取材で様々な地方に行くが、地方は大変だということを、ひしひしと感じる。折に触れて、地方のことを書いてみたい。
長崎県の五島列島は、中通島、若松島、奈留島、久賀島、福江島の五つを中心に、約140の島からなり、西海国立公園に指定されている。
福江島で泊まった宿はコテージで、1階にはリビング、寝室、バスがあり、ロフトにも寝室があった。

ベッドは4つあり、1人には広すぎた。島なのでマリンスポーツ目的で訪れる人が多い。シーズンオフの秋だったこともあり、2食付きで1万1000円という安さだった。
温泉もあり、敷地内には和風と洋風のレストランの2つ。とても楽しい滞在であった。
その場で、「五島市心のふるさと市民」になると、エステまで無料で受けられた。

なぜこんなにも安くて、サービスがいいのだろうか?
長崎港から福江島までの距離は、133.2㎞。船賃は、片道で5640円もする。
往復で一泊分の宿泊代を超えてしまうのだ。長崎県の人でも、なかなか行こうという気にはならないだろう。
民主党は高速道路の無料化をマニフェストに掲げていたが、こうした遠隔地への交通こそなんとかしてほしいものだ。
それでも島の人々は、サービスをよくして客を呼ぼうと、自力で頑張っている。

五島の取り組みの一つが、「五島市心のふるさと市民」だ。
五島市以外の住民で、五島を好き、五島に興味がある、五島に来てみたいと思う者なら、無料でなることができる。
宿泊代や交通費が割引になるサービスもあり、五島の最新情報がメールで送られてくる。

五島は、江戸時代に隠れキリシタンが移住してきて住んだ場所であり、今は50ほどの教会がある。堂崎教会、江上天主堂、旧五輪教会堂の3つは、世界遺産の暫定リストに上がっている。
それぞれの教会には、観音像を模したマリア観音、江戸時代に信者かどうかを確かめるために使われた踏み絵などが保存されている。
迫害を耐えた信仰の姿は、キリシタンでなくとも、心打たれるものがある。

ちなみに五島には、今でも隠れキリシタンがいる。
江戸時代の長い間潜伏していて、信じる宗教は神仏と入り交じった独特の宗教となった。明治になって多くの信者はカトリックに帰依したが、独特となった隠れキリシタンの信仰をそのまま信じている人々もいるのだ。
もはや隠れているわけでないが、カトリックと区別して、隠れキリシタンと彼らの信仰は呼ばれている。彼らに接することは難しいが、五島の不思議な魅力の一つだ。

近年の話題としては、モントリオール世界映画祭で、深津絵里が最優秀女優賞を受賞した映画『悪人』のロケ地となったことだろう。
ラストシーンで使われる灯台を見るのも、感慨深いものがある。

(FY)