歌手の西内まりやが9月21日、映画「CUTIE HONEY-TEARS-」(10月1日公開)、ならびに主題歌のPRを兼ねて池袋のサンシャイン噴水広場で16時、18時から2回連続でミニライブを行った。映画の予告編公開と同時に、主題歌「BELIEVE」を披露して集まった2千人を喜ばせた。

ふだんからこうしたイベントで撮影規制がかかるエイベックスが太っ腹にも「動画・撮影OK」とした戦略は、裏返せば「この映画がそんなに前評判がよくない」という焦りの裏返しでもある。

「このところ邦画の評判がとてもいい。大ヒットして100億円を超える興業収入をマークした『シン・ゴジラ』や賞を総なめにした『悪人』の映画スタッフが再結集した渡辺謙主演、妻夫木聡、綾野剛らが共演する『怒り』や福山雅治の『SCOOP!』や人気コンテンツ『デスノート Light up the NEW world』などなど群雄割拠している。その中で勝負するには、『CUTIE HONEY-TEARS-』は観客の動員が厳しいという代理店のマーケティングリサーチ結果が出ている。さらにタイミングが悪いことに、8月に週刊誌でスクープされたファッションモデルの呂敏との熱愛で男性ファンが離れつつある。だから西内ファンを少しでもかき集めて、会場で流す映画の予告映像とともに、西内の主題歌を広めようと、ファンたちのツイッターやフェイスブックでの『映画の予告映像とライブ映像の拡散』を狙っていたのです」(映画ライター)

この映画の試写会に行った映画ライターは「途中で帰りたくなるほど西内の演技は一本調子だった」とした。またネットでも「バトルスーツの露出が少なく、04年の佐藤江梨子主演のほうがまだセクシーだった」と書き込まれる始末。

だがそうしたネガティブ情報を差し引いても西内で動員が計画できるから映画製作に踏み切ったのだろう。ライブでは、西内は主題歌「BELIEVE」を含んで3曲を披露。業界人から見ると世知辛い「素人に映像を拡散させる」という戦略のわりには見えやすいセンターの位置を4台のムービーカメラが独占。西内はカメラマンの間からかろうじて顔が見える程度で「見えねーよ。カメラマンどけよ」とガラが悪いファンの怒号も飛ぶ。

「西内まりやについては、2014年デビュー当初は『ファッションモデルでありながら演技も作曲もできるアーティスト』ということで注目を浴びていましたが、5曲目までなんとか10位に食い込むべくがんばったのですが結果は惨敗。通常、これまで出したシングルはどれも20位までにランクされており、普通なら成功なのですが、西内の場合は宣伝に数億円かけており、回収しきれていない。5月に出したシングル『Chu Chu / HellO』も数億円の宣伝を展開したのに最高位18位となり、これも利益薄です。どうしてもミリオンセラーを狙いたいエイベックスとしては、映画に主演させてテーマ曲のCDも同時に売るという戦略に切り替えざるを得なかった」(同)

こうした戦略を立てざるを得なかった裏には、浜崎あゆみや安室奈美恵がじりじりと売り上げを落としてきている中、ノルマが求められるエイベックスの苦しい状況を象徴している。浜崎や安室の曲は、固定ファンは多いが、1曲につきCDや曲のダウンロード数の売り上げは厳しいのでライブで回収せざるを得ないし、新規ファンの拡大は難しい。10位にランクするのは至難の技だとの声も。

その点、まだまだ認知度は低いが高校生から老年までファン層が広い西内にはまだまだ伸びしろが期待できるというわけだ。女子高生に聞いてみると「ファッションの参考にしているが、西内さん自体には興味がありません」とのこと。このミニライブは、事前予約がないマスコミをすべて排除した。

とても「開かれた」宣伝戦略とはいえない仕切りだった。映画にも曲にも興味がない層をどう取り込むのか。西内を売る戦略が試されている。

(伊東北斗)