倒産による失業者は特別に早く相談席をまわしてくれる。中畑清に似た失業給付担当者に呼ばれ、手馴れた対応を受ける。
「今ねえ、倒産するところ多いんですよ。中小企業は特に。それでも夜逃げってのはそんなに無いですけど。大変でしょうがお察しします」
社交的な口調で同情してくれる。私は現実逃避気味に考え事をしていた。社長夜逃げ話を漫才のように知人に披露する。暗い顔して話せば暗い話になる。それよりは明るく努めて、聴く相手を楽しませた方がいい。そのためついニヤニヤしてしまった。中畑さんは怪訝な顔をしている。
どうやら離職票が無ければ失業者としても認められない。つまり失業保険も受け取れない。会社は倒産したも同然だが、手続きをしていないから法律上は存続している。社員は実質失業しているが法的には失業者じゃない。「働く会社は無いけれど無職じゃない人、なーんだ?」なんて、なぞなぞに使える。一休さんのトンチじゃないっての。とにかく困る。ニヤニヤしている場合じゃない。といってもどうすればいいんだ。社長は居場所もわからなければ、連絡も無い。
新聞報道によると、長崎県西海市でストーカー被害を訴えていた女性の母と祖母を殺害したとして、殺人罪などに問われた男性被告が14日から長崎地裁で始まった裁判員裁判で無罪を主張しているという。率直な感想を言えば、報道されているような証拠が本当に存在するなら、無罪判決が出る可能性は低そうに思う。しかし一方で、このニュースに触れ、個人的に反省させられたところもある。