◆「汚職大国」、ウクライナ

先日、ウクライナで兵役免除と引き換えに賄賂を受け取る汚職が続出し、全州の軍部委員会トップ全員の解任が行われた。

周知のように、今、ウクライナにおいて、成人男子の出国は禁止されている。兵役を免れるため、成人男子が海外に逃亡するのを防ぐためだ。

そのウクライナで兵役免除のための賄賂が横行しているというのだ。

これは、戦争の行方を左右する大問題だ。

だが、今日、ウクライナでは、こうした由々しき深刻な汚職問題が至る所で、日常茶飯事になっている。

兵士らの食料調達や軍服購入が小売価格、通常価格の2~3倍で行われていた事実、国防省の調達責任者が使い物にならない防弾ベストを購入、調達費を着服していた事件、等々、明るみに出た事実だけでも枚挙に暇がない。

一方、政府や軍部高官の特権を使った生活や遊興も目に余るものになっている。高級住宅や別荘、高級自動車の購入や海外行楽地、避暑地での豪遊、等々、国民が戦火の中、家を失い、命を危険にさらしながら飢えに苦しんでいる時、これはあり得ないことだ。

この間、戦争勃発以来その任にあった国防相、レズニコフが更迭になったのをはじめ、少なからぬ政府、軍部の幹部、高官たちが相次いで解任になっているが、その原因も、主としてそのためだという。

そうしたウクライナを指して言われている言葉がある。それは、「汚職大国」だ。

◆「汚職大国」、その原因を問う

これまで、ウクライナと言えば、「苦難に耐え、国民皆が一致団結して、ロシアに抗戦している」、そんなイメージだった。

だが、現実はそうではない。その落差は大きい。

なぜそうなのか。それを説明するものとして出されてきているのが「汚職大国」だ。

もともと「ソ連帝国」にはびこっていた官僚主義、それと一体だった「汚職大国」がこの戦火の中で蘇ったというのだ。

ソ連の一部だったウクライナがロシアともどもそうなるのは必然だ。少なからぬ識者がそう言っている。

それも一理あるかも知れない。人間過去と無縁ではない。かつての悪弊が蘇ることは十分にあることだ。

だが、現実に今生まれている問題の原因を過去にのみ求めるのはいかがなものか。やはり今起きていることの原因は、今ある現実の中に求めるのが基本だと思う。今ある現実を見ようともせず、過去にのみ原因を求めるのは間違っているのではないか。

今ある現実で決定的なのは、このウクライナ戦争が、その本質において、ウクライナとロシアの戦争なのではなく、米欧とロシアの戦争であり、ウクライナは、その狭間で、米欧に押し立てられ、代理戦争をやらされているという事実ではないかと思う。

この戦争が勃発する以前、米英をはじめとする米欧によるロシア包囲は、甚だしいものになっていた。

この30年近く続いてきた旧東欧社会主義諸国のNATO化の締めくくりとして、ロシアと国境を接する大国、ウクライナのNATO加盟が日程に上らされていたこと、米英がその軍事顧問団や大量の米国製最新兵器をウクライナに送り込み、その対ロシア軍事大国化を推し進めてきていたこと、さらには、東ウクライナに多数在住するロシア系住民へのファッショ的弾圧と虐殺が敢行されていたこと、等々。

これらが、米国家安全保障会議で、「現状を力で変更する修正主義国家」だと中国とロシアを名指しで決めつけたのに基づき、中国に対しては、「米中新冷戦」が公然と宣布され、その一方、ロシアに対しては、その包囲殲滅への準備が隠然と推し進められてきたのがこの間の歴史的な事実だ。

この分断と各個撃破の米覇権回復戦略に対して、プーチン・ロシアが米英覇権を中ロへの二正面作戦、引いては「グローバルサウス」など非米反覇権勢力全体を敵に回す戦争に引きずり出し、米英覇権との闘いに決着をつけるため敢行したのが先のウクライナに対する「特別軍事作戦」に他ならないと言えるのではないだろうか。

この戦争において、ウクライナは、米英覇権の矢面に立たされ、米英に代わって代理戦争をやる役を押し付けられている。

この押し付けられた代理戦争の傀儡指導部がどういう精神状態に陥るか、それは推して知るべしだと思う。

事実、2019年、「米中新冷戦」が宣言された年、奇しくもウクライナ大統領に選出されたゼレンスキーが数百万ドルの別荘、十数億ドルに上る預貯金を海外数カ国に分け持ち、自らの親族は、戦争勃発の前にイスラエルに退避させていた事実は、すでに公然の秘密になっている。

なぜウクライナが「汚職大国」になったのか。そのもっとも基本的な原因がどこにあるのかは、余りにも明白なのではないだろうか。

◆問われている日本の選択

「汚職大国ウクライナ」を前にして、今、われわれに問われているのは何か。

それは、何よりも、日本の進路ではないかと思う。

ウクライナの汚職と日本の進路、それは、米覇権の運命を通して、密接に結びついている。

一言で言って、ウクライナの汚職は、米覇権の崩壊を意味していると思う。

ウクライナ戦争でのウクライナの敗北、それは、米覇権の崩壊に直結していると思うからだ。

ウクライナ戦争が始まって以来、米覇権の崩壊は一挙に顕在化した。国連でのロシア非難、ロシア制裁決議、それは、最初のほぼ満場一致から棄権、反対の続出まで、米国の意思は急速に通らなくなっていった。

国際決済機構SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SC)からのロシアの排除など、ロシアに対する経済制裁は、ロシアの米欧市場からの撤退と中国を含む非米市場への参入から生じる世界的な物価高騰、欧米の経済危機など、むしろ米欧側により大きな被害を及ぼし、ロシアと中国など非米世界の結びつきを強め、その勢力拡大を生み出している。

BRICSやG20など世界的な諸会議でも米欧側の衰勢は顕著で、もはやその意思が影響を及ぼせるのはG7ぐらいしかなくなり、そのG7も、招請した「グローバルサウス」の国々のウクライナ戦争支持を取り付けることもできなくなっている。

ウクライナへのもっとも熱心な支援国、ポーランドまでその軍事支援中止を表明したこと、事態はここまで進展しているのだ。

こうした米欧覇権力の低下にあって、ウクライナ戦争の結果がもたらす影響は決定的だ。ウクライナ戦争での敗北は、すなわち、米覇権の最終的崩壊を意味している。

「ウクライナの汚職」に米覇権の呪縛から解き放たれた脱覇権日本の未来を見る。

それこそが今、日本に問われていることではないだろうか。

その時が近づいていると思う。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

ここ1カ月ほど、28年間追及してきたジャニーズ問題(創業者社長ジャニー喜多川による未成年性虐待とジャニーズ事務所の横暴)を〈集大成〉する書籍(『ジャニーズ帝国60年の興亡』)の編集に追われました。ようやく校了し今月20日頃の発売となります。ジャニーズ問題に対する四半世紀余りの言論活動の〈集大成〉としてA5判・320ページの大著となりました。資料も満載し今後に残るような豊富な内容で、堂々とした本に仕上がる見込みです。28年間も継続して追及してきた私たちにしかできない仕事だと思い、総力で取り組みました。すでにアマゾンなどで予約募集していますので、ぜひ予約申し込みをお願いいたします。

そういうこともあって、『週刊金曜日』鹿砦社排除問題についての追及のほうが休止してしまいました。この問題、少なからずの方々が注視されてきましたが、休止してしまったことをお詫びいたします。決して水面下で裏取引していたわけではありませんよ(笑)。

8月28日にColabo仁藤夢乃代表と『金曜日』植村隆社長宛てに9月5日を締め切りとして書面(質問書)を送りました。

ところが両氏からの返信はありません。仁藤代表、植村社長には森奈津子、黒薮哲哉両氏からも質問書が送られました。植村社長からは(内容はともかく)返信があったとのことですが、仁藤代表からはないそうです。

どうやら仁藤代表は嵐の過ぎ去るのをひたすら待ち、無視に徹し逃げ切ろうとしているのかと推察されます。いつも元気な仁藤代表のようにがんがん反撃していただきたいものです。

問題となった『週刊金曜日』6月16日号鹿砦社広告

 

問題の書『人権と利権』

◆Colabo仁藤夢乃代表への質問事項

私から仁藤代表には6項目の質問を記しました。

1. くだんの『人権と利権』の表紙が「こんなふうにバスを切り刻まれ、ぐちゃぐちゃにされたこと、本当に傷つきました。」とのツイートが全く事実に反するので、「明確な訂正や謝罪、態度表明」を求める。

2. 仁藤代表のツイート後、本件書籍『人権と利権』で森さんと対談を行った埼玉県富士見市加賀ななえ議員に対して仁藤代表と昵懇の太田啓子弁護士、影書房編集者はじめColabo支持者らから激しいネットリンチがなされたが、これに対し「やめるよう忠告したりされた」かどうか。

3. 本件書籍でColaboについて加賀議員は一言も触れておらず、言及しているのは須田慎一郎氏なのに、須田氏に一切触れていなのはなぜか?

4.「Colaboと仁藤夢乃さんを支える会」に当初から大学院生リンチ事件の加害者・李信恵らが名を連ねていることをどう考えているのか?

5. 公開討論を要請するので、植村社長と一緒に出席することを希望するが応じていただけるか?

6. 私に先立って森奈津子、黒薮哲哉両氏からの質問書に対して「誠意あるご回答」を送ることを希望するが、回答しないのはなぜか?

ご覧の上記6点、私は決して無茶なことを求めているわけではないことはご理解いただけるでしょう。

[左]『週刊金曜日』6月30日号に掲載された「おわび」。[右]『金曜日』を屈服させたことを喜々として表明する仁藤夢乃代表のツイート(2023年6月27日付)

◆『金曜日』植村社長への書簡

一方、植村社長とはたびたびやり取りしてきましたが、今回は、大学院生リンチ事件(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)の李信恵ら加害者側代理人・神原元弁護士が、植村社長の「慰安婦訴訟」の代理人に就いていたり(両件とも中心的に活動)、本件鹿砦社排除問題の「伏流」に、このリンチ事件があるので、これについて、「『人権』を尊重されるのであれば、ぜひ資料を一瞥され、一人の生身の人間として誠意を持って答えられることを熱望いたします。」と記載し、あらためて大学院生リンチ事件についてのコメントを求めました。植村社長には先にリンチ関連書6冊を送り、今回もこれらの本のあとに発行された未収録の資料の中でも特に重要なものを同封させていただいております。

加えて、仁藤代表と一緒に公開討論を要請し、ぜひ出席されることを求めました。

ちなみに、くだんの『金曜日』掲載の広告代金、請求はしないということでしたが、チャラにしてもらう道理もないので振り込んだところ、現金書留にて返金してきました。人を見下したような不快感を覚えましたので、開封せず、そっくりそのまま返送しました。その後、音沙汰ありません。

同誌7月7日号掲載の敗北宣言と鹿砦社への宣戦布告

さらに追い打ちをかけた同誌8月4日号掲載の鹿砦社絶縁宣言

◆『週刊金曜日』や、植村社長の出身母体『朝日新聞』(と、この系列雑誌)はジャニーズ問題をどう報じたのか?

『人権と利権』を一部(1ページの4分の1)掲載した『週刊金曜日』の広告掲載に対するColaboと仁藤夢乃代表への謝罪に端を発した鹿砦社広告排除と鹿砦社との絶縁問題は、すでに『金曜日』のみならず『紙の爆弾』など鹿砦社出版物における共通した読者の方々にも波紋を広げ、『金曜日』の定期購読をやめた(あるいは定期購読が切れても更新しない)という方が複数知らせてくださいました。

 

植村社長の出身母体『朝日新聞』系列の『週刊朝日』(2019年7月26日号)の表紙。ジャニー喜多川死後に「追悼ジャニーさんありがとう」などと失笑ものの特集を組んでいた

いわゆる「左派メディア」といわれる『金曜日』が、本来なら〈言論・出版の自由〉や〈タブーなき言論〉を先頭になって死守すべき立場にあるにもかかわらず、そうではなかったことが自己暴露されました。

この問題は、冒頭に記した昨今のジャニーズ問題を引き合いに出して言えば、ひとり『金曜日』のみならず、植村社長の出身母体『朝日新聞』(やこの系列の雑誌など)が、長年にわたり(『週刊文春』が告発し勝訴してから20年以上も)ジャニーズ問題を黙過・黙認、放置、隠蔽し、それどころかジャニーズ事務所に忖度しつつジャニーズタレントを積極的に起用したりして来ながら(今はなき『週刊朝日』はジャニー喜多川死後に「追悼ジャニーさんありがとう」などと失笑ものの特集を組んでいます)、海外メディアのドキュメントによって、今頃になってあたふたするという喜悲劇を演じていることにも通じていると思います。朝日時代、社会部記者だった植村社長はジャニーズ問題をどう認識し、どう対応されたのでしょうか?

『金曜日』は創刊30年などとはしゃいでいますが、同誌は30年間に、一般的な性加害問題はたびたび採り上げても、ジャニー喜多川による未成年性虐待をどれほど告発したでしょうか? 20年前に『週刊文春』が告発し激しい裁判闘争で実質勝訴し、未成年性虐待という性犯罪の実態が暴露された時に、『金曜日』がどう対応したか、ぜひご教示いただきたいものです。

さらに、このかんジャニーズ問題が騒がれる中、Colaboと仁藤夢乃代表に近い者らによって、いわば傀儡組織「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」が作られ、「当事者の会」にも近づき入れ知恵をしたりしているといった情報も入ってきています。これまでジャニーズ問題に関わったこともない者が、あたかも「ジャニーズ・ファン」を装い、政治主義的にジャニーズ問題に介入し、あわよくば今後予想される賠償金などの利権やこれに関する第三者機関にありつこうとしているように思われます。これは断じて排斥しないといけません。

手前味噌ながら、私たち鹿砦社は文春よりも5年も早くこの問題に取り組み3度の出版差し止めにも屈せず、文春の告発が始まるまでに15冊の告発系、スキャンダル系の書籍を刊行し、かつその後も大手パチスロメーカーを告発し「名誉毀損」に名を借りて私が逮捕されたり会社が壊滅的打撃を受けたりしました。『金曜日』にはこういうことがあったでしょうか?(この裁判の経過を終結するまで故・山口正紀さんは『金曜日』にレポートされたことが懐かしく想起されます。山口さんらのこのコラムはその後なぜか打ち切られました)

さらにその後、7年間も大学院生リンチ事件(しばき隊リンチ事件)の被害者支援、真相究明に全力で取り組み、多大の返り血を浴びました。しかし私(たち)はこのことで俗に「知識人」とか「ジャーナリスト」といわれる人らに対する判断の基軸のようなものを体得することができました。

『金曜日』には、こうした経験が果たしてあったでしょうか? 安全圏から高見の見物、みずから血を流すことなく、取って付けたようなコメント、きれいな言論でお茶を濁してきたのではなかったでしょうか?

私(たち)から喧嘩を売ることはありませんが、売られた喧嘩は買うしかありません。喧嘩を売っておきながら無視や逃亡は許しません!

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

既報の通り、広島市中区の給食会社「ホーユー」が9月初めに経営破綻し、広島県内の高校の寮の給食はもちろん、全国の警察や自衛隊、裁判所などの食堂も停止し大混乱になりました。ホーユーは破産の手続きを開始しています。


◎[参考動画]【給食停止】ホーユー他社と比べて明らかに低価格を提示していた(HOME広島ニュース 2023/09/08)

その後、広島県内では西条農業高校と西城紫水高校の2つの高校については、新しい業者との契約により、給食再開のめどが立ちました(2023年9月27日現在)。

一方で、他の高校については、ホーユーが各校の調理場に残した大型冷蔵庫の撤去のめどが立たず、そのことが給食再開の妨げになっていました。しかし、ホーユーの破産管財人との話し合いで移動のめどはついたそうです。

◆ホーユーの40分の1以下で落札した業者が過去に!

こうした中、新たな事実が発覚しました。ホーユーが2022年度から3年間1500万円で給食事業を受託していた西条農業高校。わたしの義父の出身校でもあるのですが、同校の給食を別の会社が2019年度から2021年度の3年間、なんとたった36万円で受託していたというのです。ホーユーの40分の1以下という目の玉が飛び出るような安い価格でした。

ちなみに、ホーユーは三次高校など4校をまとめて1800万円で受託しています。4校に一人づつ調理員を置いたとして、一校あたり3年間で450万円。一年間で150万円。これも朝昼晩の食事を提供するには安すぎます。朝昼晩、おそらく合計で6時間くらいは労働する調理員。長期休暇を除いて300日稼働としても、1800時間。これでは、最低賃金を割ってしまいます。しかも、経費は給料以外にも光熱水費もかかわるわけです。とんでもない低価格だったのは事実です。

しかし、この三次高校など4校におけるホーユーとくらべても12分の1以下という安さです。報道によると同社は広島県内での実績作りのため落札し、赤字は他の事業で穴埋めした。また、予定価格を大幅に下回るような価格で入札した場合、広島県の制度がどう機能するか、すなわち広島県・県教委がどういう反応をするかを試したかったという趣旨のコメントをされているようです。広島県も舐められたものです。

◆県は被害者面できるのか?!

「給食停止騒動」の発端となった三次高校など4校の場合について、平川理恵教育長や知事与党の県議らは「ホーユーが悪い。県(県教委)も被害者」というニュアンスで発言をしておられました。

とある知事与党の県議は「ホーユーが『べらぼうに安い』価格で落札したのがいけない」と筆者に繰り返しておられました。

「しかし、そんな安い値段で契約したのは県(実務的には県教委、各高校)ですよね?」と筆者が食い下がっても、県には責任がない、という趣旨のことを繰り返されるばかりで取り付く島もありませんでした。

しかし、県は、それこそホーユーより『べらぼうに安い』価格で西条農業高校においては、ホーユーとは別の会社と契約をしていたのです。そして、県議会もそういう状況を是として毎年、湯崎英彦知事が提案した予算案を可決し、決算を認定してきたわけです。

それでよく被害者面ができるな、と筆者は呆れてモノも言えません。

直接的に生徒に迷惑をかけたのはホーユーであるのは事実です。労働者にも給料が行き渡っているという状況でもない。対労働者という意味でもホーユーは加害者だ。しかし、県(湯崎英彦知事、平川教育長、そして議会)もホーユーや、ホーユーよりはるかに安い価格で入札した業者と契約しているのだから、言葉は悪いですが、共同共謀正犯の加害者ではないですか? そう申し上げたいのです。県内の70代の自営業者も『あれはどうみても業者が気の毒だった』とおっしゃいます。

◆やはり最低制限価格制度でないとだめだ

なお、2019年度―2021年度の西条農業高校の給食が36万円で落札された「事件」の際には一応、問題がないかどうか調査はしたそうです。三次など4高校の給食をホーユーが1800万円で落札した時も同様に調査しました。広島県の場合、予定価格の70%を割った場合には調査を行う『低価格入札調査制度』を取っています。しかし、問題なし、ということで、契約をしてしまったのです。調査に当たった県職員=筆者の元同僚の諸君には「君たちの目は節穴か?!」と一喝したい。しかし、西条農業高校の36万円「事件」のあと、一応、同校では価格以外の要素も入札に加味する総合評価落札方式を導入しました。やはり「36万円」は余りに安すぎるということはわかっていたからです。

しかし、それでも不十分でした。一定価格を下回ったら失格にする。そうした「最低制限価格制度」にしないと、結局、ホーユーや、ホーユーの前に西条農業高校で36万円で入札した業者のようなことが起きる。最低制限価格制度にしないということは、県がホーユーのようなことが起きてもかまわないと考えているということです。

筆者が仮に広島県知事であれば最低制限価格制度の導入、さらには公契約条例を断行したいと考えています。また、そもそも、給食調理を外部委託し、さらにそのコストを引き下げてきたことを問題としなければなりません。今回の事件は公共の縮小が招いたのです。財源など、それこそ、この間、問題となってきた平川理恵・県教育長による県外のお友達のNPO法人・企業や赤木かん子氏への異常な優遇を止めれば良いのです。


◎[参考動画]【リストを調査】公立小図書館の「必備図書」にある著書が1割を占める 専門家は「特定の著者に偏ることには疑問がある」(2023/03/14 HOME広島ニュース)

◆もっと「食」に重きを置く日本、広島へ議論深めよ

岸田総理におかれても、ホーユー破産で自衛隊の食堂が止まったことに危機感を感じていただきたい。高いミサイルばかり買ってメシがない、など全くシャレになっていません。犠牲者の多くが戦病死という名の餓死者だった第二次世界大戦の教訓も全く生きていないと言わざるを得ません。

また、一方で、食材費の値上がりというホーユー倒産の引き金については、これは日本の30%台、広島の21%という異常な食料自給率の低さも背景にあります。コスト削減のあまり食を軽視してきた日本、そして広島の政治の在り方。このことも国民的、県民的に議論を深めていかなければならないのではないでしょうか?


◎[参考動画]広島瀬戸内新聞ニュース号外9月27日号 ホーユーの40分の1以下で給食を落札した業者がいた!(2023/09/27 さとうしゅういち)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

《10月のことば》それでも山は赤く染まる……(鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

彼岸が過ぎ、ようやく秋の気配となりました。
今年もはや4分の3が過ぎました。
これから年末まで大変だなあ。

おそらくここ3年ほどではないとは思いますが、せっかく皆様方のご支援で乗り越えてきたわけですから、ここもなんとしても乗り越えたい。

書家・龍一郎の眼差しには常に原発によって「汚されちまった故郷の山里」があります。龍一郎や私は福島出身ではありませんが、いつ何時(なんどき)も福島と共にあります。政府による強権的な棄民政策と原発再稼働 ── 汚染水垂れ流しもそう、あれだけの被害を出しながら、なんでこんなことができるのか、ひとりの人間として許せません。「汚染水」じゃない、「処理水」だ、とかスコラ談議はよせ! 汚染水は汚染水だ。汚染水排出の影響は、仮にすぐに出ないにしろ、1年、2年……年を経るごとに必ず出てくるでしょう。水俣病もイタイイタイ病もそうでした。

秋風が吹き始めました。故郷の山里も赤く染まり秋風が吹いているでしょう。齢を重ねるにつれ望郷意識が高まります。これは否定できないことです。

唯一の反原発雑誌『季節』冬号(12月発行)の準備に取り掛かりました。同時に毎年恒例の龍一郎揮毫の鹿砦社カレンダーも製作進行中、『季節』冬号と共にお送りいたします。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

◆無名の新人から飛躍

渡辺明(わたなべあきら/1960年6月北海道出身)は1981年(昭和56年)4月、北海道から上京し、名門・渡邉ジムに入門。昭和50年代後半の、テレビレギュラー放映が終了したキックボクシング界氷河期に現れた。

渡辺明の素質に気付いた渡邊信久会長は厳しさ頑固さで有名な指導の下、同門の実力者、酒寄晃の後継者と見込まれ、翌年1982年4月デビュー。カウンターパンチに逆転KO負けの痛い黒星スタートだった。しかしこの敗戦の反省点はしっかり克服。素早い動きでローキックからパンチなど多彩に攻める連係技で14連勝(10KO)の後、1984年11月に、一時的ながら最も価値が高まった統合団体、現在のNKBグループとして存在する日本キックボクシング連盟での一番最初の興行で誕生したチャンピオンである。

この新団体での初代日本フェザー級王座決定戦では、葛城昇(習志野)をローキックで追い詰め、第3ラウンドにパンチで3度のノックダウンを奪ってKO勝利で王座獲得し注目される存在となった。徐々に優勢に立つ渡辺明に「こんないい選手が居たんだなあ。」と隠れた存在にファンの関心も増えていた。

ここからの輝いた時間は短かったが、当時の業界全体としても注目が集まった、新時代に相応しいスターだった。

青山隆戦、タイトルマッチで再戦が見たかった一つ(1983年9月10日)

[左]注目の王座決定戦、葛城昇を倒す、これも再戦が期待されていた(1984年11月30日)/[右]渡辺明、チャンピオンベルトを巻いた新スター誕生の日(1984年11月30日)

◆孤独な戦い

当時、渡辺明は両国駅近くの蕎麦屋に勤務。店から新小岩の渡邊ジムとアパートまで往復12kmを練習用具を入れたリュックを背負いロードワークを兼ねて走った。このエピソードは珍しく当時の新聞記事になり、職場を中心とした後援会の発足に発展した。

その王座獲得後第1戦目が1985年(昭和60年)3月の風吹竜(君津)を第3ラウンドKOで下した試合はローキックに威力が増し、パンチでも風吹竜を圧倒。更に強くなって風格が増していた。

王座獲得後第一戦目となった風吹竜戦、勢い増したKO勝利(1985年3月16日)

当時フェザー級ランカーは、かつて渡辺明が下した鹿島龍(目黒)、青山隆(小国)、葛城昇(習志野)の他、嵯峨収(ニシカワ)、山崎通明(東金)など選手層が厚かったが、「一歩抜きん出ている渡辺明の王座安泰は長く続くのではないか。」とさえ思われた。しかし、運命はファンの期待を裏切る方向へ進んでしまう。

期待された統合団体は同年4月、設立からわずか半年足らずで分裂してしまった。
内部事情はさておき、ここで渡辺明の運命も大きく変わった。初防衛戦で予定されていた鹿島龍(目黒)戦や分裂によって上位ランカーとの対戦はもう不可能と言われるほど遠のいてしまった。

1985年6月7日、高谷秀幸(当時=ロバート高谷/千葉)を1ラウンドKOに下し初防衛。更に磨かれたローキックとパンチはスピードと重量感を増していたが、渡辺明はライバルが全くいなくなり、何か寂し気に見えてしまう存在となってしまった。

初防衛戦、代打出場のロバート高谷に圧倒の勝利(1985年6月7日)

そこまでは順調だったチャンピオンロードも思わぬ不覚から下降線をたどる。同年9月7日、渡辺明は井志川雅志(伊原)戦でハイキックをアゴに食らい、負傷による4ラウンドTKO負け。「レフェリーの制止を振り切ってでも戦いたかった!」と言うが、入院せざるを得ない重症だった。

◆最後の大舞台

静養後、翌年1986年6月に復帰し2連勝。11月29日には黒崎健時氏が主催した「神秘のムエタイ」が両国国技館で開催。ムエタイ二大殿堂チャンピオン対決がマッチメイクされる中、日本から唯一、渡辺明が出場。タイから推薦されたデショー・ウォースントンノンは渡辺明にとって険しくも、強豪との対戦には相応しい存在だった。

結果は為す術もなく鋭いローキックで2ラウンドKO負け。渡辺明の切れ味良いローキックを上回る、本場の重いローキックに立っていることが出来なかった。ムエタイ路線の第一歩は無残にも打ち砕かれた。

ムエタイの壁は厚かった。デショーにローキックで倒される(1986年11月30日)

翌年1987年6月、上田健次(士道館)とのフェザー級トップ対決でも、何かおかしい渡辺明の動きの鈍さ、上田のスピードで圧されパンチで第2ラウンドKO負け。

「本能的に立ち上がったけど“これで終われるんだ”という弱気な気持ちが頭を過ぎった途端、立った時はテンカウントの後だった」という。渡辺明は復帰の道を考えつつも、5年間の選手生活に終止符を打つ決意をした。

選手の寿命はダメージも主な原因だが、モチベーションの維持も大きく占めるであろう。

渡辺明が長く戦えたかは分からないが、防衛戦で注目の対決を実現したかったであろう本人や、ファン、マスコミ関係者の想いは大きかった。今でも時代を越えた、戦わせてみたい夢のカードは尽きない。

◆消息は不明

渡辺明は静養から復帰後で、神秘のムエタイ出場前の1986年6月14日、この年の1月までラジャダムナンスタジアム・フライ級チャンピオンだった、サンユット・チャイバダンと対戦予定があった。日本キックボクシング連盟にしては、設立以来(その後も含めて)、極めて難しかった現役ムエタイチャンピオンクラスの招聘。ポスターとプログラムにも載ったが、来日が間に合わず夢と消えた。渡辺明は代打出場の李振興(韓国)をあっさり第2ラウンドKO勝利。

充実していた時期、チャンピオンとしてコールされる(1986年6月14日)

李振興に圧倒の勝利(1986年6月14日)

仮にサンユット戦が実現していたらどんな展開になっていたかは興味が尽きない。勝利を予想する者はいなかったが、その後に控えたデショー・ウォースントンノン戦への良い前哨戦になっていたのではないかという意見は多い。

今回の渡辺明氏に関して、触れておきたい私(堀田)の拘りの、昭和の業界低迷期を支えたキックボクサーとして、聞ける情報は少ない中、過去に新聞コラム用でインタビューしたジムトレーナーと、新たに渡辺明氏に接したことある関係者のお話を参考にさせて頂いた内容です。

私は、渡辺明氏が王座獲得後の翌年新春興行後の帰りだったか、水道橋駅に向かう橋の上で、後輩の手前、ちょっと粋がった感じで歩く姿を見かけたことがあり、「あっ渡辺さん!」と声掛けたら「ハイ!」と急に好青年に顔つきが変わって接してくれたことがありました。リング上でチャンピオンベルトを巻いた姿の写真にサインを求めると、「お名前は?」と丁寧にサインして頂いたことが懐かしい思い出である。この人はファンを大切にしっかり向き合う人だなと感じた、当時の水道橋の歩道でした。

渡辺明氏は引退した後に埼玉県内で、一軒家で犬を飼って一人暮らしをしていた様子。性格的に大人しく、多くを語らない渡辺明氏で、「当時は肉体労働系の職人をやっていたのでは?」と言う関係者のお話と、酒寄晃氏の場合同様に消息不明ながら「今は何しているのかなあ!」という渡邉信久会長でした。

[左]上田健次にも倒されてしまったラストファイト(1987年6月13日)/[右]幻のサンユット戦、表紙になった渡辺明(1986年6月14日用プログラム)※共にスポーツライフ社「マーシャルアーツ」誌面より。筆者撮影

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

9月に筆者が出演した番組を2本紹介しよう。いずれも須田慎一郎氏がキャスターを務める「別冊! ニューソク通信」の番組である。ここで取り上げた2件の事件に初めて接する人にも理解できるように編成されている。

 

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

◆週刊金曜日と鹿砦社の決別をめぐる事件

7月初旬に週刊金曜日と鹿砦社が決別しておよそ3カ月になる。週刊金曜日に掲載された森奈津子編著『人権と利権』(鹿砦社)の書籍広告に対して、週刊金曜日が差別本のレッテルを張り、今後、鹿砦社の広告を拒否することを告知したことが決別の原因だった。

しかし、この決定の背景にある事情を調査したところ、週刊金曜日に対して、鹿砦社の書籍広告を掲載しないように求める声が、SNSなどで炎上していたことが明らかになった。SNS上の暴言・苦言が週刊金曜日の植村隆社長にプレッシャーを与え、一方的に鹿砦社に決別を宣言したのである。

これら一連の経過は、デジタル鹿砦社通信やメディア黒書が報じてきた。また『紙の爆弾』(10月号)は、筆者が執筆した「『週刊金曜日』書籍広告排除事件にみる『左派』言論の落日」と題する記事を掲載した。さらにインターネット放送局である「別冊! ニューソク通信」が取り上げた。

「別冊! ニューソク通信」の須田慎一郎氏はこの問題に着目した。と、いうのもコラボ問題についての須田氏と森奈津子氏の対談が『人権と利権』に収録されているからだ。その本が「差別本」と烙印されたのだから、ある意味では須田氏も当事者である。


◎[参考動画]左翼は結局、権力に屈した!?…その権力の持ち主とは!? 野党の崩壊につながる!?(2023/09/13)

◆横浜副流煙事件の反訴

「別冊! ニューソク通信」が制作したもうひとつの番組は、横浜副流煙事件の反訴の進捗を紹介したものである。須田氏の他にわたしと、当事者である藤井敦子氏が出演している。

この事件の最初の裁判は、2017年11月に提起された。煙草の煙で「受動喫煙症」などに罹患したとして、A家の3人(夫・妻・娘)がミュージシャンの藤井将登氏を訴えた。この提訴の根拠となったのが、日本禁煙学会の作田学理事長が作成したA家の診断書だった。しかし、そのうちの1通が虚偽診断書であることが裁判の中で判明する。

裁判は、藤井氏の勝訴だった。その後、藤井夫妻は、作田医師を虚偽診断書作成の疑惑で刑事告発した。事件は受理され、作田医師は書類送検された。その後も藤井夫妻は反撃の手をゆるめずに、作田医師を訴権の濫用で提訴した。「戦後処理」としての反訴である。

この裁判の尋問の中で、作田医師は藤井敦子氏が「喫煙者である」と暴言を吐いた。さらに敦子氏の支援者に対しても根拠のない事実を摘示した。これに対して敦子氏と支援者の男性は、作田医師に対して名誉毀損裁判を起こした。男性は刑事告訴も行い受理された。その結果、作田医師は次の係争を抱えることになった。

1,前訴に対する損害賠償(訴権の濫用)裁判
2,損害賠償(名誉毀損)裁判
3,刑事告訴(名誉毀損)


◎[参考動画]【横浜副流煙裁判】まだまだ続きがあった!! 日本禁煙学会・作田学理事長のトンデモ発言連発!!タバコがダメなら〇〇で…誰もが被告になってしまう可能性が!?(2023/09/16)

◆「市民運動=善」という幻想

ここで紹介した2件の事件を通じて、筆者は読者に市民運動のあり方について考えてほしい。市民運動を敵視するわけではない。むしろ市民が結束して、社会運動を展開することは大事だと考えている。しかし、市民運動体の中には反社会的な勢力が紛れ込んでいることがあるのも事実だ。となれば、「市民運動=善」というスタンスは間違っている。

たとえばしばき隊が2014年に大阪市の北新地で起こした事件は、重罪である。重傷者が出ているわけだから、隠蔽するのではなく検証しなければならない。ところが実際は、多くの識者たちが隠蔽の方向で結束したのである。野党の一部もそれに加担した。

また、コラボ問題では、住民監査請求が通った事実があるわけだから、当然、ジャーナリズムはコラボの経理を検証しなければならない。仲間意識で曖昧にできる問題ではない。

ジャーナリズムは、市民運動の質を見極める必要がある。
 
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

平和都市・広島の玄関口の広島駅。北側の新幹線口側の地区は東区に属し、二葉の里地区と呼ばれ、2018年に広島テレビ本社や広島県警広島東警察署が中区方面から移転するなど、再開発が先行して進みました。

他方で、広島駅南口では2020年3月31日で広島駅ビルASSEが閉館。2025年度完成を目指して新駅ビルが完成予定です。広島電鉄が直接JR広島駅に乗り入れる構造になり、大変便利になります。しかし、この広島駅周辺の再開発事業のうち、「このまま湯崎英彦・広島県知事と松井一実・広島市長による独裁のような形で進めていいのか?」という事業があります。

一つは、広島駅南側のエールエールA館に広島市中央図書館を移転させる事業です。これらの事業に関する補正予算や(不動産取得のための)債務負担行為が、現在開会中の広島県議会と広島市議会の定例会でそれぞれ審議されています。

もう一つは、広島県立広島病院の老朽化を機会に湯崎知事が広島駅北口(新幹線口)に計画している巨大病院です。

議会では知事や市長の与党が圧倒的に多いことから、知事や市長が言うとおりのままの案でこれらの事業が進むことは確実です。今回は、「中央図書館」について取り上げます。

中区の中央公園にある中央図書館

◆本当に駅前で良かったのか? 新中央図書館
 
広島駅南口のエールエールA館(1999年竣工)。第三セクターの広島駅南口開発株式会社(以下、南口開発)が所有し、賃料で運営しています。

このA館には主に福屋デパートが入っています。しかし、営業不振からテナントが撤退。2023年8月31日限りで6-9階のテナントが撤退しています。

テナントが消えれば南口開発の経営は悪化します。そのテナントが消えた空間を市が買い取って老朽化していた中区の中央公園にある中央図書館を入れるというものです。

人を駅前に集め「にぎわい」を創出する。これが、松井市長の口癖です。2022年12月に事実上A館移転を決めた時、市側は「にぎわいづくりだけが目的ではない」と答弁していますが、「にぎわづくり」が重点だということです。

しかし、そもそも、「図書館」と「にぎわい」というのは相反するものです。広島市立の図書館はほかに、各区民文化センターとセットで中区、東区、南区、西区、安佐南区、安佐北区、安芸区、佐伯区に存在します。それらの図書館はもちろん、交通の便は悪くはないが、よくよく注意すると、例えば地域の大型スーパーなどからは少し離れた場所にあります。

それはそうです。本を読んで落ち着いて勉強するのが図書館なのだから。新中央図書館が予定されるエールエール館の周辺には、カラオケボックスや接待を伴う飲食店など(それ自体が悪いとは言いませんが)図書館とは相性が悪い施設が多くあります。

驚くべきことに、松井市長は、当初は、子ども図書館までセットでこのにぎやか、裏を返せば騒がしい場所に移そうとしていたのです。幸い、市民の猛反対で子ども図書館の移転は阻止されました。

◆コストの安さだけで測って良いのか? 文化行政

 

エールエールA館

松井市長は、現在地で図書館を建て替えるよりは、エールエールA館に移動した方が、コストが安い、と主張しておられました。しかし、そもそも、文化行政というものをコストで測りすぎるのはおかしな話です。それこそ、文楽への補助金を削ろうとした大阪維新の橋下徹知事(当時)と同じ発想です。

そもそも、広島市の中央図書館を名乗る以上はむしろ平和行政とセットであるべきだ。平和公園に比較的近い現在地がふさわしいのではないでしょうか?

広島市が行った市民へのアンケート調査でも、現在地での建て替えが多数を占めました。また広島市議会でも2022年度予算の市議会での議決にあたっては、「エールエールA館への移転ありきではない」ことを求める付帯決議が採択されるなどしています。

にもかかわらず、市長は、エールエールA館への移転へ突き進み、既成事実を積み重ねています。

◆広島の〈森友〉疑惑?! 市による買取り価格が9か月で暴騰

さらに、松井市長が主張される唯一といってもいい利点であるコストの面でも、雲行きが怪しくなってきました

市長が2022年12月の時点で発表された案では、図書館移転のためのA館フロアの買取り費用は57億円とのことでした。これは、南口開発側の不動産鑑定人による価格でした。ところが、2023年9月議会に提案された補正予算案・債務負担行為案によると、買取り価格は約72億円。約25%も跳ね上がっていました。これは広島市側の鑑定結果が72億円だったからというものです。売り手の南口開発が高値を吹っかけ、買い手の広島市が値引きを交渉するというのが常識です。ところがそうはなっていない。

南口開発は、そもそも市役所の「えらい人」たちの再就職先です。市役所の先輩たちが苦しい時に市が忖度して高めの買取り価格で助け舟を出した。「広島の森友事件」と思われても仕方がない状況です。

ちなみに、現在地で図書館を建て替えた際のコストは、市によると113.5億円。一方で、A館移転の場合は不動産取得費だけで72億円かかります。

ちなみに、こども図書館移転問題を考える市民の会という市民団体による以下のような分析もありますのでご紹介します。

https://twitter.com/kodomoHiroshima/status/1702894238483288082

上記によると、A館への移転だと総コストは2023年9月の市長案によると121.5億円。現在地建て替えの113.5億円のほうが有利になっています。維持費もA館移転は1.2億円/年で、建替は1億円/年とのことです。耐用年数もA館への移転では40年ですが、建替すれば60年持ちます。

筆者は、文化行政についてコストを測りすぎることは問題だという立場ですが、コストの面でも市長が突き進む道は有利とはいえません。

◆市長が大好きな「にぎわい」、広島市民・県民に元気があってこそ

図書館の問題でもそうですが、松井市長は、口を開けば「にぎわいづくり」とおっしゃいます。そのために、国の支援も得ながら、駅前周辺を含む大型事業を進めておられます。

◎参考 https://www.chugoku-np.co.jp/stp/Edit/saikaihatsu-map/

上記は、民間のものもおおくふくまれますが、一方でそれに伴い道路の整備などが必要なケースも出ています。いずれにしても、広島の街の在り方をどうするか、という観点が抜けているように思えるのです。
いまや、かつては再開発だったが、いまとなっては既存のビルであるエールエールA館でさえも苦戦しているのです。あるいは、比較的新しいそごう新館も閉館するという有様です。

こうした、苦戦の背景には、広島市民はもちろん、福山市や三次市、呉市など県内の他の街から広島に来る人たちの購買力低下が挙げられます。そして、深刻な人口流出があります。

そういう中で、大きな施設を作っても、にぎわいを本当に取り戻せるのでしょうか? 疑わしいものがあります。まずは、県とも連携して、広島市民・県民の暮らしに元気を取り戻すことが大事ではないでしょうか?

◆広島の今後を左右する大型箱物は住民投票も

今後も、箱物の老朽化で、今回の中央図書館や、県が主導する巨大病院のような案件は出てきます。広島の街の在り方を今後、大きく左右します。広島市長や知事の任期は4年ですが、大型箱物は今後何十年と広島に存在します。

そうであるならば、市民的・県民的な議論を経たうえで、設置場所などを住民投票で決める。さらに、設計なども例えば、市民・県民による討論会を経る。こうしたことが必要ではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

国民の大多数が「冤罪被害者」と認識する袴田巌さんの再審開始が決まったのをうけ、筆者は当欄において、過去に袴田さんの無実の訴えを退けた存命の裁判官10人に対する公開質問を行った。袴田さんの再審無罪が確実な状況となったことについて、どのように受け止めているのかなどの質問をまとめた書面を特定記録郵便で一人一人に送り届け、回答を求めたものだ。

その結果、返事があったのは10人中6人にとどまり、残り4人は筆者の質問を無視した。返事があった6人も回答を避ける内容の返事ばかりだった。無辜の人に殺人犯の汚名を着せ、絞首刑に処そうとしたことを真摯に反省する様子は、10人の誰からも窺えなかった。

もっとも、筆者は元々、彼らが質問に対し、真摯な回答をしてくることなど期待していなかった。今回の取材では、日本の歴史に残る重大な冤罪を生んだ裁判官たちの無反省ぶりを明るみに出せ、むしろ意義のある企画になったと思う。

冤罪裁判官10人に送った公開質問

◆想像以上の栄達を果たしていた冤罪裁判官たち

そして今回、新たな発見もあった。袴田事件の冤罪裁判官たちが想像していた以上の栄達を果たしていたことだ。

現在は新潟家裁所長の菊池則明氏や、長野地家裁松本支部長の内山梨枝子氏のように組織内で出世を遂げた者もいれば、広島県公安委員会の委員を務めた小西秀宣氏や、日本大学大学院法務研究科の教授となった大島隆明氏のように「第2の人生」で立派な地位や職を得た者もいた。

いずれ劣らぬ栄達ぶりだが、中でも際立っていたのが、袴田さんの第一次再審請求を「棄却」で確定させた最高裁第二小法廷の裁判官4人(今井功氏、古田佑紀氏、中川了滋氏、津野修氏)が旭日大綬章を受章していたことだ。

〈最高裁判所判事としてその重責を果たすとともに、我が国司法制度の発展に貢献した〉

4人は旭日大綬章を与えられるに際し、そのように「功績」をたたえられていた。

上段左から大島隆明氏(現在は弁護士、日本大学大学院教授)、菊池則明氏(現在は新潟家裁所長)、竹花俊徳氏(現在は弁護士)、古田佑紀氏(現在は弁護士)、内山梨枝子氏(現在は長野地家裁松本支部長)。下段左から林欣寛氏(現在は札幌高裁事務局長)、小西秀宣氏(現在は弁護士)、今井功氏(現在は弁護士)、中川了滋氏(現在は弁護士)、津野修氏(現在は弁護士)

「死刑の冤罪」を生んだ裁判官たちがそのような評価を受け、権威ある勲章を受章していた当否については、袴田さんが晴れて再審で無罪判決を受けた際に改めて検証されるべきだと思う。

最後に、この公開質問の企画については連載中、多くの方から好意的な感想や激励の言葉を頂け、励みになった。改めて感謝申し上げたい。

◎「冤罪被害者」袴田巌さんの無実の訴えを退けた存命の裁判官たちに公開質問
〈01〉大島隆明氏(現在は弁護士、日本大学大学院教授)2018年に再審を取り消した東京高裁の裁判長
〈02〉菊池則明氏(現在は新潟家裁所長)2018年に再審を取り消した東京高裁の裁判官
〈03〉竹花俊徳氏(現在は弁護士)2004年に袴田さんの即時抗告を棄却した東京高裁の裁判官
〈04〉古田佑紀氏(現在は弁護士)第一次再審請求を「棄却」で確定させた最高裁の裁判官
〈05〉内山梨枝子氏(現在は長野地家裁松本支部長)1994年に再審請求を棄却した静岡地裁の裁判官
〈06〉林欣寛氏(現在は札幌高裁事務局長)2018年に再審を取り消した東京高裁の裁判官
〈07〉小西秀宣氏(現在は弁護士)2004年に袴田さんの即時抗告を棄却した東京高裁の裁判官
〈08〉今井功氏(現在は弁護士)第一次再審請求を「棄却」で確定させた最高裁第二小法廷の裁判長
〈09〉中川了滋氏(現在は弁護士)第一次再審請求を「棄却」で確定させた最高裁の裁判官
〈10〉津野修氏(現在は弁護士)第一次再審請求を「棄却」で確定させた最高裁の裁判官
《総括》袴田事件の「冤罪裁判官」10人に対する公開質問が明らかにしたこと

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。編著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(リミアンドテッド)、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―』(電子書籍版 鹿砦社)。stand.fmの音声番組『私が会った死刑囚』に出演中。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―」[電子書籍版](片岡健編/鹿砦社)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

このところテレビで大活躍している知識人らが次々とフェイスブックの広告に登場して、株式投資などを奨励している。たとえばジャーナリストの池上彰氏は、「リタイア層は現在ある資金を減らさずに運用することが最優先です」と呼びかけ、森永卓郎氏は「私は株で十分なお金を稼ぎ、父を最高の老人ホームに送り、そこで残りの人生を過ごしました」と自慢話を披露し、落合陽一氏は、「新しい時代に磨くべき能力とは何でしょうか。それは、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です」と露骨に投資を呼び掛けている。

左から池上彰氏、森永卓郎氏、落合陽一氏

これらの人々による指南は、投資を活性化するという政府の金融政策と完全に一致している。自分の老後資金は、年金よりも自己責任で確保すべきだとする新自由主義の自己責任論の反映にほかならない。

識者を通じて投資がPRされる背景には、社会福祉制度が崩壊に近づいている事情がある。投資に消極的な人は、いずれ行き場を失いかねないという恐怖を喚起して投資に走らせる目的があるようだ。これはわたしに言わせれば、悪質なセールスと同じである。

それをテレビの常連が、ジャーナリストや評論家の肩書で展開しているのである。投資に走らなくても、安心して老後が送れる社会を構築するために自らの職能を活用しようという視点は何も感じられない。日本の社会制度の中に埋没しているのだ。

投資に失敗して、露頭に迷う層が出現する状況は、カジノにのめり込んで自殺に追い込まれる層が現れる状況に類似している。

◆「中国による謀略論」の愚

日本のテレビには、良識のある識者が登場することは根本的にはありえない。福島原発の汚染水問題にしても、真面目な顔で中国の陰謀論を展開する連中が後を絶たない。政治的な意図があって、中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止したのだと。そんなことを評論家の肩書で、真面目な顔をして言っているのだ。

しかし、汚染水の問題を考える際の大前提になるのは、汚染水そのものが人体に及ぼす影響である。放射性物質が海のプランクトンを汚染し、そのプランクトンを魚が食べ、さらにそれが人間の体内に入った場合にリスクがあるのかどうかが、議論の中心にならなくてはいけないのに、汚染水の「安全」を大前提にして、中国謀略論が前面に出ているのだ。

海水をくみ上げて放射性物質を測定するのも、愚の絶頂である。海水ではなく海底の土壌を調査しなければ何の意味もない。

先日、筆者は遺伝子について詳しいある識者と話す機会があった。この人は、原発反対運動に参加しているわけではないが、物事を純粋に評価するので、わたしは客観的な意見を知りたいときに指導を仰ぐ。汚染水については、次のようなコメントを頂いた。

「危険に決まっているでしょう。テレビに出ている人たちは、本当のアホですわ。何も分かっていない。中国が日本の魚を買おうが買うまいが、そんなことは中国の自由でしょう」

◆軍事大国・米国の裏の顔

ウクライナ戦争の報道についても、慶応義塾大学の廣瀬陽子氏らを筆頭にウクライナが善でロシアが悪という構図での評論が主流になっている。しかし、海外では決してそうではない。

むしろ米国主導のNATOによる東方への勢力拡張やウクライナ政府による人権侵害を問題にしているケースが多い。少なくとも非西側メディアはその傾向が強い。

わたしはウクライナの戦地を取材するまでもなく、この戦争は米国による他国への内政干渉の結果である可能性が高いと推測している。次に示すのは、太平洋戦争の後における米国によるラテンアメリカへの軍事介入とクーデターを示した地図である。

太平洋戦争の後における米国によるラテンアメリカ諸国への軍事介入とクーデターの発生年を示した地図

この地図を見るだけで、戦争国家としての米国の性質が理解できる。そこから米国が主導するウクライナ戦争の性質も推測できるのである。

日本のテレビがジャーナリズムとして機能しなくなって久しいが、このところ識者たちが、テレビを通じて国策に全面的に協力する傾向は一層露骨になっている。わたしは、最近、テレビよりもユーチューブの番組の方が相対的にレベルが高いように感じる。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

広島県知事の湯崎英彦さん。平和記念式典での挨拶はそれなりに素晴らしい。県政については詳しく事情をご存じ一部の左翼の方でもすっかり湯崎さんに心酔しておられた方もいらっしゃいます。だが、特に4期目に入り、暴走ぶりは目に余るものがあります。

そして、その弊害がいま、噴出しています。知事が独断で決めたような肝いり事業、そして、肝いり人事の失敗は明らかになりつつあります。そして、それにもかかわらず、ストップがかからない。ここが問題です。特に、「教育」ではそれが目に余ります。米山隆一元新潟県知事の言葉をお借りすれば「万辞に値する」状況です。

◆知事肝いり、平川教育長の醜態

何度もお伝えしていますが、平川理恵・教育長は湯崎知事が2018年に一本釣りしてきた方です。当初は、マスコミも平川教育長を改革者として天まで持ち上げていました。

しかし、現実には、人員不足で苦しんでいる現場をさらに振り回した挙句、京都や大阪の企業・NPO、東京の作家など、お友達のお金儲けのための事業をわざわざつくる(官製談合事件)など、お粗末なものでした。挙句の果てに、ご自身の疑惑調査のために県費で弁護士に大金を支払う始末です。

そもそも、人脈をお金儲けのために使うのは当然である経済界の思考のままのリクルート出身の平川氏を教育長に任命し、数々の不祥事が明らかになった今も罷免しない湯崎知事の責任は重大です。ここまでくると罷免できないのはなにか後ろ暗い理由が知事にあるのではないか?と疑ってしまうほどです。

 

公立大学法人 叡啓大学(日の丸が前に立っているビル)

◆叡啓大学定員割れ

知事肝いり事業の一つが、公立大学法人叡啓大学です。広島駅近くに2021年度に開設されました。同大学は廃校になった私立大学を「居抜き」する形で「22世紀型大学」としてスタートしました。しかし、2023年、設置3年目で入学希望者が定員を割ってしまいました。また、留学生も伸びず、予 定に届きませんでした。

広島県は全国でも最悪クラスの人口流出県です。そもそも、私立大学が廃校になるような状況で、新たに大学をつくっても、その轍を踏むのは目に見えていました。

留学生受け入れと言っても、いまや、世界中に競争相手の大学が多くあります。日本で一定程度、世界の中で地位が確立しているのは東大と京大くらいです。しかも、ご承知の通り、東大も京大も昔に比べればずいぶんとランクは落ちています。そんな状況で留学生を目当てにしても成功しないのは当たり前です。

こうした中、兵庫県が既存の県立大学に 3 年以上住んでいる兵庫県民を対象に大学院まで所得制限なしで完全 無償化をすると発表しました。もちろん、兵庫県の斉藤知事は維新の吉村大阪府知事の元腹心で、新自由主義的な方です。それでも、広島県のように新しい大学をわざわざつくるよりはマシです。

◆中高一貫・叡智学園、いじめ被害者が転校

瀬戸内海に浮かぶ大崎上島には、やはり知事と平川教育長の肝いりで、中高一貫の叡智学園が2019年度から開校しました。グローバルな人材を育てる!という触れ込みでした。

ところが、開口早々、いじめ事件が発生しました。新品の下着を被せられるというひどい事件です。そして、なんと、被害者の方が転校に追い込まれたというのです。

平川教育長は、ハラスメントを許さないということを就任当初おっしゃっていたのにこの有様。しかも、転校したのは被害者。グローバルどころか、日本的な結末です。

そもそも、グローバルな人材育成を公立学校でやるのが妥当なのか? 理念自体は立派だが、それは私立学校か、あるいは国策として国立でやるべき範疇ではないのか?そもそも、グローバルな人材を育成したら、県費で育成した人材が広島から出て行ってしまいますけど、それでいいのでしょうか?

様々な疑問点があったのですが、当時も今も知事に批判的な県議もほとんどいない中、ほぼフリーパスで通ってしまいました。

こんな学校をつくるくらいなら、広島県内では全国同様、正規の先生が足りずに困っているのだから、正規の先生を増やすなどすべきではなかったでしょうか?

「叡智学園や叡啓大学を廃校にし、談合や浪費に明け暮れる平川教育長をクビにして浮いたお金を一般校や小規模校のためにまわすべし」(60代女性)というご意見は正論です。

◆ショボすぎる給食業者支援策

一方、こうした中、既報の通り、給食会社「ホーユー」破綻で広島県立・広島市立高校でも給食が停止し、大混乱となっています。

同社社長の複数のマスコミへのコメントが事実とすれば、広島では給食の落札価格は全国相場の半分だった、とのことです。同社は県などに単価の引き上げを求めたそうですが、けんもほろろな対応だったそうです。

なお、「物価高騰に伴う支援制度を利用すればよかったではないか?」という指摘もありますが県の支援制度を紹介されたそうですが、これは使い物になりません。一食当たり30円の補助です。卵価格を筆頭に原材料がまさに暴騰し、労働者の賃金も引き上げなければならない中で、30円くらい補助されても雀の涙です。従業員に係る負担が増えるだけです。

抜本的に単価を引き上げるとともに、労働者も生活できるような賃金を保障するなど入札制度改革(公契約条例も含めて)をすべきです。そもそも、なんでもかんでも民間委託が正しかったのか?そこの検証が必要です。

◆あきらめず、現知事・無投票県議への対抗馬を ── ヒロシマ庶民革命をいまこそ

こうした 暴走する湯崎知事(と平川教育長)の特に教育行政。県議会もチェック機能を失っている中でどうすればいいのか?

すでに、平川教育長については住民有志が訴訟で無駄遣いをしたお金を県に返すよう求めています。

また、給食停止騒ぎは県議会も直撃しました。なんと県議会も「ホーユー」の運営だったそうです。「ホーユー事件」で自分たちの昼食が消えたことで、議員たちの目も覚めれば、と思います。ガツンと声を上げていくしかない。

その上で、今の湯崎知事の県政を根本から変えることです。知事への庶民派の対抗馬をつくること。そして、県議選でも無投票の選挙区に現職への庶民派の対抗馬を出すことです。

筆者は2025年11月の広島県知事選挙へ向け、「あなたの手に政治を取り戻し、広島の水と食べ物、福祉・介護・医療、教育、住まい、交通、そして働くあなたを守る「ヒロシマ庶民革命」」を呼び掛けています。県民や現場で苦しむ人々を苦しめる湯崎英彦知事と平川理恵教育長から、広島県政を取り戻す。そのために、広島県知事選に手を上げたい方、また広島県議選に手を上げたい方は筆者までご連絡いただければ幸いです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

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