現在の日本国憲法は、アメリカから与えられた憲法だ、と多くの日本人が思いこんでいる。
それに対して、GHQの干渉は受けているが、その土台は日本人が作った自主憲法であると実証的に述べているのが、佐藤雅彦著『もうひとつの憲法読本  新たな自由民権のために』(鹿砦社)だ。

土台となった憲法草案は、土佐の自由民権運動指導者、植木枝盛が1881年に起草した「東洋大日本国国憲按」である。
これを福島県相馬郡出身の鈴木安蔵という憲法学者が発掘。戦後、これを元に「憲法草案要綱」を発表、現在の日本国憲法の土台となっている。

護憲に立つものでも改憲に立つものでも、一度は読んでおかなければならないものと言える。
『もうひとつの憲法読本  新たな自由民権のために』には現代語訳全文が掲載されている。1881年といえば明治14年だが、徹底的に民衆の自由、人権の保障が高らかに唱えられているのに驚く。

学校教育やマスメディアの宣伝によって、自由や平等というものは、敗戦によってアメリカからもたらされたと思わされがちだ。
確かにそれらは、戦中には踏みにじられていた。
だが、自由や平等は他から与えられたものではない。敗戦がそのきっかけだったとしても、自分たちが元々持っていたのものを取り戻したのだ。
それが、「東洋大日本国国憲按」を読むことで、はっきり伝わってくる。

「東洋大日本国国憲按」は現在の憲法よりも進んでいる部分さえある。
日本を各州の連邦制とし、地域の自主独立を大きく認めているところだ。

現行憲法はアメリカ占領軍がでっち上げて押しつけたものだという宣伝。それによって逆に、よりいっそうアメリカの属国化がまぬがれないかたちでの改憲をしようとするトリックに、同書は具体的な例証を挙げて警鐘を鳴らしている。

同書には、最古の自主憲法である聖徳太子の「十七条憲法」や、タブー扱いされている北一輝の「日本改造法案大綱」も収められている。
高官や官吏を戒め、平和を尊ぶ「十七条憲法」は、我々の源流として誇り高いものだ。
「日本改造法案大綱」は、読む者によって賛否は様々だろうが、豊かな発想には、刺激を受けることは間違いがない。
これらを読むと、愛国者のそぶりをする者たちが、日本の先達の営みに目を背けていることに、不思議な思いさえしてくるのである。

(深笛義也)