10月10日、後楽園ホールで開催された「大和魂シリーズ」は、「倒すか倒されるか」がキャッチフレーズの日本キックボクシング連盟興行。NKBライト級タイトルマッチがメインイベントだ。チャンピオンの大和知也(SQUARE-UP)は今回が初の防衛戦。挑戦者はその大和知也が4月に63.0kg契約5回戦で僅差の判定負けを喫した俊輝(八王子FSG)である。

大和知也

◆NKBライト級タイトルマッチ──大和知也 VS 俊輝

今回も俊輝の先制攻撃のジャブ、ローキックの的確差で大和を苦しめた。俊輝のローキックがもっとしつこく蹴っていれば明確な差になっただろうが、それをさせない大和の反撃も地味ながらコツコツとヒットさせる圧力があった。俊輝が前回同様の僅差判定勝利かというムードの中、0-1俊輝優勢の引分け。大和知也はかろうじて初防衛。俊輝は王座奪回成らず。

大和知也が今年のシリーズ名となる主役でありながら、俊輝を倒せなかった今年の反省は残るにせよ、来年は高橋三兄弟が台頭して来る世代交代が迫る年。更なる奮起に期待したい。

 

◆NKBウェルター級王座決定トーナメント準決勝2戦

アンダーカードながらNKBウェルター級王座決定トーナメント準決勝は、2位の安田一平(SQUARE-UP)が4位の稲葉裕哉(大塚)を判定3-0(50-47、50-46、50-47)で勝利し、決勝に進出した。

安田の重いパンチ攻撃がしつこく稲葉を圧倒した。稲葉は1ラウンドから鼻血を出し、顔を腫らしながら倒れず反撃に転じ、蹴りの少ないパンチ主体の展開となり、反撃を受けた安田の顔も腫れが増す。試合が終わればお互いの顔とも無残な表情だった。

安田一平(右) VS 稲葉裕哉

安田一平(右) VS 稲葉裕哉

もう一方の準決勝は3位の塚野真一(拳心館)が検診時での体調不良によるドクターストップで棄権となり、1位の石井修平(ケーアクティブ)の勝者扱い(主催者発表は不戦勝)による決勝進出。

高橋三兄弟の三男・聖人(真門)は判定ながら5戦目(4戦1勝2敗1分)のサイクロン狂介(大塚)に勝利し4月のデビュー戦から2連勝(1KO)。

高橋三兄弟の三男・聖人(右)VSサイクロン狂介

◆次回「大和魂シリーズ vol.5」は12月12日に開催

次回12月12日には石井修平vs安田一平でNKBウェルター級王座決定戦、もうひとつのタイトルマッチがNKBバンタム級王座決定戦、1位の高橋亮(真門)vs 3位の松永亮(拳心館)がある。高橋三兄弟が今この連盟での話題の三兄弟。次男の亮が先に王座に手を掛ける。

長男・一眞は6月に元2階級制覇チャンピオンの夜魔神(SQUARE-UP)の引退試合相手として出場、初回は夜魔神を圧倒しながら経験値豊富な夜魔神に逆転されて判定負け、7戦目で初黒星も未だ王座に近い存在で来年の飛躍が期待される。

更にもうひとつのメインイベントクラスが前NKBウェルター級チャンピオン、キャリア13年で、「遅咲き」の44歳の竹村哲(ケーアクティブ)の引退試合。同級5位.マサ・オオヤ(八王子FSG)を相手にラストファイトの予定。今年4月には元・全日本ライト級チャンピオン.大月晴明と引退カウンドダウンに入った40代対決、1ラウンドで大月の爆腕に倒されたが現役として悔いなく燃え尽きるには最高の相手だった。

◆昭和キックブーム終焉後、1984年に設立された日本キックボクシング連盟の31年

「大和魂シリーズ」主催の日本キックボクシング連盟は、昭和40年代のキックブームの後、テレビが離れて低迷期に入り、行く当てなく彷徨っていた日本キック界に、昭和59年11月、主要団体が一旦統合された団体だった。

あれから31年になる。すぐに分裂と脱退を繰り返し、他団体の豪華な国際戦、ムエタイタイトルマッチを行なうようには敵わない、ひたすら団体内対抗戦の地味な団体ではあったが、昔ながらの「倒すか倒されるか」がキャッチフレーズの息の長い団体となった。2002年に統合ではないが、NJKF、K-U、APKFと共に4団体共通のタイトルNKBを設立、相変わらず離脱はあったが、王座は継続され現在に至っている。

遡れば役員の顔ぶれの流れを見ると、系列的に昭和40年代の旧全日本系色が強い団体である。それも昨年から世代交代の波が押し寄せた。代表理事は渡辺信久氏と変わらないが、興行運営を担う担当が元・日本キック連盟ライト級チャンピオン、小野瀬邦英SQUARE-UPジム会長に代わった。

それまで他団体交流が無く閉鎖的だったが、徐々に交流戦が実現。実力不透明だったNKBが良くも悪くも明確になってきて活性化されてきた。高橋三兄弟のような有望な選手も多いに飛躍できる舞台が揃いつつある日本キックボクシング連盟であり、業界全体も頂点への道のりが明確になってきている今後のキックボクシング系業界でもある。

高橋三兄弟の三男・聖人

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

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