第66回カンヌ映画祭(5月15日開幕)のコンペ部門に選出された「藁の楯」を見た。
大沢たかお、松嶋菜々子、藤原竜也らの豪華共演で、木内一裕の同名小説を映画化したサスペンスアクション。監督は「十三人の刺客」「悪の教典」などの三池崇史で、スピード感あふれる演出。時間を忘れるほど画面に魅入ってしまった。
孫娘を殺害された政財界の大物・蜷川が、新聞に「この男を殺してください。清丸国秀。御礼として10億円お支払いします」と行方不明の犯人殺害を依頼する全面広告を掲載し、日本中がにわかに殺気立ち、身の危険を感じた犯人の清丸国秀(藤原竜也)が福岡県警に自首するところからストーリーは展開する。警察は警視庁警備部SPの銘苅一基(大沢たかお)、白岩篤子(松嶋菜々子)ら精鋭5人を派遣し、清丸を福岡から警視庁まで移送させる。しかし、清丸への憎悪と賞金への欲望にかられ、一般市民や警護に当たる警察官までもが5人の行く手を阻む。

清丸を演じる藤原竜也、SPを案じる大沢たかお、松嶋菜々子がスリリングな演技を見せている。細かいカット割りも三池監督ならではだ。なにしろ殺せば十億円ということで、容疑者の清丸を狙うのは一般市民だけでなく、身内であるはずの警察の機動隊員や、警察病院の看護婦までもが清丸を狙うのだからまったく気が抜けない。殺害に未遂しても1億円が支払われるのでつぎからつぎへと懸賞金を狙う輩が出てくるのだ。

つぎからつぎへと護送中の清丸を狙う連中が登場し、何が正義で悪かよくわからなくなってくる。そもそも護送を担当する5人の刑事たちのうち、誰かが情報を流していることは明らかで、常に清丸の位置が蜷川のサイトにアップされているのだ。
今、何をやっても注目を浴びる役者、大沢たかおが艶っぽい刑事を演じている。つらい過去を隠しつつ、清丸への怒りを抑えながらも護送していくが途中でついに感情が爆発するシーンで本音を吐露する。
護送する人間たちの過去も密接に物語に絡む。カンヌ映画祭に選出されるにふさわしい、クオリティの高い作品だ。

(鹿砦丸)