日本政府による韓国向け半導体素材の事実上の禁輸措置は、韓国における日本製品のボイコットにつながった。ソウル市内の日本車ディーラーや小売店の前では抗議行動が行われ、日本への旅行中止を訴える請願が、青瓦台(大統領府)のウェブサイトに3万人以上の署名が行われた(7月8日)という。

日本政府は、表向きは「徴用工問題(被告企業の資産没収)への報復ではない」としているが、韓国政府およびその国民は、従軍慰安婦問題と徴用工問題など、歴史認識に関する報復と受け止めている。

韓国経済に打撃を与えることで、歴史認識に関する攻防を経済戦争に持ち込んだと国際的な世論も認識しているところだ。じっさい、韓国経済はこの数日で株価が総額で5兆円も低減するなど、大きな打撃を受けている。文大統領も報復措置を採ることを明らかにし、まさに日韓貿易戦争の様相を呈してきた。


◎[参考動画]「偏狭な排外主義」輸出規制に抗議 ソウルで元徴用工訴訟支援団体(毎日新聞 2019/7/5公開)

◆安全保障上の「不適切な事案」とは何か?

さて、それでは日本政府が「(歴史認識問題への)報復ではない」とする論拠はいったい何なのだろうか。事実上、反日運動を引き起こしている以上の怖ろしい計画が進行しつつあることに、われわれは驚愕せざるをえない。日本が韓国および北朝鮮を「仮想敵国」にしようとしている形跡があるのだ。いや、安倍晋三総理および菅義偉が公言している「(韓国側による)不適切な事案」というものである。この「不適切な事案」とは何なのか?

「個別のことについて申し上げるのは差し控える」(7日のNHKでのテレビ討論会)と明言は避けているものの、この「不適切な事実」が半導体素材の北朝鮮への流出を指しているのは明らかだ。つまり韓国が北朝鮮に、日本からの素材を提供しているというのだ。これは事実なのだろうか? 

韓国大統領府は、国連安保理事会決議にもとづく対北朝鮮制裁を「国際社会との協力のもと、それを忠実に履行している」「日本が明確にどの部分に疑惑があるのか示さず、われわれが明らかにするというのは順序に合わない」と、日本政府を批判している。これでは藪の中である。

観測筋によると、韓国がWTO(世界貿易機関)に提訴した段階で、日本側がその「証拠」を提出するのではないかと言われているが、これも推測でしかない。


◎[参考動画]【報ステ】文大統領「撤回求める」輸出規制で初言及(ANNnewsCH 2019/7/9公開)

◆観艦式からも韓国海軍を排除

事実上の禁輸措置は、韓国がホワイト(友好)国ではなくなった基準によるものだが、安倍政権は「安全保障上の措置」を前面に押し出して、その正当性を主張しているのだ。かなり周到な、韓国文政権への「揺さぶり」である。それは次のような措置にも顕われている。防衛省は自衛隊の観艦式に、韓国海軍を呼ばないことを決定したと言うのだ。

すなわち、韓国への「安全保障上の措置」として、韓国海軍駆逐艦が昨年12月に海上自衛隊P1哨戒機に火器管制用レーダーを照射した事件を受け、今年10月に開く海上自衛隊の観艦式に、韓国海軍を招待しない方針を固めたのである。もはや友好国や同盟軍とはいえないようだ。

今年の観艦式は10月14日、相模湾で行われる。イージス護衛艦や潜水艦、掃海母艦など多数の艦船や航空機が参加し、安倍総理は海自最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(空母に改装予定)に乗艦する予定だ。米国やオーストラリア、インドといった友好国の海軍のほか、中国海軍も「祝賀航行部隊」として加わる方向で調整している。


◎[参考動画]輸出規制「撤回しない」韓国・文大統領の要求に政府(ANNnewsCH 2019/7/9公開)

◆政権を替えようとしている

基幹産業であるIT産業の素材供給を断つことで、韓国経済の屋台骨を折る。韓国が自由貿易をもとめてWTOに提訴すれば、安全保障上の問題であると切り返す。もはや韓国文政権への「揺さぶり」あるいは政権を倒す工作とも思える、安倍政権の処断である。何を狙っているのだろうか?

韓国は「大統領を逮捕する国」と呼ばれている。金泳三、金大中以外は殺されるか投獄、あるいは自死でその生涯を終えている。いや、金大中も軍事政権下で死刑を宣告され、暗殺未遂事件で股関節に障害を負っている。国是が「反共」「反日」である以上、たとえば朴槿恵のような親日派ですら、韓日首脳会談も開けなかったほどだ。いま文政権は反日に舵をきり、新北路線をひた走っている。この文政権を倒し、強力な反共政権、したがって親日政権を打ち立てるのが、安倍極右政権のめざすところなのではないだろうか。

尊敬する祖父・岸信介が政界に影響力を持っていた時期、韓国は反共親日の朴正煕軍事独裁政権だった。朝鮮半島に火種があり、米ロもしくは米中が政治的緊張感をもって対峙することこそ、安倍のような極右政権にとっては最も都合の良い情勢なのだ。


◎[参考動画]韓国KBS放送不可「朴正煕―岸信介の親書」ニュース打破(Changjong Kang 2015/11/14公開)

《関連記事》横山茂彦 半導体素材「禁輸措置」という国家的ヘイトクライムを強行した安倍政権こそが世界経済を混乱させ、国民経済を破壊させる!(2019年7月5日付けデジタル鹿砦社通信)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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