パレスチナで育った重信メイと、「夜と霧」を訳した池田香代子が、一つの本に載っている。
『思想の混迷、混迷の時代に』(鹿砦社)は、そんな凄い本だ。
重信メイは、パレスチナに渡って日本赤軍のリーダーとなった、重信房子の娘だ。イスラエルのユダヤ人たちによって、パレスチナの街が破壊され、命が奪われていくのを目の当たりにしながら育っている。
ナチスの収容所から生還したユダヤ人、ヴィクトール・フランクルが記したものが、「夜と霧」である。

池田香代子は「夜と霧」の辿った運命について語る。「夜と霧」と「アンネの日記」はアメリカで、「ユダヤ人はこんなひどい目に遭ってきたんだからから、国を持たせてあげよう」として、イスラエル建国の世論喚起につかわれてしまった。
だが著者のフランクルは、イスラエルがパレスチナに行っていることを苦々しく思い、池田香代子による新訳では、新たなエピソードを付け加えている。
その内容については同書を読んでほしいが、こうして1冊の本の中で、ユダヤとパレスチナが繋がっているのだ。

同書は、兵庫の西宮で行われている「鈴木邦男ゼミ」の第2クール(2011年9月~2012年7月)をまとめたものだ。
鈴木邦男については、説明の必要はないだろう。新右翼・一水会の主宰者であり、現在は最高顧問であるが、政治的、宗教的立場を超えた、言論による対話の重要性を語り続け、左右を超えた幅広い人々から支持を集めている。

同書には、鈴木邦男でなければ聞き出せない話が満載されている。
原発を作った東京電力の大元が、福沢諭吉の婿養子である福沢桃介であった、と明かすのは、大阪産業大学学長である、本山美彦だ。
東北電力のお膝元である福島に、なぜ東電がいるんだ、という素朴な疑問からその源流まで探る、学問の本義がそこから学び取れる。

ゆとり教育の推進者として知られる、元文部大臣官房審議官の寺脇研は、今は映画評論家でもある。
日教組と文部省が、子供を両方から引っ張っていたんだと、当時の教育状況を喝破するあたりも興味深い。
昨年10月17日に不慮の死を遂げた、若松孝二監督の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』の舞台裏も、同書でなければ読めない内容だ。

左翼の雑誌と見られている『週刊金曜日』編集長、北村肇は、「天皇主義者になった」とネットに書かれた、という。
「誌面が汚れる!」と批判されながらも、小沢一郎や亀井静香を誌面に出すのは、「雑の誌」という志のゆえ。クロスするような、鈴木邦男との対談はエキサイティングだ。

体制とは何か、を喝破するのが、田原総一朗。
ジャーナリズムのど真ん中を生きてきた立場から、体制とメディアの関係を説き明かす内容も、同書でなくては読めないものだ。

(FY)