読者から、山口組の分裂について書いてくれとリクエストがきたので「筆芸者」としてはすぐ書きたいが、いかんせん情報がない。

9月上旬、山口組から山健組や宅見組など13団体が分離独立して、「神戸山口組」ができた。

ヤクザの論理から言えば、あくまでも山口組本家目線から言えば、飛び出た山健組や宅見組ら5団体は「絶縁」という処分だから、ヤクザの世界に「存在」しないということだ。そして「破門」されたのは毛利組や松下組など8団体。「破門」はかろうじて元の団体に戻る道が残されている。

◆すべてが水面下で極秘裏に進んでいたという点に注目すべし

多くのヤクザが、現状分析や未来予測をしているが、まずは分裂した理由を検証したい。これは、現在、山口組を仕切る六代目組長の司忍が出身母体となる弘道会と、前の組長の五代目、故・渡辺芳則が出身母体の山健組との覇権争いからきているのは否定のしようがない。

「神戸山口組には、かなりのキレ者が参謀としてついていますね」(関東広域暴力団幹部)

その理由とは、山口組が分裂した当初を振り返ると、あれだけの大所帯なのにリークされることなく、すべてが水面下で極秘裏に進んでいたという点に注目すべきだ。

自己主張の強いヤクザを束ねることは難しい。
「でも、今回の分裂騒動でも、みごとなまでの結束力と行動力。また風説等を利用し、マスコミだけでなく警察までも煙に巻いています」(同)

参謀、あるいは軍師的な存在が、初動段階から分裂の絵図を描く。また参謀の手腕で、関東最大の暴力団の会長までが、激励の慰問にまで訪れている。このようなことは、過去の任侠史上類を見ない。

この映像が全国ネットで流れ、驚愕の事実に山口組本家は震撼したという。
「山一抗争の例もありますから、当分は両組動かないでしょうね」(同)

動かなければ逮捕者は出ない。つまり、情報収集に行き詰まるのである。
「情報を集めるため、事務所にガサを入れます。警察のガサの手口で多いのは、建築基準法違反。だが参謀はすべて見とおしていたのです」

◆神戸山口組が本家を淡路島に置いた理由

神戸山口組の本部事務所を、淡路島に置いたのも参謀の案だという。
「あの事務所付近には教育施設、とくに小学校がない。これを一番に考えての本家設立だ、と言われています」(同)

確かに、近くに小学校などの教育施設がなければ、まだ幼い小学生児童に抗争の災渦が及ぶことはない。
「もちろん、山口組初代の墓前の地を本家に構えたのも大きいでしょう。大義云々より、世間に対するインパクトですよね」(同)

日本のシチリア島と呼ばれる、淡路島に本家を構えた神戸山口組。彼らは、世界を席巻したイタリアンマフィアのように、日本のヤクザ界を牛耳ることができるのだろうか。

◆警察の「山口組切り崩し作戦」が成功しつつある

さて、分裂のいまひとつの原因と理由、僕は「高山清司」若頭の長期不在だとみている。旧知のノンフィクション作家も同じ見方をする。
「山口組の組長、司忍が銃刀法違反で2005年12月から2011年4月まで収監されていた不在の間、山口組内の統制が保たれていたのは、高山若頭がにらみを利かせていたから。暴力団排除条例が整備され始めたころ、後藤組の組長、後藤忠政が芸能 人とゴルフコンペを行い、NHKが細川たかしや小林旭、中条きよしなどの出演を数か月も見合わせた件で、後藤を除籍し引退させたのも高山だし、水や歯ブラシを大量に買わせるシステムについて古株の幹部や重鎮から文句が出てきてもなんとかして抑えこんだ。クーデーターを計画しても、情報が事前に漏れ伝わってきて、実行を回避してきた。そうした手練手管を使える高山若頭が2010年11月に恐喝容疑で逮捕され、 昨年の6月に実刑が確定し、府中刑務所に収監されている。その間、司忍組長と司組長の出身母体であり、つぎの山口七代目組長の最右翼候補である弘道会会長・竹内照明が中心になって組織を引き締めるべきだったが、要するに高山若頭のように抑えがきかなかったわけです」

まったくその通りで、もし加えていうなら、警察の「山口組切り崩し作戦」が成功しつつあるとみることができる。

もし山口組を疲弊させるなら、内部抗争が一番てっとり早い。新聞などでは「司忍組長に国税が入るのではないか」と騒がれているが、これは、工藤会の野村悟総裁のところに、税務調査が入り、脱税容疑で逮捕されたのをモデルケースにしているに過ぎない。

◆巷で流れているヤクザ関連の情報は99%、疑ったほうがいい

僕に言わせれば、今、巷で流れているヤクザ関連の情報は99%、疑ったほうがいい。山口組本家にせよ、神戸山口組にせよ、「自分たちの立場を有利に運ぶ」ための誘導弾をまいている可能性がおおいにあるからだ。

そして、自分の幼馴染のヤクザも、取材で知り合ったヤクザも組がどこであろうと、今は口が重く、会うのも難しい。

ヤクザ事情に詳しい影野臣直氏は、山口組が分裂した9月初旬以降、ヤクザが、このところ一律に口が堅くなっ た本当の理由について語る。
「それはそうですよ。何が火種になるかわからないし、どこで飛び火して戦争になるかわからない。今、沈黙は金ですよ」

たとえば、今まで山健組にみかじめを払っていた風俗店が「おい、この際、うちに払え」と弘道会が店長に対してシノギを引きはがしにかかってもなんの不思議もない。

名古屋の一部や北海道の一部では、そうした動きが始まっているという報道もある。

が、前出の影野氏は「そんなのが全国のそこかしこで行われるなんてマスコミの妄想です」と言い切る。
「シマの取り合いなんて、仮にもめるとしても表に出ないようにやりますよ。マスコミが(抗争を)煽りすぎです。ましてや、音が鳴る(拳銃で撃たれる)なんていうのは、よっぽど組どうしの話がつかなったときでしょう」

性風俗の広告代理店によると、たとえば山健組系が運営している風俗店が弘道会系の風俗案内ホームページに掲載している場合、「この際、別れましょう」と山健組系も店がホームページから引き上げたりしてもめたりするのではないかとささやかれているようだ。

「それは裏側をつぶさに見れば対立しているように見えますが、企業舎弟どうしは、うまく共存を図るはず。そんなに簡単にもめるようにはできていません」(影野氏)

そんなわけで、僕の友人のヤクザは9月1日から「しばらく電話には出れない」と言いつつ、フェイスブックも閉じた。

彼が電話に出る時が、「任侠界」が落ち着いたときとなるのだろうか。
その日が1日でも早ければと思う。そして、大阪府警の樋口真人本部長も、工藤会の捜査で実績をあげて大阪府警にやってきたキャリア組で、これでもか、と山健組や宅見組に家宅捜査をしているようだが、いまさらヤクザの事務所にヤバいものが隠されているわけがなく、これはパフォーマンスに等しい。これらの警察のわざとらしいふるまいは次回以降に暴きたい。

そして、今、山口組本家にさまざまな組が訪問しに来ているが、これは「ヤクザが顔を売る絶好のチャンス」だということだ。この「友好団体」の訪問の意義も、近く触れたいと思う。

(小林俊之)

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