他と比べても、大阪は今でも、目に見えて公務員の多い都市だ。
市バスで大阪駅に着くと、「はい、しっかりカードタッチして」などと乗客に指示する係員が待っている。
通勤客でごったがえす夕方の大阪駅では、「はい、こっちよって、こっちよって」と左側通行を徹底させる係員が何人も立っている。
東京では、ターミナル駅は東京、品川、上野、新宿、池袋、日暮里など、山手線のいくつもの駅に分散されている。
大阪の場合、大阪駅に、東海道本線、大阪環状線があり、阪神と阪急の梅田駅が隣接、さらに御堂筋線、谷町線、四つ橋線と3つの市営地下鉄の駅がある。
京都、三宮、奈良、和歌山などの都市への交通が大阪から伸びているのだ。
サラリーマンの帰宅時間には、とにかくすさまじい人の波になる。通行整理の要員は必要だろう。
大阪人は他府県と比べると、歩くスピードが速い。そして、前を歩く人との空間を空けたがらない。やはり、なにわの商人気質は生きていて、時間や空間は「金」という感覚なのだ。
整理要員がいなければ、あちこちで人がぶつかり合い、喧嘩が起きるだろう。

梅田やなんばなど、市営地下鉄の主要駅では、切符売り場の前に駅員が立っている。
乗客の質問に答えてくれるのだ。他所から来た人にはありがたいサービスだ。
おうおうにして駅の案内の文字などは、地元の人向けに書かれている。旅慣れている私などでも、しばしば途方に暮れることがあるのだ。
この駅員、誰にも質問を受けないでいる間は、改札口を通過する乗客に「ありがとうございます」と頭を下げている。

大阪、と言ったが、よくよく考えてみれば、以上は大阪市の行政だ。
これは、昨年12月に就任したばかりの橋下市長の成果ではなく、これまでの蓄積だろう。

大阪府の行政サービスはどうなっているのだろう。
大阪府立の図書館を利用した。ネットで検索すると、大阪府立中央図書館には、大阪だけでなく近隣の府県の住宅地図もあることが分かったからだ。
中央図書館は、中心地から離れた東大阪市の荒本というところにある。梅田からでもなんばからでも、30分近くかかる。

図書館に着き、フロア案内を見ても分からないので、受付の女性に聞くと「住宅地図は3階です」とのこと。
階段を上っていくと、3階の入り口に衝立があった。いったいなんだろうと、どかして中に入る。
やってきたスタッフに「住宅地図はどこですか?」と聞くと、「どこから入ってきたんです?」と問い詰められた。
「どこからって? 階段からですよ」と言うと、「3階は、蔵書点検で利用できないんです」と答えるではないか。
「そういうことならホームページでアナウンスしてくださいよ。仕事で必要だから、時間割いて来ているんですから」「ホームページに書いてあります」「分からなかったですよ」
押し問答していてもしかたがないから引いたが、後でホームページを見ると、目立たないカレンダー欄に「ご利用いただけない室・資料があります」とあった。
3階建ての図書館のうち、まるまるワンフロアが使えないのだから、「ご利用いただけない室・資料があります」ではないだろう。
小さく書かずに、ホームページの最上段に、書くべきことだ。
利用者に無駄足を踏ませるようなことをしていて、行政の無駄など省けるのだろうか。
大阪府のホームページには意見を寄せるコーナーがあるが、「図書館のホームページに明記してあります」と返信はオウム返しだった。

細かいことかも知れないが、神は細部に宿る、という言葉もある。
パフォーマンスは目立った橋下府政に、実質は伴っていたのか。はなはだ疑問だ。

(FY)