片島聡志が海老原竜二を多彩に攻めて圧倒、フリーから参加の存在感を示す。
小清水涼太も連続出場で、棚橋賢二郎の強打を封じて判定勝利。
チャンピオンの真価問われる剱田昌弘は、積極性見せるも決め手に欠ける引分け。
喜多村美紀はミネルヴァ王座挑戦に繋げ、僅差ながら手数上回った判定勝利。
笹谷淳が引退、テンカウントゴングに送られる。

◎野獣シリーズvol.2 / 4月15日(土)後楽園ホール17:30~21:00
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第12試合 55.0kg契約 5回戦

NKBバンタム級1位.海老原竜二(神武館/1991.3.6埼玉県出身/ 54.6kg)
26戦14勝(6KO)12敗
      VS
片島聡志(元・WPMF世界スーパーフライ級C/KickLife/1990.10.19大分県出身/ 54.85kg)
53戦28勝(2KO)20敗5分
勝者:片島聡志 / TKO 4R 2:11
主審:前田仁

開始から両者のパンチ、ローキック、前蹴りで探り合いの中、海老原竜二はパンチ中心に出るも片島聡志にやや圧され気味。片島はオールラウンドプレーヤーでパンチ、ヒジ打ちでもタイミングがいいヒット。第3ラウンドには片島の右ヒジ打ちで海老原は右目尻辺りをカット。更に片島がパンチ連打で追ってヒザ蹴りでスタンディングダウンを奪った。

第4ラウンドには劣勢の海老原を追って、組んでヒザ蹴りボディー攻めでスタンディングダウンを奪い、更に攻勢を続けてローキックで初めてマットに転ばすノックダウン奪うと海老原は呼吸整えて立ち上がるも、これまでのダメージを見たレフェリーがカウント中にストップをかけて試合終了となった。

試合後、海老原の強さしぶとさについて片島聡志は、
「噂には聞いていましたけど、気持ちが強いですね。」
さらに「ヒジ打ち期待していると周囲に言われたので調子に乗ってやっちゃいました。」と語った。技の多彩さ、戦略的に優ったことは、いろいろなテクニシャンと戦ってWPMF世界戦までの経験値があった結果だろう。

徐々にペースを掴み、攻勢を続けた片島聡志の右ストレート

片島聡志が終盤のヒザ蹴り猛攻で海老原竜二はグロッギー状態

◆第11試合 ライト級3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/1987.11.2新潟県出身/ 60.95kg)
20戦10勝(7KO)9敗1分
VS
小清水涼太(KINGLEO/1999.3.30富山県出身/ 61.0kg)
5戦4勝(2KO)1敗
勝者:小清水涼太 / 判定0-3
主審:亀川明史
副審:加賀見27-29. 鈴木28-29. 前田27-29

小清水涼太は前回2月出場で蘭賀大介を右フック気味のパンチ一撃でインパクトあるTKO勝利しての連続出場。

ローキック中心に牽制し合う両者。小清水涼太の長身を利した前蹴りとヒザ蹴り、パンチがやや目立つ展開。棚橋賢二郎は強打を温存している感じ。小清水は飛びヒザ蹴りも見せる。主導権奪った小清水の左ストレートがヒットすると棚橋は腰が落ちかけスタンディングダウンを取られる。ここから棚橋もパンチ勝負に出るも小清水は蹴りで凌ぎ、パンチも打ち返して見せる。

第3ラウンド、棚橋がパンチで出るも縺れて倒れる際、偶然のバッティングから小清水がマットに後頭部を打ったか脳震盪を起こす。インターバルを与えて再開するもダメージが響いて棚橋の攻勢に転じてしまうが、何とか打ち返し凌いで逃げ切り、小清水が判定勝利。

長身を利した展開で棚橋賢二郎にハイキックで攻める小清水涼太

終盤、偶然のバッティングで苦戦したが、内容的には完勝の小清水涼太

◆第10試合 73.5kg契約 5回戦

NKBミドル級チャンピオン.釼田昌弘(テツ/1989.10.31鹿児島県出身/ 73.3kg)
21戦6勝(1KO)11敗4分
VS
土屋忍(kunisnipe旭/1986.12.11千葉県出身/ 72.35kg)
17戦9勝6敗2分
引分け 1-0
主審:高谷秀幸
副審:前田30-28. 鈴木29-29. 加賀見29-29

初回は離れた距離からパンチとローキック中心の攻防。第2ラウンドには釼田昌弘は積極的にパンチや蹴りから組み付いてヒザ蹴りに出て転ばす展開も見せる。土屋もローキックやミドルキックで優勢に立つチャンスはあっただろうが、剱田昌弘のしつこい接近戦にリズムを狂わされる。しかし剱田昌弘は土屋を弱らせるに至らない決め手の無い展開で終了。

インパクトある展開を見せたい剱田昌弘は攻め切れずドロー

◆第9試合 60.0kg契約3回戦

半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/ 60.0kg)
26戦9勝(4KO)14敗3分
VS
蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 59.9kg)
6戦4勝(3KO)1敗1分
勝者:蘭賀大介 / 判定0-3
主審:加賀見淳
副審:高谷26-30. 前田26-30. 亀川26-30

初回はパンチと蹴りの互角の流れの中、第2ラウンドに蘭賀大介が左ストレートでノックダウンを奪い、第3ラウンドには蘭賀が右ストレートから連打で半澤信也の上半身をロープの外に押し出すとノックダウンとなってポイント的には蘭賀が大差判定勝利となった。

パンチと蹴りのコンビネーションで優った蘭賀大介

◆第8試合 女子ライトフライ級3回戦(2分制/ミネルヴァ推薦試合)

ミネルヴァ・ライトフライ級1位.喜多村美紀(テツ/1986.6.27広島県出身/ 48.3kg)
27戦12勝11敗4分
VS
同級5位.Yuka☆(SHINE沖縄/1984.7.3沖縄県出身/ 48.65kg)8戦4勝4敗
勝者:喜多村美紀 / 判定2-1
主審:鈴木義和          
副審:高谷30-29. 前田30-28. 加賀見29-30

初回、パンチとローキック中心に積極的な打ち合いに出る両者。
第2ラウンドには喜多村美紀のパンチヒットも、パワーの無さで差が出難い展開が続き、判定は2-1に分かれるも喜多村美紀の前進したヒットがやや優勢点を奪った。

僅差ながら的確なパンチと蹴りが勝利を導いた喜多村美紀

◆第7試合 女子バンタム級3回戦(2分制)

Mickey(ピリカTP/1992.12.11福岡県出身/ 53.3kg)5戦5勝(2KO)
VS
MEGUMI KICK SPARK(KICK SPARK/1979.12.4大阪府出身/ 53.25kg)3戦3敗
勝者:Mickey / TKO 1R 1:53
主審:前田仁

離れた距離でパンチと蹴りの様子見の攻防から、Mickeyがコーナーに詰めてパンチ連打からヒザ蹴り。組み合ってヒザ蹴りからやや離れたところでの右ストレートヒットでMEGUMIが倒れるとダメージ深いと見た様子でノーカウントのレフェリーストップとなった。

5戦全勝となったMickey、女子として倒す力も付いてきた今後のKOに期待

◆NKBウェルター級1位、笹谷淳引退セレモニー

笹谷淳は1975年3月17日、東京都出身。2002年11月デビュー。2010年10月、J-NETWORKウェルター級王座に就いた。

今年2月18日にはNKBウェルター級王座決定戦で、カズ・ジャンジラに判定負けがラストファイトとなった。

連盟渡邉信久代表やジム・後援関係などからの記念品授与の後、マイクを持っての挨拶では6分間に渡るスピーチをメモなど用意せず、一度もとちることなく20年間の自身の想いを語り続けた立派な挨拶だった。この後、テンカウントゴングに送られリングを去った。62戦29勝(10KO)31敗2分。

引退テンカウントゴングを聴いた笹谷淳、スピーチも貫禄があった

◆第6試合 バンタム級3回戦

兵庫志門(テツ/1996.4.4兵庫県出身/ 53.2kg)11戦4勝(1KO)5敗2分
VS
中島隆徳(GET OVER/2005.4.8愛知県出身/ 52.75kg)6戦2勝(1KO)3敗1分
引分け 0-0
主審:加賀見淳
副審:鈴木30-30. 高谷30-30. 前田30-30

◆第5試合 ミドル級3回戦

夏空(NK/1999.7.24大阪府出身/ 72.4kg)3戦3勝(1KO)
VS
TOMO・JANJIRA(JANJIRA/1992.1.12京都府出身/ 72.25kg)1戦1敗
勝者:夏空 / TKO 2R 0:40 / カウント中のレフェリーストップ
主審:高谷秀幸

◆第4試合 55.0kg契約3回戦

野村リトル知生(TEAM Aimhigh/1999.1.4愛知県出身/ 54.6kg)3戦2勝1敗
VS
田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 54.85kg)2戦2敗
勝者:野村リトル知生 / 判定2-0
主審:鈴木義和        
副審:亀川29-29. 前田30-27. 高谷30-28

◆第3試合 ライト級3回戦

青山遼(神武館/1999.2.5埼玉県出身/ 61.05kg)3戦3敗
VS
津田宗弥(クロスポイント吉祥寺/1980.1.8神奈川県出身/ 60.75kg)1戦1勝(1KO)
勝者:津田宗弥 / KO 2R 1:15 / 3ノックダウン
主審:加賀見淳

◆第2試合 52.0kg契約3回戦

滑飛レオン(テツ/2006.12.23岡山県出身/ 52.0kg)4戦3勝(2KO)1敗
VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 51.85kg)1戦1敗
勝者:滑飛レオン / 判定3-0
主審:前田仁
副審:鈴木30-25. 高谷30-25. 加賀見30-25

◆第1試合 ウェルター級3回戦

吉瀧光(KINGLEO/1993.7.11富山県出身/ 66.25kg)6戦1勝(1KO)2敗3分
VS
健吾(BIG MOOSE/199310.10千葉県出身/ 66.3kg)1戦1勝
勝者:健吾 / 判定0-2
主審:亀川明史
副審:鈴木29-29. 高谷28-30. 加賀見28-30

《取材戦記》

マッチメイク一つ一つにドラマ造りが見えるNKBシリーズ戦。連続出場で2連続ノックアウト(TKO)勝利した片島聡志の新たなマッチメイクに繋がりそうである。

剱田昌弘はチャンピオンとしての自覚が芽生えたか、縺れ合ったり転ばしに行ったりではあるがパンチや蹴りに圧力も優って来た感じがあった。負け越し戦績はやがて逆転に進むだろう、とは言い切れないが、勝率が上がることを期待したい。

次回、日本キックボクシング連盟興行「野獣シリーズ」は6月17日(土)に後楽園ホールで開催予定です。

片島聡志を囲んだ陣営勝利のポーズ

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

月刊『紙の爆弾』2023年5月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B00BZ6IWE4/