2022年の広島県の転出超過(人口流出)は9207人で、2年連続で全国最悪となりました。

1月30日に総務省が発表した人口移動報告によると広島県の転出入の内訳は、他都道府県への転出者数が5万4924人(2021年比2373人増)でした。他方で他都道府県からの転入者数が4万5717人(2021年比325人増)でした。

 

広島県庁

外国人を統計に含めた2014年以降では9年連続の転出超過となっています。全国ワーストワンは2019年と2021年に続いて3回目です。

転出超過の9207人の内訳は日本人6044人、外国人3163人で、年代別では20~24歳が4014人、25~29歳が2046人となり、20歳代が全体の66%を占めています。この20代の流出は兵庫県に次いで2番目の人数です。

広島県内23市町で転出超過(人口流出)となったのは、広島市(2522人)、福山市(2404人)など19市町です。広島市は政令指定都市の中では神戸市(3174人)に次ぐワースト2の人口流出となりました。広島県内での転入超過はまだ、ベッドタウンとしての発展も続いている廿日市市(238人)など4市町にとどまりまっています。

◆外国人も国内他県へ流出

広島県は日本人、外国人ともに国内の他の都道府県への転出が多いのが特徴です。

一方で、外国から広島県に対しては1万31人の転入超過です。このことをとらえて知事の湯崎英彦さんは、「社会動態全体をみたものとは言えない」としています。だが、それでも、外国人が3163人も他の都道府県に流出してしまっているのです。実際、筆者の勤務先でも、広島に来たばかりの外国人労働者が一年もたたずに辞めて東京の介護施設へ転職するケースが多くなっています。

◆「給料の安さ」と「アップデートの遅れ」の無限ループに陥った広島

筆者は、2022年の人口流出2年連続全国最悪という結果は、予想していました。これまでの現知事や教育長の政治、そしていわゆるオール与党体制で知事をチェックできなかった現職県議らのいい加減な政治の結果、と一言で斬ってしまえば簡単です。

だが、もう少し、要素を分けて考えてみましょう。若者が他都道府県に流出してしまう要素としては一言でいえば「給料の安さ」(経済面)があるでしょう。

もう一つは、「アップデートの遅れ」です。地域社会のアップデートが遅れているということは、若者にとって、特に暮らしにくい社会であるということです。

一方で、給料の安さで若者が流出することにより、若者の比率が下がり、若者の意見が反映されず、アップデートが遅れるという面もあります。そして余計に若者が定着せず、アップデートが遅れるということです。

筆者は、2000年に広島県庁職員として東京からUターンして23年。この23年間、広島では、上記のような「給料の安さ」「アップデートの遅れ」の無限ループが発生しているように痛感します。

◆若者減少を招いた公務員削減

広島県は、たびたびご紹介しているように、00年代にそれまで86あった市町村を23に減らしました。市町への権限移譲をするということで、県庁職員は採用を一時は年間ゼロにするという形で削減。他方で、市町も仕事は増えたのですが「合併で効率化しただろう」ということでこちらも削減。結果として大幅に公務員は減りました。

公務員新規採用は若者の雇用の大きな受け皿です。しかし、過剰な公務員削減の上、「生首は切れない」以上、新規採用は減らすしかない。そういう中で、若者も地域から激減していきました。特に、合併された旧市町村ではひどいものがありました。
 
◆過去の成功体験卒業できずアップデート遅れ

一方、筆者が選挙運動などで県内をお邪魔して痛感するのは、「1975年頃の成功体験」から卒業できていないということです。この1975年というのは筆者が生まれた年であり、カープが山本浩二、衣笠、外木場らの活躍で初優勝し、県民一人当たりの所得が全国3番目になって栄華を誇った時代です。広島が製鉄をはじめ、原発製造も含む重厚長大産業で栄えた時代です。現代は、たとえ工業製品であってもソフトウエア部分が製造コストの7割を占めるとも言われています。また、サービス業の割合も高まっています。一方で、直近では食料やエネルギーの安全保障が重要になっています。いずれにせよ、重厚長大が栄華を誇った時代の成功体験に胡坐をかいている場合ではないのです。

また、その時の成功体験を持っている年配者の方が、若手を押さえつけてしまう社会の雰囲気もあります。これは別に自民党など与党だけでなく、自称野党第一党やその支持基盤の労働組合にも根強く感じます。筆者は、全国でとくに女性議員の応援に回りましたが、広島の政治の政策不在ぶりは群を抜いていました。あの河井案里さんの事件も起きるべくして起きたのです。

その延長線上に、たとえば、「産業廃棄物への規制が全国一緩い」「県による子ども医療費補助の対象が小学校就学前までに限られる」などの旧態依然たる政治になっています。

◆改革を装った知事や教育長も混乱招いただけ

一方、現知事の湯崎英彦さんには、筆者も2009年の初登場の時は期待してしまいました。IT企業ご出身ということで、「古臭い広島をアップデートしてくれるのではないか?」と考えた筆者も一票を湯崎英彦さんに投票しました。

 

高速道路5号線二葉山トンネル

しかし、湯崎さんが期待に応えてくれたのは住民参加で「鞆の浦埋め立て架橋」問題で、埋め立て架橋を取りやめて山側トンネルに変更するプロセスまででした。高速道路5号線二葉山トンネル問題では「住民を犠牲にしてまで工事することはない」と言いながらトラブル多発。それに対して湯崎さんは木で鼻を括る対応です。

また、湯崎さんが一本釣りしてきた平川理恵教育長は、学校現場で教員が不足し、非正規だらけで授業も回らない学校が多いのに、「予算がない」と非正規教員の正規化を拒否。一方で、県外のご自分のお友達のNPOや会社に県費を流し、地方自治法違反や官製談合防止法違反の容疑で告発されています。

◆「守旧派」と「ネオリベ派」の最悪のハイブリッドで広島衰退に拍車

総合すると、以下のようなことが言えます。

広島の指導層守旧派Aグループ=成功体験から卒業できていない古いタイプの役人や議員、一部大手組合幹部(いわゆる労働貴族)。旧来のモデルに基づいた開発を進め、若手を押さえつけてきた。建武の新政における北畠親房らに相当。

広島の指導層ネオリベ派Bグループ=「旧弊打破」に見えた湯崎知事や平川教育長。また、若者を非正規という形で疎外したまま、県外にお金を流し、県の衰退に拍車。建武の新政における後醍醐帝に相当。

そして、Aグループが主導してきた高速道路二葉山トンネルなどにBグループの知事は待ったをかけない。

Bグループのネオリベ派の知事や教育長の暴走に対しては、Aグループの守旧派もこれまでまったくチェックをしなかった(だから官製談合事件が起きた。)。

※関連記事 http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=45764

その結果として、社会風土は権威主義、経済政策はネオリベという最悪のハイブリッドになった。広島から若者が流出するのも当然です。

◆給料アップとアップデートの好循環を

これを脱却するには、逆に言えば、給料アップと社会のアップデートの好循環をつくるしかありません。

経済面では、
・教育長がやっているような怪しげな?外部委託を止め、正規公務員をふやし、県内定住の若者をふやす。
・農業など食料生産に携わる人に所得補償やコスト補償を行い、若者定住と食料自給率向上を図る。
が現実的に行政が直接的に関与できるやり方でしょう。また、
・使途が決まらない空きビル、空き工場用地などについて、若者に利用方法を任せるのも、手です。こうしたことで、若者に定着してもらうことは地域に刺激になり、アップデートにつながります。

政治面からのアップデートの加速については、今の現職の議員を総入れ替えするくらいの勢いの判断を有権者できれば展望が大きく開けるでしょう。ただ、現実問題としては、例えば、有権者として賢くなる教育を子ども時代からする、くらいのことを粘り強く続けるしかないとも考えています。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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