堀田春樹
一昨年のメインイベンターは睦雅。昨年は皆川裕哉。今年は、皆川裕哉からタイトル奪取した勇成が務めて圧倒のノックアウト勝利を飾った。
市原ジムの主力選手である菊地拓人はアグレッシブな攻防の末、判定負け。
◎Road to KING3 / 5月25日(日)市原臨海体育館16:00~19:10
主催:市原ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
戦績は主催者発表にこの日の結果を加えています。
◆第11試合 57.5kg契約 5回戦
ジャパンキック協会フェザー級チャンピオン.勇成(Formed/2005.8.17福岡県出身/ 57.4kg)11戦10勝(7KO)1敗
vs
ヌアシラーS.R.K(タイ/23歳 57.25kg)89戦60勝27敗2分
勝者:勇成 / KO 2ラウンド 33秒
主審:椎名利一
ヌアシラーS.R.Kは元・タイ国True4Uバンタム級8位で、True4Uはテレビチャンネルの一つです。
先手を打つ勇成の左ミドルからハイキック。ヌアシラーは蹴り返しても勇成に圧され気味。組み合っても離れても勇成が先手を打つ前進が目立つ。ヌアシラーは不意を突くヒジ打ちや、組み合った際の崩し転ばしは上手を行くが、勇成もヒジ打ちは上手く、前蹴りから左ボディブローも入れて落ち着いて捌く。

第2ラウンドにも勇成が前進気味の中、接近戦でヒジ打ちの相打ちのような流れで勇成が左ヒジ打ちをヌアシラーのアゴに打ち込み、効いてしまったヌアシラーはゆっくり立ち上がるもカウントアウト。勇成が圧倒した展開でノックアウト勝利となった。


勇成は試合後、応援団に囲まれながら「1ラウンド目はちょっと固かったんですけど、2ラウンド目は少し修正出来て上手く倒せて良かったと思います!」という感想。
次戦については「次の試合は決まって無いですけど、怪我も無いのですぐやれるのでまた頑張ります!」と応えた。
◆第10試合 65.0kg契約3回戦
ペップンミー・ビクトリージム(タイ/24歳/ 64.75kg)66戦51勝(16KO)15敗
vs
中尾満(エイワスポーツ/ 1984.1.18千葉県出身/64.7kg)62戦22勝(8KO)34敗6分
勝者:ペップンミー・ビクトリージム / KO 1ラウンド 2分8秒
主審:少白竜
ペップンミーは元・タイ国ムエサヤーム・イサーン地区フライ級2位。
中尾満は新日本キック協会での元・日本ライト級暫定チャンピオン。
両者ローキック中心の蹴りの牽制から、中尾満がいきなりボディーへ左ストレートを打ち込むと、ペップンミーはカウンターの右ミドルキックが交錯。中尾は大きくバランスを崩して吹っ飛ぶように後退。更に蹴りの攻防が続く中、中尾は更に左ストレートを打ち込みヒットを狙う。

ペップンミーは読みが深く、まともには喰わない。そんな打ち合いの距離の中、ペップンミーの左ヒジ打ちが中尾のアゴにカウンターヒットすると、中尾は倒れ込み立ち上がれずカウントアウトされてしまった。

試合前の煽り映像で、「百戦錬磨という意味で目標は100戦。ムエタイスタイルの中での、パンチで倒しに行くスタイル(ムエマッド)で戦っていきたいと思います。」と語っていたとおりのパンチを打ち込む踏込みは勢いがあったが、捌くペップンミーも上手かった。
◆第9試合 ライト級3回戦
ジャパンキック協会ライト級2位.菊地拓人(市原/千葉県市原市出身25歳/ 61.0kg)
9戦6勝(3KO)3敗
vs
NJKFスーパーフェザー級6位.匠(=小林匠/キング/東京都出身23歳/ 60.9kg)
10戦7勝(2KO)2敗1分
勝者:匠 / 判定0-2
主審:勝本剛司
副審:椎名29-29. 中山28-29. 少白竜29-30
先手を打った菊地拓人が、パンチで圧力掛けて匠をロープ際に追い込むが、匠は蹴りでジワジワ前進。菊地の出方に合わせて蹴りとパンチで巻き返す匠。更に組み合ってからの足払いで菊地を引っくり返すテクニックも見せた。

第2ラウンドも菊地が攻めても匠は怯まず攻め返して来る圧力に攻め倦む菊地。
第3ラウンドに入っても流れは変わらずも、終盤は菊地がパンチラッシュを仕掛けるが、流れを変えるに至らず、匠は巧みに攻めた技で判定勝利。

勝利した匠は「最初は自分がコントロールして後半勝負の戦略も、相手が最初からガンガン来て呑まれちゃって、対抗するしかないなと何とかローキックとパンチで我武者羅に打っていただけなんですけど、練習で散々追い込まれて来たので、そのスタミナ成果が出せたかなと思います。最後は結構グダグダしちゃったんでもっと練習します!」と応えました。
試合前の煽り映像でも「噛み合うと思っているんで、ヌルイ試合しないでバチバチにやり合いましょう!」と言っていたとおりの好ファイトになった。いずれ再戦しても見応えある展開になるだろう。
◆第8試合 女子ミネルヴァ・ピン級3回戦(2分制)
アトム級1位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/45.3kg)31戦10勝19敗2分
vs
ペーパー級4位.Uver∞miyU(T-KIX/静岡県出身25歳/45.25kg)17戦5勝11敗1分
勝者:祥子JSK / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 勝本30-28. 少白竜30-28
長身の祥子の蹴りの距離感が良く、タイミングよくミドルキックがヒットする。距離が近づくとパンチもヒットし、ウーバーミユの左目辺りが腫れだした。
第2ラウンド以降も祥子の主導権は変わらず距離感掴んで蹴り中心に攻め優って判定勝利。

◆第7試合 ミドル級3回戦
白井大也(市原/千葉県市原市出身22歳 72.35kg)5戦2勝(1KO)1敗2分
vs
MOTOKI(レジェンドドラゴン/愛知県出身22歳/ 67.85kg)5戦3勝(1KO)2敗
勝者:MOTOKI / KO 2ラウンド 1分45秒
主審:少白竜
初回は互角に蹴り合う両者。第2ラウンドもアグレッシブに蹴り合い、組み合った際のMOTOKIのヒザ蹴り、もしくはミドルキックか、白井大地のボディーにヒット、後退りするように赤コーナーに向かって蹲るとそのままテンカウントされ、MOTOKIのノックアウト勝利となった。

◆第6試合 バンタム級3回戦
花澤一成(市原/2004.4.9千葉県市原市出身/ 53.4kg)11戦2勝(2KO)6敗3分
vs
木部晴太(尚武会/三重県出身21歳/ 53.2kg)1戦1敗
勝者:花澤一成 / KO 1ラウンド 2分35秒
主審:椎名利一
花澤一成は蹴りで距離感を保ち、ローキック、ミドルキック使い分けリズムを掴んだ試合運びが上手い。前蹴りで突き放し、飛びヒザ蹴りも高く二度繰り出し、三度目はやや低くも飛び上がり気味のヒザ蹴りで木部晴太のボディーにヒットさせノックダウンを奪うと、そのままテンカウントされ、花澤一成が久々のノックアウト勝利となった。

◆第5試合 JKA女子アマチュア-45kg級王座決定戦2回戦(2分制/延長1分)
田中心結(市原/千葉県出身12歳)vs 髙澤希愛(BANG BANG/千葉県出身14歳)
勝者:田中心結 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)
上下の蹴りとヒザ蹴り、組み合っても圧力掛けて優った田中心結がフルマークの判定勝利。アマチュアでも両者は幼い頃から始めた体幹でスピーディーにバランス良く蹴って攻め切った。
◆第4試合 58.0kg契約3回戦
海士(ビクトリー/山形県出身36歳/ 57.9kg)4戦3勝1敗
vs
石井隆浩(尚武会/東京都出身28歳/ 57.0kg)4戦4敗
勝者:海士 / 判定3-0(30-26. 30-26. 30-26)
◆第3試合 65.0kg契約3回戦
アキト・オー・チャロンチャイ(TEAM KUNTAPアキトムエタイ/千葉県出身29歳/ 64.7kg)3戦3勝
vs
中山裕登(JKI花澤/千葉県出身21歳/ 64.2kg)3戦1勝2敗
勝者:アキト・オー・チャロンチャイ / 判定2-1 (29-28. 29-28. 29-30)
◆第2試合 ウェルター級3回戦
三澤悠多郎(市原/千葉県出身34歳/ 65.35kg)1戦1分
vs
ユウキ・オー・チャロンチャイ(TEAM KUNTAP/千葉県出身24歳/ 65.7kg)
5戦1勝3敗1分
引分け 1-0 (29-29. 29-29. 29-28)
◆第1試合 ライト級3回戦
西山天晴(治政館/千葉県出身18歳/ 61.1kg)1戦1敗
vs
前田歩(YSS/千葉県出身26歳/ 61.35→61.28→61.05kg)2戦1勝1敗
勝者:前田歩 / 判定0-3 (28-29. 28-30. 28-30)
《取材戦記》
蘇我英樹以来、メインイベンターを任せられる選手が不在の市原ジム。菊地拓人は昨年のジャパンキックボクシング協会新人賞受賞選手だが、この日は圧勝で存在感を示したかっただろう。
花澤一成は2021年7月25日の、JKイノベーション千葉キック興行でのデビュー戦をKO勝利して以来の勝利を今回もKO勝利となった。連敗し大きく遠回りした年月だったが、ここから浮上出来るか、打たれ脆さの懸念はあるが回復力は早く、市原ジム伝統の名選手への期待が掛かります。菊地拓人と花澤一成、早くメインイベンターに成長せねばならない。
タイ選手の肩書は二大殿堂と言われるラジャダムナンスタジアムやルンピニースタジアムの他、台頭して来たスタジアムやテレビチャンネル等があります。
ペップンミーの「元・タイ国ムエサヤーム・イサーン地区フライ級2位」の“ムエサヤーム”も以前掲載した記憶があり、何らかの組織名でしたが、ちょっと曖昧でまた調べておきます。
有名タイトルに限ると、無名のノーランカーが多くなるので、肩書は主催者発表どおり、一つの目安として書き入れますが、しっかり調べないとその価値が高かったり、無いに等しいものだったりする場合があります。そんな拘りも時間があれば(暇だったら)今後も調べていきたいと思います。
市原臨海体育館はJR内房線五井駅から直線で3km程ある市原臨海競技場内にあります。五井駅からタクシーで大凡1400円。歩くとスピードにもよるが30分少々。都心から行くだけでも大変な道程です。昔は市原でも君津でも木更津でも東金でもキックボクシング興行は沢山行なわれたものでした。現在は関西や東北、九州で行なわれる興行が増えましたが、東京西部埼玉辺りから見れば千葉県内という地理的距離は行こうかやめようか微妙な位置にありますが、毎年導かれるように行っています。といった本日の脱線話でした。
次回のジャパンキックボクシング協会イベントは、7月13日(日)に後楽園ホールに於いてKICK Insist.23が予定されています。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
