私たちの怒りは相当なものでした。

野間は、李信恵同様「反差別」運動界隈のリーダー的存在ですが、彼には田所さんの人権への配慮はなかったのでしょうか? また、この際に野間と親しい李信恵や彼女の代理人弁護士(神原元、上瀧浩子弁護士)らは叱責し止めさせたのでしょうか? 当時は田所さんが広島原爆被爆二世ということをカミングアウトしないのをいいことに、やんややんやと囃し立てていたんじゃないですか?

こうしたことからしても、李信恵らが語る「反差別」や「人権」が贋物だということが窺えます。「反差別」や「人権」に名を借りたまがい物です。偽物のメッキはいつかは剥がれます。

◆田所さんらから多くを学びました

被差別者である田所さんとの付き合いで、私は多くのことを学び、くだんのリンチ事件に対する認識や関わり方に於いても参考になることも多々ありました。李信恵の言動に対する受け止め方も、彼の違和感や意見に基づいています。

田所さんは、本件リンチ事件の調査・取材に中心になって奔走してくれましたが、彼の動きは私の期待以上でした。それは、生を受けて以来〈差別〉を身を持って体感し、身に付いた〈真に差別に反対する〉という意識が、李信恵らの“歪曲された反差別運動”に対する怒りとなって、これが基になっているのではないか、と私は思っています。

田所さんに加え、私たちの周囲や、取材に協力してくれた方々には、多くの在日二世、三世の方々や被差別部落出身の方々、さらに戦後から差別を受けてきた沖縄の方々や、2011年東日本大震災での原発事故以降避難先で差別を受けている福島の方々がおられます。ほとんどの方が生活に追われ日常的に何らかの差別を受け、しかし多くは実際の運動に関わっているわけではありません。前述したように、いわゆる“もの言わぬ大衆”です。

私たちは、田所さんはじめ、上記の心ある方々に多くの意見やサジェッションをいただき、これらは5冊の出版物に反映させています。

「反差別」は決して李信恵らの“専売特許”ではありません。なにか「自分らは差別されている」と殊更強調し、だからといって、過剰に批判者に対し汚い言葉で個人攻撃したり暴力を振るっていいわけではありません。

この第2訴訟に先立つ元の訴訟では、鹿砦社に対する暴言や誹謗中傷で裁判所は李信恵の不法行為を認定しています。また、リンチ関連本弾5弾『真実と暴力の隠蔽』巻頭グラビア「李信恵という人格の不可思議」には李信恵の暴言の数々(のほんの一部)が掲載されていて驚かされます。さらには、リンチの最中、被害者M君が痛めつけられているのを見ても、李信恵は、“名台詞”として有名になった「まぁ殺されるんやったら店の中入ったらいいんちゃう?」という非人間的で冷酷な言葉を言い放つ──李信恵の非人間性を表わしています。本件リンチ事件を調べていって本当に驚きました。現代の「反差別」運動は、ここまで堕落しているのか、言葉がありませんでした。

李信恵の暴言の一部。これを見て、この人が反差別運動のリーダーにふさわしいと誰が思うのか!?

後述(次回に掲載)する「八鹿高校事件」や「糾弾闘争」から変わっていないじゃないか、と率直に感じました。

そのように、本件リンチ事件についての当該出版物や「デジタル鹿砦社通信」の記事に於いて、バックには、取材に協力してくれた多くの方々という“もの言わぬ大衆”の“声なき声”を取材者が拾い上げ、それが深く反映されているものと思っています。

本来なら、運動家、特にこのリーダー格の人間こそ、“もの言わぬ大衆”の“声なき声”を汲み取り、それを代弁しなくてはいけないわけですが、果たして李信恵にその姿勢があるかどうか、ここ4年余りのリンチ事件に対する取材や被害者支援の活動から大いに疑問を感じています。

リンチ直後の被害者M君の顔写真。この写真を見て平静でいられる人はいるのか?
5軒の飲食店を飲み歩き「日本酒に換算して一升近く飲んだ」と告白した李信恵のツイート。泥酔してリンチがあったのを知らなかったと弁解したつもりだが、「語るに落ちる」とはこのことで、5軒の飲食店を飲み歩き「日本酒に換算して一升近く飲んだ」ことを自己暴露

日頃から夜な夜な飲み遊び、くだんのリンチ事件の日も前日夕方から5軒飲み歩き「日本酒にして一升」を飲んだと豪語し泥酔、日付が変わった深夜、その勢いで集団でリンチに及ぶような者にリーダーとしての品格を見て取ることなどできるでしょうか。いやしくも「反差別」や「人権」運動のリーダーたる者は、日頃からみずからを律し、飲み遊ぶ時間を自己研鑽に当てるべきでしょう。そうではないですか? 私の言っていることは間違っているでしょうか?

私はこれまで、田所さんのことは知っていても、本人がカミングアウトしていないことで内に秘めてきました。このたび期することがあって公にカミングアウトされたことに強く衝撃を受けました。

次回に掲載する〈差別と暴力〉についても、これまで部分的に述べてはいても、まだまだ不十分さが否めませんでした。

私にしても田所さんにしても、〈差別〉や〈差別と暴力〉の問題、つまりそれと密接にリンクするM君に対するリンチ事件についても、薄っぺらい“コメント”や“評論”に終始してこなかったことだけは自信があります。被差別者である田所さんは勿論、私も田所さんらに学び、徹底して取材・調査し、私の能力の限り本質的に迫ろうと努めてきたつもりです。リンチ事件は私自身の問題として関わってきたことだけは申し上げることができます。(本文中、田所さんを除き敬称なし)
                     

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

伊藤詩織氏がセカンドレイパーを提訴 「ツイート」の「いいね」も民訴(損害賠償)の要件になるか?

ジャーナリストの伊藤詩織氏が、予告どおりセカンドレイパーを提訴した。元TBS社員の山口敬之氏から性的暴行を受けた(2020年1月、民訴で認定)伊藤氏は、2017年に実名を明らかにした後、ネット上で事実に基づかない誹謗中傷を受けていたのだ。


◎[参考動画]伊藤詩織さん 自民議員を提訴 中傷ツイッターに「いいね」

いわゆるセカンドレイプについて、伊藤氏は以下のように宣言している。

「民事でのピリオドが打てましたら、次は(セカンドレイプへの)法的措置を考えています。というのは、こういう措置を行わなければ、同じことがどんどん続いてしまう。一番心苦しいのは、私に対するコメントを見て、他の(性被害)サバイバーたちが『自分も話したら同じように攻撃されるんじゃないか』と思ってしまう。そういうネガティブな声をウェブに残してしまうことが、いろんな人を沈黙させてしまう理由になるので、法的措置を取りたいと思います」(2017年5月29日、司法記者クラブの会見で)

予告どおり、伊藤詩織氏は法的措置に出たということになる。

今回伊藤氏が提訴したのは、自民党の杉田水脈衆議院議員(220万円の損害賠償)および元東大特任准教授(民族差別の書き込みで懲戒解雇)の大沢昇平氏(110万円)である。

これに先立つ6月、やはりネット上でイラストなどで誹謗中傷したとして、伊藤氏は漫画家のはすみとしこ氏を提訴している(550万円の損害賠償)。


◎[参考動画]伊藤詩織さんが漫画家はすみとしこさんらを提訴 ツイッターのイラスト巡り(毎日新聞2020年6月8日公開)

 

その誹謗中傷の中身を、まずは検証しておこう。

はすみとしこ氏の場合は、伊藤氏に似た「山ロ(ヤマロ)沙織」を主人公にして、大物記者と寝る「枕営業」をしたと描写したり、伊藤氏の著書『BLACK BOX』に似た名前の『CLAP BOX』を「デッチあげ」だとしていたものだ。上手なイラストなので、百聞は一見に如かず。

「顔にこだわった!」というとおり、伊藤詩織氏によく似ている。しかし、山口敬之氏はあまり似ていない(山口氏の頭髪は薄く、あごひげがトレードマークだ)。

杉田水脈議員の場合はBBCの番組で、伊藤さんが「男性の前で記憶がなくなるまでお酒を飲んだ」ことが「女として落ち度がある」などと発言(のちに一般論と釈明)。

ツイッターでは、以下のように批判していた。

「伊藤詩織氏の事件が、それらの理不尽な、被害者に全く落ち度がない強姦事件と同列に並べられていることに女性として怒りを感じます」

「もし私が、『仕事が欲しいという目的で妻子ある男性と2人で食事にいき、大酒を飲んで意識をなくし、介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性』の母親だったなら、叱り飛ばします」

「『そんな女性に育てた覚えはない。恥ずかしい。情けない。もっと自分を大事にしなさい。』と」

大沢昇平氏は、伊藤詩織氏が漫画家はすみとしこ氏のツイートをリツイートした2人を相手に損害賠償などを請求する訴訟を東京地裁に起こした件(6月)について、ツイッターで反応したものだ。

「伊藤詩織がはすみとしこを訴えるって話だけど、どういうロジックで訴えるんだ? 別に伊藤詩織を名指しで誹謗中傷してるわけじゃないから、名誉棄損には当たらないでしょ」

「伊藤詩織の何がダメダメかって、刑事裁判でレイプが認められなかったにもかかわらず、その後の民事裁判の結果をレイプを関連付けている点。今回もやってることの筋が通っておらず全く支持できない」などと、批判的な投稿をしている。

いまのところ、はすみとしこ氏の反応は、「ハッキリ言っておく。100対0で負けたって、私は謝罪もしないし、金も払わない。私には財産が無い。車や土地屋敷、着物類だって親名義、PCは仕事で使うので差し押さえ不可。私の給料は月5万以下で、社長は差し押さえ拒否すると言ってる。取れるモンなんてなーんも無い!ちょっとは調べてから訴えな!」と、徹底抗戦の構えだ。

いっぽう、大澤昌平氏は、「伊藤詩織とかいう活動家が突然俺を訴えると言い出した。正直全く意味が分からない。『いいね』の何が良くないのか知らんが、もし悪い判例ができてしまえば左翼の言論弾圧は益々加速し、日本から言論の自由が奪われる。俺は断固抗戦する。ここで裁判費用の寄付を募りたい。志ある者の支援を求む!」と、こちらも意気軒高である。

◆「いいね」は構成要件になるのか?

大澤氏が指摘しているとおり、提訴の要件がみずから書いた「ツイート」ではなく他人のツイートへの「いいね」だけなのであれば、かなり微妙かつ画期的な司法判断が問われることになる。

訴状によると、杉田氏は国会議員であること。当時11万人のフォロワーを持ち、言論に影響力を持つ杉田氏が伊藤氏を中傷するコメントに繰り返し「いいね」を押したことは「限度を超えた名誉侵害にあたる」と主張しているという。

本来の総理官邸御用ライターによる「レイプ事件」をこえて、新たな争点が出てきたと考えるべきであろう。


◎[参考動画]性暴力被害者へ「自分の真実、信じて」 伊藤詩織氏会見(朝日新聞社 2019/12/18)

と同時に本来の目的、すなわちレイプ犯罪の徹底した糾明、および権力犯罪としてのレイプ犯の不逮捕(不起訴ではない)を忘れてはならない。

2020年1月9日の本欄で、わたしは以下のように指摘していた。

「被害者女性が告発・発言できない理由はほかならぬ日本社会にある。男女平等度ランキングで、日本は121位である。120位がアラブ首長国連邦、122位がクウェート、中国が106位、韓国は108位である。先進国では、ドイツが10位、フランス15位、イギリス21位、アメリカは53位だ。※出典はWEF The Global Gender Gap Report」

「こうした日本社会の後進性を突き破るためにも、伊藤詩織さんには頑張って欲しいと思う。外国人記者クラブでの会見で、詩織さんはこれまでセカンドレイプ的にバッシングしてきた言論人に対して、法的な態度を示すと明らかにした。女性が声を上げられない社会の変革のために、それもやむを得ない措置と言えよう、ひきつづき、この事件を追っていきたい。」

そして、われわれがなすべきことは、もうひとつある。わたしは同じ2020年1月9日の本欄で、

「レイプされた若い女性が素顔をさらして、一国の総理大臣につながる御用ジャーナリストを告発した。しかも被害者は美人、というだけでも一時的にマスコミを賑わせるだけの価値がある。とはいえ、眉をひそめたくなるレイプ事件である。加害者被告のいかにも胡散臭いひげ面を見るだけでも、気分が良いものではない。したがって忘れ去られがちな事件だといえよう。」

「ぎゃくにいえば何度でもこのテーマはくり返し報道され、権力と結託した加害者の傲岸なありようが指弾されなければならない。今回の判決を受けてなお、山口敬之は『詩織さんは虚言壁がある』『ウソをついている』と開き直っているのだから。」

「あえてくり返さなければならない理由は、刑事事件としての不成立の謎のゆえである。いったんこの件で逮捕状が出ていたにもかかわらず、総理の番犬ともいわれる中村格(なかむらいたる)警視庁刑事部長(現警察庁官房長)の鶴の一声で、山口被告の逮捕が見送られたのである。」と、事件の本質を指摘してきた。

2019年7月19日の本欄にも、「第二次安倍政権の誕生の功労者である山口氏を、官邸は指揮権を発動してまで擁護せざるを得なかったのが事件の真相なのだ。」としている。忘れてはならない事件だとの思いをつよくする。

官邸の人脈で、法律外の扱い(不逮捕)をした「罪」こそ問い直され、あたかも指揮権発動のごとく司法がゆがめられたことを検証しなければならないのだ。


◎[参考動画]山口敬之氏「伊藤さんはうその主張をしている」伊藤さん勝訴を受け会見(毎日新聞2019年12月18日公開)


◎[参考動画]囲み取材で感情あらわ【山口敬之氏】元TBSワシントン支局長(日刊ゲンダイ2019年12月18日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】 新型コロナ 安倍「無策」の理由
『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

正月明けから7ヶ月ぶりの再開! ジャパンキックボクシング協会興行!

昨年、団体分裂によって設立されたジャパンキックボクシング協会。代表は長江国政氏でしたが、満1周年となった5月1日付けで小泉猛氏に交代されています。

NAGAE ISMと銘打たれた今回の興行。2年ほど前から神経性の病で歩行困難になり、闘病を続ける長江国政氏に勝利の報告を届けなければならない治政館ジム勢の戦い。そして当協会の今後の浮上を懸けた戦いでもある。

さらにコロナウィルス蔓延で、7月からプロボクシングの興行も無観客で徐々に再開されて以降、キックボクシングでも無観客や客席を半分以下に減らしての開催が始まりました。

正月明けから7ヶ月ぶりとなった当協会興行。ソーシャルディスタンスを保っての興行で、なかなか厳しい状況が続いているキックボクシング55年目の夏です。

選手皆が復帰戦のような立場の中、閉鎖された藤本ジムからRIKIXへ移籍したHIROYUKIは6月、他興行に出場しており、勘の鈍りは少なかったかもしれなません。

メインイベンター馬渡亮太は不完全燃焼に終わる。今後の出場で本領発揮を期待したい。

◎NAGAE ISM / 8月16日(日)後楽園ホール開場17:00 開始18:00
主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

馬渡はアグレッシブに攻めるも、今少し距離が足りない

◆第8試合 56.0kg契約 5回戦

馬渡亮太(前・JKAバンタム級C/治政館/56.0kg)
    VS
ダウサコン・モー・タッサナイ(元・ラジャダムナン系スーパーフライ級3位/タイ/55.45kg)
引分け0-0 / 主審:椎名利一
副審:仲49-49. 和田49-49. 桜井49-49

ムエタイのリズムが続く両者のパンチ、ヒジ、ヒザの時折強いヒットを見せるも相手を弱らせるに至らない。馬渡の方がパンチ蹴りの手数が多いが、首相撲の展開に移るとダウサコンがやや上手を行き、互いの決定打が無い展開が続く。日本での試合、決め手が無ければ引分けになるのが何となく読める中、ジャッジ三者とも49-49ながら、各ラウンドの三者の採点が揃わない展開が続く終了となった(4Rだけ2者ダウサコン、1者馬渡)。  

飛びヒザ蹴りを幾度か見せた馬渡、ボディに炸裂は効果有りか
距離が掴めない中での馬渡のハイキック、巧みにかわすダウサコン

◆第7試合 52.5kg契約 5回戦

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/52.4kg)
    VS
HIROYUKI(前・日本バンタム級チャンピオン/RIKIX/52.5kg)
勝者:HIROYUKI / KO 3R 2:11 / 主審:仲俊光

両者は5年前に対戦し、HIROYUKIが判定勝利。若さとここ最近の勢いでHIROYUKIがスピードで優り調子を上げていく。石川の組みついてのヒザ蹴りを許さない距離から右フックで第1ラウンドにノックダウンを奪い、第3ラウンドにも蹴りからのパンチがヒットしてノックダウンに繋げ、石川は何とか立ち上がるも足下がおぼつかず、レフェリーがテンカウントを数え、HIROYUKIが余裕のノックアウト勝利を飾った。

HIROYUKIの右ハイキックが石川直樹の頬にヒット
HIROYUKIの攻めが冴える。石川直樹はリズムを掴めない
蹴りからパンチをヒットさせ、ノックアウトに繋げたHIROYUKI

◆第6試合 67.0kg契約3回戦

JKAウェルター級チャンピオン.モトヤスック(治政館/66.7kg)
    VS
ジャックチャイ・ノーナクシンジム(元・ラジャダムナン系バンタム級6位/タイ/66.1kg)
勝者:ジャックチャイ / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-30. 和田28-30. 仲29-30

蹴りから首相撲の距離に移るとジャックチャイが主導権支配。モトヤスックのパンチと蹴りは連打が少なく、接近した瞬間にモトヤスックの額にヒジ打ちをヒットさせるジャックチャイ。元ムエタイランカーのテクニックにもう一歩及ばなかったモトヤスック。

ジャックチャイが巧みに自分の距離を保った

◆第5試合 57.5kg契約3回戦

JKAフェザー級1位.瀧澤博人(ビクトリー/57.5kg)
    VS
NJKFフェザー級1位.小田武司(拳之会/57.5kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:33 / 主審:椎名利一

左ジャブで小田の出方をコントロールする瀧澤。ミドルキック、ヒジ打ちで次第に瀧澤ペースが勢いづいていく。第2ラウンド、瀧澤はヒジ打ちで小田の額をカットして、レフェリーが様子を見て止め、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

ベテラン瀧澤博人の右ハイキックで若い小田武司を攻める

◆第4試合 67.25kg契約3回戦

JKAウェルター級1位.政斗(治政館/67.25kg)
    VS
NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/67.0kg)
勝者:政斗 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:椎名30-28. 桜井30-29. 仲30-28

政斗が打ち合いの中、右ヒジ打ちで稲葉の額をヒットさせ、勢い増していき政斗が判定勝利。

稲葉裕哉と政斗のパンチの交錯

◆第3試合 女子ピン級3回戦(2分制)

女子(ミネルヴァ)ピン級1位.祥子JSK(治政館/45.1kg)
    VS
同級3位.TOMOMI(TEAM FOREST/45.1kg)
勝者:TOMOMI / 判定0-3 (28-29. 28-30. 29-30)

◆第2試合 50.0kg契約3回戦

空明(治政館/49.9kg)vs谷津晴之(新興ムエタイ49.7kg)
勝者:谷津晴之 / 判定0-3 (28-30. 28-29. 29-30)

◆第1試合 56.0kg契約3回戦

義由亜JSK(治政館/55.6kg)vs姉川良(REON Fighting Sports/55.4kg)
勝者:義由亜 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-27)

《取材戦記》

半年ぶりに後楽園ホールに訪れると、当日計量の午前10時より外で報道陣も含めたコロナ抗体検査が行われ、開場時には靴裏の消毒、センサーによる体温測定が行われていました。リングサイドカメラマンはマスクをした上、フェイスシールドを義務付けられ、ファインダーが覗き難かった。フェイスシールドがカメラと擦れあって傷付くとより靄が掛かって見え難くなったが、これは扱い方が悪かったのかもしれない。

注意喚起の上ではあるが、観衆が声を出さないのは異様な光景でした。客席数を半分に減らした上に空席も目立ったので、かなり静かだった。笑いの起こる野次が懐かしい。

団体や主催者、会場によって規制の違いや、今後のコロナ蔓延拡大によっては状況が違ってくるでしょう。選手の戦いの場に、これ以上の中止自粛が続かないことを祈りたいものです。

1席ずつ空けてのソーシャルディスタンス、満席になる日はいつか

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由
一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

コロナ防疫の失政隠しに「病因引退」に逃げ込むのか?  体調悪化を秘匿しない安倍総理の不思議

◆再検査というからには、重篤個所があるのでは?

安倍総理の7時間半に及び検診が、永田町をゆるがせた。憶測を呼んでいるのは、検査の事実を公然とテレビに晒したことである。

総理官邸は「休み明けの体調管理に万全を期すため夏期休暇を利用しての日帰り検診」だと発表しているが、安倍総理は約2カ月前の6月13日にも同院を訪れ、このときは6時間にあわって人間ドックを受診。今回の検診について病院側は「6月の追加検査」と説明している。しかし永田町では「やはり体調が悪化しており、それで重篤個所を再検査したのではないか」という憶測が飛び交っている。

それというのも、8月4日発売の「FLASH」が、「安倍晋三首相 永田町を奔る“7月6日吐血”情報」というタイトルで体調問題を報道しているからだ。

8月4日発売の「FLASH」誌面

同誌は7月6日の首相動静に、小池百合子都知事と面談を終えた11時14分から16時34分、今井尚哉首相補佐官らが執務室に入るまでの約5時間強。総理に空白の時間があったとして、この間に吐血したのではないかという情報が永田町に流れていると解説している。安倍首相が抱えている持病の潰瘍性大腸炎に合併する胃や十二指腸の病変、あるいは治療のために服用しているとされるステロイド系の薬剤による影響を指摘していた。

吐血という以上、上部消化器官系(胃・十二指腸)からのもので、持病の潰瘍性大腸炎とは考えにくい。下部消化器系で起きた潰瘍や癌細胞は、大腸から肝臓や胆のう、胃と十二指腸、すい臓、最後は肺に転移するとされている。そこで上記の「瘍性大腸炎に合併する胃や十二指腸の病変」が推測されたわけである。

じつは2015年8月にも「週刊文春」が「安倍首相の『吐血』証言の衝撃」という記事を掲載したことがある。ホテルの客室で会食中に安倍首相が吐血し、今井尚哉秘書官が慌てて慶応大病院の医師を呼び出し、診察を受けたという記事を掲載したのだ。このとき安倍事務所は「週刊文春」発売の翌日に、文藝春秋に記事の撤回と訂正を求める抗議文書を送っている。

しかるに、今回はそのような抗議も打消しの言動もない。

総理と長時間にわたって面談(国会対策と後継者問題か)した麻生太郎副総理は、例によって「あなた、147日間も連続勤務したことある? ないよね。だったらわからないだろうが、それだけ長く勤務をつづければ、体調もおかしくなるということだ」などと逆質問し、菅義偉も例によって「わたしは連日お会いしているが、淡々と職務に専念をしている。まったく問題ないと思っている」と木で鼻をくくるような返答であった。

だがしかし、車列をつらねて慶応病院を訪れ、あたかも国民にアピールするような行動に出たのはなぜか?

◆なぜ秘匿しなかったのか? 政治家の病気は命取りの「常識」

ふつうなら、ひそかに官邸を脱出し、極秘に診療をうける方法もあったはずだ。たとえば国家緊急事態(戦争や内乱時)には自宅からオートバイ(タンデム)で官邸に、渋滞中の首都高を急行する「総理緊急送迎」も実行に移されるはずだ(複数回の演習済み)。その場合は、複数のダミーを走らせてテロの標的にならないようにするという。

外に向かっては自衛隊の総司令官であり、内に向かっては警察の治安出動を命令・指示しうる行政の長であればこそ、国家権力の中心軸としての警護・隠密化がもとめられるのだ。

それは通常、病気においても変わるところがないはずだ。一般に政治家は病気の噂を嫌い、かりに病気が事実であった場合も隠蔽するものである。

かつて池田隼人総理は、在職中に癌に罹患した。池田派の側近議員らが癌であることをひた隠し通した上で、任期を残して退陣する演出を行ったのである。すなわち、東京オリンピック閉会式翌日の10月25日に退陣を表明し、自民党11月9日の議員総会にて佐藤栄作を後継総裁として指名したのだ。後継総裁選びを、退陣予定の総裁の指名で行なった、戦前・戦後を通じて最初のケースであった。池田は翌1965年8月13日に死去した。享年65。

◆予定調和の禅譲劇を準備している

「今後のことは検査結果次第でしょう。何もなければ、少し休息を取って英気を養い、仕事を続けられる。一方、これ以上は体調が持たない、となれば、今月24日に在職日数が単独で歴代最長となるのを待っての退陣もある。その場合は麻生財務相が後継ということで、15日に2人が私邸で会った際に話し合ったのではないかとみられている。しかし、総裁選になれば、解散総選挙を見据えて世論の人気の高い石破元幹事長が勝つ可能性もある。安倍首相は、それだけは絶対に阻止したいのでしょうが……」(日刊ゲンダイ、8月19日)

まさに、この推測が的を得ているのではないか。

第一次政権の二の舞を踏みたくない。みじめな退陣劇だけは避けたいという、予定調和の禅譲劇を準備しているのではないだろうか。

2007年7月29日の参院選で自公過半数割れの大惨敗を喫し、党内から退陣要求が出るも、安倍総理はこれを拒否した。8月27日に内閣改造し、9月10日に臨時国会で所信表明をしたものの、代表質問の予定だった同12日に、突如として退陣を表明した。官邸の側近など事前に相談することもなく、突然の決断だったという。もうそのときは、病状の悪化で身体が動かず、政治的にも死に体だったのはいうまでもない。もう二度と、この人に政界復帰の目はないとまで言われたものだ。

◆危機管理に疲れ、いよいよ政権を投げ出す

今回、政権中枢(麻生・菅)の反応はともかく、安倍総理の側近である甘利明氏までもが、公共の電波で「強制的に休ませなければならない」と、健康不安説を助長させるようなことをわざわざ強調している。長期政権の記録を達成した以上、もう辞めたいのではないか。

新型コロナ対応で感染拡大に歯止めがきかず、経済の立て直しも成果を出せない。今年4~6月のGDPが年率マイナス27.8%(速報値)になり、戦後最悪を記録したことが発表された。いまや異次元の金融緩和や大規模な財政出動で株価を支えてきたため、安倍総理に打つ手は残されていない。景気浮揚のために一縷の望みをかけてきた東京五輪は、中止になる可能性が高い。もはや投げ出したい、それが安倍総理の真意なのかもしれない。


◎[参考動画]麻生大臣「健康管理も仕事」診察受けた安倍総理に(ANN 2020/08/18)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】 新型コロナ 安倍「無策」の理由

『ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯』と記者クラブ

◆43年ぶりに蘇った記憶

『ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯』……。

何十年も前に見たテレビ番組のタイトルを突然、思い出した。中学か高校のころNHKで見た記憶があるが、いつだったろう。そのタイトルとラストシーンの衝撃をいまだに忘れない。 

気になってインターネットで調べてみると、1974年にアメリカで制作されたテレビ映画だった。NHKの記録を確認すると、1977年8月30日(土)20時(再)と表示されている。再放送なのだが、おそらく私が観たのは、この日だったろう。

◎[参考動画]Jena Louisiana

 
それにしても、40年以上も前に1回だけ観たテレビ番組のタイトルや、ラストシーンを鮮明に覚えているのは不思議だ。当時高校2年生だった私は、それほど強烈に感情を動かされたのに違いない。

1962年当時、110歳だった黒人女性がインタビューを受け回想するという構成だ。黒人の苦難の歴史と同時代に生きた個人史が交錯するような演出だったと思うのだが、さすがにテレビで一度きり観ただけなのでほとんど覚えていない。ただひとつ鮮明に覚えているのは、ラストシーンである。 

当時のアメリカは、バスなどの交通機関には白人専用席があったし、公共の場所の水飲み場も白人専用のものがあった。黒人が白人専用の水を飲む運動がおこり逮捕者も死者も出るほど緊迫していた。日本の公園にもよくある、石かコンクリートの土台の上についているミニ噴水型の水飲み場である。

ラストで主人公のジェーンは、焦点となっていた屋外の水飲み場(裁判所の庭)に水を飲みに行く。

黒人の知人たちが、裁判所敷地と路面の境界あたりでとどまり、ジェーンを見送る。彼女はひとり、杖を突きながら、ヨロヨロ、ふらふらと一歩、また一歩と水飲み場に近づいていく。

建物前では白人たちが大勢その姿を見守り、銃を手にした警察官のような人もいる。

建物の入り口に近い場所にあるWhite Onlyと書かれた水飲み場にたどり着くと、じっと見ている白人を一瞥して、ジェーンはそっと口を近づけて一口水を飲む。

そして踵を返し、来た時と同じように杖をつきながらヨロヨロとゆっくりと去っていく……。
 
いま思い出しても心を揺り動かされる場面だが、43年もの間、頭の中から完全に消え去っていた。ところが、一気に記憶がよみがえる「事件」が起きたのだ。

◆白人専用の「鹿児島県政記者クラブ(清潮会)」

その事件は、7月28日に起きた。

『カメラを止めるな! 7月28日(前編)』(塩田康一鹿児島県知事の就任記者会見をめぐる県政記者クラブ「青潮会」とフリーランスとの戦いをスマホのカメラで撮り続けたドキュメンタリー)


◎[参考動画]カメラを止めるな! 7月28日(前編)

1時間56分ころから、早回しで20~30分が見どころだ。

編集なしの生々しい動画は、記者クラブはジャーナリスト集団というよりも、権力機構・統治機構の一部であることを示している。

この動画を見た私は、日本特有の「記者クラブ制度」が、日本社会を相当ゆがめているとの思いを新たにした。

中央官庁や地方自治体の庁舎や機関には、記者クラブというものがある。新聞社や放送局の記者たちがつくった任意団体であり法人格のある団体ではない。

その記者クラブが、一等地の建物に広いオフィスを無償で開設し、行政からの情報を独占的に得て、権力者が望む内容を報道するのがメインになっている。かつては電話代やファックス代その他もただ(つまり税金使用)だった。

クラブ付きの職員もいるが、それは各クラブが所属する行政の職員であり公務員である。まったく法的根拠のない構成員がちがつくった「内規」により記者クラブは運営されている。このような記者クラブにより”大本営発表”がいま現在も続いているのだ。

法的根拠なく白人(記者クラブ)が牛耳る記者会見からは、有色人種(一般人、SNS等で報道する人、フリーランス)を排除している。言ってみればアパルトヘイト(人種隔離政策)だから、私は『ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯』を思い起こした。

鹿児島県政記者クラブ(清潮会)への参加と質問権を求めてきた中心人物が、フリーランスの有村眞由美氏である。福島原発事故後から、鹿児島県知事の記者会見参加を記者クラブに申請しはじめ、足掛け10年にもわたり記者クラブに働きかけてきた。

そのかいあって、途中で記者会見出席は許されるようになった。

◆源泉徴収票を提出すれば白人専用の水道で水を飲んでもいいetc

とはいっても「オブザーバー参加で質問は禁止」ということであった。そのほか清潮会(鹿児島県政記者クラブ)が規約なるものを作成し、記者会見参加を望む外部の人間に内規を強要してきた。
 
一つ条件をクリアすれば、次の課題を設定する、というやり方である。

・源泉徴収票を提出すれば水飲み場を使える(会見室に入室できる)。
・提出しても源泉徴収票に印鑑がなければ水飲み場使用はできない(普通、源泉徴収票には印鑑はない)
・水道の蛇口をひねって水を出すのは許可するが、飲んではいけない(会見室に入場はできるが質問は禁止)。

なお、今回の記者会見前日、質問可能と記者クラブは連絡してきたが、様々な条件が課せられているという。
 
このような10年間を経て、今年7月の鹿児島県知事選で当選した塩田康一知事の就任記者会見に参加しようと有村氏は鹿児島にとび、冒頭のように会見室前の人間バリケードによって入室を阻まれたのだ。

ジェーン・ピットマンは最後に一口水を飲むことができたが、有森眞由美はまだ渇きをいやせていない。

ちなみに、7月28日は、記者クラブのオープン化ないし廃止を求めるジャーナリスト3人(畠山理仁・寺澤有・三宅勝久)が有村氏に同行した。

◆記者クラブは災害級の被害
 
記者クラブをめぐる新聞社やテレビ局社員とフリーランスの攻防とアメリカの人種差別を描いたテレビ映画を比較するのは、強引だと思う人もいるであろう。

確かに、奴隷として人権を奪われ、解放後も恒常的な暴力・差別・弾圧にさらされている黒人の状況とは違う。記者クラブをめぐって、非クラブ員がリンチで殺されてもいない。

だが、属性の違いによって一部の人たちが権力を握り利益を独占し、それ以外の人々を排除するシステムは共通する。いや、むしろアパルトヘイト(隔離政策)が記者クラブ制度の根幹にあると認識しない限り、問題は解決しない。

今年5月25日、全米どころか全世界を揺り動かした、警察官によるるジャージ・フロイト虐殺事件が起きたときでさへ、私は古いテレビ映画のことをまったく思い出さず、「7・28鹿児島県政記者クラブ人間バリケード事件」を動画で目の当たりにしたとき、43年ぶりに記憶が蘇った。それを素直に文章に書き留めているだけである。

記者クラブは災害レベルであり、日本ピープルにとって「禍」である事実を今こそ認識すべきではないか。

政治・経済・社会など各分野の問題を追及することはもちろん大切だが、様々な問題を伝える土台(報道)が土砂崩れを起こし、災害が起きていることを認識するほうが先決かもしれない。

そこで、10年にわたり記者クラブとの攻防を続けているフリーランスの有森眞由美氏に依頼し、下記の講演会を開催することにした。

7月28日、鹿児島県知事の就任記者会見参加をこばまれた有村眞由美氏(ジャーナリスト寺澤有氏のYouTubeより)

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■講演情報
『記者クラブ禍』~記者クラブとフリーランスの10年戦争
講師:有村眞由美氏(フリーランス)

日時:2020年8月22日(土)
13:30開場 14:00開始 16:30終了
場所:文京アカデミー「学習室」(文京シビックセンター地下1階)
東京都文京区春日1丁目16番21号
https://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/civiccenter/civic.html
交通:東京メトロ 丸の内線・南北線 後楽園駅 徒歩1分
   都営地下鉄 三田線・大江戸線 春日駅 徒歩1分
   JR総武線 水道橋駅(東口) 徒歩10分
資料代:500円

【申し込み】30名限定
氏名と「8月22日参加」と書いて下記のメールアドレスに送信してください。
kusanomi@notnet.jp
【参加にあたってのお願い】
◎受付で氏名と連絡先を確認してください。
◎会場入りするときは手洗いをお願いします。(消毒ジェルも用意します)
◎参加者はマスク使用をお願いします。
◎発熱している方や体調の悪い方は、今回は参加をご遠慮ください。

 * * * * * * * * * *

▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

「デジタル鹿砦社通信」新体制6周年を迎えて 田所敏夫

内輪話で恐縮であるが、本「デジタル鹿砦社通信」が新体制で再始動して、8月18日で丸6周年を迎えた。わたしも6年前の新体制発足以来、拙い文章を綴らせていただいてきた。

思い返せば、新体制発足当時は月に20本ほど寄稿させていただくことも珍しくなかった。わたしの決して「中立」でも「公平」でもない私見を、こんなに許容してくださる媒体は、ほかにないだろう。その意味で6周年を迎えたいま、わたしの狼藉を許容してくださった鹿砦社の松岡社長、編集長、そして嫌々ながらお付き合いいただけた読者の皆さんにあらためて御礼を申し上げる。ありがとうございました。

私的な理由で、3月以来仕事からほぼ離れている。時に読み返すと、赤面の至りで、できることであれば今からでも削除していただきたい、ザル原稿の山である。ただ折に触れ「このままの世界(日本)は続かない」という体感を基本に何度も書いてきた「東京五輪の破綻」は現実のものとなったし「2030年日本はこのままの姿ではないだろう」との予想は、ほぼ的中が確実になった。

この6年間日本はロクでもない方向に暴走してきた。安倍への批判がようやく形を成してきたようにも思えるが、遅すぎたと思う。コロナ後の世界をはやくも論じる書籍が多数出版されているようだが、著者の名前を見ると正直興味を惹かれない。思索が浅いに違ない連中ばかりだ。

これから、明確であるのは「社会的なあらゆる側面が不安定・不確定な時代に突入した」ということぐらいではないだろうか。

6年間ご迷惑をかけてきたわたしは、私的理由で今しばらくお休みさせていただく。このまま消えるつもりはないが、しばしお暇を頂く。お世話になった読者の皆さんのご健勝をお祈りする。またお目にかかる日まで皆さんに幸多からんことを!

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由
『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

【鹿砦社弾圧報道問題続報】朝日新聞大阪本社から「回答」届く! 前代未聞、笑止千万、抱腹絶倒! 朝日の名が泣くぞ! 鹿砦社 松岡利康

一昨日(8月17日)にこの通信でお伝えしたように、松岡逮捕―鹿砦社出版弾圧を神戸地検特別刑事部らと密通し大々的に報じた朝日新聞大阪本社社会部・平賀拓哉記者(現・司法担当キャップ)の面談拒否に対して、面談に応じるよう弁護士から「通知書」を8月6日付けで同社・渡辺雅隆社長へ内容証明郵便にて送りました。8月7日に到着しています。

回答期限は1週間以内でしたが、昨日(8月18日)に簡易書留で顧問弁護士に「回答」が届きました。「回答」の日付は「8月13日」になっていますが、同じ区内で、届くのにそんなに何日もかかるわけがありませんので、実際に差し出されたのは、おそらく17日だと思われます。「回答」なるものは画像の通りです。

8月18日、簡易書留で顧問弁護士に届いた朝日新聞大阪本社からの「回答」

みなさん、いかがでしょうか? またしても責任者名がありません。弁護士から送れば、少なくともマシな回答が届くと思いましたが浅薄でした。渡辺雅隆社長宛に出していますが、本当に渡辺社長の元に届いているのでしょうか? 届いていて、この回答だったら、渡辺という人は非常識ですし、こんな小さな“蟻の一穴”からダムは決壊します。「奢れる者、久しからず」です。

平賀記者は、社会部出身の渡辺社長の子飼いの記者だということですが、それなら尚更、渡辺社長は平賀記者や「広報」担当者を、きちんと叱責し対応すべきでしょう。そうではないですか? 私の言っていることは間違っていますか?

7月30日、朝日新聞大阪本社(広報)から松岡宛に届いた発信責任者不明の非礼なメール

私はくだんの「名誉毀損」逮捕事件で有罪判決を受けましたが、まさか、そんな前科者の要求には応じられないとでも言うのでしょうか。

平賀さん、何度も言うが、私や鹿砦社は、神戸地検特別刑事部らと密通し画策した、あなたの“官製スクープ”記事で地獄に落とされた当事者中の当事者です。私はあなたに面談を求める〈権利〉がありますし、あなたは私の求めに応じる〈義務〉があります。

いくら嫌でも、こんな弁護士や私たちをコケにした「回答」はないでしょう。常々朝日新聞が公言する「人権」の薄っぺらさがわかろうというものです。

私も逮捕当時はまだ50代でしたが、今や70にもなろうという初老の男です。歳を取るごとに好々爺のように丸くなってきたと言われますが、かの事件は私にとって人生最大の事件です。すんなりと面談に応じたのなら、和気あいあいと昔話に花が咲き、それで終わったと思いますが、ここまでコケにされたら、そうもいきますまい。「老いの一徹」という言葉もあります。“奥崎謙三”にはならないまでも(笑)、「蛇蝎のごとき執拗さ」(アルゼの告訴人の一人の元執行役員)でもって、全智全能、全身全霊、総力で追及せざるをえません。

平賀さん、みずからの記事に責任を持ち面談に応じよ!

ドラマは始まったばかりです。多くの皆様方のご注視とご支援をお願いいたします。逐次ご報告いたします。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由
『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

台湾の武力併合を射程に、香港民主化を圧殺する習近平 米中の軍事的衝突を孕んだ危機 横山茂彦

◆北戴河会議で何が話し合われたのか

台湾出身の評論家・黄文雄のメールマガジン「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」によれば、習近平のアジア戦略が急展開を見せるだろうと観測されている。

黄氏の分析によると、現在の香港に対する締め付けは、じつは台湾との統一に向けたものだとしている。そして香港での一連の騒動(国家安全維持法反対デモ)のなかで、中国では恒例の北戴河会議が行われたという。

この北戴河会議とは、渤海湾に面した中国河北省の保養地・北戴河に毎年7月下旬から8月上旬ごろにかけて、共産党の指導部や引退した長老らが避暑を兼ねて集まり、人事などの重要事項を非公式に話し合う会議である。毛沢東時代から開かれてきたが、会議の開催や結果は公表されない。胡錦濤・前国家主席時代の2003年にいったん中止を決めたものの、数年後には復活した。

今年はコロナウイルスの関係で開かれない見通しだったが、開かれたことに習政権の危機感が感じられる。習政権に批判的な長老が参加する会議を、あえて開いた意味は大きいとみられる。

会議の内容は言うまでもなく、米中問題や香港問題、そして2022年の共産党大会での習近平の続投問題などであろう。

黄氏の分析では、台湾との統一がこれまでの「平和統一」ではなく、武力をふくめた強硬なものに変化しつつあるという。

「5月末に行われた中国の全国人民代表大会での李克強首相の政府活動報告では、昨年までの『平和統一』を目指すという表現から、『平和』が抜けて、『統一』を目指すという表現になりました。そしてこのときの全人代で、香港への国家安全維持法制定を決定したのです」(黄氏)

習近平は2022年の共産党大会で、総書記3期目を狙っているという。マルクス・レーニン主義、毛沢東思想につづき、自分の思想・路線を「習近平路線」として個人崇拝的に打ち出し、個人独裁をもめざす習総書記にとって、いまだ足りないのは対外的な実績である。

そのための実績づくりとして、台湾併合を急ぎたい。その併合は、武力をふくめた強硬なものに変化しつつあるのだ。そのいっぽうで香港立法会議員の任期を1年延期している。いま香港で選挙を行えば、民主派による反中キャンペーンで香港が再び大混乱するという懸念からである。

台湾では今年1月の総統選挙で蔡英文が再選し、あと4年は民進党政権が続く見通しだ。しかも蔡英文は、新型コロナ対策の封じ込めに成功したため支持率が高く、これが急速に低下することも考えにくい。

そこで、習近平政権による軍事行動をふくむ強硬策が考えられると、黄氏は言う。

「台湾国防部は2018年に『中共軍事力報告書』を発表しましたが、そこでは、中国は2020年までに全面的な侵攻作戦能力の完備を目指しているという見方を示しました。そして、中国が武力侵攻する可能性があるのは『台湾による独立の宣言、台湾内部の動乱、核兵器の保有、中国との平和的統一を目指す対話の遅延、外国勢力による台湾への政治介入、外国軍の台湾駐留などが起きた際だ』と分析しています」

その「外国勢力による台湾への政治介入、外国軍の台湾駐留」が、アメリカを想定したものであることは言うを待たない。当面の中米の「戦場」は東シナ海であろう。


◎[参考動画]中国で海軍創設70周年行事 初の空母参加 北朝鮮も(ANNnews 2019年4月23日)

ここ数年の空母(遼寧ほか)をふくむ海軍の増強は、東シナ海(第一列島線)での制海権の確立、および南沙諸島の拠点化を見すえたものにほかならない。沿海海軍から、外洋艦隊(第二列島線越え)への脱皮、そして空軍力でも対台湾力関係の逆転が展望されている。

香港の民主化運動を締めつけ、返す刀で台湾の武力併合をめざす。この戦略は南沙諸島への軍港・飛行場建設などを見れば、中国の太平洋戦略はきわめて現実的なものとなってくる。

◆アメリカの動きをみれば、中国の戦略が浮き彫りになる

中国の太平洋戦略を見すえた、アメリカの動きも急ピッチである。

アメリカのアザー厚生長官が8月10日、台北市内の総統府で蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談した。アザー長官は「台湾を強く支持し、友好的であるというトランプ大統領の意向を伝えにきた」と表明し、蔡総統も長官の訪台を「台米にとって大きな一歩だ」と歓迎している。

アメリカの閣僚の台湾訪問はじつに6年ぶりで、米台高官の相互訪問を促す米「台湾旅行法」成立後では初めてとなる。トランプ政権はアザー長官の訪台を1979年の国交断絶いらい、最高位の高官派遣としている。いうまでもなく、トランプ政権の「歴代アメリカ政権の中国政策の誤り」を是正するものとして、対中包囲網の一環を形成したことになる。

この15日にも空母ロナルド・レーガンとニミッツをふくむ空母打撃群が、東シナ海での演習を行なった。この空母打撃群は7月にも2度にわたり、空母以外の4隻の艦艇をともなう、本格的な水上訓練をおこなっている。

いっぽう、中国も7月1日から5日までに西沙諸島周辺で海軍演習を行なっている。このときは3つの戦区海軍(北部戦区海軍、東部戦区海軍、南部戦区海軍)から、それぞれ黄海、東シナ海、南シナ海に同時に大演習を実施させている。中でも南部戦区海軍は、南シナ海の中でも領土紛争を抱える機微な海域で演習を実施した。
中国は8月にも海南島沖の南シナ海で、東沙島奪取を想定した大規模な上陸演習を計画している。これについて、日本の防衛省防衛研究所はつぎのように分析している。

「海軍陸戦隊を主体にして南海艦隊の071ドック揚陸艦、Z8ヘリコプター、大型ホバークラフトなどを動員した本格的なものになるだろう」と。

このかん、自衛隊も公開訓練のなかで「島嶼奪還を想定した」上陸訓練や降下訓練をくり返している。アメリカ海軍との水上訓練も積み重ねてきている。この分野では、完全にシビリアンコントロールは機能していないとみるべきだろう。


◎[参考動画]USS America Conduct Flight Operations in South China Sea, F-35B Lightning II, CH-53E Super Stallion


◎[参考動画]USS Gabrielle Giffords On Patrol in the South China Sea

◆主役として巻き込まれることに、無自覚な日本政府

領土問題など政治的に緊張のある海域での演習・訓練は、そのまま軍事をふくむ外交戦略である。戦争が別の手段をもってする政治の継続(クラウゼヴィッツ)である以上、高度な政治戦の段階にあるとみるべきであろう。

とくに大統領選挙をひかえたトランプ政権において、外交上の実績づくりはそのまま得票を左右するものとなる。10年に一度は戦争をしなければならない、軍産複合体(人口3000万人)をその内部に抱えるアメリカにとって、それはトランプの単なる思いつきが契機になるわけではない。アメリカ社会そのものが戦争を必要とし、その格好の材料として中国の挑発、あるいはその第二戦線としての朝鮮半島情勢。すなわち北朝鮮の核・ミサイル武装の問題が浮上してくるのだ。

日本のシビリアンコントロールが機能していないというのは、アメリカ海軍の動きに自衛隊が自動的に巻き込まれ、いっぽうで日本政府が米中の政治的緊張とまったく別のところにいる、という意味である。あるいは無為と言い換えても良い。

アメリカの軍事的・政治的パートナーである日本は安倍政権という、からっきし危機管理に弱い反面、アメリカの言いなりになる意志薄弱な政権を抱えている。戦後75年において、わが国の事情とは関係なく戦争の危機はすぐそこにある。にもかかわらず、その戦争の危機の主役は無自覚なままなのだ。


◎[参考動画]中国建国70周年 最大規模の軍事パレード(テレ東NEWS 2019年10月1日)


◎[参考動画][中華人民共和国成立70周年] (CCTV 2019年10月1日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】 新型コロナ 安倍「無策」の理由
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