◆消費税は、差別する「凶器」

差別といえば、宗教や人種、性的マイノリティー差別のことが叫ばれるが、それだけではない。大金持ちと巨大企業を優遇し、貧乏人から搾り取る税制も差別そのものだ。

そのシンボルが消費税であり、これを廃止して公正な世の中にして日本を蘇らせようという講演会が、4月20日(土)午後2時から東京都豊島区の巣鴨地域文化創造館第1会議室で行なわれる。

不公平な税制をただす会の荒川俊之事務局長による「成功体験に学ぶ消費税廃止
~法人税・所得税・住民税の大改革を提言~」という講演会だ。

1989年に消費税が日本に導入されてから、3%、5%、8%と増税したのに、30年間も税収は変わらない。

それは、巨大企業と大資産家・超高所得者を大幅減税し、その穴埋めに庶民が支払った消費税を、そっくりそのまま充当しているからである。

その一方で、「日本の法人税は高い」というデマがはびこるが、実際は中小零細企業より巨大企業の税金は安い。所得が1億円を超えると税が安くなる驚くべき事実もある。

まさに「消費税は差別のための凶器」なのだが、この消費税を廃止する公約を第一に掲げた新党「れいわ新選組」(山本太郎代表)が生まれた意義は大きい。

◆日本転落の元凶=消費税
 
消費税が私たちの暮らしに決定的なマイナスをもたらしたのは、1997年4月1日に3%から5%に増税したことだ。

このときからデフレが起き、実質賃金が下がり始め、生活水準がじわり、じわりと下がり、中小零細行差の困窮が始まった。まさに日本転落が始まったのである。
 
まずしい人も大金持ちも同じ比率で支払う消費税は、所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性の最たるものだ。このような“年貢”の取り立てに対し、納税者一揆が起きてもおかしくない。

◆輸出戻し税、受取配当利益不算入など大企業優遇のオンパレード

優遇されているのは二つ。大企業と大資産家・超高額所得者だ。まず、法人税法のほかに、本来なら時限立法として企業への「租税特別措置」を大量につくり、それが恒久法化しているのだ。

そのひとつが輸出還付金(輸出戻し税)で、輸出大企業は消費税を税務署に納めないどころか、巨額の還付金をもらい続けている。

そのため、トヨタのお膝元、愛知県の豊田税務署は大赤字。ほかの中小企業などが納めた税金が、輸出還付金としてトヨタに渡されている信じがた状況である。。

『消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制』(不公平な税制をただす会=編/2018年1月大月書店)

今回の講演者である荒川俊之氏が事務局長を務める「不公平な税制をただす会」編集による『消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制』(大月書店)は、納税者必読本だろう。

この本には、具体的な数字や事実、改革した場合のシミュレーションが豊富に掲載されている。

たとえば、いま例を挙げた輸出戻し税は、トヨタ自動車一社だけで税務署からもらう還付金は3,231億円。以下、日産自動車、マツダなど輸出が多い自動車メーカーが続く。その合計は8,311億円。

自分が納めた税金の全額もしくは一部を還付してもらうのではなく、下請けや仕入れ先が税務署に納めた税金から還付される。

その結果、管内に輸出大企業を抱える8つの税務署が赤字というマンガのような事態になっている。

ワーストスリーは、豊田税務署3,043億円(トヨタ)、神奈川税務署788億円(日産)、広島・海田税務署533億円(マツダ)。数字は赤字額。

これはほんの一例だが、このような企業優遇税制がまかり通っている。

◆大企業はまともに税金をはらっていない

にもかかわらず、「日本の法人税は高い」などというデマもしくは”都市伝説”がはびこり、消費税が必要かのように喧伝されている。

日本の法人税は、零細企業から超巨大企業まで一律に23.2%なのだ。(あくまでも特例措置として零細企業の法人税をを低くする措置はある)。これだけでも驚くべき差別だが、その約23%の税金さえ支払っていない有名大企業がずらりとならぶ。

トヨタ自動車は、08年度から5年間、トヨタは法人税を1円も払っていなかった。零細事業者や低所得の派遣労働者らが血税を払っているのに、である。

消費税を上げろと主張する人たちが「日本の法人税は高い」と言っているのを耳にしたことがあるだろう。実は、明らかなデマであり、騙しのテクニックが存在する。

報道における「法人税率」とは「法人実効税率」のこと。「実効」というと実際に支払うことのように感じるが、法人税・法人事業税・法人住民税の合計を指す。

実際は大企業が優遇されて、法人実効税率32.11%だった11年から5年間、トヨタは21.0%、日産自動車7.6%、伊藤忠商事3.0%、三菱電機1.0%などが実際の負担率だった。

資本主義の権化アメリカでさえ、法人税は、15%、25%、34%、38%、39%の6段階の累進課税である(16年度)。

日本の法人税を5%、15%、25%、35%、45%の5段階の累進性にすると、約19兆円の増収になり、これだけで消費税はいらなくなる。

◆大企業優遇をやめると23兆円の税収アップ

受取配当金益金不算入もある。企業が持つ他社の株の受取配当金を利益に組み入れなくてもいい制度、国内の子会社や関連会社の株配当金は100%除外できる。

それ以外の企業の株配当も、50%を利益に入れなくていい。さらに、あれだけ稼いでいるトヨタの税金支払いが極少額なのは、海外からの配当のうち95%が非課税だから。

海外からの配当が100万円とすると95万円非課税で、5万円分だけ法人税をかけるのと同じことである。

「ただす会」によると、大企業に対する減税は総額23兆円を超えており、企業優遇税制を変えるだけで、その分がまるまる税収増になり、消費税などまったく必要ない。

そして「ただす会」の18年度の試算では、不公平税制をただすと、国税と地方税あわせて37兆3104億円の財源が生まれる。

高額所得者や大資産家への課税も必要だ。所得約1億円を超えると税負担率がどんどん下がっていくありえない事実もある。

高額所得者ほど株譲渡や配当金の占める割合が高くなり、金融所得は5,000万円でも3億円でも100億円でも、税率は一律に20.42%のまま。

給与や事業と分けて計算する分離課税だ。入ってくるものをすべて合計して税率を計算する総合課税にすべきだろう。あるいは、金融所得に累進性を採用してもいい。

当日は、あきれた差別税制の実態と、どこをどう改善すればよくなるか具体的に指摘される予定だ。

消費税廃止を第一公約にかかげる新党「れいわ新選組」も結成されたし、消費税廃止の是非は、国政選挙の最大の争点になるかもしれない

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《講演情報》
第114回 草の実アカデミー
過去の成功体験に学ぶ消費税廃止
~法人税・所得税・住民税の大改革を提言~

講師:荒川俊之氏(税理士・不公平な税制をただす会事務局長)
期日:2019年4月20日(土)13:30開場、14:00開始、16:45終了
場所:巣鴨地域文化創造館第1会議室(東京都豊島区巣鴨4丁目15)

交通:JR山手線・都営三田線 巣鴨駅徒歩15分 巣鴨商店街
資料代:500円
主催:草の実アカデミー
http://kusanomi.cocolog-nifty.com/blog/
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▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

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