コソボ代表とアルバニア代表の姿が見えない! どういう事だ!
ここ数年、ミス・ユニバース世界大会で良い成績を収めている両国が、代表が選出されているにも関わらず、現在ロシアで開催中の世界大会に参加していない。調べてみると、コソボを独立国として認めていないロシア政府により、コソボ代表の受け入れが認められず、それに抗議をする形でアルバニアも世界大会への参加を見送ったというものだ。アルバニアの抗議は、コソボ人口の多くをアルバニア人が占めているからだろう。
この状況に反し、旧ソ連のアゼルバイジャンが初参加となっている。それは単なる偶然かもしれないが、ロシアを取り巻く皮肉に見えて仕方ない。

興味深いのは、アルバニアのナショナル・ディレクター(代表選出の責任者)を務めていたのが、ミス・ユニバースの公式フォトグラファーである、ファディル・ベリシャ氏だという事だ。しかも彼自身がアルバニア人なのである。今年は世界大会のフォトグラファーを務めるのか否か、その動向に注目されていたが、例年と変わらず世界大会の地へと降り立ち、世界各国の美女たちにレンズを向けている。アルバニア代表が参加していない事態にも関わらず、自らは参加という少し残念な選択にも思えるが、昨今のミス・ユニバースのビジュアル的イメージを創り上げているのは、彼の仕業と言っても過言ではない。そこはミス・ユニバース機構との結び付きを優先させたのだろう。

開催国の協力は必要不可欠だが、あくまでも運営をしているのはロシア政府ではなく、ニューヨークに本部を置くミス・ユニバース機構である。そもそも世界大会と名の付くアメリカ組織の受け入れを決定した時点で、政治を抜きに対応出来なかったのか。そしてミス・ユニバース機構は、この不測の事態を予想できなかったのか。あくまでも目的は国の選出ではなく、オピニオンリーダーとなるべく美女個人の選出であるのだから、そこに政治が立ちはだかるとは深い憤りを感じる。

ミス・ユニバース機構とロシアの関係は曰く付きだ。
2002年の大会ではロシア代表のオクサナ・フェドロバが優勝したものの、任務が遂行できない理由(言葉の壁や学業を優先したなどと言われている)があるとして、途中でタイトルを剥奪された。残りの任務は2位のパナマ代表へと引き継がれ、公式に2002年のミス・ユニバースはロシアではなくパナマとされている。以後、昨年に至るまでロシアはおろか、ヨーロッパからの優勝者は輩出されていない。
今年はロシアに上陸し、スポンサーにはイタリアのアパレルメーカーが名を連ねるなど、ミスコン人気の高い中南米に肩入れしていると言われてきたミス・ユニバース機構が、ここに来てヨーロッパへ歩み寄った印象を受ける。しかし今回の選択により、“自由の国アメリカ”からやって来たはずのコンテストが、若く美しい女性の夢を奪い取るという、非情な形での幕開けとなった。

常々違和感を抱かずにはいられない言葉がある。それは、世界的なミスコンテストの優勝者が口を揃えて言う、「すべての女性にチャンスがある! 努力をすれば必ず夢は叶う!」という言葉だ。努力の上で勝ち得たタイトルであるという、彼女たちの紛れもない“実感”から発せられるのだろう。
しかしこの言葉は、財政難により国内大会すら開催されない国がある事や、今回の様に政治が絡み、出場資格を得られない者もいる事は抜きに語られている。残念ながら、夢を叶えるには自身の努力だけではどうにもならない事も存在する世の中。現実的な話ばかりでは夢もないが、「願った形ではなくとも努力は必ず報われる」など、真摯に努力をしてきた敗者へ、そして機会すら得られない者への配慮の言葉も聞きたいものだ。

世界一の美女の称号を宿されたクラウンは誰の頭上に輝くのか……。今年のミス・ユニバースは、11月9日にロシアの首都モスクワの地で決定する。政治の絡まない、せめてもの公平なジャッジを期待したい。

(安海麻理子)