美人モデルボクサー高野人母美、引退撤回の謝罪会見

 

一度は「引退する」といい、1週間たてば「引退しない」と言う。美人ボクサーのわがままにつきあった。

「こんなくだらないことで振り回されるのはかんべんだね」とベテラン格闘技ライターが頭を抱えたのは、プロボクシングの東洋太平洋女子スーパーバンタム級王者で、現役ファッションモデルとしても活動する高野人母美(たかの・ともみ、28、協栄)が、一度は「現役引退」を宣言しながら、約1週間後に撤回する騒動を起こした事件だ。この騒動について5月27日、高野が謝罪するから会見を開くという。僕もこの会見に呼ばれた。

 

そもそも、高野は2013年にプロデビュー。177センチの長身を生かしてモデル業もこなす異色の肩書が注目された。計量時に白無垢の衣装や水着を着るなど派手な衣装に身を包むパフォーマンスで注目を集めてきた。

「どちらかといえばきわもの」扱いながも人気を集めてきたのは事実で、本人いわく「実力や技術がまだまだ」と言いながら、リングに上がり続け、昨年11月にWBO女子スーパーフライ級タイトル戦で女子スーパーフライ級王者ダニエラ・ベルムデス(アルゼンチン)に世界初挑戦し、4回KO負けを喫した。

「この世界戦で高野が負けたことが『引退発言』につながっていくのです。6月6日に約7か月ぶりの再起戦を東京・後楽園ホールで行うことが決まり、李恵林(韓国)とのノンタイトル6回戦が発表されていました。しかし、今月4月18日に金平会長不在で行われた発表会見にて唐突に記者を相手に引退の話をしだしたのです」(同)

 

「今回の試合でラストにしようかなと思っている」と引退を電撃表明。「やりたいからボクシングをやってきたが、指図されてやるのは違うと思う。やりたくない気持ちになってきている」と理由を説明し、会長不在を狙った表明であることは明らかだった。

これに対し、海外出張中だった金平会長は(業界では温厚で知られる)自身のツイッターで「6月6日もやらなくていいです!」「中止を決定しました」と激怒。帰国後の24日に高野と約3時間話し合い、発言の真意を問いただしたところ、「減量や試合のプレッシャーでつい引退という言葉を口にしてしまった」と説明を受け、現役続行の意向を確認したという。

会見では、かつて亀田一家も懐にいれてマネジメントをしていた金平会長がマスコミの前で高野に「普通のボクサーが普通にやっているように練習しなさい」と公開説教。高野は「みなさまに御心配とご迷惑をおかけしました」と頭を下げた。

記者の「高野さんががんばることで女子ボクシングの人気が集まり始めたが、そんな中でプレッシャーはあったのか」の問いに「技術的にも体力的にもまだまだ未熟な中で(リングにあがる)という意味ではプレッシャーはありました」と高野は答えた。

6月6日にエキシビジョンマッチが組まれているが、果たしてまた高野は「再引退」を言い出すのだろうか。

 

金平は「ボクシングはリングに上がりたい人がやるのであって、『やらされている』という人がファイトすべきじゃない」と斬って捨てた。高野がまた今度「ぶれた」発言をしたら、仏の顔もなんとやら。そのときに初めて比較的、これまでがまんしてきた温厚な格闘技マスコミも「ボクシングはモデルの売名行為だった」と叩き始めるだろう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論! 蹴論!」の管理人。

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3・11甲状腺がん家族の会、設立会見詳報《3》牛山元美さん=世話人の談話

2016年3月12日、3・11甲状腺がん家族の会が設立された。設立時の正会員は5家族7人、代表世話人には河合弘之さん(弁護士)と千葉親子さん(元会津坂下町議)が就いた。これまでほとんどタブー視されてきた福島での被曝被害の核心を伝える貴重な設立会見を7回に分けて詳報する。第3回は内科医で同会世話人の牛山元美さんの談話。

◆福島原発事故以前、小児甲状腺がんは非常に少なかった

会見する牛山元美さん

私は神奈川県内の病院に内科医として勤務しております。福島原発事故当時は、被曝を心配して、当時、小中学生だった二人の子供を九州の親せき宅に避難させました。事故後は、福島県内や関東で健康相談会や保養に参加し、子供を持つ親たちの不安を直に耳にしてきました。また、福島県内の医師不足を知り、2012年11月から福島県内の病院で、月一回の当直支援を始めました。 

福島県の健康調査により、原発事故当時、18歳以下だった子供たちに甲状腺がんが多発していることが明らかになっています。この5年間で、県が把握しているだけでも既に116人が手術を受けています。甲状腺がんは、進行度も遅く命に関わることはない、悪性度も低い癌だといわれていますが、実はそれは中年以降の女性にみられる成人の甲状腺がんについての話です。2011年の福島原発事故以前、小児甲状腺がんは非常に少なく、診療経験のある医師は、日本の甲状腺専門医の中でも非常にまれでした。

◆スクリーニング効果、過剰診断とはそぐわない事実

チェルノブイリ原発事故後に、7000例増えたとされる小児甲状腺がんは、腫瘍が小さくてもリンパ節や肺に転移を引き起こしやすく進行しやすいといわれています。今回、ほとんどの方を手術された福島県立医大の報告を見ると、手術を受けた方の90%以上は、腫瘍の大きさが既に手術適応基準を超えていたり、または小さくても、リンパ節転移や肺転移を引き起こしていたり、甲状腺の外に拡がり進行していたものであったり、すぐに手術することができて良かったという症例でした。

これは、たくさん甲状腺がんが見つかったのは検診のせいだ。スクリーニング効果だ、それは過剰診断だという意見とはそぐわない事実です。では、なぜこれだけの甲状腺がんが福島の子供たちから見つかったのか。未だ全く解明されていません。放射線の影響かどうかも、県の検討委委員会の中ですら意見の相違があり「(原発事故の)影響とは考えにくい」とか、「(原発事故の)影響を否定するものではない」とか、非常にあいまいな表現がされています。

◆相談に応じる医療機関が福島県内にはほとんどない

患者さんやご家族は、今回、診断された甲状腺がんがなぜ起こったのか、とても悩んでおられます。お母さまは、すぐにおっしゃるのですが、「あの頃の食事が悪かったからなのでしょうか?」「放射線汚染を気にせず食べ物を食べさせたから、だから癌なったのでしょうか?」「外で遊ばせたのがいけなかったのか…」高校生の子は、「自転車で通学したからいけなかったのか」、皆さん自分を責めています。また、遺伝的なものなのか。そんな風に本人も、親御さんも、自分がいけなかったのかと、とても悩んでおられます。

実は手術を受けて、その後再発された方も複数おられます。再手術前、治療方法についてセカンドオピニオンを気にする方も当然いらっしゃるわけですが、福島県内では「それは県立医大に行くように」と言われ相談に応じる医療機関もほとんどなく、実現が困難な状態です。より良い医療を受けたいという、患者として、またその親として当然の願いを実現させたいと思います。担当医師とのコミュニケーションもうまく取れていない、それをうまく取れるようにお手伝いもしたいと思っております。

◆福島の健康相談会では放射能という言葉すら口にしにくくなっている

甲状腺がんというものについて、忌憚のない意見の交換や適切な情報の共有をし、出来る限り、その不安を取り除いてあげたい。また、日常生活でも健康に関する疑問に気軽に答え、より安心でき、健康的な生活を楽しめるようサポートをしたいと思っております。

また、叶えばですが、患者さんがご自身の経験を活かせるよう、例えば手術の経験を、また新たに患者さんになった他の方に伝えることができる、そんな手助けもしていきたいと思っております。最近では、福島に健康相談会に行っても放射能という言葉すら口にしずらくなっています。また、福島県内では、放射能という問題は過去の話になっています。

◆問題を解決できるよう力を貸してください

そんな今、臨床医としてやれること、やるべきことがあるのではないかと思っております。私は原発事故当時、ちょうど18歳以下であった子供を関東で育てている母親でもあります。また、病気を抱えている患者さんの日常生活への助言や様々な不安を軽減することが主な任務の一つである内科の臨床医でもあります。その様なことを使命感に持ち甲状腺がん家族会の世話人になりました。  

甲状腺外科医たちが、今回、家族会のアドバイザーになってくれています。甲状腺がんという病気になっても、より良い治療を受け、不安を減らし、安心して幸せに生活できるように医師として力を尽くしたいと思っております。どうぞ、甲状腺がんと診断された福島の子供さんやご家族の方が一人でも多く、この家族会に参加され、つながり、力を合わせ、問題を解決できるよう力を貸してください。以上になります。ありがとうございました。


◎[動画]20160312甲状腺がん患者家族会設立記者会見(UPLAN三輪祐児さん公開)

▼白田夏彦[取材・構成]
学生時代に山谷、沖縄などの市民運動を訪問。その後、9・11同時多発テロ事件をきっかけにパレスチナ問題の取材を開始。第二次インティファーダ以降、当地で起こった非暴力直接行動を取材。以降、反戦や脱原発などの市民運動を中心に取材。現在、業界紙記者。

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具志堅さんもやって来た「めんそ~れ、沖縄!」──池袋で感じる〈琉球の風〉

 

今回で8回目となる、サンシャインシティ(東京・池袋)で開催される『沖縄めんそーれフェスタ2016』前夜祭イベントを取材した。

期間は5月27日(金)~6月5日(日)の10日間、展示ホールAでは、沖縄物産展、オリオンビールが飲めるビアガーデン、噴水広場ではエイサーの演舞や沖縄アーティストによる生ライブなど盛りだくさんの内容で、沖縄をアピールする催しだ。物産展では、沖縄そば、海ぶどう、もずく、サーターアンダーギー等42のお店が立ち並んでいる。なかでも、泡盛カクテル、スパム串を出しているお店の女性に取材した。

 

── 沖縄から来られたのですか?
「私は沖縄県民ですが、上京して六本木でお店をやっています。他の方々は沖縄から来て期間中はホテルに泊まっていますね」と話していた。

まさに大がかりな「出店キャラバン」だ。
また泡盛のカクテルの値段が千差万別だったので、質問した。
「一般的な ものは500円、 グレードが高いものは700円、 さらに古酒は900円 です」

── 古酒ってどういうお酒ですか?
「3年以上貯蔵したものです。こちらにはなんと入手困難な『美ら蛍』があります。古い酒はまろやかでおいしいですよ」

── なぜこの時期に「沖縄のフェスタ」を開催するのですか?
「今、沖縄は梅雨の真っただ中です。2週間後には梅雨が明けます。この時期に東京の皆さんに沖縄をアピールしてぜひ来てほしいと思います」とにこやかに話した。

 

さて、前夜祭のオープニングセレモニーのステージイベントには、具志堅用高や鈴木奈々がゲストで登場していた。

鈴木は鮮やかな黄色い沖縄の民族衣装に身を包み、かわいい笑顔をふりまいていた。いっぽうで具志堅はやはり「沖縄の顔」といえるキャラで、親しみやすく優しい性格がテレビでもお茶の間に伝わり、若い女性にも大人気だった。

 

トークコーナーで夫婦円満の秘訣を聞かれると、「誉めることが大事」と熱弁していたのが印象的だった。

ところで「沖縄そば」と「ソーキそば」のちがいはご存知だろうか?
物産展で沖縄そば店の男性に話を聞いた。

「沖縄そばは豚のバラ肉(3枚肉)を使う。ソーキそばは、豚バラの軟骨の肉を使っている違いですね」と教えてくれた。イートインのコーナーも広く充実しているので、じっくりと沖縄の味を堪能できる。ほかに「BIGIN」の「島人ぬ宝」を唄うバンドの演奏や沖縄の伝統芸能エイサーの太鼓を舞ながら叩くパフォーマンスは力強く迫力があった。

沖縄の観光客は多い月は3月、ついで8月、11月となっている。少ない月は1月、6月、9月で、9月は台風期、6月は梅雨期、1月は曇りの多い冬のためという。このオフシーズンには、修学旅行誘致に力を入れて一定の成果を出しているそうだ。近年は「沖縄美ら海水族館」が大人気で人を集めている。

元米兵による女性遺体遺棄事件や基地問題など沖縄関連で暗いニュースが飛び込む今、沖縄の青くきれいな海とこうした素晴らしい自然や海産物、歌などの文化とのギャップに心が痛む難しい問題が沖縄の人たちを苦しめている。この『沖縄めんそーれフェスタ2016』が成功し、沖縄の観光客が増えて、潤い、沖縄に元気を! と切に祈りたい。

『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』

文・撮影=林雅子 
プロデュース=ハイセーヤスダ

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論! 蹴論!」の管理人。

踏ん張れ「あまちゃん」能年玲奈!歪んだ芸能界に抗う「じぇじぇじぇ」な闘争!

NHK朝の連ドラ「あまちゃん」でブレイクした能年玲奈が6月末に現在の事務所と契約が切れ、更新しない方針であることから「芸能界を引退か」と報じられている。

◆事務所の意向を汲んでメディアが垂れ流す「能年引退」報道

「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック3

「引退は女性週刊誌が、能年が所属する大手プロダクションの意向を汲んで垂れ流しただけでまだ結論は出ていない。この件にはざまざまな裏がありますが、能年自身は、労働時間の拘束のされかたといい、本人の意志があるのに芸能界の慣例で事務所 を移籍しにくくなっている点を是正したい、という希望があり『芸能界の自浄』を狙うべく、六法全書を片手に労働基準法を勉強しているようです。将来的には大学に通いつつ、社会保険労務士の資格をとって『タレントのための労働コンサルタント事務所』でも開きたいと知人に漏ら しています」(芸能プロダクション関係者)
 
能年は所属する事務所に無断で演劇関係者と個人事務所を設立し、このことがマネジメント事務所と亀裂が入った原因だと指摘されている。

「現在の大手マネジメント事務所との亀裂は、能年の待遇が悪かったことに尽きる。マネージャーはコロコロ変わるわ、三流アイドルみたいな客寄せのイベントの仕事をとってくるわで、能年も嫌気がさしていました。そうした中、『あまちゃん』と共演したときに親密になり『芸能界は今のシステムでは限界がある』と現状のマネジメントシステムに警鐘を慣らした小泉今日子と何度も芸能界のあり様について議論するようになり『最終的には虐げられたタレントのコンサルタントをやりたい』という心理状態になったようです」 (同)

しかしことはそう簡単ではない。かつて「芸能界の待遇改革」を叫んだ俳優の小栗旬は一昨年に芸能界に労働組合を作ろうとして仕事を干されぎみになり、追従してネット放送で応援するコメントを出した自称女性「芸能コメンテイター」も『芸能界の外から物を言うのは生意気だろう』と仕事が激減した。

「そもそも、社会労務士の資格を舐めた話です。合格率も1割を切っている(平成26年は9.3%)し、1日に5~6時間、1年間継続して勉強しないと合格できないと言われています」(司法関係者)

◆能年問題解決を契機に芸能界の改革がはじまる?

だがフォローする声もある。
「芸能界での労働組合ができれば、日本の役者や歌手たちも世界から『ちゃんとしたユニオンがあるのなら』と認められて海を越えた交流が始まり、タレントが海外に進出するにしても、海外から日本の映画・テレビ界に役者や有能な監督、演出家が来るにしてもハードルが低くなるはず。なにしろギャラですら基準がなくてテレビ局や映画製作会社の〝胸三寸〟で決まるのが日本の『芸能村』 ですから」(前出の芸能プロダクション関係者)

かくしてひそかに法律を学び始めたという能年は、芸能界に「いながら」にして芸能界をタレント有利に 「改革」するのだろうか。もし実現したら本当に「じぇじぇじぇ」な出来事だ。


◎能年玲奈かんぽ生命 CM 「夢の中へ」「人生の山と谷」編

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論! 蹴論!」の管理人。

芸能界の歪んだ「仕組み」を解き明かす!『芸能人はなぜ干されるのか?』
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伊勢志摩サミットという猿芝居で利を得た者はだれか?

サミット(summit)の語源は「頂上、頂き、極致、頂点」などを意味する。だから「伊勢志摩サミット」と言えば「伊勢志摩に世界に君臨する国々の指導者が集まる会議」と訳しても過大な誤りではないだろう。

この語感自体に私は嫌悪を感じる。もっともサミットの前身は更に露骨な名称を冠して恥じ入ることがなかった。1975年11月15日から、フランスで行われた会議は「第1回先進国首脳会議」と呼ばれていた。開催国であるフランスのジスカールデスタン大統領が議長を勤め、米国大統領のフォード、英国首相のウィルソン、西ドイツ首相のシュミット、イタリア首相のモロに、日本からは首相三木武夫が参加して3日間の会議が行われた。「先進国」と当たり前の様に呼ぶけれども、これはだって、かなり傲慢な名称ではないか。

翌年からはカナダも加わり、いわゆる「G7体制」による、経済を話題とする「世界支配国」の定期的会合として定着してゆくのであるが、ソビエト連邦の崩壊からロシアへの移行に伴いロシアも参加する形で「G8体制」が定着するかと思われたが、民族紛争への批判などから「伊勢志摩サミット」は「G7」とEU議長が参加して先週行われたのはご存知の通りだ。

サミットは1975年オイルショック後の経済をどう舵取りするかが表向きの話題として開催された出自から、主として政治問題よりは経済問題を重視する傾向にある。だから「帝国主義者どもによる戦争準備会議」との批判は世界中にあり、日本以外の開催国では「反新自由主義」、「反グローバリズム」を訴える市民が毎回相当激しい抗議行動を行うのが、お決まりの風景となっている。

◆誰のために、何のために行われたのか?

さて、先週行われた「伊勢志摩サミット」である。あれは一体誰の為に、そして何の為に行われたのだろうか。その理由を私が簡潔に解説しよう。

議長である安倍がぶち上げた「アベノミクス」という「経済破綻プロジェクト」の破綻隠しがその主目的である。

その一環として消費税引き上げは安倍にとっては、欠くことの出来ないシナリオだった。5%から8%への消費税増税と法人税減税が税収の低下を招くことは自明だった。消費税を導入した1989年と、消費税率3%から5%へ引き上げた1997年の翌年はいずれも税収が減っている(1998-1999年の減収は2.7兆円)。消費税を上げると必ず税収が落ち込むことは過去の統計が明確に示していた。だから私は消費税の引き上げではなく、消費税の撤廃を提言したが、私の戯言などに安倍が耳を貸すはずもない。

それだけでなく8%から10%への引き上げも、既定路線として「公約」とされていたが、「3本の矢」(自滅の愚策)や、「異次元の金融緩和」のいずれも全く効果がない。景気好転の気配はないから当然税収も落ち込む。予定通り来年4月に消費税を10%に引き上げれば、更なる消費の冷え込みと財政悪化必定だ。そこで安倍は3月に「国際金融経済分析会合」を発足させ、米国人はじめ多くの外国人経済学者に議論をさせるポーズを装った。この会合に日本人経済学者は1名しか含まれていなかった。
 
これ程情けなく、自身の「無能ぶり」を晒す猿芝居もないだろう。一国の税制、それも消費税の引き上げに限って、わざわざ外国人経済学者(その中にはノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツも含まれた)の議論により、税制運営を「教示」してもらったわけである。独立直後で行政が体をなさない国でも、形の上では一応の国際機関であるIMFに意見を求めるだろうに、あろうことか欧米経済学者の「威光」を借りて、政策の要としていた「消費税引き上げ」を延期する口実としたのだ。

そして「伊勢志摩サミット」である。政府内でも「いったい誰が言い出したのか」と騒動となる「リーマン・ショック前の状況に似ている」との安倍の大間抜け発言は、現在言い出しっぺの犯人探しで霞が関は大わらわだ。海外主要メディアはそろって、「迷惑な発言」、「経済が困難な状況にあることは間違いないがリーマン・ショックのような危機が近いうちに起こるとは思われない」と一斉に疑問と批判を投げかけている。日本の政府関係者も「実態とかけ離れた議論となり、議長国として恥ずかしい」と正直な感想を述べている。

オバマの随行で一緒に広島に出かけたところで、安倍の無能は変わらない。大手メディア幹部と定例で夕食を共にしているから、辛辣な報道は抑えられるけれども、経済指標の粉飾には限界がある。安倍の退陣は遠くないと予言しておこう。

◆警備会社と広告代理店だけが儲け、権力は〈戒厳〉予行のごとき厳戒態勢を敷く

それにしても、このように全く無益で、国際社会に何の利益ももたらさない会議の為に、わたしたちの日常生活まで、なぜ制限を受けなければならいのだ。27日に京都から大阪へ出かけた際にはJR、私鉄全ての駅でコインロッカーが使用停止になっていて、ゴミ箱も全て封鎖されていた。「テロ対策」とか「サミット開催による特別警戒中」とかあちこちでアナウンスを聞かされたけれども、要はこの国の住民を「テロリスト」の容疑者に見立てているんじゃないか。

不覚にもガムを噛みながら外出した私は、自宅を出てから目的地へ到着するまでの2時間余り、味のしなくなったガムを捨てるゴミ箱をついに見つけられなかった。過去に東京サミットが行われた1986年、1993年でもこれほどの厳戒態勢はなかった。三重県は数カ月前からサミットに合わせて国内旅行者の勧誘に力を入れていたけれども、あちこちらが「封鎖」されて、ごく一部の土産物屋や宿泊施設以外は「結局普段より売り上げが落ちていた」と多くの業者が嘆いている。

儲かったのは警備会社と大手広告代理店だけ。もっとも肩透かしを食らったのが三重県だったろう。そして電車やバスに乗れば「ただいまテロ特別警戒中です」のアナウンスは、特に首都圏ではサミットのような国際行事がなくても毎日流れているじゃないか。

毎日「警戒中」が「厳戒中」に変わることにすら、私たちは慣らされ出してはいないだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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関西大で鹿砦社松岡利康社長が「出版と人権─出版社が守るもの」を語る

関西大学で共通教養科目の中のチャレンジ科目として開講されている『人間の尊厳のために』の講師として20日に続き、27日松岡社長が教壇に立った。「出版と人権─出版社が守るもの─」の演題で、150人の学生に向かって松岡節が再び披露された。

◆「被逮捕者、勾留経験者」がその実態を学生に語る講義

 

この日は2005年7月12日、神戸地検特別刑事部に松岡社長自身が名誉棄損容疑で逮捕された事件を中心に、「被逮捕者、勾留経験者」がその実態を学生に語るという、大学の講義には珍しく、かつ刺激的な内容となった。

逮捕当日の新聞記事をはじめ、事件の推移を伝える参考資料など、2部、計13枚の資料が学生に配布され、「逮捕されたら全裸にされ尻の穴や性器まで調べられる」こと、「手錠、腰縄でつながれて公の裁判の場に出される」こと、被疑事実を認めない限り保釈されず、接見禁止も長期にわたる「人質司法」が日本では現存していること、などの問題点がレジュメに沿って紹介された。

 

松岡氏はその出版活動歴や、この日話題とされた「事件」の印象から、大柄で押し出しが強く、がらっぱち口調で話をする人物、とのイメージを抱いている方が多い(私も実際に会うまではそのように想像していた)が、小柄で常に背広にネクタイを締め、語り口は普段の会話でも時に聞き取りにくいことがあるほど、どちらかと言えば小さな声で話しをする(激高して熊本弁交じりの怒声を上げた姿を一度だけ目撃したことはあるが)。この人が学生時代に大学の学舎屋上に籠城し、強烈なアジテーションを飛ばしていた姿を想起することは容易ではない(一度は聞いてみたいものである)。

教壇上から学生に語り掛ける口調も、普段のそれと変わりなく、極めて熾烈な内容と体験談を、声を荒げることもなく淡々と語っていた。だからであろうか、テーマの深刻さの割に学生たちの反応に特に強い緊張は感じなかった。

だが事件を紹介した「サンテレビ」のニュース番組のビデオが流されると、教室の雰囲気は一変した。やはり「テレビ」の持つ訴求力は強力だ。今、目前で講義をしている人が11年前には「犯人」とされていた事実が、初めてどのような意味を持つか学生たちに伝わったようだった。

そこから演繹的に松岡社長がその日語った内容、及び20日に語った内容への理解へと繋がっていったのではないだろうか。

◆次週からのグループ討論用資料のためにと「松岡流」のサプライズ

さらにこの日松岡社長による思いがけない計らいがあった。20日の講義で紹介したプリズンコンサートで有名な「Paix2」(ぺぺ)の『逢えたらいいな』、『島唄よ、風になれ!「琉球の風」と東濱弘憲』、さらにこの日の講義のテーマでもあり、名誉棄損逮捕につながった『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』各50冊を「学生の皆さんにプレゼントします!」と言い放ったのだ。

『逢えたらいいな プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』
『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲』
『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』
 

大学での講義でまさか書籍をプレゼントされるとは、不意打ちもいいところだ。少々眠そうにしていた学生も、全員が一瞬「え!」という驚きで教壇上の松岡社長に強い注意が向かった。

太っ腹故の大盤振る舞いと言ってしまえばそうだが、このプレゼントには松岡社長なりの配慮もあったようだ。次週にはグループ討論が行われる。その時にあらかじめグループの全員がプレゼントされた書籍を読み終えておき、討論の内容をより深いものとして欲しい。その為ならば1500円(偶然だが3冊とも定価は同じだった)の自社出版物くらいタダで提供しましょうと。これまた「松岡流」の規格外サプライズだ。

30あるグループが相談の上、どの書籍を受け取りたいかを決めて、その意向が集約された。最初は「Paix2」(ぺぺ)の『逢えたらいいな』が準備した部数以上の人気を集めたため、再調整の結果ほぼ均等に配分され、受講学生はこの日いずれかの書籍を手に教室をあとにすることになった。

次週はグループ討論、再来週は全体討論と続くこの講義、まだまだ「松岡流」のサプライズ、隠し玉があるのかもしれない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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WINNERS 2016 2nd──幾多の王座に絡むヤングやベテランたちの激しい展開!

1月10日にISKAムエタイ世界バンタム級王座決定戦を制し、チャンピオンとなった志朗がISKAムエタイ・ヨーロッパ同級チャンピオン. ライアン・シェーハンとのノンタイトル戦が行われました。見かけ弱そうな細身のライアンはムエタイ技を身に付けた強豪でした。志朗がボディブローやローキックでペースを掴みつつ、ヒジで切られてからムエタイ技のシェーハンの距離感に苦戦した流れでした。

ムエタイが世界に普及した現在、いろいろなタイプの選手が世界に散らばっている中で、特にヨーロッパ勢は昔から柔道でも学習能力が高く、また地続きの近隣の国々と交流が盛んになるので、競技人口も高く、成長度が高いと言われます。ムエタイ殿堂王座が世界最高峰であっても、強いのはタイだけではない、いろいろな国柄のタイプが拡散した方々の選手と対戦することが重要な時代かもしれません。今後、志朗は日本人選手とも対戦して欲しいところ、そこにファンの支持と評価が高まります。

日本バンタム級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー)が長身を活かした右ジャブを有効に使い、2度の飛び膝蹴りで勝岡健(伊原稲城)を豪快にKO、2度目の防衛に成功と共に今興行ベストファイトとなる武田幸三賞を受賞。また、「ルンピニー王座を狙う」というマイクアピールに、挑戦への新たなルート展開を見せるのか、気になる宣言でありました。

2010年に石井宏樹を小腸断絶で病院送りにしたパッカオ・ダボンヌンガヌウン(タイ)を緑川創(藤本)がブッ倒し、敵討ち成功。ラジャダムナンランカーを倒したことで、緑川のランク入りも確実で、いよいよ殿堂王座挑戦が近づいて来たかの期待を持たせる印象。ヒジでパッカオの頬を腫れさせ、2R後半からパッカオの反撃激しく骨を砕くような打ち合いが続く中、緑川が左右パンチでダウンを奪い、最後はコーナーに詰め、ボディと顔面パンチで仕留める豪快にKO。激しさが長く続いた互いのぶつかり合いでは、瀧澤博人の試合を上回っていた印象があります。

麗也(20歳/治政館)と山田航輝(17歳/キングムエ)の、幼少期からアマチュアでムエタイ・キック系競技の経験を積んできたベテランの試合は、攻防の展開が速く、スタミナ切れない展開に会場が沸き、ムエタイ経験は山田航輝が上回る中、麗也のキックリズムの攻撃力が上回ったか、僅差の結果ながら麗也の勝利。これで対戦が遠退くのでなく、また再戦に向かって欲しい幼少期開始世代の対決でした。

主要クラス3試合の記者会見。左から麗也、緑川創、志朗、ライアン、パッカオ、山田航輝

◎WINNERS 2016 2nd / 2016.5.15後楽園ホール17:00~21:30
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会
前日計量:14日.ホテル東京ガーデンパレス(御茶ノ水)15:00~16:00

◆日本 vs アイルランド国際戦 56.0kg契約3回戦

蹴りの応酬だけでは負けないが、調子付かせたライアン(左)の蹴りが強い
パンチで弱そうなライアン(右)へのボディ打ちは効果はあるが、すぐ首相撲へ引き込む巧みさ
瀧澤博人の飛び膝蹴りが2度とも見事にヒット

ISKAムエタイ世界バンタム級チャンピオン.志朗(治政館/55.8kg)
vs
欧州ムエタイ・バンタム級チャンピオン.“アベンジャー”ライアン・シェーハン(アイルランド/55.7kg)
引分け / 1-0 (主審 椎名利一 / 少白竜 29-29. 桜井 29-29. 宮沢 30-28)

◆日本バンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/53.5kg) vs 1位.勝岡健(伊原稲城/53.25kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:45 / カウント中のレフェリーストップ / 主審 仲俊光

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(藤本/69.9kg) vs ラジャダムナン・スーパーウェルター級8位.パッカオ・ダポンヌンガヌウン(タイ/69.5kg)
勝者:緑川創 / KO 4R 2:32 / カウント中のタオル投入 / 主審 少白竜

パンチの距離で勝機を見出す緑川創(左)

◆52.5kg契約 5回戦

麗也(前・日本フライ級C/治政館/52.4kg) vs 山田航輝(キングムエ/52.2kg)
勝者:麗也 / 2-0 (48-48. 49-48. 49-48)

◆73.5kg契約 5回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg) vs イ・ジフン(韓国/72.25kg)
勝者:斗吾 / 3-0 (30-26. 30-26. 30-26)

◆59.0kg契約3回戦

内田雅之(前・日本Fe級C/藤本/58.7kg) vs デンサヤーム・ウィラサクレック(元ルンピニー・B級C/タイ/58.5kg)
勝者:デンサヤーム / TKO 2R 3:05(場内アナウンス) / レフェリーストップ

反撃の麗也(左)も譲らない攻勢

◆ライト級3回戦

日本ライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/61.0kg) vs 日本ライト級2位.直闘(治政館/61.23kg)
引分け / 三者三様(29-28. 29-30. 29-29)

◆他の6試合

昔から、試合へ向けた記者会見というのはビッグマッチの際にありましたが、ここ数年、それほど大きくない興行でも、記者会見は増えてきた様子はあります。特に公開計量というのは、毎度やって欲しい気がします。各社記者さんにとっては記者会見の方が重要と思われるでしょうが、計量や試合結果記録などは公式に開示して欲しいものなのです。

蘇我英樹(市原)が後楽園ホールでも引退式を披露。先月、市原臨海体育館で大月晴明とラストファイトを行ない、壮絶KO負けを喫した蘇我英樹はその試合後、ダメージ引きずる中、引退式を行ないましたが、改めて後楽園ホールの殿堂で、市原だけでない多くのファンが集まる中、引退式を行ないました。市原では報道陣もほとんど居なかったので、仕方ないところ、後楽園ホールでの開催を1本に、豪華にやった方がよかったように思います。しかしいずれも「長き激闘にお疲れ様でした」という声が多い引退式でした。

3月にキックボクシング創始者・野口修氏が逝去されました。近親者のみの密葬の形で見送られたようで、4月に入っても報道はされていなかったようです。これで良くも悪くも長き時代のひと区切りが終わったという印象ですが、野口修氏の影響で個々のキック人生が続いている多くの業界人が今後もキックボクシングを引率していくことでしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『NO NUKES voice』衝撃の08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
「世に倦む日日」主宰者による衝撃の書!田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

絶望の牢獄から無実を叫ぶ極限芸術──広島で「冤罪死刑囚たちの絵展」が好評

5月21日(土)から広島市安佐南区の「カフェ・テアトロ・アビエルト」で開催されている「冤罪を叫び続ける死刑囚の絵展」が好評を博している。

これまで店内で様々な個性的イベントを開催してきた同店。死刑囚が獄中で描いた絵の展覧会は、数年前から全国各地で開かれるようになっているが、その先駆けといえる存在でもある。

独特の存在感を放つ林氏の作品

◆ブームの火付け役にも刺激

同店が初めて「死刑囚の絵展」を開催したのは2012年の秋だった。死刑囚・大道寺将司氏(1948年~)の亡母・幸子氏が遺した預金で創設された基金によって毎年開催される死刑囚の作品展に寄せられた20数名の約50点の絵を展示した。同店のオーナー・中山幸雄氏がその作品展の主催者らと親交があった縁で実現したとのことだった。

そして翌年、この展覧会に刺激を受けた福山市の「鞆の津ミュージアム」のアートディレクター・櫛野展正氏が死刑囚37人の約300点の絵を集めた展覧会「極限芸術 ~死刑囚の表現~」を開催。これが全国各地から観客が殺到する大ブレイクとなり、死刑囚が手がけた芸術に広く注目が集まるようになった。

実を言うと、筆者が今年2月、冤罪死刑囚たちの書画を集めて制作した編著「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」も元々、アビエルトが開催した2012年の「死刑囚の絵展」に足を運び、感銘をうけたことから着想したものだった。

司法に対する強い憤りを表現した高橋氏の作品

◆7人の冤罪死刑囚の絵を展示

今回、同店が開催した展覧会は、冤罪を主張する死刑囚の絵を特集したもの。林眞須美氏、藤井政安氏、何力(フウ・リー)氏、松本健次氏、風間博子氏、金川一氏、高橋和利氏という7人の冤罪主張死刑囚の絵を展示している。

毎度なんともいえない情念を感じさせる林氏の絵は今回も会場で独特の存在感を放っていたが、他の6人の作品もそれぞれ独特の味わいがある力作ぞろい。画力の高さには定評がある風間氏と高橋氏は前掲「絶望の牢獄から無実を叫ぶ」にも書き下ろし手記を寄稿してくれているが、この展覧会でも自らの潔白を訴えかけてくるようなメッセージ性の強い作品を提供していた。今回も一見の価値がある展覧会になっていると思う。

なお、風間氏については、蜷川泰司氏の小説「迷宮の飛翔」に提供した挿し絵の原画も同時に展示。会の開催は6月5日(日)まで。同4日(土)には、蜷川氏によるトークイベントも開かれる。

風間氏の抽象画。開いた扉からあふれる光は「無実の希望」か

(1)「冤罪を叫び続ける死刑囚の絵展」の詳細は「カフェ・テアトロ・アビエルト」のHPにて。
(2)上記の櫛野氏が福山市につくったアートスペース「クシノテラス」でも「極限芸術2 ~死刑囚は描く~」が8月29日まで開催中。5月29日には都築響一氏、7月4日には茂木健一郎氏のトークイベントがある。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

片岡健編『絶望の牢獄から無実を叫ぶ――冤罪死刑囚八人の書画集』(鹿砦社2016年2月)

「世に倦む日日」『SEALDsの真実』で問われている学者・文化人の言説と態度

「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

高橋源一郎、山口二郎、小林節、小熊英二、内田樹、上野千鶴子をはじめとする「シールズ」応援団の現・元大学教員に聞きたい。
あなたたちは人生の中で、とりわけ学究活動に身を置くようになり、何を学び何を経験し、何を学生に教壇から講義してきたのかと。

「シールズ」は20世紀の最終盤に産れた世代の学生が構成していた。だから彼らには60年安保、70年安保の実体験は当然ない。私自身だって60年安保、70年安保を自身の体験として経験している訳ではない。経験はないが書物や各種の情報、そして何よりも私自身がそれらを、決して軽視できない問題だと感じたから、断片的ながら調べることはしたし、私が生まれるより前に惨殺された、樺美智子の名前は、小林多喜二同様、頭から離れることがない。

数十万人の激しいデモに身を置いた経験もなければ、国会周辺を取り巻く「怒り」の一員になった経験もない。だけれども「どのようなことが起こったのか」、「人々の怒りはどう現されたのか」についての私の想像は、それほど的外れなものではないように思う。

ひるがえって、昨年の「戦争推進法案審議」の際に国会周辺で繰り広げられた「シールズ」による行動には、当初から極めて強い違和感があった。「本当に止める」と書かれたプラカードの文字は真逆の意味にしか受け取れなかったし、「とりま廃案」の「とりま」の意味は知り合いの若者に聞くまで解らなかった。シャボン玉よりも軽そうな、そしてシャボン玉ほどの瞬時の輝きすら持たないこれらの言葉は、本来自然に高まっていく「怒り」に穴をあけて、茶番劇が茶番劇を認める役割だけを果たした。

「シールズ」も大学生なのだから、言論については批判や責めを負う責任はあろうが、もっと指弾されるべきは、彼らの「無知」振りに「違う、そうではない」と豊かな経験と知識から諌めるべき学者や、教員があろうことかもろ手を挙げて、あの空疎な乱痴気騒ぎを称賛したことだ。全共闘運動の何たるか、何であったかを賛否はともかく経験しているであろうはずの、高橋、山口、小林、上野らが吐いた「ことば」がどれほど軽率なものであったことか。

しかし、よくよくこの面々の名前を見直すと実は共通項がある。彼らはいつの時代も根源的な正義ではなく、その時代に受け入れられやすいトピックに必ずと言ってよいほど顔を出す連中だ。上野は京大時代には学生運動の中でも相当に過激な運動を牽引する指導的学生と近しい関係にあったと聞いている。その経験と昨年のシャボン玉ほどの重さもない空疎なイベントを自身の中で学者として真摯に比較し、無知の過ぎる学生たちに彼女自身の経験(それが成功にせよ苦い経験にせよ)を何故語らなかったのだ。本気であのイベントが「新しい運動」だと考えていたのか。そうではあるまい。彼女の打算高さを考えれば別の計算が働いていたはずだ。

山口二郎は法政大学の教員として、なぜ足もとの法大キャンパスで起こっている、異常事態を問題にしないのだ。「ついに国民の怒りが爆発しましたね」などと、的外れなコメントする前に、学内でビラ配りも出来ない、立て看板も立てられない、公安警察が常駐する異常事態を何故問題にしないのだ。彼自身が積極的に動いた「小選挙区制」を導入すれば、今日のような政治的閉塞状態、多様性のある政党が存在できなくなることは自明であったにもかかわらず、それを積極的に推進した責任をどう考えるのだ。

「世に倦む日日」主宰の田中宏和さん

つまるところ、「シールズ」応援学者は、私の見るところ、インチキばかりだ。

このような粗雑な感想ではなく、社会科学的手法を用いて「シールズ現象」を読み解いた『SEALDsの真実』が発刊された。著者である田中宏和氏は、人気ブログとツイッター「世に倦む日日」で積極的な発信を行っている在野の研究者である。『SEALDsの真実』では、鹿砦社の本コラムや『NO NUKES voice』以外、一部の右派を除いては批判が皆無に近かった「シールズ」にメスが入る。

「忖度」や「自己規制」という言葉をメディア関係者からしきりに耳にするようになった。そんなものは不要だ。本書は「事実を直視することの大切さ」と「知識・学識への態度」について我々に多くの示唆を与えてくれる。

◎田中宏和さんのブログ「世に倦む日日」
◎「世に倦む日日」ツイッター 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

早くも増刷決定!「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』
『NO NUKES voice』08号【爆弾対談】「世に倦む日日」田中宏和さん×松岡利康本誌発行人

地震学の泰斗、島村英紀さんが語る〈地震列島・日本〉の今とこれから

2016年5月14日土曜日。水道橋に所在する〈たんぽぽ舎〉にて催された講演会「地震列島日本の今・そしてこれからは?」(「地震と原発」連続講座第1回)に参加してきた。地震と原発に関する連続講座の第1回として展開された今回の講演会。ゲストとして招かれたのは、地震学者・地球物理学者・評論家として活躍する島村英紀氏だ。1941年、結核の権威である島村喜久治を父として生まれ、東京大学理学部物理学科を卒業。同大学院地球物理学博士課程修了。北海道大学助教授、北海道大学地震火山研究観測センター長を経て、現在は国立極地研究所所長、武蔵野学院大学特任教授として学問に従事している。

2016年4月14日以降、熊本県や大分県を中心に大きな地震が相次いで発生していることを受け、地震に対する世間の関心はいっそうの高まりをみせている。ここでは、島村英紀氏による2時間の講義の内容をより平易に再構成しようと思う。この知識が皆様の生活の一助となるよう尽力する。

◆海溝型地震と内陸直下型地震
──プレートの動く速さは「爪が伸びるスピードよりも速く、髪の毛のそれよりも遅い」

地震学の泰斗、島村英紀さん

日本で起きる地震には〈海溝型地震〉と〈内陸直下型地震〉の2種類がある。〈海溝型地震〉はプレートとプレートの境で起きるもので、2011年に発生した東日本大震災はこれにあたる。プレートの境というのは海底に存在するため、津波を生むことが多いのも特徴だ。

一方の〈内陸直下型地震〉は、ゆっくりと押し進められてくるプレートによって日本列島が歪んだりねじれたりすることに原因がある。その歪みやねじれが溜まり、岩が我慢できる限界を超えてしまったときに地震が発生する。地震の規模としては一般に〈海溝型地震〉よりも小さいが、人の住む陸地の直下で起きるため、被害が大きくなる。阪神淡路大震災はこちらのタイプであった。

日本列島は、〈ユーラシアプレート〉〈北アメリカプレート〉〈フィリピン海プレート〉〈太平洋プレート〉という4つのプレートが交わる地点であり、その分地震が多発する。プレートが交わる地域は地球上でも限られている。4つものプレートが関係する日本は、それだけでもかなり特異な特徴を有しているといえる。ちなみに、プレートの動く速さは「私たちの爪が伸びるスピードよりも速く、髪の毛のそれよりも遅い」という。

◆中央構造線
──この活断層群が地震を起こし、その被害を実際に“目にした”のは今回がはじめてだった

中央構造線の活断層群が地震を起こし、その被害を実際に“目にした”のは熊本大地震がはじめてだった

今回の熊本地震は典型的な内陸直下型地震だが、もうひとつの特徴がある。それは、日本最長の断層帯である〈中央構造線〉が起こした地震だということだ。〈中央構造線〉は長野県に始まって名古屋の南を通り、紀伊半島を横断し、四国の北部をかすめ、九州、東シナ海へと横断する活断層群で、長さは1000kmを超える。

地質学的な研究から〈中央構造線〉が過去に数百回以上の地震を起こしたことが分かっているが、この活断層群が地震を起こし、その被害を実際に“目にした”のは今回がはじめてだ。日本人がこの列島に住み着いたのは約10000年前、記録を残しているのはせいぜい直近2000年ほどなので、この大断層が地震を繰り返してきた時間の長さに比べて、あまりに短い間でしかないのだ。

◆活断層とはなにか?
──地震が起きてみないと断層を確認できない場合は多い

活断層は一般に枝分かれしていたり、途切れたりしているため、活断層の長さをどのように認定するか、というのは学者によってその方法が異なる。原子力発電所を作る前に“活断層の長さ”を決めてから“その場所で起きる地震の最大震度”を求めているが、“活断層の長さ”は学者による任意性が大きいためこの手法には強い疑問が出されている。

また、活断層はその定義が“地震を起こす断層のうち、地表に見えているもの”であるから、首都圏や大阪、名古屋など、川が土砂を運んできたり、海の近くだったりして堆積層が暑いところでは断層が見えないため、“活断層は存在しない”ということになってしまう。阿蘇山の近くのように厚い火山噴出物をかぶっているところでも、やはり断層は見えない。今回の地震では、事後、初めて活断層が確認された。国内の他所においても、実際に地震が起きてみないと断層を確認することができない場合が多い。

◆地震の連鎖について
──東への連鎖が続けば愛媛県沖、西南への連鎖が広がれば鹿児島へ

熊本での地震によって、その部分の地震エネルギーは解放された。しかし、それは隣の〈地震候補〉との間の留め金が外れたことをも意味するものだ。もし隣の〈地震候補〉が、いまにも地震を起こすだけのエネルギーを蓄えていれば、支えを失って連鎖的に地震が発生する可能性がある。

こうして、熊本に続き阿蘇山の下で、さらに大分でと地震が続いた。東へ連鎖が続けば愛媛県沖の瀬戸内海、西南へ連鎖が広がれば鹿児島に入る。ともに原発が所在する地点だ。この連鎖が連続するかどうかというのは、隣の〈地震候補〉にどのくらいのエネルギーが蓄えられているかによる。しかし、現在の科学ではその量を確認することができない。

◆原子力発電所の安全基準値
──益城町で1580ガル、原発設計基準は最大500~700ガル

益城町で1580ガル、原発設計基準は最大500~700ガル

内陸直下型地震の特徴として、地面の〈加速度〉が大きいことを挙げなければならない。地震が発生した際建物にかかる力は、そのものの重さに〈加速度〉をかけることで算出することができる。加速度が大きいほど、そのものに大きな力がかかり、場合によっては倒壊したり破損したりする。

今回の地震では、益城町で1580ガル(ガルは加速度を表す単位。詳細な説明は割愛する)という加速度を記録した。かつては“980ガルを超える地震動はあり得ない”とされていたが、阪神淡路大震災以後、多くの観測機が設置されたことにより今まで見落とされていた大きな値が記録されるようになった。

各地の原子力発電所は、ここまで大きな加速度を想定していない。いままでの設計基準では、せいぜい500~700ガルを最大として想定しているため、それを超える地震動を受けたときに発電所がどうなるかということは分からない。

※   ※   ※

以上、配布されたレジュメをベースに講義の内容をまとめてみた。生活を支える知識として役立てていただければ幸いだ。論調が個人的情緒に拠ったものであると、趣旨が見失われてしまう。こうした態度を反省させるような島村氏の淡々とした語り口(あまりに淡々としているために聴講者の笑いを誘うこともしばしば)に、非常な説得力を感じたものである。

▼大宮浩平[撮影・文]
1986年東京生まれ。写真家。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

たんぽぽ舎「地震と原発」連続講座第2回目の講師は広瀬隆さん。本日5月26日19時開演です!

スペースたんぽぽ(ダイナミックビル4F)5月末の予定

◎5/26(木)「地震と原発」連続講座(第2回) 広瀬 隆さん 
「熊本大地震と原発…九州電力川内原発大丈夫?」
日時:5月26日(木)18:30開場、19時より21時 会場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 
問い合わせ:たんぽぽ舎 TEL 03-3238-9035  参加費:800円

◎5/28(土)槌田ゼミ第18回原発基本講座 槌田 敦さん
「4/25四国電力との公開ヒアリングの報告と今後の方針」
日時:5月28日(土)14時より16時 会場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 参加費:800円

◎5/29(日)学習会 浅野健一さん(元共同通信記者)
 「日本でえん罪がなぜ多発するか
日本の司法には正義を実現する構えがない、日本には三権分立がない、裁判官・弁護士・検察官は三位一体」
日時:5月29日(日)14時より16時  会場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F) 参加費:800円
  
  

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