国会や地方議会で、度々問題になる海外視察。そのほとんどが何カ所かの視察対象を見て回るものの、他は観光やゴルフである場合が多く、それが公費で行われている。
広島県議会が10月4日の本会議で決めた、県議3人の海外視察はさらに驚きだ。
メキシコで建設中のマツダの工場や、マツダの販売統括会社を訪ねるというのだが、視察する県議のうち2人は、マツダ労働組合の組織内議員なのだ。

11月8~15日の8日間、メキシコと米国に視察に出かけるのは、芝清(東広島市)、西村克典(安芸区)、東保幸(広島市安佐北区)の3名。任期中に1人1回、90万円を限度に県費負担を認める海外視察制度が使われる。

芝清、西村克典がマツダ労働組合出身の組織内議員だ。東保幸は、広島県教職員組合出身である。自動車メーカーと教員ではかけ離れているように見えるが、どちらの組合も連合(日本労働組合総連合会)に加盟している。
『労働貴族』(鹿砦社)に詳しく書かれているが、連合は労使協調を旨とする労働組合のナショナルセンターである。主力単産である電力総連の力に抑え込まれて、「脱原発」さえ口に出せない団体だ。

マツダ労働組合は2001年に採択した、マツダ21世紀労使共同宣言で、「マツダが国際競争力を回復し、その存在意義を地球的規模で評価されることが必要である」と謳っている。

マツダがメキシコで展開するのは、まさに国際競争力の回復の一貫なのだろうが、その視察に公費が使われるのだ。
視察目的には、経営の課題や必要な支援策を尋ねることが上げられ、芝議員は「あるべき県の海外展開支援策などを考えたい」としている。

そのまま受け取るなら、メキシコでのマツダの経営に課題があるなら、県としての支援策を考える、ということになる。
アメリカでは3人の県議は、財政破綻した「自動車の街」デトロイト市を視察する。
財政破綻しないためには、広島県の主力企業であるマツダを大切にしなさい、という意味と受け取るしかないだろう。

すでに広島県は財政危機に陥っている。マツダのための視察なら、公費を使うのではなく、マツダが支出すべきだろう。
労働者の仮面をかぶって、公費を使って企業のために働く。労働貴族の面目躍如といったところか。

(FY)