「島唄」や「風になりたい」などの名曲を世に送り出した、THE BOOMが、年内で解散すると発表された。
筆者は昨年、ボーカルの宮沢和史さんと、お会いするという幸運に恵まれた。
『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』(鹿砦社)に収録するインタビューのためである。

以前から、宮沢さんの楽曲には親しんでいて、ソロやGANGA ZUMBAのアルバムも聴いていた。
ソロアルバムに入っている「ゲバラとエビータのためのタンゴ」では、こんなことが歌われている。

バスジャックした少年には行き先が無い
証拠だらけの犯行現場には 犯人以外なら何でも揃っている
ハワイ沖では原子力で泳ぐシロナガスクジラが海面で潮を吹いている
わが国の総理大臣は3番アイアンでスライスしていた

恋歌の形を取った「島唄」は、先の大戦での沖縄での集団自決を歌ったものだ。詳しくは『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』を読んでほしい。
人々に親しまれる楽曲を多く世に送り出しながら、実に多くのことを宮沢さんは考えている。
歌う思想家、と呼んでもいいくらいだ。

著作も多く、『セイフティ・ブランケットⅣ』(角川書店)では、9.11のことも語っている。
次のような詩が添えられている。

自分は持っておきながら
他人には持つなという

自分は食べていながら
他人には食うなという

自分は吸わないが
人には売りつけている

他人には銃口を突きつけて
おきながら
銃口を向けられることがなかった
二〇〇一年の九月になるまでは

宮沢さんと会うにはずいぶん緊張して、何か彼との共通点はないか、と探してみた。
中米のニカラグアという国に行ったことがあることが、たった一つ共通した。
沖縄との関わりなどを聞く合間にその話をすると、ニカラグアの貧しさやアメリカとの関係への思いを話してくれた。

新アルバム『世界で一番美しい島』が完成していて、インタビューの前日に聴いた。
沖縄の古謡「芭蕉布」や、知名定男作曲の「バイバイ沖縄」「太陽ぬ子」「かりゆしの海」があり、そして「島唄」が収められている。

沖縄をテーマにしたアルバムなのだが、それだけではないと思えた。
沖縄が誇りを持つようになってきたこの20年の変化を見てきて、自分の生まれた土地に誇りと愛情と持つことが大事だと考えたとのこと。それはとりわけ、震災からの復興に奮闘する東日本を念頭に置いていることが分かった。

アルバムのタイトルにもなっている「世界で一番美しい島」には、格別な思いが込められていると感じた。
故郷への思いが歌われる中に、「もう放さない もう渡さない」というリフレインがある。
故郷を都会のための犠牲にするのはやめよう、という気持ちが込められているのを感じる。
「世界で一番美しい島」から、福島の愛称である「うつくしま」を思い浮かべるのは、自然なことではないだろうか。

宮沢さんは「頸椎症性神経根症」にかかり、首から肩、腕、指先にかけ、しびれや痛みが見られる状態だという。

THE BOOM解散の発表でのコメントで、「一旦マイクを置き、自分自身、そして、自分が進むべき音楽の道というものをもう一度見つめ直そうと思います」と語っている。
ゆっくりと休んで、また、素晴らしい歌を届けてほしいと願う。

(深笛義也)