総務省は11月26日、2020年度分の政治資金収支報告書を公表した。それによると新聞業界が、自民党の清和政策研究会(安倍晋三代表)の議員を中心に146万円の政治献金を行っていることが分かった。

これらの政治献金の支出元は、日本新聞販売協会(日販協)の政治団体である日販協政治連盟である。日販協は新聞協会と連携して、再販制度を維持するロビー活動や新聞に対する軽減税率を適用させる活動の先頭に立ってきた団体である。両者は車の両輪関係にある。政治献金の詳細は次の通りである。(オレンジの背景で表示した議員は、清和政策研究会のメンバーである。)

日販協政治連盟からの献金一覧

献金額が最も多かったのは、山谷えりこ議員に対する40万円と、中川雅治議員に対する40万円である。山谷えりこ議員は、元産経新聞記者である。中川雅治議員は、国税庁調査査察部長などを経て政界に入った。国税局に強い人脈がある可能性が高い。

菅義偉首相(当時)に対しても10万円を献金している。支払いの名目はセミナー参加料である。そのセミナーはコロナウィルスの感染が拡大する昨年の12月11日に開かれた。

◆新聞1部に付き1円の募金

新聞業界による政界工作が始まったのは、1987年とする見方が有力だ。この年、中川秀直(自民、元日経新聞記者)議員らが、自民党新聞販売懇話会を結成した。この組織が、新聞業界によるロビー活動の窓口になったのである。当初のメンバーには、後に首相になる小渕恵三、森喜朗、羽田孜、小泉純一郎、と言った議員が含まれていた。石原慎太郎や小沢一郎、元NHK記者の水野清の名前もある。

日販協は、当時から新聞販売懇話会に対して政治献金を行ってきた。同会の会報『日販協月報』(1993年3月31日)によると、当時の理事が次のように政治献金の協力(募金)を販売店へ呼びかけている。

「自民党新聞販売懇話会の先生方には大変お世話になっているので、選挙の折には恩返しをするのが礼儀。そのためには交通費、文書通信費に相当な額が必要になるので、部当たり1円程度のご負担をお願いしたい」

「部当たり1円程度」とは、新聞1部に付き1円の募金という意味である。それゆえに、たとえば2000部を配達している販売店は、2000円の負担になる。3000部を配達している販売店は3000円の負担。

献金の目的は、当時導入されていた事業税の軽減措置を政治力で延長させることである。

◆メディアコントロールの温床とは

その後、自民党新聞販売懇話会の中心メンバーは、中川秀直から小渕恵三、山本一太、高市早苗といった議員になっていった。このうち山本議員と高市議員については、過去の政治資金収支報告書で、日販協政治連盟からの政治献金の受領を確認することができる。また小渕議員は、首相に就任していた時期に、新聞販売懇話会の会長を務めていた。

これらの議員は、再販制度の維持という新聞業界のアキレス腱の防衛に奔走してきた。新聞業界は経営上の弱点を政治家との関係を親密にすることによって、乗り切ってきたのである。

筆者は、このような客観的な構図が、日本の新聞ジャーナリズムを堕落させた客観的な原因だと考えている。記者個人の職能の評価や精神論は、枝葉末節であって本質的な問題ではない。癒着の構図こそが問題なのだ。

新聞研究者の故・新井直之氏は、『新聞戦後史』(栗田出版)の中で、戦前から戦中にかけて行われた言論統制のアキレス腱となっていたのが、公権力による新聞社の経営部門への介入であったことを指摘している。

販売店に山積みになった「押し紙」(広義の残紙)

新井氏は、日中戦争が原因で新聞用紙の生産高が減り続け、1938年に新聞用紙使用制限令ができたことを説明した後、「1940年5月、内閣に新聞雑誌統制委員会が設けられ、用紙の統制、配給が一段と強化されることになったとき、用紙統制は単なる経済的意味だけではなく、用紙配給の実権を政府が完全に掌握することによって言論界の死命を制しようとするものとなった」と指摘している。

新井氏は戦中の情況を現代に照らし合わせて、次のようにメディアコントロールの原理を指摘している。

「新聞の言論・報道に影響を与えようとするならば、新聞企業の存立を脅かすことが最も効果的であるということを、政府権力は知っていた。そこが言論・報道機関のアキレスのかかとであるということは、今日でも変わっていない」

◆「押し紙」が粉飾決算に該当する可能性

現在は、国策として新聞に対する軽減税率の適用、再販制度の維持、教育現場での新聞の使用を学習指導要領へ盛り込む政策、それに「押し紙」制度の黙認方針などが、メディアコントロールの温床になっている。

特に公権力が「押し紙」問題を逆手に取れば、強力なメディアコントロールの道具になる。と、いうのも新聞社の「押し紙」政策に本気でメスを入れれば、新聞社は販売収入の激減だけではなく、ABC部数の減少を招き、それに伴って広告収入の減少に直面するからだ。

さらに、「押し紙」の経理処理にも重大なグレーゾーンがある。「押し紙」が実際には販売していない新聞であるにもかかわらず、販売した新聞として経理処理しているわけだから、粉飾決算の疑惑がある。国税局から監視対象にされても不思議はない。国税局出身の中川雅治議員に献金をしてきた理由ではないか。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
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