コロナ騒動が続く中、特定の職業に対する「差別意識」をあらわにする人が増えている。しかも、そういった人たちの多くは、自分が正義のつもりでいるからおぞましい。ここまでに明らかになった実例をみてみよう。

◆風俗嬢を「性的搾取」されていると決めつける人々

まず、風俗嬢は、酷い職業差別にさらされていることが今回改めて鮮明になった。きっかけは、芸人・岡村隆史氏がラジオで「コロナで生活が苦しくなったかわいい子が風俗嬢をやるはずなので、楽しみ」という趣旨の発言をして、大バッシングにさらされたことだった。

岡村氏の発言は内容的に下品だから、批判されても仕方ない。しかし、それよりはるかに酷いのが、岡村氏を批判する人たちの多くが風俗嬢のことを「性的搾取」されている存在であるかのように平然と言い放っていることだ。たとえば、「コロナで生活が苦しくなった女の子が性的搾取をされるのを期待する岡村は、汚らわしい」というように。

こういう人たちは風俗嬢に対し、「性的搾取」をされている存在だと決めつけることが失礼だということに気づいていないのだ。

また、緊急事態宣言が発令されて以来、パチンコ店に対する差別意識を抱く人が世間に多いことも浮き彫りになった。都道府県知事の休業要請に従わず、営業を続けていた少数のパチンコ店は店名を公表されたばかりか、マスコミでも悪質な業者にように報じられ、ネット上などで世間の人々の批判にもさらされた。

感染が拡大しないように国民みんなで我慢しようという考え方は必ずしも間違っていないが、しかし、パチンコ店の経営者や従業員たちにも生活がある。満足な補償もしてもらえてないのに、世間の人たちから「休業して当たり前」と決めつけられ、休業しなければ、モラルのない悪徳業者とみなされて批判されるのは、パチンコ店に対して差別意識を持つ人が多いからに他ならない。

◆タクシー運転手は感染リスクを避けることも許されない?

医療従事者たちについても、差別に苦しんでいるという意見がマスコミなどで伝えられている。コロナパニックの最前線で、感染のリスクに怯えながら必死に働いているにも関わらず、「医療従事者はコロナに感染している恐れがある」としてタクシーに乗車拒否をされるなどの酷い差別に遭っているというのだ。

こうした報道が浮き彫りにしたのが、むしろタクシー運転者たちへの差別だろう。医療従事者たちが救命のために必死に働いているのと同じように、タクシー運転手たちもコロナの感染リスクにさらされつつ、公共交通機関の担い手として働いている。タクシー運転手にも生活があるし、養うべき家族もいる。コロナ感染者を一人でも乗せれば、休業に追い込まれるリスクもある。

著名人たちも、タクシーの「医療従事者の乗車拒否」を批判したが…(左はスポーツ報知4月16日配信記事、右は同21日配信記事)

医療従事者が差別されてよいわけはないが、タクシー運転者が医療従事者に対し、「コロナに感染しているリスクが高い」と考え、乗車拒否したとしても、それを差別だと言えるだろうか。それを差別だと決めつける人こそ、タクシー運転手に対する差別意識があることを告白しているに等しい。

他のどの職場よりも感染リスクが高い職場で働く医療従事者が、タクシーに乗車拒否されない環境をつくるのであれば、政府や自治体がタクシー会社に対し、医療従事者の専用車両をもうけるなどの協力を要請し、引き受けた会社に助成金を出すなどするのが筋だろう。

コロナ騒動が続く中、今後もこのよう職業差別は次々に顕在化すると思われる。粛々とウォッチしたい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(同)も発売中。

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