6月27日、午前10時から行われた東電の株主総会は突っ込みどころが満載だった。
まず、会場の代々木競技場では、10時から30分間しか撮影・録音ができない。
「冗談じゃない。広報に案内されていない。アポをとるときになぜ言ってくれないのだ。危うく、撮り逃がすところだ」(週刊誌カメラマン)

昨年度の報告事項と、会社側が提案した取締役・監査役選任の第1号、2号議案、株主402人が提案した原発撤退の3号議案。株主は報告や議案について、何でも質問できることになっている。
開会のブザーが鳴った。議長は、勝俣恒久・東電会長(71)が務める。
勝俣恒久会長は、福島第一原子力発電所の事故による被害が今も続いていることや、2期連続で巨額の赤字決算に陥ったことについて、「多大なご迷惑と心配をおかけしていることをおわび申し上げます」と陳謝した。

続いて退任する西沢俊夫社長(61)から昨年度の事業報告。原発事故関連で「特別損失を1兆776億円計上した」というところで多数の怒号が飛んだ。
「今さら何を!」「冗談じゃないぞ。金を返せ」と鋭い声が飛び交う。
勝俣会長が議事を進行しようとすると、「動議!」と、会場から声が上がった。
「主語がなく責任がはっきりしないおわびだ。勝俣さん、責任を感じているなら議長は務められないはずだ。信任をとっていただきたい」。議長不信任の動議だ。最初の議決が行われた。

「賛成の方は挙手願います」と議長。大勢の人が手を挙げた。解任か? 続いて「反対の人」。こちらも大勢が手を挙げた。
「反対多数です」と議長。あっさり否決された。茶番である。
「冗談じゃない。400株ほど買った友人の代わりに社会勉強だと思って来てみたが、これほど予定調和の株主総会があっていいものか」(参加者)

東電は公的資金1兆円による資本注入を受け、実質国有化されるが、勝俣氏は「1兆円を入れてもらう以上、やむを得ない」との認識を示して、会場から怒号が飛び交う。しかし「東電マネーでかき集めた」株主たちに可決されていくのだ。
勝俣会長は「これだけの経済大国の、しかも首都圏の電力供給ががたがたになったら大きな問題だ。東電は再生しなくてはいけない」と強調してみせた。

猪瀬直樹・東京都副都知事は資産112億円の東電病院が「資産売却リスト」に入っていないのを追及して喝采を浴びていた。
東電病院は、「福島の住民の医療に奉仕するため」という名目で売却リストから外されているという。
しかし猪瀬副都知事のリサーチでは、「福島に行った医者はひとりだけ」というていたらく。
もはや東電は、「ブラックな」企業となった。
株主の大学生が言った。『東電に就職するくらいなら、一生フリーターでもいいです』
そう、東電は、「嫌われ企業」の代名詞と成り果てたのである。

(渋谷三七十)