小室圭氏の母親の金銭問題は、どうやら解決しそうにない。たかが400万円、返せばいいではないかという論者もいるが、そうできないから事態は混迷しているのだ。誰かが肩代わりすればよい(漫画家の小林よしのり氏が申し出た)というものでもないだろう。借金を返さないことが問題にされているのだ。いやしくも皇族の一員となる人物の、社会的な評価が問題にされているのだから──。

 

『おめでとう眞子さま 小室圭さんとご結婚へ 眞子さま 佳子さま 悠仁さま 秋篠宮家の育み』(サンデー毎日増刊2017年9月30日号)

ひるがえって考えるに、皇籍は離脱する(平民になる)わけだし、いっそ婚姻に先立って皇族であることも否定してしまえば、ふたりは一緒になれる。そう、問題にされている「納采の儀」は皇室の伝統的な行事ではあっても、皇室典範に規定されたものではないのだ。つまり公式の行事ではなく、天皇家の私的な祭儀なのである。そうであれば、ふつうに平民としての婚約をすればいいのではないか。

いや、婚約(結納)などという形式をはぶいても結婚はできる。皇籍離脱にさいしての一時金さえ拒否すれば、税金を身勝手な恋愛に使ったという批判も形を成さないであろう。ましてや、巷間噂されている「準皇族にふさわしくない」などという批判も当たらない。そもそも「準皇族」とか「準皇室」という言葉は、皇室典範にも過去の禁裏の事例にもないのだ。皇位(王位)を拒否してまで、みずからの愛をつらぬいた例は、わが王朝が典拠にしてきたイギリス王室にはある。そう、エドワード8世である。その偉大な生涯をたどってみよう。

◆世紀の大恋愛

エドワード8世は、1894年にジョージ王子(後のジョージ5世)とメアリー妃の長男として生まれた。第一次世界大戦が勃発すると、陸軍のグレナディアガーズに入隊。一兵士として最前線に派遣するよう直訴したが、陸軍大臣であるホレイショ・キッチナーが、王位継承権第1位にあるプリンス・オブ・ウェールズが捕虜となるような事態が起こればイギリスにとって莫大な危害が及ぶとの懸念を示したことから、拒否されることとなった。

エドワードは最前線を可能な限り慰問に訪れ、これによりミリタリー・クロスを授与され、後に退役軍人の間で大きな人気を得ることに繋がった。1918年には空軍で初めての飛行を行い、後にパイロットのライセンスを取得ている。1922年に来日している。 大戦後は海外領土における世論がイギリスに対して反発的なものになるのを防ぐために、自国領や植民地を訪問した。訪問先では度々絶大な歓迎を受けた。いっぽうでは失業問題や労働者の住宅問題に関心を寄せている。国内外を問わず大変な人気者となった。

1936年にキング・ジョージ5世が死去すると、独身のまま王位を継承。即位式には既婚者で愛人のウォリス・シンプソン夫人が立会人として付き添った。王室関係者がウォリスを友人扱いしたため、エドワード8世はウォリスに対して「愛は募るばかりだ。別れていることがこんなに地獄だとは」などと熱いまでの恋心を綴ったラブレターを送った。ウォリスと王室の所有するヨットで海外旅行に出かけたり、ペアルックのセーターを着て公の場に現れるなどしている。そしてついには、ボールドウィン首相らが公人たちが出席しているパーティーの席上で、ウォリスの夫アーネストに対して「さっさと離婚しろ!」と恫喝した挙句に暴行を加えるなどといった騒ぎまで引き起こした。カッコいい。

ウォリスのほうも離婚手続きを済ませ、いつでも王妃になれるよう準備をしたが、エドワードとの関係を持ちながら、駐英ドイツ大使のヨアヒム・フォン・リッベントロップとの関係があったと取りざたされた。夫がある身で二人の恋人って、この女性もすごいね。


◎[参考動画]エドワード8世 世紀の恋

エドワード8世はウィンストン・チャーチルと相談し「私は愛する女性と結婚する固い決意でいる」と国民に直接訴えようと、ラジオ演説のための文書を作成する準備をしたが、ボールドウィン首相は演説の草稿に激怒した。首相は「政府の助言なしにこのような演説をすれば、立憲君主制への重大違反となる」とエドワード8世に伝えた。チャーチルは「国王は極度の緊張下にあり、ノイローゼに近い状態」であるとボールドウィン首相に進言したが、首相はそれを黙殺した。さらには事態を沈静化させるために意を決し、「王とウォリス・シンプソン夫人との関係については、新聞はこれ以上沈黙を守り通すことはできない段階にあり、一度これが公の問題になれば総選挙は避けられず、しかも総選挙の争点は、国王個人の問題に集中し、個人としての王の問題はさらに王位、王制そのものに対する問題に発展する恐れがあります」という文書を手渡し、王位からの退位を迫った。

この文書をきっかけに、エドワード8世は退位を決意したといわれている。正式に詔勅を下し、同日の東京朝日新聞をはじめとする日本国内の各新聞社の夕刊もこのニュースをトップで報道した。同日午後3時半に、ボールドウィン首相が庶民院の議場において、エドワード8世退位の詔勅と、弟のヨーク公が即位することを正式に発表したのである。

エドワード8世はBBCのラジオ放送を通じて、王位を継承するヨーク公への忠誠、王位を去ってもイギリスの繁栄を祈る心に変わりはないことを国民に呼びかけた。自分は王である前に一人の男性であり、心のままに従いウォリスとの結婚のために退位するのに後悔はないとした。在位日数はわずか325日だった。この一連の出来事は「王冠を捨てた愛」あるいは「王冠を賭けた恋」と呼ばれた。まことに、世紀の大恋愛というにふさわしい一幕ではないだろうか。


◎[参考動画]King Edward VIII’s Abdication Speech

◆禁忌の愛

このところ、女性週刊誌が「眞子さまの駆け落ち婚」という見出しを掲げて、小室圭氏との婚約・婚姻の可能性を報じている。すでに秋篠宮殿下の「二人結婚したいのなら、何らかのことをしなければ」「国民の理解が得られない」「納采の儀は行なえない」という、宮家としての結論は出ている。その意志はおそらく、天皇・皇后両陛下も同意見なのであろう。したがって小室氏と眞子内親王が皇室を離脱して、納采の儀も行わないまま「駆け落ち婚」をするとなると、これまでの皇室アイドル化路線と、天皇制(憲法第1条および皇室典範)との矛盾が顕在化することになる。いや、アイドル化という象徴天皇制のひとつの帰結が、生身の人間と国家と結びついた天皇国事行為との矛盾を顕在化させるのだ。ここはもう、個人としての眞子内親王および小室圭氏を応援したくなるというものだ。おりしも天皇代替わりの季節、ふたりから目が離せない。


◎[参考動画]眞子さま 小室圭さん 婚約内定会見 ノーカット1(ANNnewsCH 2017/09/03)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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