2018年の注目冤罪裁判〈1〉「今市事件」と「千葉18歳少女生き埋め事件」

昨年暮れ、当欄で冤罪の疑いを伝えていた「滋賀人工呼吸器外し事件」の西山美香さんに対し、大阪高裁が再審開始の決定を出して大きな話題になったが、今年も袴田事件、大崎事件、日野町事件、恵庭OL殺害事件など冤罪が疑われる数々の再審請求事件で再審開始可否の決定が出る見通しだ。

一方、私が取材している冤罪事件の中には、被告人が第一審で冤罪判決を受けながら、今も無実を訴えて裁判中の事件もいくつかある。その中から、2018年の注目冤罪裁判2件を紹介する。

◆今市事件は2月にDNAの重要審理

まず、当欄では2016年から冤罪事件として紹介してきた「今市事件」。2005年に栃木県今市市(現・日光市)で小1の女の子・吉田有希ちゃんが殺害されたこの事件では、同県鹿沼市の勝又拓哉被告が2014年に逮捕され、2016年4月に宇都宮地裁の裁判員裁判で無期懲役判決を受けた。しかし、有罪証拠は事実上、捜査段階の自白しかなく、当時から冤罪を疑う声は決して少なくなかった。

そんな今市事件では、昨年10月から東京高裁で勝又被告の控訴審の公判審理が行われており、「殺害現場や殺害方法に関する勝又被告の自白内容は現場や被害者の遺体の状況に整合するか否か」「被害者の遺体に付着していた獣毛は、勝又被告の飼い猫とミトコンドリアDNA型が一致するか否か」という2つの争点において、すでに審理が終わったが、いずれの争点においても弁護側が優勢だったという見方がもっぱらだ。

とりわけ12月21日の公判では、藤井敏明裁判長が検察官に対し、「殺害現場について、訴因変更をしなくていいのですか?」と確認をしていたが、一審で有罪判決が出ている事件の控訴審で裁判長が検察官にこのような確認をするのは極めて異例だ。藤井裁判長ら控訴審の裁判官たちが一審の有罪判決の筋書きに疑問を抱いていることは間違いない。

勝又被告の控訴審では、2月にも2度の公判審理が予定されているが、その中では、被害者の遺体に付着していた粘着テープ片から検出された「第三者のDNA」について、真犯人のものである可能性があるか否かなどが法医学者らの証言によって争われる。裁判の結果を大きく左右する審理になるはずだ。

◆2人の被告人に無罪が出てもおかしくない「千葉18歳少女生き埋め事件」

もう1つの注目冤罪裁判は、当欄で昨年11月に紹介した「千葉18歳少女生き埋め事件」だ。

2つの注目冤罪裁判が行われている東京高裁

この事件は2015年に発生した当時、「生き埋め」という残酷な手口がセンセーショナルに報道されて社会を震撼させた。その報道のイメージが強いためか、一審・千葉地裁の裁判員裁判で3人の被告人のうち2人が殺人については無実を主張していたにも関わらず、3人全員に無期懲役判決が宣告されたことに疑問を呈する声はまったく聞かれなかった。

だが、実際には、生き埋め行為は、軽度の知的障害がある実行犯の中野翔太受刑者(すでに無期懲役判決が確定)が他の2人の意向とは関係なく、焦って自分1人で勝手にやったことだというのは、私が当欄の昨年11月10日付けの記事で報告した通りだ。無実を訴えていた井出裕輝被告、事件当時未成年だったA子の2人は、そもそも中野受刑者が被害者を生き埋めにした時には、現場を離れていたのだ。

井出被告とA子はいずれも無期懲役判決を不服とし、東京高裁に控訴中だが、A子の控訴審の公判審理はすでに始まっており、1月18日には第2回の公判が開かれる。井出裕輝被告の控訴審も1月23日に初公判が開かれる予定だ。

2人に対する有罪認定については、様々な疑問がある上、実行犯である中野受刑者自身が「1人で見張りをしている時、掘った穴に入れていた被害者が泣き出したので、焦って砂をかけてしまったんです」と証言しており、生き埋めは自分1人で勝手にやったことだと打ち明けているに等しい状態だ。

井出被告、A子共に控訴審で逆転無罪判決を受けても何らおかしくないだけに、冤罪に関心がある人には要注目の事件だと思う。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

偏向報道の是正を求め在日ジャイアントパンダが無期限ストへ突入

── おとうちゃん、いくら正月やからゆうて、飲みすぎちがう? 暮れの紅白見ながら白酒(パイチュウ)飲みだして、ずっとやで。
── じゃかましい! おまえらにいちいち酒の事は言われとうない。
── せやけど体にさわるで。いくらなんでも。
── あほ!「今年の10大ニュース」お前らも見たやろ?
── それがどないしたん?
── なにが「上野動物園でパンダの赤ちゃんシャンシャン誕生! 初公開に46倍の申し込み」や! お前ら悔しゅうないんかい!

(また、おとうちゃんの「上野恨み節」がはじまった。酒はいってるし、きょうは難儀そうやわ)

── うん、うん。あれはあんまりやね。
── あんまりですむかい! え? テレビも新聞もどこみてけつかんねん。おっ! わしらここでどんだけの家族がいてると思うてんのや!
── そやねぇ。いまはうちら5頭だけになったけど、一時は大賑わいやったもんね。

正月2日、場所は和歌山県「白浜アドベンチャーワールド」だ。ここではジャイアントパンダが現在5頭飼育されており、上野動物園のガラス越しとは異なり、じかにジャイアントパンダを目にすることができるので人気がある。が、13頭もの新生児を誕生させたジャイアントパンダが「白浜アドベンチャーワールド」にいることは、あまり知られていない。そのことについては当人(当パンダ)たちのあいだで、これまでさしたる問題になることはなかったが、昨年上野動物園で「シャンシャン」が誕生して以降の報道過多に、ついに白浜のパンダたちは堪忍袋の緒を切らし、2018年元旦を期して「無期限ストライキ」に突入していた。

東京・上野など目でははない!和歌山「白浜アドベンチャーワールド」のパンダファミリー

パンダたちの要求は
「上野動物園パンダ偏向報道の是正」
「動物園に収容されている動物の野生への一時解放期間の要求」
「日本の自然動物との交流機会の保障」
「外来種を含めた自然動物と動物園収容動物による意思決定機関の保障」
の4項目だ。

関係者はこれまで温厚だったジャイアントパンダの態度急変に驚いたが、ジャイアントパンダが同園に果たしてきた役割の大きさから、要求を無視することもできず、「一度持ち帰り検討させてほしい」とジャイアントパンダ側に回答。同園だけでなく、国際問題に発展する恐れもあることから外務省、文科省、ユネスコ、そして中国大使館とも水面下で対応を協議していたが、回答をまとめるのに時間がかかりついに世界の動物園史上初「ジャイアントパンダによる無期限ストライキ」突入となった。

── だいたいやな。わしらは「平和の使者」ゆわれて、大陸から世界中に派遣された。ちゃうか?
── うん、それはおとうちゃんからしょっちゅう聞いてるし、上野動物園に最初「カンカン」と「ランラン」が派遣されたときからそうやったんやね。
── それがやな、なんでわしら白浜家族はこんなごっつい所帯やのに、ちょぼっとしか宣伝もされんと、なんで上野の若造ばっかりいつも注目されるんや! お? わしがここで可愛い13頭のこども育ててたことを知ってる人間がどれほどおるんや!
── うんうん、おとうちゃんみたいな人間はおらへんやろうね。
── あたりまえや! 人間なんて頑張ってもせいぜい7-8人が限度や。それに日本は少子高齢化社会やよってに、最近の若い人間はこどもを産まんらしい。そこへいくとおとうちゃんは、今でもバリバリやで、へへへ。
── 下品なこといわんといてよ(バッシ)。せやけど、こんなことしていいの?「ストライキ」ってなんのことかわからへんけど。ちゃんと食事くれはるやろか?
── あたりまえやろが。わしらの貢献がなかったら白浜はここまでもりあがらんかったんや。せやから上のほうは知らんけど、飼育係の兄ちゃんたちはいつも通りやがな。それどころかいつもは日本酒かビールしかくれへんのに、白酒こっそりくれはったやろ。これごっついうまいねん(ヒック)。
── あ、テレビのチャンネル変えて!もーなんで上野のことばっかりやるんやろうね。
── せやろが。わしはな、人間に意地悪しようとおもってるんちゃうで。人間には「人権」ゆうものがあるらしい。お前ら知ってるか?
── (一同)知らん。
── 人間は尊厳を守られるために「人権思想」ゆうのを考え出したわけや。お前らは日本生れやから知らんやろうけど、わしはこれでも中国の教育を一通り受けたんや。弁証法的唯物史観や毛沢東のゲリラ戦術からマルクス主義の基本も一応教わった。
── おとうちゃん、お酒飲みすぎちがう?なんか訳わからへんこと言いだしたよ。
── 気の毒にお前らには教養がない。それはしゃーない。こういう環境で育ったんやから。せやけどやな。わしらはもともとこんな「見世物」やなかったことくらいはわかるやろ。
── うん! それはわかる。いっつもおかあちゃんとお話してんねん。大陸の山の中の笹の匂いってどんなんやろなーって。
── そや! そやろ! なんぼこんな場所で産まれても、ワシらの血はあの山や林の中の匂いを忘れはせえへんねん。あそこが故郷なんやからな。
── おとうちゃん、ぼくもちょっとだけ白酒のんでいい?
── おお、ええで。人間は20歳にならんと飲んだらあかんそうやけど、わしらはわしらや。せやけどもったいないからあんまりのんだらかんで。おとうちゃんのぶん、残しとくんやで。
── うわっつ。ごっついきつい。匂いもきついな。この酒。
── そこがええんやないか。まだお前には白酒の味はわからんな。お前は発泡酒飲んどけ。
── うんそうするわ。のどが焼けそうや。
── さて、真面目な話やで。わしらはいま「無期限ストライキ」に突入したんや。こまかいことを説明してもお前らにはわからへんやろから、おとうちゃんが簡単に説明したる。ようきくんやで。まず上野とここの扱いが違い過ぎるのはみんなわかるな?
── うん、それはわかる。
── あれはな、日本の中央集権がまねいた結果なんや。考えてみ。ここではおとうちゃんだけでお前ら13頭を育てたんやから、上野の13倍騒がれなおかしいやろ?
── わたしもそない思う。
── 人間の世界はな、「人権」だの「平等」だといいよるけど、結局そうはなってへんいうことや。せやからおとうちゃんは人間に向けて全面的な問いを投げかけたわけや。「動物園に収容されている動物の野生への一時解放期間の要求」はわしらを一時的に「大陸の山にもどせ」いうことや。キリンやシマウマやライオンをアフリカに。ペンギンやイルカやオットセイを海に返せいうことや。
── え!それええやん!大陸の山の匂いだけやなくて、ほんまもんの笹食べたい。山に帰ったら親戚に会えるかな、おとうちゃん?
── さあな。それはわからへん。せやけどお前らでも胸が躍るやろ。大陸の山の匂い。
── うん!帰りたい!
── 「日本の自然動物との交流機会の保障」は日本にも熊や猪、狐や鹿。ようけ自然動物がおる。やつらとわしらは直接おうたことがない。こんな長いこと日本におって、おかしいと思わへんか?
── せやけど熊は肉食やで。狸も狐も。
── わかってるがな。やけど奴らはわしらのことをよう知っとる。実はな、日本の自然動物は「日本自然生物同盟」いう組織を立ち上げたんや。そのことはここに飛んでくるヒヨドリから聞いた。奴らもわしらと接触したがってるそうや。なんせわしらは人間に大人気やからな。
── そんで、日本の動物と話してどうすんの?
── それやがな。「外来種を含めた自然動物と動物園収容動物による意思決定機関の保障」はな、日本の動物だけやなしに、日本に連れてこられたり、入ってきてしもうた連中との連帯や。沖縄のマングースが中心になる。オブザーバーやけどヌートリアやブラックバスも参加する予定になっとる。
── 予定になっとるって、もう準備してるん?
── 白酒取ってくれ。あたりまえや。ヒヨドリをレポ(連絡役)にしてもう連中と話はつけてある。沖縄のマングースとハブは気の毒やで。ハブは毒蛇やさかいに、人間には嫌われた。ハブを駆除するために人間はマングースを沖縄に連れてきた。マングースは蛇が好物やからハブを食わせたかったんやな。ところがそこへ「ヤンバルクイナ」発見や。マングースはハブだけを食うてるわけちゃう。腹が減ったらネズミでも昆虫でも「ヤンバルクイナ」でも食うがな。当たり前やろ。せやのに人間は自然だけやなくレジャーランドでも「ハブとマングースの戦い」ショーをやってキャッキャ言ってよろこんどった。マングースが連れてこられたのは檻の中でハブと「格闘技」するためやない。自然のハブを駆逐させようと人間が考えたのが理由や。それで今何が起きてると思う?
── ハブが全滅したん?
── ちゃう。人間は「ヤンバルクイナ」を守るために「沖縄島の北部(ヤンバル)エリアからマングースを全滅した」いうてる。
── ええ!そんなん勝手すぎるやんか!
── そない思うやろ?それだけやない。「ヤンバルクイナ」で一儲けした人間は、どういうわけか、「ヤンバルクイナ」の宣伝を止めて「イシカワガエル」に看板をかけ替えよったんや。
── なに「イシカワガエル」って?
── 聞いたことないやろ。沖縄の固有種らしい。けども「ヤンバルクイナ」ほどインパクトないわな。わしらと共闘する「日本非人間生物同盟」には「ヤンバルクイナ」も「参加する」言うとる。人間はわしらが「可愛くおとなしい」と思いこんどる。そこや。だからわしらがまず動くんや。わしらには世界のネットワークがあるし、人間の環境主義者との連携も既に模索しとる。
── おとうちゃん、結局なにがしたいの?なにをするの?
── 生物解放や。人間の一元支配から生物解放。人間は人間同士でがんじがらめになってもうどうにもならん。数千年続いてきた人間支配ももう限界にきてるんや。だからわしらが動き出す。もう人間にまかせておかれへんからな。
── なんかわからん。けど、わくわくする。お父ちゃんもうちょっとなら白酒飲んでええよ。
── 言われんでも、もう飲んでるがな。それから内緒やけどこの作戦にはおもろい奴もくわわるで。
── だれ?
── トトロや。

(上記の物語は断るまでもないがフィクションである)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

新年総力特集『NO NUKES voice』14号 脱原発と民権主義 2018年の争点

死刑・原発・東京新聞 ── 不整合な一年が暮れる

これは12月20日頃ネット上での東京新聞Webの冒頭画面だ。

 

この切り取りの中には、平然としているが、本来かみあわないはずの突合が無理やり詰め込まれている。東京新聞(中日新聞)は明確に原発に疑義を呈している。福島第一原発事故の後に東京新聞は契約部数を増やした。契約増の理由は、事実を伝えない他の全国紙よりも信憑性が高いと評価されたからだ。

ところが、このネット上の記事にはあろうことか「東京電力」の広告が画面中心に登場する。東京電力の広告は東京新聞が選択し、広告掲載契約を結んだものではないだろう。多数の閲覧者があるHPやブログでスポットCMのように、次々とかわるがわる入れ替わる方式の広告表示形態が、ある瞬間このようなマッチングとなっただけのことなのだろう。それにしても媒体の性格やブログの主張している内容と、まったくそぐわない広告が偶然にしても並び立つこの表象は、情報錯乱時代の意味論の視点からは示唆的な光景である。

反自民を標榜するある個人のブログを見ていたら、総選挙期間中しきりに安倍の顔が映し出される自民党の広告が表示されていた。紙媒体であれば、あのような現象はおこらない。反自民を主張するビラや冊子に自民党が広告を出すことはないし、発行元は仮に広告掲載の依頼があろうと断るだろう。

ネット上のスポットCMは媒体性格など関係なしに、おそらくは広告主からポータルサイトに支払われた広告代金にそった頻度で登場するのだろう。画面上での本来の主張との不整合は、いまのところ別段問題にされてはいないようだ。ただし、この画面を見て、「なんかへんだなぁ」とあやしさを感じ取る感性は保持しておきたいと思う。

◆犯行時19歳の死刑執行と光彦君の友人

そしてタイトルの「犯行時19歳の死刑執行 92年の市川一家4人殺害」記事に、「ああ」と声をあげたのは私だけではなかった。辺見庸は自身のブログで12月19日「絞首刑」直後にタイトルも「絞首刑」とし、絞り出すように書いている。

◎さようなら、光彦君・・・

友人が殺されるというのは、つらいものだ。

今朝、光彦君らが死刑に処された。
予感があったのであまりおどろかなかったが、やはりくるしい。重い。
気圧や重力や光りの屈折のぐあいが、このところ、どうもおかしい。

きみは〈やめてくれ!〉〈たすけてくれ!〉と泣き叫んだか。
あばれくるったか。〈お母さん〉と叫んで大声で
泣いたか。刑務官をどれほど手こずらせたか。
それとも、お迎えがきて、あっけなく失神したか。まさか。

きみは何回、回転したか。ロープはどんなふうに軋んだか。
宙でタップダンスを踊るように、足をけいれんさせたか。
鼻血をまき散らしたか。
舌骨がへし折られたときどんな音がしたか。
脱糞したか。失禁したか。目玉がとびでたか。
首は胴から断裂しなかったか。

けっきょく、再審請求も犯行時未成年も考慮されはしなかった。
考慮されたのは、「適正に殺す」ために、
きみのせいかくな体重とロープの長さくらいか。
さて、なぜ、けふという日がえらばれたか、知っているか。
平日。国会閉会中。皇室重大行事なし、だからだ。
国家は、ごく静かな朝に、ひとを「公式に」くびり殺すのだ。

やんごとないかたがたのご婚約、ご成婚、ご懐妊発表の日には
絞首刑はおこなわれない。
おことば発表の日にも、ホウギョの日にも、絞首刑はおこなわれない。
聖人天皇もマドンナ皇后も、死刑はおやりにならないほうがよい、
などというお気持ちのにじむおことばをお話しあそばされたことはいちどもない。
なぜか。

連綿たる処刑の歴史のうえに、ドジンのクニの皇室はあるからだ。
ひとと諸事実(そして愛の)の多面性と多層性について、
光彦君、ずいぶんとおしえられたよ。ありがとう!
ひとと諸事実(そして愛)の多面性と多層性については、
法律もジャーナリズムも、ほとんどの文学も、
まったくおいつかないことをとくと学んだよ。

災厄でしかない国家のなしうるゆいいつの善政とは、死刑の廃止であった。
死刑をつづける国家と民衆は、さいだいの災厄ー戦争をかならずまねくだろう。
にしても愚劣なマスコミ!

今夜はNirvanaを聴くつもりだ。
さようなら、光彦君・・・。

◆辺見庸と東京新聞

辺見と2017年12月19日、日本国から合法的に「殺された」関光彦さんのあいだに、10年を超える親交があったことは以前から知っていた。『いま、抗暴のときに』をはじめ辺見のエッセーには、匿名ながら幾度も関さんが「私の作品をもっとも深く理解する読者」として記されている。でも、死刑にはもとより反対の立場である私は、関さんの挿話を「死刑反対」の意を強くする補完材料として読んだのではない。逆だ。「殺す」とはいったいどういうことなのか、「死刑」判決を受け拘置所でいつ来るともしれない「その日」を待つひとの心のありようを自分は自分のこととして、これ以上ムリだと言い切れるほど思いを巡らしたのか。そして被害者(関さんであれば関さんがあやめた4名の)へどう立ち向かうのか。それらすべてを整理できなくとも、覚悟をもって「撤回のきかない最終回答」として「死刑反対」といいきれるのか、を問われ、鍛えられた命題だった。

一方、東京新聞の記事本文は、
〈法務省は十九日、一九九二年に千葉県で一家四人を殺害し、強盗殺人罪などに問われた関光彦(てるひこ)死刑囚(44)=東京拘置所=と、九四年に群馬県で三人を殺害し、殺人などの罪に問われた松井喜代司(きよし)死刑囚(69)=同=の刑を同日午前に執行したと発表した。上川陽子法相が命令した。関死刑囚は犯行当時十九歳の少年で、関係者によると元少年の死刑執行は、九七年の永山則夫元死刑囚=当時(48)=以来。二人とも再審請求中だった。(中略)
 上川氏は十九日に記者会見し「いずれも極めて残忍で、被害者や遺族にとって無念この上ない事件だ。裁判所で十分な審理を経て死刑が確定した。慎重な検討を加え、執行を命令した」と述べた。(中略)
 日弁連は昨年十月七日、福井市で人権擁護大会を開き、二〇年までの死刑制度廃止と、終身刑の導入を国に求める宣言を採択。組織として初めて廃止目標を打ち出した。
<お断り> 千葉県市川市の一家四人殺害事件で強盗殺人などの罪に問われ、十九日に死刑が執行された関光彦死刑囚について、本紙はこれまで少年法の理念を尊重し死刑が確定した際も匿名で報じてきました。しかし、刑の執行により更生の可能性がなくなったことに加え、国家が人の命を奪う究極の刑罰である死刑の対象者の氏名は明らかにするべきだと考え、実名に切り替えます。〉

東京新聞は「国家が人の命を奪う究極の刑罰である死刑の対象者の氏名は明らかにするべきだと考え、実名に切り替えます。」と結んでいる。この記事末尾を一片の「良心」ととらえるか「いいわけ」と判断するかは見解が分かれよう。本質はそんなことではない。

「死刑」は重大な問題だ。私は確信的に「死刑」」に反対する。その原点の延長線上に「原発反対」も位置し、「原発反対」を旗印にする「東京新聞」への「一定の評価」も付随する。天皇制への異議も同様だ。しかし東京新聞の名前の横に「東京電力」の広告が表示され、関さんへの「死刑」記事が8割がた記者クラブ発表記事として文字化され、最後に<お断り>で結ばれる。この不整合が不整合ではなく、あたかも体裁が整っているかのように完結する(私にとって意味はまったく完結していないけれど)流れが2017年を物語っているように思える。

不整合な一年だった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点
『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』

森友・加計事件と共謀罪 ── 今年の二大事件の追及は来年も続く

2017年は様々な事件があったが、私としては「森友学園・加計事件」と「共謀罪の成立・施行」が二大事件だと考えている。

今後も疑獄事件の責任追及と共謀罪廃止へ向けての動きを追っていきたいが、いつ、どのような形で“納税者一揆”が起きるのかが 2018年における私の関心事だ。森友事件に関連してである。

森友事件は、総理大臣夫人の安倍昭恵氏と関わりのあった学校法人に対し、合理的な理由と説明がないままに国有地を8億円以上値引きして払い下げた重大事件である。

しかも近畿財務局の役人と森友学園との価格交渉を示す録音もメディアに公開されており、また値引きの根拠であったはずの「ゴミ」もほとんどなかったことが判明しているのだ。もはや、政府側(財務省側)は、申し開きのできない事態に追い込まれている。

当時財務省理財局長だった佐川宣寿・現国税庁長官が国会で、あらかじめ具体的な金額を出して森友学園と交渉したことはない、と虚偽の答弁をした。また、関連文書も破棄するなど証拠隠しにも関与していると批判が巻き起こっている。

こうした中で、森友学園がらみで市民による刑事告発が多発しているが、佐川国税庁長官を対象とした告発をいくつか挙げてみる。
 
まず、「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」八木啓代代表らが17年5月15日、佐川氏を含む官僚7名を公文書等毀損罪で刑事告発した。1年も経たず、また事案が進行中であるにもかかわらず文書を破棄したことを問題としている。

次いで10月16日、「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の醍醐聡東大名誉教授らが、佐川氏を証拠隠滅の疑いで東京地検に告発した。告発内容としては、右の「健全な法治国家のために~」の告発と重なる。

どちらも告発は受理された。

安倍ヤメロ(2017年12月14日)

◆国税庁前で抗議行動、さらなる告発も

森友事件に関して国会で虚偽答弁した人物が、税金を取り扱う国家機関である国税庁のトップに据わった。となれば、刑事告発も起こるだろうし、罷免運動も起きるのは当然だ。

12月14日には、市民団体「森友・加計告発プロジェクト」の呼びかけで、国税庁前で抗議行動があり、寒風吹きすさぶ中、約50人の市民が集まった。

「安倍は辞めろ!」
「佐川も出てこい! 国会で嘘ばかりの佐川!」
とシュプレヒコールが飛び交っていた。

佐川出てこい(2017年12月14日)

都内の自営業者も参加し、毎年年末や確定申告の時期になると大変な思いをしていることを述べ、国税庁の建物に向かい「あなたたちに税金を集める資格ないでしょ!」と怒りをぶちまけた。生活感と説得力のある発言だった。

愛媛県今治市で安倍首相の“腹心の友”加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園獣医学部認可について不正を指摘し続けている黒川敦彦氏も上京し、通行人や国税庁職員に向けて訴えた。

「厚生労働省の調査で約6割の人が生活が苦しいと答えている。普通の人がどれだけ大変かわかっているのだろうか。今本当に困っている人が多い。お金がないと人は死ぬんです。
 佐川国税庁長官は、国有地の8億円値引きについて1回も説明していない。8億円もあれば、何人の国民が救えるのか。
 加計問題や森友問題のようなことを放置していけば、普通の人の生活はどんどん苦しくなっていく」

まったく黒川氏が言うとおりだ。抗議行動をよびかけた「森友・加計後発プロジェクト」は、すでに国家公務員法違反の疑いで安倍昭恵夫人、公職選挙法違反の疑いで安倍晋三首相らを刑事告発しているが、佐川国税庁長官を刑事告発することを検討中である。

黒川氏(2017年12月14日)

◆税務署窓口で「領収書破棄しました」一言運動

納税者からカネ(税金)を徴収する機関のトップが国有財産のたたき売りに関与し、金額をめぐる事前交渉はなかったなどと虚偽答弁をし、関連文書も破棄した。

これでは、税金をまともに払う気など起きない。2月から3月にかけては確定申告の時期だが、とりわけ納税者意識を持たざるをえない自営業者やフリーランスは税に関して不公平感を持つのは当然だ。

書類や領収証の不備などを確定申告の時期に税務署から指摘されることもある。だが、そのときに納税者には一言物申す権利がある。

「領収証は破棄しました」
「契約書も破棄しました」
「パソコンのデータ消滅しました」

日本中の税務署で、このような言葉が飛び交ってもおかしくない。何か職員に言われたら「税金をつかさどる機関のトップたる佐川宣寿・国税庁長官を見習っているだけです」と答えるしかないだろう。むしろ、納税者は直接窓口で抗議するべきではないだろうか。

納税者の強い抗議がないから、安倍首相のお友達に血税が簡単に遣われてしまうのだ。

黒税庁長官(2017年12月14日)
食い逃げ(2017年12月14日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)ほか。林克明twitter 

鹿砦社新書刊行開始!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』(総理大臣研究会編)

「しばき隊」を必要としていたのは、「反差別」「反原発」「沖縄」の人たちではない

 
1『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』(2017年12月8日刊行)定価=本体1250円+税

鹿砦社取材班は常に「自分たちは間違っていないか? どこかに勘違いはないか?」と、留保の姿勢を維持しながら取材、執筆にあたっている。事実を探しだし、関係人物に話を聞き、事象を裏づける根拠(物証)を見つけて、ようやく原稿化する。当然のように「取材班は正義だ!」などとは微塵も思わない。むしろ世間知らずな面があることを自覚しながら、足らざる部分を補い合い、間違いを指摘し合いながら仕事をしている。

また、取材班は異なる個性の集合体であるので、個々の思想信条や属性、政治的意見もバラバラな人格の寄せ集めである。ただし、「差別」は許さない、「暴力やいじめは許さない」ことに関しては完全に一致をみている。その前提が共有できれば「M君リンチ事件」は、加害者や周辺人物がどのように詭弁を弄しようが、許されざる事件であることは簡単に理解できる。

◆「正義は暴走していいんだよ」と主張する人たち

他方、上記のように、「正義は暴走していいんだよ。だって、暴走しても正義だもん」と主張する人がいる。あきれる。笑いごとではない。小学生や幼児ではあるまいに。おのれを「正義」と規定する傲慢さと、「暴走してもいい」との際限なく浅はかで、危険な心情を吐露したコトバ。「暴走」はあらゆる場面で、ものごとの度が過ぎる場合に用いられるコトバだから、仮に自分の「正義」を確信したとしても(したならば、なおさら)「暴走」などと、理性ある大人は口にはしない。しかも公職や法曹関係者にとっての「正義」がいかなる定義づけをなされるか、は容易に想像される。

少なくとも「正義」の延長上に「暴走」を承認する理性などは、嘲笑の対象でしかない。彼がこの言葉を発したのは初めてではないらしい。やっかいなことに、彼は弁護士の職にある人物だ。その引用をしている人物も同様に弁護士、しかも二人ともM君と争う立場にある人たちの代理人を受任している。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

◆しばき隊の「正義」は変幻自在に変化する

彼らに倣(なら)うかのように「しばき隊」は「みずからが規定する『正義』」になんの疑いもなく「暴走」する。しかしその「正義」の意味するところは、「しばき隊」にとって都合のよいように、変幻自在に変化する。彼らは「ヘイトスピーチ」はいけないという。取材班も同意する。

ではなぜ「ヘイトスピーチ」がいけないのか? 取材班は「差別される人の心を傷つけるから」ゆるされないものだと考える。「しばき隊」もおおすじ合意してくれるだろう。問題はその先だ。現象は常に「わかりやすい」とは限らない。口をつく、文字になる、映像になる差別のほかに、心に宿る差別はどうだろう? 取材班は常に、自己も無意識に保持するかもしれない「心に宿る差別」にも注意をはらう。そして「ヘイトスピーチ」が許されないものであるならば、「人の心だけでなく身体を傷つける暴力」がさらに罪深いことは当たり前だろう。

取材班はとりたてて優れた、または新たな人権思想や、社会のイメージを持っているなどとまったく思っていない。間違いをおかすことは誰にでもあるだろうと思う。なぜか? 「人間」だからだ。

きわめて単純だ。人間に絶対などなく、おおむね「正義」は相対的なものであり、自己を「正義」と評した瞬間、その人は無謬性という思考停止におちいることをあまたの歴史や経験から、そして取材班内の多様性からも知り得ているからだ。「人はみな違う」ことが重要なのだ。

鹿砦社への暴言の一部(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

◆“成果”にしろ“負の遺産”にしろ、社会運動の歴史を直視する

取材班は“成果”にしろ“負の遺産”にしろ、社会運動の歴史を直視する。歴史は断絶したものではありえず、負債にしろ勝利にしろ、私たちの社会で少なくとも戦後どのような社会運動が起きたのかをかなり研究し、共有している。その結実はなんだったのか? 戦術は? 参加者の想いは?被害者はいなかったか? あまつさえ犠牲者はでていないか? 不幸にも犠牲者が出ていれば、それは権力側の横暴によるものであるのか? あるいは不幸にも「正義の暴走」が引き起こした結果なのか?

歴史の前で謙虚になれば、「私たちはまったく新しい運動体」などと言い放つことができる運動など、出てきようががないことはあまりにも自明ではないか。その厚顔無恥を3・11後にやってのけたのが「反原連」(首都圏反原発連合)だった。首相官邸前に「日の丸」を掲げた“烏合の衆”(あえてこのように評す)が集まって、主催者内だけではなく「警察と打ち合わせ」(弾圧側との癒着は「社会運動」とは呼べない。社会運動の常識からすれば、これは「官製集会」、「官製デモ」と評されても過言ではなかろう)をしていた連中。彼らがやがてとんでもないことを引きおこすであろう予感は当時からあった。

◆「とんでもないこと」は2014年12月16日深夜から翌朝にかけて生じていた

そして「とんでもないこと」は実際2014年12月16日深夜から翌朝にかけて、不幸にも生じていた。「M君リンチ事件」だ。この事件を引き越した加害者の中には「戦後社会運動の歴史」を知るものはいないだろう。「新しい社会運動」と勘違いした人々のほとんどはそうだ。そうではなく「戦後の社会運動の歴史」を知る人は「ヘサヨ」、「ブサヨ」、「極左」などの烙印を押され、パージされていった。そして「失敗体験」を知らない人々だけが、「運動」を構成するようになり、やがて「運動」は目的をとらえ切れなくなる。2017年のしばき隊はすでに、「迷走」状態に突入しており、論理的整合性をたもった議論や論述を展開できなくなっている。「しばき隊」の出自が「日の丸」を掲げ「警察と打ち合わせ」をする「反原連」にそのルーツがあることをかんがみれば、当然の帰結である。

いまだに「リンチはなかった」などと平然と語る連中がいる──。(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

いまや「しばき隊」は極度のジリ貧で、中央が「締め付け」を強めないことには、アクティブな活動家とみられているメンバーの中にも、「辞めたいんですけど、怖くて」と取材班に連絡をしてくる人がいるほどだ。特高警察支配、スターリンの粛清なみに「しばき隊」の締め付けは、厳しいものになっている。つまり、彼らは崩壊の危機にあるのだ。でも心配はいらない。あなたたちを陰で支える、この国の権力はどこかで、あなたたちにテコ入れをしてくれることだろう。なぜならば、「あなたたち」をもっとも必要としているのは、「差別」された人でも「反原発」の人でも「沖縄」の人でもなく、「この国の権力中枢」にほかならないからだ、と取材班はみている。

(鹿砦社特別取材班)

『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD(2017年12月8日刊行)

カウンターと暴力の病理
反差別、人権、そして大学院生リンチ事件
鹿砦社特別取材班=編著
A5判 総196ページ(本文192ページ+巻頭グラビア4ページ) 
[特別付録]リンチ(55分)の音声記録CD
定価:本体1250円+税 12月8日発売! 限定3000部!

渾身の取材で世に問う!
「反差別」を謳い「人権」を守るとうそぶく「カウンター」による
大学院生リンチ事件の<真実>と<裏側>を抉(えぐ)る!
1時間に及ぶ、おぞましいリンチの音声データが遂に明らかにされる! 
これでも「リンチはない」と強弁するのか!? 
リンチ事件、およびこの隠蔽に関わった者たちよ! 
潔く自らの非を認め真摯に反省せよ! 
この事件は、人間としてのありようを問う重大事なのだから――。

【内容】

私はなぜ「反差別」を謳う「カウンター」による「大学院生リンチ事件」の真相
究明に関わり、被害者M君を支援するのか

しばき隊リンチ事件の告発者! M君裁判の傍聴人にしてその仕掛け人!!
在特会&しばき隊ウォッチャーの手記

カウンター運動内で発生した「M君リンチ事件」の経過
続々と明らかになる衝撃の証拠! リンチの事実は歴然!

「M君リンチ事件」を引き起こした社会背景
精神科医・野田正彰さんに聞く

前田朗論文が提起した根源的な問題
「のりこえねっと」共同代表からの真っ当な指摘

リンチ事件に日和見主義的態度をとる鈴木邦男氏と義絶

われわれを裏切った〝浪花の歌うユダ〟趙博に気をつけろ!

「M君リンチ事件」加害者・李信恵被告による「鹿砦社はクソ」発言を糾すが、
誠意ある回答なく、やむなく提訴いたしました!

「M君リンチ事件」裁判の経過報告
10
鹿砦社元社員の蠢動と犯罪性
11
大阪司法記者クラブ(と加盟社)、およびマスコミ人に問う!
報道人である前に人間であれ!
M君と鹿砦社の記者会見が五度も<排除>された!

『人権と暴力の深層 カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(紙の爆弾2017年6月号増刊)
『反差別と暴力の正体 暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

2017年の『NO NUKES voice』と2018年の〈福島・原発〉VS〈五輪・改憲〉

◆広島高裁の野々上友之裁判長の覚悟が司法や社会へ灯火を輝かせてくれた

『NO NUKES voice』11号【特集】3.11から6年 福島の叫び(2017年3月15日)

2017年師走。ひさびさ胸のすく吉報が全国を駆け巡った。12月13日広島高裁の野々上友之裁判長が、四国電力伊方発電所3号機の運転差し止めを求め、広島市民らが申し立てていた仮処分の即時抗告で運転差し止めの決定をくだした。この決定によって伊方原発3号機は実質的に運転再開が不可能となり、仮処分とは別に争われている本訴で判決が覆らない限り運転を再開することはできない。

この決定が野々上友之裁判長の判断によるものであることは、報道から伝わっていたが、個人的に野々上裁判長を知る方が、野々上裁判長の人となりと、この「決定」に込められた意味を解説してくださった。野々上裁判長は良心的かつ在野精神を失わない裁判官として、法曹界の一部ではかねてより名前を知られていた方だそうだ。今回の「決定」を下すにあたっても、「完全でまったく抜け穴のない『決定』にすれば最高裁での逆転がありうることから、運停停止の期限をあえて『2018年の9月30日』とし、「決定」が確定するように智慧をしぼられたのではないか」とその方は分析しておられた。

伊方原発の危険性は日本最大の活断層「中央構造線」が目の前に走っていることが、最大の危険要素であり、万が一の事故の際には多数の住民が避難できない地理的条件もしばしば指摘されていた。野々上裁判長は運転停止決定の根拠を「あえて」阿曽山の噴火の危険性とした。これは「決定」が言外に川内原発や玄海原発の危険性にも広がりをもつことから、まさに「画期的」な判断と言えよう。野々上裁判長は間もなく定年退職を迎えられるそうだが、裁判官としての集大成として、このように人間の尊厳に立脚した判断を下された。裁判官としての覚悟が、この島国の司法や社会へ灯火を輝かせてくれた。

◆誰一人として無関係ではない福島と原発
 2018年、わたしたちはいかなる「哲学」がいま求められているのか

『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!(2017年6月15日)

他方福島を中心に、東北や関東から避難された方々の筆舌に尽くしがたい苦難の日常を私たちは直視し続けたいと思う。福島で被災された方々はもちろんのこと、首都圏でも原発事故が原因ではないか、と疑われる健康被害が顕在化しはじめている。「因果関係」を証明できないのを奇貨として、為政者や悪辣な医師どもは「事故とは関係ない」と言い放つが、証明する責務は事故を起こした側にあるのではないか? 刑事司法では「疑わしきは罰せず」が原則であるが、被爆由来の疾病は完全にそのメカニズムが解明されていない以上「疑わしきはとことん調べる」を基本に据えるべきではないだろうか。

「原発には現代社会の矛盾が凝縮されている」、と『NO NUKES voice』 を編纂する中でわたしたちは学び、読者に伝えようと毎号全力を傾注している。原発じたいの明確な危険性、運転すれば必ず生み出される廃棄物(数十万年から百万年絶たないと無毒化できない)の処理方法が見つからない中で平然と行われる再稼働、「経済至上主義」=目の前の利益回収だけにしか興味がなく、自分の定年や世代だけの利益が回収できればよいとする、究極の無責任。その重大命題への関心を捻じ曲げるために躍起になる経済界、電力会社、広告代理店、御用学者。そして「平和の祭典」の名のもとに、あろうことか「東北復興」を錦の御旗に開催されようとしている「東京五輪」。日々7千名と言われる事故収束作業に従事する作業員の方々の被爆・健康管理への無関心。

原発を凝視すればそこから現代社会(文明)の根腐れした課題と、必要とされる「哲学」の欠如が必然体に浮かび上がる。2018年、わたしたちはいかなる「哲学」がいま求められているのか、も編集の課題に据えようと考える。誰一人として無関係ではない、無関係でいようと思ってもそうはさせてくれない。政治と市民同様の関係がいま生きるすべての人びとと原発のあいだには宿命づけられている。

◆「東京五輪」や「改憲策動」は福島復興の妨害物である

『NO NUKES voice』13号【創刊3周年記念総力特集】多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて(2017年9月15日)

「果報は寝て待て」では前進できないし「寝た子を起こす」ことなしに「原発」をとりまく巨大なシステムを打ち崩すことはできない。全国各地、世界中で地道に反・脱原発に取り組む皆さんと手を携え、文明・哲学の視点からも原発問題を徹底的に読み解き、いまだ示されぬ解決への道筋(それは多様で多岐にわたろう)を着実に探っていきたい。微力ではあるが『NO NUKES voice』 はそのための情報発信媒体としての役割を自覚し、みずからもさらなる成長の階段を上がらなければならないと自覚する。

さしあったってまったく福島の復興の妨害物でしかない「東京五輪」や「改憲策動」にも目配りをしながらみなさんとともに歩みを進めていきたいと覚悟を新たにするものである。道程は短くないかもしれないが、今日の1歩がなければ明日はやってこない。諦念に陥ることなく、地道にともに闘うみなさんを少しでも元気づけられる存在となれるよう、また原発に楽観的(無関心)な方々に「気づき」のきっかけとなれるよう、その一端を担いたい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

最新刊『NO NUKES voice』14号【新年総力特集】脱原発と民権主義 2018年の争点(2017年12月15日)
多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

2017年冤罪事件回顧 逆転無罪2件、再審開始1件をはじめ空前の当たり年に

私はこれまで様々な冤罪事件を取材してきたが、今年は取材してきた冤罪事件にかつてないほど多くの朗報がもたらされた1年だった。逆転無罪判決を受けた事件は2件、再審開始の決定を受けた事件が1件、さらに日本弁護士連合会の再審支援が決まった事件が2件あった。この空前の当たり年をここで総括したい。

◆当欄で冤罪の疑いを報告していた2事件で逆転無罪

まず、3月10日には、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)で、銀行店内で他の客の置き忘れた現金を盗んだ濡れ衣を着せられていた広島の放送局「中国放送」の元アナウンサー・煙石博さんに逆転無罪判決がもたらされた。

この事件については、私は当欄で裁判が1審段階にあった2013年から冤罪の疑いを報告してきたが、この約4年間、煙石さん本人はもちろん、家族や大勢の支援者が署名集めや街頭宣伝など、無罪を勝ちとるためにたゆまぬ努力をしていた。それが最高裁での逆転無罪という数千件に1件あるかないのか極めて異例の結果をもたらすことにつながったのだと私は確信している。

最高裁で逆転無罪判決を受け、喜び合う煙石さん、弁護人の久保豊年弁護士、支援団体の佐伯穣会長(左から)

次に、3月27日には、当欄でそれ以前に2度、「知られざる冤罪」として紹介していた米子ラブホテル支配人殺害事件で、2審・広島高裁松江支部(栂村明剛裁判長)が被告人の石田美実さんに対し、1審・鳥取地裁の懲役18年の判決を破棄したうえで逆転無罪判決を宣告した。

この事件については、証拠は乏しく、1審で明らかになった事件当日の現場ラブホテルの状況などを見ても、石田さんが無実なのは明らかだった。しかし、事件翌日に23万円のお金を銀行口座に入金しているなど、石田さんには一見怪しく疑わせる事実があり、1審では結局、有罪が出てしまったという事件だった(詳細は今年2月17日の当欄を参照頂きたい)。

2審・広島高裁松江支部も初公判で即日結審し、逆転無罪は難しいのではないかと思っていたので、逆転無罪判決が出た時、私は正直、少し驚いた。しかし判決では、「~の可能性もある」「~とは断定できない」などという言い方で、一審判決の有罪認定をことごとく否定しており、推定無罪の原則に従った妥当な判断だった。

◆日弁連の再審支援が決まった事件も2件

そして暮れも押し迫った12月20日、大阪から飛び込んできたのが元看護助手・西山美香さんの再審開始決定のニュースだった。西山さんは、2003年に寝たきりの男性入院患者の人工呼吸器のチューブを外し、殺害したとされ、懲役12年の判決を受けて服役した。この事件についても当欄では2012年に紹介しているが、有罪証拠が事実上自白のみで、その自白内容にも不自然な点が多いという明白な冤罪事件だった。しかし、第1次再審請求は実らず、第2次再審請求も大津地裁に退けられていた。

今回、再審開始決定が出た大阪高裁(後藤眞理子裁判長)の第2次再審請求の即時抗告審では、弁護側から患者の本当の死因が「致死性不整脈」であることを示す複数の医師の意見書が提出されており、再審開始への期待が高まっていた。その後、大阪高検が特別抗告し、最高裁で改めて再審可否が判断されることになったのは腹立たしいが、私はこの事件については、最終的に必ず西山さんの雪冤が果たされると確信している。

その他、当欄で紹介していた冤罪事件では、鶴見事件、恵庭OL殺害事件という2つの事件について、日本弁護士連合会が再審請求の支援を決定するという朗報が飛び込んできた。恵庭OL殺害事件については、現在、第2次再審請求審で弁護側の攻勢が続いていると伝えられており、来年は再審開始決定のニュースが飛び込んでくることもおおいに期待される。

以上、今年はこれまで取材してきた冤罪事件に次々と朗報がもたらされ、個人的に大変喜ばしい一年となったが、実は来年以降も朗報が期待できる冤罪事件はいくつもある。それについては、また年明けに書きたいと思う。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

朝日新聞が報じた李信恵・断髪理由のウソ

12月22日朝日新聞デジタルは「ネットで顔さらされヘイト投稿 衝動的に髪を切った夜」と題した、大貫聡子記者が李信恵を特集した記事を掲載した。この記事の中にはちょっと不思議な部分がある。李信恵は、

「ネット上では、長い髪の時に撮った写真が、さらされていたので、ある夜『短ければ私だとわからないのではないか』と衝動的に自分で短く切ってしまったこともありました」

と語っているが、下の李信恵がみずから書き込んだツイッターとはいったいどう整合性がとれるのであろうか。この書き込みは2017年6月17日だ。「50センチ以上の髪の毛が不足していると聞いた(ロングウイッグ用)のでがんばって伸ばした」と李信恵は書いている。画像を見ればカット前にはかなりのロングヘアーであることは歴然だ。

2017年6月17日の李信恵ツイッター

髪の毛の伸びる速度には個人差があり、ホルモン分泌や年齢により一定ではない。また体毛は部位により伸びる速度が異なる。毛髪は3日で1ミリほど伸びるのが標準的な速度だそうだ。とすると1月に1センチ、1年で12センチ。50センチ伸ばすためには最低4年以上の時間が必要だ。「ひとによって伸びるスピードに個人差がある」とはよく言われる通りだけれども、50センチ以上伸ばすためには(毛髪が全くない状態から)最低4年を要するはずだ。

「ネット上では、長い髪の時に撮った写真が、さらされていたので、ある夜『短ければ私だとわからないのではないか』と衝動的に自分で短く切ってしまったこともありました」

のは「いつ」なのか?2017年に上のように50センチを超える長さに伸びているのだから、「髪を短く切った」のは2013年か2012年でないと計算に合わない。ところがその時期に李信恵は、まだ「反ヘイト裁判」を起こしてはいない。また裁判を起こす前に出演した「チャンネル桜」の討論会では、肩より長く髪を伸ばしている。これはどういうことだろうか。

そして周辺関係者によると、李信恵が「反ヘイト裁判」を起こしてから、髪の長さが極端に短くなったことはないという。であるならば、

「ネット上では、長い髪の時に撮った写真が、さらされていたので、ある夜『短ければ私だとわからないのではないか』と衝動的に自分で短く切ってしまったこともありました」

は李信恵の勘違いか、ウソということになる。朝日新聞が李信恵についての記事を掲載するにあたり、大貫記者は事実確認を行ったのだろうか?タイトルにしているのだから重要な事実だと大貫記者が感じたのだろう。しかし、その挿話がいかにも疑わしいことは述べたとおりだ。

そもそもまったくの無名な市民で、社会的に露出されることを嫌う方であればともかく、李信恵は、新聞、ネット中継、集会、そしてなによりもみずから連日自分のツイッターやインスタグラムで、これでもか、これでもかと自分の姿を発信している人物だ。片一方でさんざん露出しておいて、同時に「私だとわからない」ことを望むのは、一般的な感覚からすれば、大いなる矛盾ではないか?「わたし」を知られたくなかったら、せめて写真発信を控えたり、取材者にも顔写真の撮影を遠慮してもらう、などいくらでも防御する方法はある。実際、有名な冤罪事件被害者の方の中には、文字での取材には応じるが、顔写真の撮影は断る、という姿勢を続けられておられる方々がいる。李信恵にはそんなそぶりはまったくないではないか。

李信恵が熱心に自分の写真を発信していたことを、大貫記者は知らないことはあるまい。記事のタイトル「ネットで顔さらされヘイト投稿 衝動的に髪を切った夜」は情動的に過ぎ、かつ事実から離れたものではないか。

実は大貫記者には「事実から離れる」、「事実から(人を)離す」癖がある。11月16日大阪地裁で李信恵が記者会見を開いた際に、記者室への取材班の入室を拒んだのはほかならぬ大貫記者だった(『カウンターと暴力の病理』参照)。大貫記者の署名入り記事は翌日の朝日新聞に掲載された。ところが、12月11日李信恵が被告として尋問を受ける法廷に大貫記者の姿はなかった。大貫記者には既に『カウンターと暴力の病理』を鹿砦社はお送りしている。それでもこのような記事を書き続けるのは、大貫記者(あるいは朝日新聞)が李信恵の提灯持ちだからなのか?であれば仕方ない。取材班“直撃チーム”は次なるターゲットリストに大貫記者の名前を書き加える。

李信恵の勘違いか、ウソに取材班は少なからず接してきた。12月11日大阪地裁で行われたM君が李信恵をはじめとする5人を訴えた裁判の、尋問の中でも下記の点は勘違いか、ウソだ。

・M君が暴行を受けてから店に入ってきたときに、M君の前髪が下がっていたので顔が見えなかった。
→事件当時、M君の前髪は眉毛にもかからない程度の長さだった(事件直後の写真により確認できる)から顔が見えないはずはない。
・「M君を弟のように思っています」と発言。
→そうであれば、ツイッターでM君の本名を明かし、「喧嘩はあったけど、リンチなんかなかった」をはじめとする数えきれないM君への攻撃はどのような心理によるものなのか。「弟のように思う」人間にネットで攻撃をしかけるだろうか。
・警察の調べでの発言を原告代理人の大川伸郎弁護士に聞かれた際「事件の記憶とその後に見たM君の写真の印象が混乱していた」旨の発言をしているが、M君の事件後の写真が公開されたのは2016年であり、李信恵が警察で調べを受けたのは2015年だ。つまり「写真の印象」との李信恵の発言は、ここでも時系列的に矛盾する。
・事件当時「チョゴリ」を着ていなかったと尋問で李信恵は断言した。
→しかし事件を録音した音源には、李信恵がM君に掴みかかり暴れた際に、「チョゴリが汚れるから」と周囲の人物が発言していることが確認される。
・12月11日、裁判当日の朝、鹿砦社社長、松岡が、喫茶店内で李信恵に「嫌がらせ」をしたかのような書き込みをしている。
そのような事実はまったくなく、これは完全なウソである。

2017年12月13日の李信恵ツイッター

差別を受けて辛い思いをしたであろうことは想像できるが、その心理を描写するのに「勘違いかウソ」を語ってはならない。そしてどうして朝日新聞の大貫記者に限らず、マスコミは相変わらず李信恵らの「負の部分」を全く報じないのだ!仕方がないから鹿砦社が事実を探し出し、社会に伝えねばならない役回りを担わざるをえない(これにより取材班に対する、婉曲な恫喝や直接の罵倒は数えきれない。「駅のホームでは一番前に立たない方がいいですよ」とのアドバイスをしてくれる人もいるほどだ)。

マスコミが「事実」や「真実」を伝えないから『カウンターと暴力の病理』を出さざるを得なかったのだ。『カウンターと暴力の病理』は付録のCDで話題になっているが、むしろ取材班は、その中身を読んでいただきたい。李信恵ら「しばき隊」の「みもふたもない」(本書176頁秋山理央の告白文言)正体を知れば、読者は世の中の色彩が違って見えるかもしれない。

(鹿砦社特別取材班)

最新刊『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD(55分)定価=本体1250円+税
『人権と暴力の深層 カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(紙の爆弾2017年6月号増刊)
『反差別と暴力の正体 暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

東京パノプティコン ── うずまく憎悪、うごめく警察監視の首都に驚いた!

◆駅前で「憲法改正反対」と言ったら「葛飾区民ではない」と言い放った区議候補

少し前に東京へ出張したときのことだ。総選挙は終わっているにもかかわらず、とあるJRの駅前ではやたらに選挙カーや演説の声が耳に入ってくる。葛飾区の区議選挙が行われていた。昼間に取材の仕事を終え夕食をとろうと、駅から出ると自民党の候補者が「区民の皆さんの声を聴きながら改憲を進めてまいりたいと思います!」とがなり立てていたので、「憲法改正反対!」とその候補者に肉声で声をかけた。するとあれこれ言分けがましい屁理屈を並べた挙句「そう意見の方は区民ではありません!」とさすがの私もブッタまげるような無茶を言い放った。まあ、実際私は葛飾区民ではないから半分はあたっているのだけども、私ではなくとも、本当の葛飾区民のどなたかが「憲法改正反対」と言ったら「葛飾区民ではない」とその候補者は言ったわけである。

ここまで横暴なことを平然と選挙(区議選)とはいえ、言い放つことが自民党公認候補に可能になったのだな、と不快さが増した。

◆身をかわしてもぶつかり続ける東京ドーム「乃木坂46」ファンらしき若い群衆

不快さが増す前からその日は実に腹立たし思いをして虫の居所が非常に悪かった。立ち寄り先が東京ドームの近くにあり、地下鉄丸の内線の後楽園駅で下車し、東京ドームを半周回る形で目的地へ向かっていたときのことだ。見たことのない様々な若い女性の顔が印刷された垂れ幕が無数にそこここにかかっていて、東京ドームの横に目を向けると少なくとも数千人から1万人近い人の群れがあった。人間が1万人近く集まると人いきれや、しゃべり声あるいは「人間集団」の気配を感じるものだが、東京ドームの横に群れて動かぬ人びとからは、それらがほとんど感じられなかった。新興宗教の集まりでもあるまいに、見たところ男性が多く10代から中年まで年齢層も広い。「群衆」からは人間の「匂い」やざわつき、「熱」といったものが感じられないのが不思議だった。

なにが起こっているのだろうかと無数の垂れ幕を注意してみると「乃木坂46サマーツアーFinal」と書かれていた。

ああ、これが山田次郎氏も本通信で取り上げていたかの有名な「乃木坂46」かと、浮世離れした中年は「はじめまして」と心のなかで挨拶をしておいた(特段の意味はない)。集まっている人びとを横目に、東京ドームをやり過ごして立ち寄り先で1時間ほどの用件を済ませた。

帰路も同様に東京ドームを半周回って丸ノ内線後楽園駅に向かう。コンサート開始時間が近づいてきたのだろう、先方からこちら方向に歩いてくる人の数がかなり増えている。ラッシュ時の駅ほどではないものの、前を向いて歩かなければ反対方向から歩いてくる人に数秒に1度は確実にぶつかるであろう程の密集度合いだ。

ところが、通常よほどの人混みでも先方からぶつかられることのない私(外見が理由だち言う人もいるが真偽はわからない)に、数メートルごとにスマートフォンを見ながら歩いてくる若者が肩や正面からぶつかってくる。もちろんこちらも衝突は避けたいので右へ左へ身をかわすが、そこにもスマートフォンを覗き込んだ兄ちゃんが、かつてのインベーダーゲームでほとんどの敵を殲滅した、最終局面でこちらの砲へ残存インベーダーが垂直に近い角度で降りてくる現象(こんな古臭い例えがわかるだろうか?)の光景が水平方向に展開される。

逃げ場がないから、残存インベーダーならぬ「乃木坂46」ファンは次から次へと私にぶつかってくる。肩に当たる奴がいれば正面衝突してくる猛者もいる。東京ドームを半周するあいだにぶつかってきた残存インベーダーは10人ではすまなかった。「どこ見とんねん!」、「前見て歩かんかい!」と衝突されるたびに叱責していたけれども、だんだん腹が立ってきた。私は「乃木坂46」を知らないので、好意も悪意も持ち合わせてはいなかったし、彼女たちに罪はない。だけども結構な数の国やこの国でもあちこちの人ごみを歩いたけれども、こんな体験は初めてだったので、終盤ぶつかってきた兄ちゃんたちには「強め」の指導をしておいた。

だらだら長くなったが、某駅で葛飾区議選にぶつかる前に、残存インベーダーとの予期せぬ格闘に久々、イラついていたのだ。

◆「差別反対!」と発したら四方八方から「朝鮮人は出て行け!」と罵声を浴びた!

食事を終えて再び駅に近づくと今度は「外国人への生活保護打ち切りを」とか何とか書いた布を後ろに、露骨な外国人差別演説をしている候補者がいる。「ほらみろ『ヘイトスピーチ対策法』なんか作ったってこういう奴にはまったく効果ないじゃないか」と思いながらも、街中で堂々と繰り広げられる大声の差別演説者の目の前まで行き「差別反対!」と声を発したら「朝鮮人は出て行け!」、「反日朝鮮人は消えろ!」、「半島へ帰れ!」など四方八方から罵声が飛んできた。

罵声を飛ばす人たちの目は血走っている。彼らの目には2013年初期頃、在特会らが行なってた集団ヒステリーに近い根拠のない憎悪が満ちていた。しかし的外れもいいところだ。私には(大昔の祖先までは 知らないけれども)確認で来ている範囲で朝鮮民族の親族はいない。だから「なんでワシが朝鮮に帰らんとあかんのや!」とやり返す。

◆「黒いカバン」もぶら下げていないのに警察官に呼び止められて詰問された!

すると制服警察官が寄ってきた。

話を聞きたいという。話も何も「あんたらさっきから見てたやろ。あの候補者がひどい差別をマイクで放言してるから『差別はやめろ』と一言言っただけじゃないか」と言うと、「そこは見てましたけど公選法違反の可能性もありますので」とぬかしやがる。マイクを使って演説をしている候補者にひとり肉声で一言だけ「差別をやめろ」と言ったら公選法違反になる? おいおい、そんな乱用きいたことないぞ。これで公選法違反になるなら右翼の街宣車による選挙妨害や「安倍やめろ」の大合唱はどうなる?

「任意なんだろ? なら帰る」とその場を立ち去ろうとすると制服警官が前に立ちはだかり「転び公妨」をしかけてくる(注:「転び公妨」とは警察官が市民を不当逮捕しようとするときに、自らわざと転んであたかも暴力や公務執行妨害があったかのように演じる悪質劇)。

「名前を教えてくれ」、「住所は?」、「お仕事は?」と次々にうるさく聞いてくるが「早く帰らせろ。令状もないのに拘束するのか」と聞くと「ご協力願えませんか」と言葉だけは丁寧だ。そうこうするうちに今度は私服警官が3人やってきて制服警官をその場から立ち退かせた。

鈴木信行=葛飾区議

制服警官は何度も「差別をやめろ、と言われたところは見ていました。それだけなら問題ないです」というので「それだけじゃないか。もし私が選挙妨害したと言うなら告訴させろ。そのかわり、このあたりには監視カメラが無数にあるだろうから、証拠は無数にあるだろう。あちらさんは誣告罪(虚偽親告罪)になると思うがね。こっちのほうがぼろくそに言われたのを見ていただろうが!選挙中にそこまでやるならやらせろ」と言うと、「いえ、そこまで大げさな話じゃないんで」と埒が明かない。

制服警官に代わった私服は私の目の前には2人しかいなかったけれども、途中注意深く周りを見回すと壁の影や柱の向こうに少なくとも5人がこの様子を観察している。しかしいくらなんでも一声「差別反対」と言っただけで散々周囲から罵倒された挙句「公選法違反容疑」で駅の中に長時間留め置かれる筋合いはない。けれども、揚げ足取りで私服警官は明らかにこちらの逮捕を狙っている。ったく! 残存インベーダにはぶつかられるし、差別候補者のせいで警察に狙われるし、ろくな日じゃない。結局1時間半ほどしてようやく解放されたが、その当時の候補者は選挙でめでたく当選し、ツイッターでの差別的発信で今話題の鈴木信行氏であった。

警察から解放されて私は鈴木氏と話に行ったが、まったく話にならなかった。この人が当選したらえらいことになるだろうなぁ、と思っていたらやはり予想通り「時の人」になっているようだ。田舎者にとって東京は悪い刺激が多すぎる(私の性格が悪いからだろうか?)。散々な1日だった。

▼佐野 宇(さの・さかい)


◎[参考動画]葛飾区議選 京成高砂駅(大阪観光チャンネル2017/11/11公開)

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