◆ついに6カ国協議の枠からも締め出される?

 

2018年10月10日付ロイターより

ロイターが伝えるところでは、ロシア外務省は朝鮮および中国との外務次官による3カ国協議の結果、関係5カ国による「5カ国協議」が必要との認識に達したという。おや、1カ国少ないではないか。朝鮮半島問題は「6カ国協議」ではなかったのか。情けないことに外されたのは、わが国であった。アメリカの半属国で、しかも時の総理がアメリカにベッタリの外交姿勢を変えないのだから、仕方がないといえば仕方がない。

利害をともにする中ロとしては、アメリカの外交カードを一枚はがすことによって、交渉を有利に導こうとの思惑は明白だが、もっと深刻なのは北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が日本非難をつよめることで、韓国・中国との緊密な関係を維持し、その勢いで対米交渉を軌道に乗せようとしている、その裏側の意図であろう。その意図とは、いったい何なのか?

◆日本の賠償を最大限に引き出す、金政権の思惑

本来ならば、6月の米朝対話につづいて日本政府も8月から9月に日朝首脳対談を計画していた。トランプ・金対談が実現した段階で、それまで対朝和平の崩壊を念じていた安倍政権にとって、バスに乗り遅れるなという方向転換が行なわれたのだった。当時の報道を引用しておこう。

〈安倍晋三首相と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の日朝首脳会談の実現に向けて、両国の政府が調整に動いていると複数のメディアが報じた。共同通信は政府関係者の話として、ロシアが9月11~13日にウラジオストクで開く東方経済フォーラムが日朝首脳会談の場になる可能性を伝えた。ロシアは同フォーラムに金正恩委員長を招待している。読売新聞は「日本人拉致問題の解決などについての事前交渉」として、安倍首相が8月頃に平壌を訪問する案も検討されていると報じた。〉

◆無能な内閣情報官

 

北村滋内閣情報官(wikipediaより)

ところが、北村滋内閣情報官が裏交渉を進めようとしたところ、7月に日本人ツアー客がスパイ容疑で北朝鮮の公安当局に逮捕されるという事態が発生した。のみならず8月には中国でも「公安調査庁のスパイ」として、愛知県の男性が中国公安当局に逮捕されるという事態がつづいた。

北村滋といえば、官邸のアイヒマンと呼ばれる情報官である。アイヒマンというネーミングはしかし、けっして有能という意味ではない。後年、裁判でアイヒマンを見たドイツの哲学者ハンナ・アーレントによれば「なぜあんな凡庸な人物が、ユダヤ人大虐殺を行なえたのか」という疑問であり、つまるところ、唯諾々と上官の命じるままに職務をこなす凡庸さという意味である。わが官邸のアイヒマンも外交には凡庸らしく、ベトナムで北朝鮮の高官(キム・ソンヘ統一戦線策略室長)と極秘交渉したことを報道機関にすっぱ抜かれてしまった。これには直属の上官である安倍総理ではなく。上部組織の親分であるトランプが激怒したという。

そもそも疑似情報機関の人間を外交交渉に使ったところに、安倍外交の失敗がある。やはりここでも、お友だち政権なのだ。北村情報官は古巣である警察庁の公安ルートで折衝しようとして、北朝鮮の警戒心を煽ってしまったのだ。

◆安倍の無策こそ、国を滅ぼす

いまのところ、米朝主脳の再会談が3ヵ月先、つまり来年1月というマスコミの観測(つまり外交筋のリーク)である。米朝会談のうえで関係各国の協議が行われるとして、日本はその埒外に置かれそうな空気である。トランプは朝鮮半島にドルをびた一文(びた1セントか? 苦笑)も出さないと明言してきた。おそらく米朝のあいだで朝鮮戦争の終結が宣言されると、関係国である中国(朝鮮戦争に義勇軍が参戦)ロシア(金王朝創設の縛バックボーン)もこれを承認するであろう。

そしてわが国はといえば、その和平の枠組みのなかで、兆単位といわれる戦後賠償を課せられるのだ。金正恩はおそらく、日本がアメリカ主導の和平案、新たな東アジア秩序の形成にさからえないことを見越して、日本批判を繰り返しているのだ。

もしも安倍に本気で金正恩と対話をする気があるのなら、総理経験者を特使として派遣するなり、親書を送るなりのアクションがあってしかるべきだ。あいかわらず、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)とその支援組織「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)など、安倍応援団の「対北制裁論」に迎合しているようでは、事態は1ミリも動かせない。孤立のすえに莫大な賠償金を支払わされ、そのツケはわれわれ国民に課せられるのである。


◎[参考動画]9.23全拉致被害者の即時一括帰国を!国民大集会報告01 櫻井よしこ(総合司会)(sukuukaiweb2018年9月25日公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)