デジタル鹿砦社通信をご覧の老若男女諸君、ごきげんよう。喫煙推進委員会の原田卓馬です。今回はタバコの葉に使用されている添加物・香料のお話であります。

◆ タバコの香りは、何の香りなんだろうか

皆さん、どんなタバコがお好きですか? 私が普段から吸うタバコはシャグ(手巻き用の刻んだタバコ)なら、あんまり決まってないけどだいたいナチュラルのヴァージニアブレンドシガレット(紙巻きタバコ)なら、アメリカンスピリット。たまにインドネシア産クレテック(クローブタバコ)のグダン・ガラム。

あとは、見た事のない銘柄があれば食わず嫌いしないでとりあえず買って吸ってみます。しょっちゅう貰いタバコもしますし、面倒くさい時なんかは灰皿をあさったり、究極は道に落ちてるシケモクだって吸っちゃいます。結構なんでもいいんです。

手巻きタバコを始めたばかりの頃はベリー系やグリーンティー(シトラスフレイヴァー)、ローズなどの香料を添加したものを色々試しつつ吸っていたのですが、ある時自分が何を体に取り込んでいるのかわからなくて、香料無添加のタバコに落ち着きました。

健康に良いか悪いかということも多少考えなくもないですが、化学合成したケミカル香料よりも、タバコ本来の素材の味や香りの方が面白い年頃になったのでしょうね。国や地域、気候風土によって好まれる香りの傾向が違いますし、生産されるタバコ葉の質も変わります。フランスのジタンやゴロワーズといった黒タバコは、日本だと苦手な方が多いみたいですが、文化の多様性っていいですね。

◆ タバコ香料の歴史は意外と古い

2004年にハイライトのメンソールタイプが発売されたのだが、そのテレビCMで『ラム酒が香るメンソール』というキャッチコピーが印象的だったのを覚えています。

「へ?、タバコにお酒で香りつけたりするんだ?!そういや、キャスターとかもヴァニラの香りがするよな?!」

なんて思ったものですが、当時はテレビでタバコのコマーシャルがやっていたのですね。たった10年でだいぶ時代は変わりました。

色んなフレイヴァーで香り付けをしたシガレットというのは数多く流通しているのはなんとなく知っていますが、食品のようにパッケージに成分表示があるわけでもなく実際のところ何を吸っているのかよくわかりません。

知らないことは知りたい! こうなったら徹底的に調べてやるぞと近所の図書館に出向いて持ち出し禁止の棚で782ページに渡る分厚い本を発見!

『たばこの事典』(TASCたばこ総合研究センター/山愛書院2009年)によると、
「1518年にスペイン人がメキシコを探検したとき、先住民がタバコとフウ(マンサク科フウ属植物)の樹液を一緒に葦に詰めたもの(葦シガレット)を吸っていたとの記録が残されている──」。

フウというのは、『中薬大辞典』(1978年版)によると、
「20年以上 の大木を選び、7~8月の暑い時期に樹皮を開き、11月~翌年3月の間に流出する樹脂をとり、自然乾燥か日干しとする。乾燥した樹脂は大小ふぞろいの楕円形か球形顆粒、淡黄色で半透明、質もろく砕けやすい。すがすがしい香りかおり、燃やすと香気はさらに強い。この樹脂を生薬名楓香脂、中国では白膠原香ともいう──」。

すがすがしい香り、燃やすと強い香気、まさしく香料である。
「16世紀のロンドンではラム酒、砂糖、あるいは糖蜜などで甘くして縄状に撚ったたばこのほか、ワインや糖蜜に漬けたロール状の圧搾たばこが市場に出まわっていたという記録もある──」。

おお、例のラム酒だ。ワインもある。大航海時代に喫煙文化がヨーロッパに伝わり、わずかな期間でタバコに香料を添加したのか。

日本の場合はどうだろうか?

「1889年(明治22年)に村井兄弟商会が発売した『サンライス』は、米国直輸入の加香方式を取り入れたが、内容は明らかではない。しかし、アメリカンタバコ社の日本駐在員で村井兄弟商会の役員でもあったE.J.Parishのメモには、1899年頃の日本製シガレットに使われたものとして、グルコース、ショ糖、甘草、ラム酒、トンカ豆、グリセリンが挙げられていると言われ、その後の日本製品の製造の際、大いに影響をもたらしたものと思われる──」。

村井兄弟商会というのは、京都の民営のタバコ会社で、ライバル企業の岩谷商会と市場シェアを競っていました。明治37年に政府によるタバコ専売制がしかれるまで『LEADER』や『HERO』などの紙巻きタバコを製造販売していました。

グルコース、ショ糖は要するに砂糖の仲間だ。甘草はリコリスとも呼ばれ、砂糖の50倍の甘さを誇るグリチルリチンを含み、甘味料や漢方薬としても用いられている植物だ。欧米では菓子や、ルートビア、リキュールなどで広く知られている。スペインでは古くから防腐用に甘草エキスを葉タバコに添加していたという。

トンカ豆というのが面白い。桜餅の香りの天然成分でもある、有機化合物のクマリンが含まれている。クマリンの香りは、バニラ、杏仁、キャラメル、プラリネ、クローブ、ジュニパーベリー、ラム、ブランデーなどに喩えられる。

旨そうじゃないか!
しかし、残念ながら発ガン性の問題で現在は使用されていないようだ。

タバコに香料はつきもののようだが、2014年現在のタバコはどうなんだろうか。毎度おなじみ、JTのホームページをチェックしてみると、200種類近い添加物リストの大半は香料だ。以下、読み飛ばして構わないのでコピペしておきます。
http://www.jti.co.jp/cgi-bin/JT/corporate/enterprise/tobacco/responsibilities/guidelines/additive/tobacco/index.cgi

◆JT添加物 香料一覧

アセトアニソール
2-アセチル-3-メチルピラジン
2-アセチルピラジン
2-アセチルチアゾール
アルファルファエキストラクト
アミルアルコール
酪酸アミル
トランス-アネトール
スターアニス油
リンゴエキストラクト
ミツロウアブソリュート
ベンアルデヒド
ベンゾインレジノイド
ベンジルアルコール
安息香酸ベンジル
プロピオン酸ベンジル
2-ブタノール
4-(2-ブテニリデン)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン
酪酸ブチル
酪酸
カカオマス、ココアエキストラクト、ニブティンクチャー、パウダー、シェル
カラメル
カルダモン油
キャロブアブソリュート、エキストラクト、パウダー
キャロットジュース、シード油
L-カルボン
β-カリオフィレン
カシア樹皮油、オレオレジン
シダーウッド油
セロリーシード油、エキストラクト
カモミル油、アブソリュート
シンナムアルデヒド
ケイ皮酸
ケイ皮酸シンナミル
シトロネロール
酢酸シトロネリル
クラリーセージエキストラクト
コーヒー、エキストラクト、オレオレジン
コニャック油
コリアンダー油、エキストラクト
クミンアルデヒド
ダバナ油
δ-デカラクトン
γ-デカラクトン
デカン酸
4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン
3,7-ジメチル-6-オクテン酸
2,5-ジメチルピラジン
2,6-ジメチルピラジン
10-ウンデセン酸エチル
2-メチル酪酸エチル
酢酸エチル
酪酸エチル
ヘキサン酸エチル
イソ吉草酸エチル
乳酸エチル
ラウリン酸エチル
レブリン酸エチル
エチルマルトール
オクタデカン酸エチル
オクタン酸エチル
オレイン酸エチル
パルミチン酸エチル
フェニル酢酸エチル
プロピオン酸エチル
サリチル酸エチル
エチルバニリン
エチルバニリングルコシド
2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン
5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン
2-エチル-3-メチルピラジン
ユーカリプトール
フェヌグリーク油、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジン
ジェネアブソリュート
ゲンチャンエキストラクト
ゲラニオール
酢酸ゲラニル
グレープ濃縮果汁
グアヤコール
グァバエキストラクト
γ-ヘプタラクトン
γ-ヘキサラクトン
ヘキサン酸
シス-3-ヘキセン-1-オール
酢酸ヘキシル
ハチミツ、エキストラクト
4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン
4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン
4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム
インモルテル油、アブソリュート、エキストラクト
β-イオノン
酢酸イソアミル
酪酸イソアミル
ヘキサン酸イソアミル
フェニル酢酸イソアミル
プロピオン酸イソアミル
酢酸イソブチル
フェニル酢酸イソブチル
ジャスミンアブソリュート、エキストラクト
コーラナッツチンクチャー
ラブダナム油、アブソリュート、エキストラクト、ガムレジン、オレオレジン、レジノイド
レモン油、テルペンレス油
カンゾウエキストラクト、エキストラクトパウダー
ライム油、テルペンレス油
リナロール
酢酸リナリル
ロベージ油、エキストラクト
マルトール
マテエキストラクト
中鎖脂肪酸トリグリセリド
メントール
メントン
酢酸L-メンチル
パラメトキシベンズアルデヒド
メチル-2-ピロリルケトン
アントラニル酸メチル
フェニル酢酸メチル
サリチル酸メチル
3-メチル吉草酸
6-メチル-5-ヘプテン-2-オン
4′-メチルアセトフェノン
メチルシクロペンテノロン
ミモザエキストラクト
トウミツ、蒸留物、エキストラクト、エッセンス、ティンクチャー
ミリスチン酸
ネロリドール
γ-ノナラクトン
ナツメグ油、パウダー
δ-オクタラクトン
オクタナール
オクタン酸
オリバナムエキストラクト
オレンジフラワー油
オレンジ油
オリス油、エキストラクト
パルミチン酸
ω-ペンタデカラクトン
ペパーミント油、アブソリュート
ペルーバルサム油、レジノイド
プチグレインパラグアイ油
フェネチルアルコール
フェニル酢酸フェネチル
フェニル酢酸
ピペロナール
プラム濃縮物、エキストラクト
プロペニルグアエトール
酢酸プロピル
プルーンエキストラクト
レーズンエキストラクト、濃縮果汁
ローズ油、アブソリュート、エキストラクト
ラム酒、エキストラクト
セージ油、エキストラクト
ソルビトール
スペアミント油
ステアリン酸
スチラックスアブソリュート
ショ糖パルミチン酸エステル
糖類: コーンシロップ(液糖)
糖類: デキストリン
糖類: フルクトース
糖類: ブドウ糖
糖類: コーンシロップ(高果糖液糖)
糖類: 転化糖
糖類: ショ糖
ティーディスティレート、エキストラクト、パウダー
α-テルピネオール
酢酸テルピニル
5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン
1,5,5,9-テトラメチル-1-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン
2,6,10,10-テトラメチル-1-オキサスピロ[4,5]デカ-2,6-ジエン-8-オン
2,3,5,6-テトラメチルピラジン
トマトエキストラクト
2-トリデカノン
クエン酸トリエチル
4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)-2-ブテン-4-オン
2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン
4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)-2-ブテン-4-オン
2,3,5-トリメチルピラジン
γ-ウンデカラクトン
γ-バレロラクトン
バニラエキストラクト、オレオレジン、チンクチャー
バニリン
ベラトルアルデヒド
ベチバー油
バイオレットリーフアブソリュート

なんすか、これ? 多すぎます。疲れました。
これじゃあ、なんだかさっぱりわかりません。ああ、全部知りたい。好奇心に勝てない!
原田、またしても日本たばこ産業JTコールセンターに電話しちゃいました。

次回、「JTの電話の人と40分も話したよ!」の巻。乞うご期待!

(原田卓馬)