ラストファイトと引退式、訣別のリング。

海老原竜二は2021年12月11日に王座決定戦で龍太郎(真門)を左ハイキックで倒し、10月からの4人トーナメントを制しての初戴冠。2022年10月29日、初防衛戦で森井翼(テツ)に敗れ陥落したが、パンチが得意の“生粋の喧嘩屋”の異名を持ってNKBエースの一角を務めて来ました。

有終の美は飾れずも、ラストファイトに相応しい完全燃焼のノックアウト(TKO)負けは清々しい姿であった。

◎冠鷲シリーズ vol.2 / 4月20日(土)後楽園ホール17:30~20:53
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

(戦績はこの日のプログラムを参照し、この日の結果を加えています。石川直樹は絆興行より参照)

◆第12試合 55.0kg契約 5回戦

 

勢い付いて来た石川直樹の飛びヒザ蹴り、更にヒザ蹴りの攻勢は続く

NKBバンタム級1位.海老原竜二(第9代Champ/神武館/1991.3.6埼玉県出身/ 54.9kg)
27戦14勝(6KO)13敗
       VS
石川直樹(元・日本フライ級Champ /Kickful/1986.8.18埼玉県出身/ 54.85kg)
47戦27勝(13KO)10敗10分
勝者:石川直樹 / TKO 3ラウンド 1分46秒
主審:鈴木義和

パンチの海老原竜二とヒザ蹴りの石川直樹。どちらが主導権を握るかが見所の攻防は、両者のローキックと前蹴りでの様子見から、次第に距離が縮まると石川直樹が首相撲から崩し転ばす流れに移っていく。海老原は蹴りからパンチを狙うが、石川はハイキックも使う蹴りでしっかり対応。

第2ラウンドには更に石川直樹の首相撲の展開に移っていくが、組み合うとすぐブレイクが掛かり、組んでジワジワ攻めるヒザ蹴りがやり難い展開に陥った。次第に苛立ち、レフェリーに「ブレイクが早い!」と訴えるも聞き入れられず、それでも至近距離でヒザ蹴りを入れ、素早く組み付いて崩し転ばす技は光った。

ボディーが効いている海老原は転ばされてからの立ち上がりも次第に遅くなり石川の飛びヒザ蹴りでロープ際に追い込まれ、更にヒザ蹴りを受け2度のノックダウンを奪われてしまう。それでも懸命に立ち上がり諦めない姿で逆転を狙う。

第3ラウンドには、石川の伸びあり突き刺す意味を持つヒザ蹴り“テンカオ”が再び海老原のボディーを捕らえると、立ち上がるもファイティングポーズを構えるに至らず、レフェリーストップが掛かった。

海老原竜二の右ミドルキック。持っている技は出し尽くした

首相撲からのヒザ蹴りや転ばしは石川直樹の技、組まれる方は苦しい

 

試合後、引退セレモニーに臨んだ海老原竜二、家族やジム関係者に感謝を述べた

試合後、ボディーのダメージは回復し、グローブとバンテージを外され、無事に引退セレモニーに移り、海老原竜二の挨拶に入った。話すことは何も用意してなかったという中、4分程の熱い語り口。

「引退試合だったんですけど、しょっぱい試合しちゃって、最後、派手に散っちゃって申し訳ないです。」と応援団が居る北側に向かって語り続けた。「16歳の時、親父死んじゃって、オカン一人で育ててくれて、ここまでやって来れたんですけど、ちょっとは親孝行出来たかなと思います。オカン有難う!」

今後、活躍する選手の皆には「やるかやられるかの試合を体現して欲しいと思います。」と想いを告げ、最後は「今迄最高の格闘技人生でした。NKB最高!」と締め括ってテンカウントゴングに送られた。

リングを下りた後は「蹴られてもアバラを折られても勝ちたかったので、もうちょっと打ち合えればと思いましたが、まあ全部出し切ったので悔いは無いです。」と語った後、石川直樹の控室を訪れた。海老原竜二のヒジ打ちも石川直樹の額を掠めており、その互いの狙った技の感想を言い合ったり、石川直樹は「引退試合に選んでくれて有難う。」といった戦った者同士の爽やかさが広がっていた。

◆第11試合 66.7kg契約3回戦

石川直樹に「前回3月31日の絆興行から2週間(実際は20日間)の間隔でしたけど、調子はどうでしたか?」と問うと、「調子は良かったです。脛はちょっと痛かったですけど、試合となれば関係無くて、また2週間程度で試合やれと言われても全然出来ますし、何なら明日にでも出来ます」と意欲的。海老原竜二を倒した、いずれのノックダウンもヒザ蹴りで実力発揮。組み合うとすぐブレイクが掛かることには納得していない様子だった。

NKBウェルター級チャンピオン.CAZ JANJIRA(JANJIRA/1987.9.2東京都出身/ 66.35kg)
43戦20勝(4KO)16敗7分
          VS
テーパプット・新興ムエタイ(元・BBTV 7chスーパーフェザー級Champ/タイ/ 64.8kg)
引分け 0-0
主審:高谷秀幸
副審:加賀見30-30. 前田30-30. 鈴木30-30

ムエタイテクニシャンのテーパプットに対し、蹴られても蹴り返すカズ・ジャンジラ。組み技やヒザ蹴りで優るテーパプットの上手さは発揮されつつ、カズ・ジャンジラはパンチの圧力で優ったが、採点は全く差が付かずの引分け。もう少し振り分けるならば29-29になりそうな展開ではあった。

カズ・ジャンジラも果敢に攻めたテーパプットとの攻防、ムエタイ路線は続くか

最終ラウンドはカズ・ジャンジラがテーパプットを追い込んだパンチヒット

◆第10試合 63.0kg契約3回戦

NJKFライト級3位.TAKUYA(K-CRONY/1993.12.31茨城県出身/ 62.85kg)
16戦7勝(1KO)8敗1分
        VS
NKBライト級3位.蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 63.0kg)
9戦6勝(3KO)2敗1NC
勝者:蘭賀大介 / 判定0-3
主審:笹谷淳
副審:鈴木28-29. 前田28-30. 高谷28-29

蹴り技で圧力掛けたTAKUYAは組み技でのヒザ蹴りも優った。蘭賀大介はパンチの圧力で優り、下がるTAKUYAを追いかける展開に大振りになりながらもパワフルなパンチで追い続けて判定勝利。

蘭賀は試合後、「勝ったんですけど倒しに行こうとし過ぎて大振りになって、かなり雑になったことが多くなって反省しています。次は6月も出場予定なので頑張ります。」と応えた。

蘭賀大介の右ストレートがTAKUYAにヒット、勢いが増して行った

KO出来ず、マットを叩いて悔しがる蘭賀大介

勝利した蘭賀大介、アグレッシブな試合は好感度上昇中

 

後藤啓太のヒザ蹴りが大月慎也にヒット、新潟から期待のスター誕生

◆第9試合 ウェルター級3回戦

大月慎也(TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/ 66.6kg)23戦9勝(4KO)10敗4分
      VS
後藤啓太(拳心館/1997.8.29新潟県出身/ 66.55kg)4戦4勝(2KO)
勝者:後藤啓太 / 判定0-3
主審:加賀見淳
副審:鈴木27-30. 前田28-30. 笹谷26-30

上背で優る後藤啓太の伸び有る蹴りが大月慎也に圧力を掛け、第2ラウンドには右ミドルキックでロープ際に追い込んで右ストレートヒットからヒザ蹴り連打でグロッギー気味の大月にパンチを浴びせたところでスタンディングダウンを奪った。更に離れてハイキックやミドルキック、組み付けばヒザ蹴りで攻勢を維持し判定勝利した。

◆第8試合 ミドル級3回戦

土屋忍(kunisnipe旭/1986.12.11千葉県出身/ 72.25kg)18戦9勝6敗3分
      VS
夏空(NK/1999.7.24大阪府出身/ 72.45kg)5戦4勝(2KO)1分
引分け 0-1
主審:高谷秀幸
副審:鈴木29-29. 前田29-29. 笹谷28-29

アグレッシブにパンチと蹴りの互角の攻防も、第3ラウンドには疲れ果てたような攻防で最後までせめぎ合った。第2ラウンドは土屋忍がやや優勢。第3ラウンドには夏空がロープに詰めてのパンチ連打が優勢を保った流れで引分け。

◆第7試合 バンタム級3回戦

シャーク・ハタ(秦文也/テツ/1987.10.20大阪府出身/ 52.45kg)10戦4勝4敗2分
      VS
ベンツ飯田(TEAM Aimhigh/1997.4.17群馬県出身/ 53.35kg)16戦3勝(1KO)9敗4分
引分け 1-0
主審:加賀見淳
副審:鈴木29-29. 前田30-29. 高谷30-30

両者の蹴りがアグレッシブな攻防を見せたが、的確な有効打は無く、差が出難い展開で終わった。

◆第6試合 ライト級3回戦

KEIGO(BIG MOOSE/1984.4.10千葉県出身/ 60.75kg)23戦7勝10敗6分
      VS
山本太一(ケーアクティブ/199512.28千葉県出身/ 61.0kg)16戦6勝(4KO)7敗3分
勝者:山本太一 / 判定0-3
主審:笹谷淳
副審:高谷29-30. 前田29-30. 加賀見28-30

両者のアグレッシブな攻防も、やや消極的なKEIGOの動きに対し先手を打つ山本太一の攻勢で判定勝利。

◆第5試合 52.5kg契約3回戦

田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 52.35kg)5戦3敗2分
      VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 52.3kg)4戦1勝2敗1分
勝者:荒谷壮太 / 判定0-3 (27-30. 28-30. 28-30)

◆第4試合 57.50kg契約3回戦

KATSUHIKO(KAGAYAKI/1975.11.13新潟県出身/ 57.3kg)6戦2勝(2KO)3敗1分
      VS
堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 57.1kg)5戦3勝1敗1分
勝者:堀井幸輝 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

◆第3試合 ウェルター級3回戦

健吾(BIG MOOSE/1993.10.10千葉県出身/ 66.35kg)4戦3勝(1KO)1敗
      VS
皓太(TEAM Aimhigh/1997.9.21栃木県出身/ 68.6→68.4kg=1.72kg超/減点3)2戦2敗
勝者:健吾 / KO 2ラウンド 2分56秒

健吾が徹底したヒザ蹴り連打で皓太を倒し3ノックダウンによるノックアウト勝ち。

◆第2試合 バンタム級3回戦

磯貝雅則(STRUGGLE/1986.11.29東京都出身/ 53.35 kg)4戦2勝2敗
      VS
杉山海瑠(HEAT/2009.6.5静岡県出身/ 52.9 kg)1戦1勝(1KO)
勝者:杉山海瑠 / TKO 2ラウンド2分13秒 /

杉山海瑠のヒジ打ちによる磯貝雅則の左目瞼をカット、ドクターのチェックの後、パンチによるものか、負傷箇所の悪化で、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

◆第1試合 ライト級3回戦

龍志(テツ/1995.12.12大阪府出身/ 60.95kg)5戦2勝3敗
      VS
樋口雄生(ケーアクティブ/1995.4.14東京都出身/ 60.9kg)1戦1敗
勝者:龍志 / 判定3-0 (29-27. 28-27. 29-27)

《取材戦記》

「勝って引退は許さない。引退する奴は負けて行けばいいので、これで良かったです。」と言う興行関係者も居て、華やかさより完膚なきまで倒されて燃え尽きた方が、去り際の感動や格闘技の厳しさが表れるという考え方だろう。過去のテーマでも触れていますが、引退試合(即引退式)も、倒されて現役生活を終える選手は多かった。担架で運ばれるほどのダメージを負ったら引退式どころではなくなりますが、公式戦直後の引退式は感動が強く残るものでしょう。

勝って華々しい引退式は、「まだまだ出来るじゃないか!」と言われるのも仕方無いところで、チャンピオンのまま引退や無敗のまま引退も「惜しい!」と言われることを理想に想う選手はいるかもしれません。

今回の引退セレモニーは海老原竜二の御挨拶とテンカウントゴングだけという簡潔なものでした。セレモニーは終了した後に、家族がリングに上がって花束を贈り記念撮影、ジム関係者が上がって記念撮影とスケジュールに無い自由な振る舞い。これはセレモニーの一環としてやるべきだった。更に渡邊信久代表と興行部担当の竹村哲氏の贈る言葉があれば引退式としてのグレードも上がったでしょう。或いは会場の事情で21時を越えたくなかったのかもしれませんが。

次回、日本キックボクシング連盟「冠鷲シリーズ」は6月29日(土)に後楽園ホールに於いて開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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