先にも紹介した『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』(鹿砦社)だが、限定1000部で、DVD付きの特別限定保存版が出た。
熊本市内の沖縄料理店「ゆがふ」の店主、東濱弘憲の一声で始まった、フェスティバル『琉球の風』は、今年で6回を重ねた。
東濱弘憲は昨年4月24日、逝去した。がんの再発が告げられたのが、その2年前。病と闘いながら、『琉球の風』の開催を続けていた。

同書には、出演者やゆかりのあるアーチスト、宮沢和史(THE BOOM)、宇崎竜童、島袋優(BEGIN)、ネーネーズ、鳩間可奈子、藤木勇人、大島保克、内田勘太郎、新良幸人、下地勇、よなは徹、ボブ石原、のインタビューも収められている。
この顔ぶれを見るだけで、このフェスティバルの質の高さが分かるだろう。

最初は、なぜ熊本で琉球のフェスティバル? と訝しがられたが、今では熊本県や熊本市が後援するイベントとなっている。東濱弘憲も協力するスタッフも、イベントには素人。最初は赤字に苦しみながらの開催だった。情熱の力で黒字に転化し、熊本の人々が待ち望むフェスティバルとなった。

同書では、自由に生きた東濱弘憲の生き様が綴られている。
そこから、学ぶことは多い。
特別限定保存版でのDVDでは、東濱弘憲が語る姿が写されている。
フェスティバルの舞台裏。闘病のため、車椅子に座っている。
高校卒業後、上京し、アメリカにいたこともある東濱は、40歳で熊本に戻ってきた。
熊本で生まれた東濱は、親が沖縄の与那国出身。しだいに自分のルーツである沖縄に馳せるようになった思いを、ゆっくりとだが力強く語る。

自分のルーツを確かめたいという思いに、周囲を巻き込んでいく情熱は、並はずれたものだ。それが伝わってくる、映像だ。
フェスティバルで、BEGIN、ネーネーズ、知名定男、金城安紀、下地勇、新良幸人、大島保克が歌うシーンも収められている。

昨年の『琉球の風』は、台風の直撃が予想され、開催さえ危ぶまれた。だが、朝まで降っていた雨も上がり、フェスティバルは始まった。
舞台に立つ知名定男が、東濱弘憲の遺影を掲げて、出演者全員と観客で黙祷をする。
静まった場内に、大島保克が切々と歌い上げる『与那国ションカネー』が響く。東濱のルーツの地、与那国の情け歌だ
その後、雲の切れ間から、満月が見えた。東濱が月になって姿を現したと、皆が驚いた。
感銘深いそのシーンも、DVDには収められている。

(FY)