福島第1原発の事故の真相を、アメリカの著名な核の専門家である、アーニー・ガンダーセン博士は、明らかにしている。
3号機の爆発は、水素爆発ではなく、核爆発であったこと。
1年以上経った今でも福島原発からは放射能漏れが続いていて、今後20年以内に100万人が癌やその他の病気にかかるであろうこと。
4号機に不測の事態が起きれば、収束の手段はなく、日本が壊滅するであろうこと。

それでも野田首相は、大飯原発の再稼働へと舵を切った。
国民の生活を守る、と言って。
現実が、パロディを超えた、というくらい異常ななりゆきだ。

怠け者の野田佳彦がガンダーセン博士の著作を読んでいるとは思えないが、成長期の子どもを中心に、放射能由来の病気にかかる者が少なくとも数10万人という単位で出ることくらいは分かっているだろう。

全人口から見れば、1%以下。いっせいに病気にかかるわけではないから、原発事故との因果関係はごまかせる。なによりも、その時にはもう自分は首相ではない。
アメリカの下僕の方向に振り戻すように頑張ったのだから、日本が壊滅したら、アメリカに逃げればいい。
そう踏んでの、再稼働だろう。
歴代の首相を振り返っても、これほどひどい人間は思い至らない。

この現実を見つめていると、頭がおかしくなりそうだ。
パロディとなった現実を怜悧に見つめるには、パロディが有効。
パロディストの大御所、マッド・アマノ著『原発のカラクリ――原子力で儲けるウランマフィアの正体――』(鹿砦社)を見て、そう思った。

国際原子力産業の構造から解き明かし、日本政府、政治家、官僚、原子力メーカー、電力会社、学者、マスコミ、地方自治体を結ぶマフィアの存在を明らかにしていく。

リオ・チント・ジンクという名をご存じだろうか? 1873年に設立されたウラン・ビジネスの会社だ。
伊藤博文を始めとする長州ファイブは外国船に密航してヨーロッパに出て開国の必要性を感じた、と公式の歴史では語られている。
実は、密航などではなく、リオ・チント・ジンクの社長がスポンサーとなっていたのだ。
その頃からずっと、国際金融資本による日本の支配は続いている。

そうした驚愕の事実を、マッド・アマノは絵と文で解き明かしていく。
長年にわたって培われた、パロディストの視線は鋭い。
「うさん臭い民間事故調」という1枚。
発刊された「福島原発事故独立検証委員会」の報告書の表紙に使われているのは、白煙が広がる1号機の爆発の写真。
しかし事故の危険さを印象づけるなら、高々とキノコ雲のような黒煙が上がる、3号機の爆発の写真ではなかったかと、両者を並べる。
これだけで、「福島原発事故独立検証委員会」なるものが、3号機の核爆発をそうだと知りながら、隠したかったのだ、ということが何よりも強く伝わってくる。

渡辺謙や古舘伊知郎、山本太郎、沢田研二など、原発そして原子力ムラにNOを突きつけた人々のことも描かれている。
88枚の絵と文。
笑いながら戦慄し、それでも勇気をもらえる1冊だ。

(FY)