「介護・福祉労働者の抜本的処遇改善」は、この20年ちかく、わたくし、さとうしゅういちの一貫した主張です。2021年の参院選広島再選挙立候補に際しても新聞広告という形などで主張させていただきました。その原点は県庁マン時代にさかのぼります。

◆県庁マン時代 あまりに低い介護現場の労働条件に憤り

わたくしは、広島県庁マン時代(2000年度-2010年度)にもっともながくさせていただいた仕事のひとつが、山間部の介護保険関連行政です。

2000年にスタートしたばかりの介護保険制度の円滑な実施がわたしの任務でした。介護保険事業所に実地指導に赴かせていただき、多くの現場の方の使命感や責任感に大変な感銘をうけました。そのことが、わたしが、のちに介護福祉士に転じたきっかけです。

他方で、皆様の給料台帳をみせていただき、愕然としました。

「なりたての役人の俺よりよほど勉強されて専門性もたかい皆様の給料が、俺より低くていいのか?これでいいのか?日本の将来は大丈夫なのか?」

◆不足しているのは人手というより労働条件

わたしは、憤りとともに、日本の将来に不安を感じました。あれから10年、そして15年と経過し、わたしの不安は次々と具体化していきました。

端的にいえば、いわゆる人手不足です。否。そもそも不足しているのは人手ではなく、労働条件です。

労働のきつさに比べてあまりにも給料が見合わない中で、多くの介護・福祉労働者が現場をはなれていきました。また、業態によっては若い人がほとんどはいってこないようなものもありました。一部地域の訪問介護など、その典型です。書類を書くような時間、移動時間もふくむ拘束時間も労働時間にはカウントされない。正直、若いひとが食っていけるような状況ではない。そうしたなかで、使命感で年配者が支えている状況があります。あるいは、年金では足りない年配者が支えている状況があります。

広島瀬戸内新聞2021年初秋号

◆ダブルワークとそのリスク

介護現場で「あるある」は「ダブルワーク」です。正社員、パートとわず、コンビニバイト、そして飲食店バイトがポピュラーです。「ダブルワークをしないと子どもの学費を出せない」「コロナで飲食店バイトが減って大変だ」などという声をうかがいます。

岐阜県では、女性介護職員がいわゆる接待を伴う飲食店のスタッフを兼業していて、それを背景に新型コロナウイルスのクラスターが発生した事例があります。

介護だけでもきついのに、ダブルワークでは体ももちません。結局、ほかの業界に移ったほうがいい、という決断をする人もおおくなります。

◆民主党にも裏切られた介護労働者

もちろん、介護労働者の処遇改善については国も取り組んではきました。しかし、焼け石に水のような状況です。

2009年度の介護保険制度の改定から処遇改善加算制度が導入されました。当時は自民党の麻生政権で、自民党も、民主党に政権をうばわれそうな情勢の中で、慌てて対応した面もありました。

そして、同年8月30日の衆院選で民主党が政権につきました。介護職員の給料がこれで改善される。当時はまだ、県庁マンでしたが、わたし自身、自分のことのように喜んだのを覚えています。

しかし、その期待はあっさり裏切られてしまいます。2011年3月11日の東日本大震災からの復旧・復興のためにという大義名分のもと、多くの民主党政権のマニフェストが反古にされていきました。

介護職員の給料アップもその例外ではありませんでした。2012年の制度改定で民主党政権打ち出した処遇改善制度は、麻生政権のそれから前進がまったくといっていいほど無い内容でした。当時はすでにわたしは県庁を辞して民間で介護事務の仕事をしながら、国政をめざして政治活動をしていました。職場の仲間の介護労働者のみなさまに力不足が申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

当時は、民主党内閣は、一瞬ですが女性閣僚ゼロでした。そして、女性労働者が多いがゆえに、冷遇されてきた介護労働者のさらなる処遇改善を先送りしたことに、わたしは、いたく失望していました。

「ああ、結局、民主党も現場のとくに女性労働者が多い現場のことは考えてくれていないのか?」

まわりの介護労働者も、良識的な経営者も民主党に失望していました。

◆お友達にはばらまき、介護には緊縮 再登板の安倍晋三さん

その結果、2012年12月、安倍晋三さんが、政権に復帰します。安倍晋三さんはアベノミクスということで、財政を出動するという触れ込みでした。

しかし、実際には、2015年実施の最初の介護保険改定では、介護報酬をマイナス改定しました。これは、我々介護労働者の働きへの評価を低めるものです。さらに、前年2014年施行の消費税増税が介護事業にも仕入れの価格上昇などのかたちで打撃を与えます。ちょうど、2014年末、わたしが介護職員としてはじめて現場で働きはじめたこともあり、非常に印象にのこっています。

皆様もすでにご承知のとおり、2012年末に再登板した安倍晋三政権は、安倍さんのお友達の怪しげな企業・団体には国費が湯水のように投入していました。しかし、介護には緊縮財政だったのです。

◆悪徳法人批判も結局は現場労働者いじめに悪用

この介護報酬カットの前年には、悪徳な社会福祉法人がやり玉に上げられることがおおくありました。それに財務省がのっかり、介護報酬カットを強行したのです。

たしかに、悪徳な社会福祉法人はあります。たとえば、地方議員が理事長で、介護職員の給料から政治献金をピンハネしている、などということは、地方へいけばいくほど日常茶飯事にありました。しかし、そういう法人をきちんと行政が監査する、あるいは、そういう法人の理事長が議員であるがゆえに、当該法人への監査があまくなる状況があるなら、そんな議員を議員に対して腰が引けている知事や市町村長もろとも、地元の有権者が選挙で打倒すればよいだけです。 財務省が悪徳議員を奇貨として、介護報酬カットを強行しても、苦しむのは結局のところ、現場の労働者です。そして、充分な介護をされないお年寄り・障がい者など利用者であり、ご家族です。

◆一定の修正も、ときすでに遅し

多くの介護労働者の仲間が結局、現場をはなれていきました。安倍さんは、一方で、2015年秋の総裁選で「介護離職ゼロ」を打ち出しました。家族の介護で仕事をやめざるをえない人をなくすというふれこみでした。そうであるならば、きちんとサービスを利用しやすくしないといけないし、そのためにはきちんと介護労働者の確保をしないといけないのです。しかし、安倍さんが2015年にやったことは、上記のように、まったくのあべこべでした。

2016年には野党が共同提案で介護職員の給料改善の法案を出しました。しかし、あっさりと否決されてしまいます。このとき、おおさか維新の会も反対にまわったことも、関西の皆様はとくにしっかりご記憶いただきたいです。

2018年の介護保険改定では一定程度修正はかけられました。しかし、おそすぎました。そして、そもそも、処遇改善加算を自体をかならずしも経営者が職員に還元をしない場合もあります。介護現場は疲弊しきっていました。そうしたなかで、2020年、新型コロナウイルス禍が襲いかかります。

◆疲弊する現場、いまこそ、抜本的な処遇改善を

新型コロナウイルス禍の中、介護現場は消毒などの業務で疲弊しています。そもそも、密着して仕事をしますから、密は避けられない仕事です。また、老人ホームなど施設のお年寄り・障害者も外出や家族面会が制限される中で、心身をよわらせています。元気だった方の認知症が急速に進み、食事中に食べこぼしたり、これまでは考えられない場面で転倒したりするなどの出来事も頻発しています。これらへの対応も現場労働者を圧迫しています。

介護職員には2020年に一度だけ、5万円の報奨金が国から都道府県経由で支給はされました。しかし、それでは足りないし、同じように大変な保育現場にはそれすらありませんでした。

訪問介護ではスタッフが高齢化しているため、感染をしたり、利用者に移したりすることを恐れて職員が次々と退職。他方でデイサービスなどは大幅な減収で存続の危機です。

これまでも、「男性のえらい人」中心の政治の中で、与野党双方におきざりにされがちだった介護・福祉現場労働者。コロナの前にすでに限界でしたがそこにコロナが追い打ちをかけたのです。

目前にせまった衆院選挙。介護・福祉労働者の処遇改善も各政党・政治家はまじめに議論し、取り組んでいただきたいものです。

◆介護職員の公務員化も有力な手段だ

せめて現在は他の産業の7割程度ともいわれる介護現場労働者の賃金を他の産業の平均並にしたいものです。そのためにもたとえば行政が公務員として介護職員を雇うことも進めるべきです。そもそも、介護保険制度ができるまでは公務員のヘルパーがいたのです。公務員として雇われる介護職員が一定割合いれば、そうすれば悪徳な経営者も人材をとられまいと労働条件を改善せざるをえなくなるでしょう。
これらのことは、なんでもかんでも民営化、公務員をへらすことを善としてきた、この20-30年くらいの流れを転換することにもつながります。今回の衆院選をその転換点にしたいものです。

◆介護現場出身の国会議員をいまこそ

これほど状況が深刻なのに改善されない背景にはやはりとくに介護現場出身の国会議員がいないことがあります。恵まれた家庭から東大・京大を経て高級官僚とか、経済力にものいわせやすい世襲政治家などにはわかりづらい問題であるのも事実でしょう。参院選広島再選挙でわたしが立候補した理由のひとつでもあります。衆院選にむけては、わたしは、山口4区で安倍晋三さんに挑む介護福祉士仲間の竹村かつしさんを応援している理由のひとつでもあります。

◆労働条件改善へ、労働者/利用者・ご家族/経営者の皆様の声をお待ちしております!

ただいま、介護・福祉現場で働く人の労働条件改善、そして社会的な評価の向上をめざして、働くみなさま、そしてご利用者・ご家族のみなさま、また経営者のみなさまからのご意見・想いをお待ちしております。以下のノートに掲載させていただきます。

◎さとうしゅういち「介護福祉現場労働者の社会的評価向上と抜本的な処遇改善を」https://note.com/ryubi2021/

以下まで、よろしくお願い申し上げます。

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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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