日本は多言語社会になりうるか?──言語とメディアリテラシー(後編)

◆前回のあらすじ

今日の日本における、英語教育に関する議論にはメディアリテラシーについての観点が欠けているように思われる。重要なのは英語をはじめとする他言語から情報を得て、多角的な観点を持つことである。多くの国の公用語である英語やスペイン語などとは異なり、日本語は日本一国でしか使用されない。日本語の情報の多くは日本から発信された情報であるため、日本的フィルタリングがかかってしまう。メディアリテラシーを高めるためにも、いくつも言語を理解できることは極めて重要である。 ※前回リンク

◆相対的に弱まる英語=西欧文明の覇権 諸文明の台頭と多言語化

さて、今後の状況を見ると外国語として英語だけ学ぶというのでは不十分かもしれない。近年、アメリカやヨーロッパの西欧文明が弱体化し中華文明・イスラーム文明・東方教会(ロシア)文明などが自身の論理を主張、「民主主義」「人権」といった西欧文明の理念を否定し、自分たちが望む体制の構築に取り組み始めた。西欧文明の英語だけではもはや不十分であり、中華文明の中国語やイスラーム文明のアラビア語といった各々の文明圏で有効な言語を学ぶことも重要になるのではないだろうか。

◆日本の学校のずさんな「英語教育」と外国人学校という選択肢

『平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果』

しかし誠に残念ではあるが今の日本の教育現場で多言語教育を期待するのはほぼ不可能であろう。英語をまともに話せて教えられるような教員はほとんどおらず、ひどい例では自称「英語教師」が駅前の英会話学校に通っている様である。

さらに文科省の2016年の調査によると、英検準1級・TOEIC730点以上の英語力のある「英語教師」は、中学教員で全体のわずか33.6%、高校教員でも65.4%しかいないことが分かっている。もっとひどい例では、2016年に京都市を除く中学校の英語科教員でTOEICを受験した74人中、730点以上を獲得したのは16人で、約2割にすぎなかった。最低点は280点で、500点未満が14人もいたという。京都府教育委員会は「英語科教員の資質が問われかねない厳しい状況だ」としている。

※参考URL
『京都府 中学英語教員、TOEIC「合格」わずか 疑問も』
『平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果』 

こんな状況で日本の学校(特に公立)で英語に加え、さらに第二言語として中国語や韓国朝鮮語などを学ぼうとするのは絶望的に不可能である。一部、まともな外国語教育をしている学校もあるがそれは例外である。私は日頃から「学校」という洗脳機関には、嫌悪感を抱かざるを得ない。教育委員会が生徒間のいじめ(という犯罪)による自殺事件の調査や事前防止をないがしろにしたこと、部活の顧問による生徒への体罰、そしてあまりにもずさんな「英語教育」の現状……。

本当に「センセー」方には生徒を教えようとする意志があるのだろうか。とりわけ公立学校の教員というのは公務員だから少しぐらい適当にしても、解雇されないと安心しているのではないだろうか。一体、これほど英語能力が低いのになぜ彼らはかつて英語教師を目指そうとし今は「英語教師」として私たちの税金で生活しているのか全く疑問である。

今のところ、一般的な日本人が多言語教育を期待できるのは外国人学校ぐらいしかないのかもしれない。日本の各地には台湾や韓国朝鮮、ブラジルやインドなどの様々な外国人学校がある。これらの学校なら、日本の学校よりもずっとまともな多言語教育が期待できるだろう。また一般的な日本人がこのような外国人学校に入ることで自らの社会における立ち位置を相対化できやすくなるのも長所と言える。

時代はまさに多言語化である。「日本語しかわからなくても生活できる」という意見は論外であるし、さらに「外国語は英語だけでよい」という意見も不十分である。私たちは様々な言語を身に付け、多角的な視野を養う必要がある。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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戸田ひさよし前大阪門真市議からの「弾劾質問状」に回答します! また、私からの「ご質問」にもお答えください! 鹿砦社代表 松岡利康

6月9日に、なにかと過激な言動で有名な戸田ひさよし前大阪門真市議から私に対して「弾劾質問状」が届きました。6月7日に戸田さんらが催された、この間やり取りした前田朗教授を招いての「大学習会」について触れた5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」(及び私のFacebook)の戸田さんについての部分に対するものです。期限が6月30日ということですので、期限の昨6月30日回答させていただきました。

「弾劾質問状」の全文は戸田さんのHP
http://www.hige-toda.com/x/c-board/c-board.cgi?cmd=one;no=11376;id=#11376
と、私の6月19日付けFacebook
https://www.facebook.com/toshiyasu.matsuoka.7
で公開されていますので、アクセスしてご覧ください。

戸田さんからの要望で公表・公開でやろうということですので、私の回答と、私から戸田さんへの「ご質問」を以下全文公開いたします。

「デマだ」「中傷だ」とお互い罵り合うのではなく、近未来的に有益になるように前向きな議論ができれば幸いです。

なお、戸田さんは5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」の戸田さんに関する記述の部分について「撤回」と「謝罪」を要求されていますが、現時点においては「ご回答」に述べた通り相当な理由と根拠がありますので、その必要はないものと考えます。

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

戸田ひさよし 様

ご 回 答

                           

2019年6月30日
                           株式会社鹿砦社
                           代表取締役  
                            松岡利康  

はじめに

ここ3年余り、私たちは「カウンター大学院生リンチ事件」の被害者支援と真相究明に関わってきましたが、私たちの取材や質問に多くの方々が真正面から向き合うことなく逃げ回っていることを見るにつけ、反面教師として、「そういう人間にはなりたくないな」と感じることも往々にしてありました。なので、私は戸田さんからの「弾劾質問状」に対して真正面から向き合い、私なりに真摯に回答したく思います。悪意を持った間違いはありませんが、無意識、無知による間違いは潔く訂正いたします。

また、戸田さんから途中経過も公表し公開でやりたい旨の要望もありました。すでに戸田さんのサイトでは「弾劾質問状」全文など公開されていましたが、こそこそやるのは私の性格ではなく、わざわざご連絡いただかなくても、公表・公開は望むところです。くだんの「リンチ事件」をめぐる議論も公表・公開でやりたかったのですが、関係者は逃げまくったり、単に「デマだ」「でっち上げだ」「リンチはなかった」「リンチではない」などと紋切り型の台詞を言うばかりで、きちんとした公開の議論は成立しませんでした。

この反省からも、今回、公表・公開したやり取りになり、問題点が明らかになればいいんじゃないでしょうか。

戸田さんもどこかで引用されていた記憶がありますが、「君の意見には反対だ。しかし、君が意見を言う権利は死守する」というヴォルテールの有名な言葉、議論の原点になる言葉があります。これを踏まえて、今回も前向きにしっかり議論いたしましょう!

もう14年も前になりますが、私が「名誉毀損」容疑で神戸地検特別刑事部に逮捕された際、戸田さんには想定外のご支援を賜りました。勾留理由開示公判で傍聴席の一番前でこぶしを挙げながら大声で裁判官に抗議しておられた戸田さんの姿を思い出します。これについては今でも恩義に感じています。その節はお世話になりました。

また、同年しばらくしたら戸田さんも逮捕されました。ほぼ同時期(私は7月、戸田さんは12月)に権力の弾圧を受け逮捕されたということで親近感もあります。だからこそ、少々の“ヤンチャ”はいいとしても、5年前のことで旧聞に属するとはいえ今回問題とされた「凪論」主宰者・N氏に対する行き過ぎた攻撃は残念であり遺憾です。戸田さんは、そんなに弱い者いじめをするような人ではないと思っていたからです。

戸田さんは先の統一地方選挙で、私も含め大方の予想に反し落選されました。私の高校の先輩は、前回落ち、4年間艱難辛苦を舐め年金で糊口をしのぎながら今回返り咲きました。戸田さんも、これから4年間は収入がなくなるわけで大変だと思いますが、ぜひとも捲土重来を期していただきたいと思います。

私は、個人的には戸田さんのキャラクターは嫌いではありません。むしろ小市民的な議員が多い中で、このキャラクターは議会に喝を入れるためにも必要だと思っています。

神原元弁護士のツイートより

また、「リンチ事件」に私たちが関わっているのを、「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」(加害者側の代理人にして「カウンター/しばき隊」の守護神・神原元弁護士のツイート)にあるように、「私怨」だと言う人たちがいますが、私が直接リンチを受けたわけでもありませんし、李信恵氏ら誰彼への「私怨」からやっているわけではありません。趙博氏には直接裏切られましたので「私怨」がないと言えば嘘になりますが、こと戸田さんについては裏切られたこともなく「私怨」などありません。「凪論」N氏への攻撃という行き過ぎたアクションは批判しますが、戸田さんの人格批判はいたしません。この前提で議論し、わだかまりが解ければ幸いです。

戸田さんが連携されている「連帯労組(連帯ユニオン関生支部)」に対し権力の弾圧が続いています。鹿砦社は連帯労組との関係は希薄ですが、主義・主張を問わず権力からの弾圧には一致して抵抗すべきだ(「救援連絡センター」の当初からの思想でもあります)と思い、ささやかながら私どもが発行している雑誌『紙の爆弾』2019年3月号でも「救援連絡センター」代表の足立昌勝教授に寄稿いただきました。献本送付しておきますのでぜひご一覧ください。

あと、私の思想的なポジションですが、間違っても「ネトウヨ」や「極右」「レイシスト」ではありません。また、逆に「極左」でもありません。「カウンター/しばき隊」界隈の方々は私や鹿砦社を「極左」呼ばわりしますが、不正確です。先に挙げましたが、「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」、これはどういう意味か? 誰が「極左」か? 何が「私怨と妄想」か? 神原弁護士にはとくとご説明いただきたいものです。「ネトウヨ」とか「極右」とか「レイシスト」と呼ばれるよりはマシかもしれませんが、あまりにひどいレッテル貼りであり物言いです。

また私は「リベラル」でも「革新」でも、ましてや戸田さんのように勇ましい「革命的左翼」でもありません。学生時代から「差別・排外主義」と闘うことは私にとって当然のことで、このスタンスは変わりませんが、体質としては、反戦、反原発、反改憲(特に9条と21条)で、ちょっと左がかった頑固な「守旧派」だと自分では思っています。しかし、私も歳を重ね、若い頃と違い、他人の反対意見にも耳を傾け柔軟に対応する度量はあるつもりです。

上記を前置きとして以下思うところを申し述べます。

6・7集会案内

〈1〉本件「弾劾」の発端

戸田さんは、去る6月7日に、ミュージシャンの趙博氏、仲岡しゅん弁護士らと共にヘイトと連帯労組弾圧に抗議する学習会を開かれました。ここに畏敬してきた前田朗教授が講演されるということで、ご恵送いただいた著書へのお礼兼ねて留意されるよう手紙を出しました。手紙は、リンチ事件の被害者支援で、いったんは「共に頑張ろう!」と意志一致していたところ、突然掌を返された趙博氏を主に念頭に置いて書いたものでした。私たちにとって趙氏は突然裏切ったA級戦犯であり到底許せない人間だからです。私たちは直接裏切られたわけですから、実感として身に染みています。前田朗教授が李信恵氏に対し『救援』紙上で、「唾棄すべき低劣さ」と断罪されましたが、趙博氏こそまさに「唾棄すべき低劣」な人間です。

また次いで、被害者M君と昵懇の間柄であったのに、こちらも離反し、たびたびM君や私たちを誹謗してきた仲岡しゅん弁護士がいたことも、私たちには疑問でした。趙氏の裏切りについては『ヘイトと暴力の連鎖』P74~79「『浪速の歌う巨人』趙博の裏切り」、『カウンターと暴力の病理』第7項「われわれを裏切った“浪速の歌うユダ”趙博に気をつけろ!」を、また仲岡しゅん弁護士については『人権と暴力の深層』第8項「M君リンチ事件に、見て見ぬふりを続ける『売り出し中』の二人の偽善者」を参照してください。

『カウンターと暴力の病理』より
『人権と暴力の深層』より

その学習会の案内に戸田さんも共催者(共謀企画者)の一人として名がありました。戸田さん一人で主催されたのなら、私も前田教授に手紙を出すこともなかったと思いますし、前田教授に挨拶するために出向いたかもしれません。戸田さんの過去の“武勇伝”=「凪論」主宰者・N氏攻撃(特に勤務先訪問)を思い出し、いわば“付け足し”として、手紙にも「デジタル鹿砦社通信」にも記載しました。これが今回「弾劾」されているものです。戸田さんについて私が問題にしているのは「凪論」主宰者・N氏への行き過ぎた行為のみです。

先に申しましたが、私が意識したのは主に趙博氏であり、比率で言えばこれが5、次に仲岡しゅん弁護士で比率2、そして戸田さんで比率1、この3人が同席することで比率2という按配です。

趙博氏は、いろんな運動に首を突っ込み、いろいろ軋轢や齟齬を起こし顰蹙を買っているとの情報が少なからずあります。仲岡弁護士も、リンチ被害者M君に手を貸すのではなく、崖から谷底に落とすようなことをやっています。正義感溢れるダイレクトな性格の戸田さんは、こうした人たちと一緒にやらないほうがいいんじゃないか、とアドバイスしておきます。趙博氏から私たちが受けたようなことになるのを懸念します。一度人を裏切った人間はまた裏切ります。くだんの本の中のタイトルに因んで言えば、「趙博に気をつけろ!」です。

その「通信」の後、末尾に記した一覧のように前田教授と私とのやり取りが続きました。

〈2〉リンチ事件と前田教授の勇気ある論評

私たちはここ3年余り、被害者らからの要請を受けて「カウンター大学院生リンチ事件」に関わり、前田教授は2度「反差別運動における暴力」という論評を『救援』紙に発表されました。戸田さんもすでに読まれているものと察しますが、非常に勇気ある、また本質を衝いた論評で、私たちも感激しましたし、おそらく戸田さんもそうでしょう。良識派の人々の間では評価が高かったものです。

この間の前田教授と私とのやり取りで、最後は前田教授が、鹿砦社を「炎上商法」と言われたのが何かのメーリングリストで暴露されたことについては「謝罪」されました。ですが私が項目を設けお尋ねしたことには、答えず逃げられました。残念なことです。上記の2つの論評のあの明晰さは一体何だったのかと落胆いたしました(ここでは戸田さんの「弾劾質問状」とは直接関係がありませんので、これ以上述べません。詳しくは「デジタル鹿砦社通信」か私のFacebookをご覧ください。このやり取りは末尾にリストアップしておきます)。

〈3〉戸田さんによる「凪論」主宰者・N氏攻撃と勤務先訪問、これに関連する地裁判決

戸田さんは、2014年5月頃、「ネトウヨ・ヘイター」「札付きの権力弾圧促進分子」として「凪論」というサイトの主宰者・N氏を攻撃し、さらにこれがエスカレートして遂に勤務先の児童相談所を訪れます。申し入れ書を作成し児童相談所所長にこれを渡し面談しN氏の配置転換を求めるためです。突然のことに衝撃を受け恐れおののき、勤務先に迷惑がかかることを懸念したN氏はサイト閉鎖を決断し、その後再開されていません。戸田さんによれば、「公然非公然の情報戦、個別撃破の電撃戦、『戸田戦略』の勝利!」と意気揚々と述べておられます。「凪論」は、けっこう有名なサイトだったらしく、左右問わず再開を望む声があるようです。

正直なところ私は、戸田さんに指摘されるまでに、この程度の知識はありましたが、もっと深くは調べませんでした。戸田さんのこの行動についての情報を見た私が思ったのは「これはマズイだろう」ということでした。このたび、戸田さんからの「弾劾質問状」で出てきましたので、私なりに調べてみました。結論から先に申し上げれば、「ここまでやる必要はないだろう」ということです。

私が14年前の「名誉毀損」事件で保釈され『紙の爆弾』を復刊しました。ご支援のお礼の意味もあり、一定期間にわたり少なからずの方々に献本送付していましたが、かなり多数の方(500人ほど)に膨れ上がり経費節減のために基本的に全廃し送らなくなり、戸田さんとは活動分野も異なり徐々に疎遠になっていきました。そして、この件(「凪論」N氏の勤務先訪問)が疎遠への決定打となりました。

今回、「弾劾質問状」を受けましたので、私の性格上徹底的に調べてみました。

まず、やはり一般市民に近い下級公務員(戸田さんが指摘される「副主幹」とは幹部でも管理職でもなく、民間で言えば係長クラスだということです)の勤務先を訪れるのはマズイと思います。

戸田さんも繋がりがある「カウンター」界隈の方々は批判者に対し勤務先に一斉電話攻撃を仕掛けたり、内容証明を送ったりするのが常套手段のようです。ある自動車販売会社の経営者には、メーカーの本社や取引銀行などに誹謗中傷の電話したり、戸田さんも交流のある、ある国会議員の選挙カーが自宅近くまで行き(自宅に行き呼び鈴を鳴らし、幸いにも家人が不在だったとの情報もあります)、それを詳細にツイートしたりしています。

さらには、あろうことか、リンチ事件や、これを惹き起こした「カウンター/しばき隊」に批判的な在日コリアンの医者が勤める公立病院にまでやんややんやと電話攻撃したりしています。いくらなんでも、人の生命に関わる問題で、これは誰が見ても非難されるべきです。普通だったら「凪論」N氏のように参ると思いますが、上記の会社社長と医者の2人は図太い神経の持ち主のようで参ることはなく反撃していますが、これは例外でしょう。戸田さんの行動もこうした類いと思っていました。

さらに、戸田さんの行動の前後、これに連繋するかのようにN氏の職場(児童相談所)には相当な数の電話があったそうです。本名や身元は明かさず、一方的に汚い言葉で暴言を吐きN氏を非難していたとのことです。児童相談所がただでさえ人出不足で忙しいことは、昨今の児童虐待に関係する報道でも想像できますが、N氏が勤務する児童相談所がてんやわんやであったことが察せられます。

戸田さんによるN氏の勤務先を訪れた行為は、思想・信条に関係なく、誰もが嫌がることです。相手が仮に「ネトウヨ」であったにしろ、逆に「極左」であっても、これは常識として慎むべきではないでしょうか。N氏は「嫌がらせ」と認識していますが、私もそう思います。

もうずいぶん前(1970年代後半)のことですが、私は大学を出て当時大阪心斎橋に在った小さな会社に勤めていましたが、在学中に学費値上げに反対し逮捕され有罪判決を受けていました。私の勤務先のビルの入口から公安の刑事が電話してきて、「出て来ないと会社に行くぞ」と脅され、やむなく出て行ったことがありました。もし刑事が会社に来て上司や経営者にいろいろ話したら、大変な騒ぎになっていたと思います。零細企業でしたので解雇になったでしょう。これと似ています。戸田さんは刑事ではありませんが、戸田さんが勤務先に来て動転したN氏の気持ちは分かります。

戸田さんは今回の選挙で、前回よりもかなり票を落とし落選となりましたが、選挙民は、見ていないようで見ています。しばらくは地元に足場を置いた運動に専念されたほうがいいのではないでしょうか。

ちょうど偶然にも、戸田さんによるN氏攻撃や勤務先訪問のネット記事を拡散したとして、N氏は「ぱよぱよちーん」こと久保田直己氏を提訴し、一審で勝訴しています(静岡地裁民事第1部平成30年(ワ)第212号。平成31年3月29日判決言渡。賠償金20万円。N氏は本人訴訟で、久保田氏の代理人は神原元弁護士)。N氏は戸田さんに恐怖を抱いているのか直接戸田さんを提訴していませんが、もし戸田さんが提訴されても同じような結果になると思います。直接でないにしろ戸田さんの行動を見る目安にはなるでしょうから、これを援用しつつ記述を進めます。

N氏は、上記久保田氏に対して提訴し勝訴したのみならず、しばき隊のトップ・野間易通氏に対しても提訴し、やはり静岡地裁で勝訴(賠償金20万円)しています。N氏に対する2つの訴訟資料を読むと、N氏への攻撃が凄まじかったこと、これにN氏がかなり参っていたことが判ります。野間氏、久保田氏、そして戸田さんの目論見は、おそらくそこにあったのではないかと推察いたします。

N氏について私はやはり「一般市民で下級公務員」と認識しています。公務員は、キャリアであるかないかで大きく「高級」か「下級」かに分けることができると思います。キャリアでなくとも、今回の児童相談所の所長や局長クラスならまだしも、N氏は「総務担当副主幹」だったそうですが、地位もさほど高くはありません。民間での「係長」クラスだそうで、やはり「下級公務員」で「一般市民」と見なしていいかと思います。公務員だからといって、すべて即公人、準公人というわけではありません。

N氏はなぜかM君の訴訟や鹿砦社が李信恵氏を訴えた訴訟にも数度傍聴に来られ、顔見知りになり簡単な会話をしました。付き合いと言えばそれだけのことで、一緒に飲食を共にしたことなどありません。N氏を、戸田さんは、「『反ザイトク側をもっぱら非難攻撃する』という『ザイトク別働隊・裁判オタク』、つまりは親ザイトク分子で、その上『札付きの権力弾圧促進分子』である凪」として、いわば「ヘイトの先頭に立っていた」人物、「ヘイトスピーチの被害者に思いを馳せたり気の毒に思ったりすることのない人物」「ネトウヨ・ヘイター」「札付きの権力弾圧促進分子」等々と詰(なじ)っておられます。事前にこのイメージがありましたので、もっと理知的でスマートな風貌を持つコワモテな方かと思っていましたが逆でした。彼はどこの組織にも属さず、サイトが閉鎖されるまでは身に付けていた法律知識を表現するブロガーにすぎず、独身で出世欲もなく、落語(傍聴の後に大阪・天満天神繁昌亭に行ってました)とサッカー(ある在日の選手のファンだとのこと)が趣味で、人の好い地方の下級公務員の中年オヤジという感じで、子どもが好きな児童相談所の職員というイメージがピッタリでした。とても「ザイトク別動隊」「ネトウヨ・ヘイター」などとは思えませんでしたし、そうした「ヘイトの先頭に立っていた」人物ということを静岡地裁も否定しています。

戸田さんがN氏の勤務先に来所された日、N氏が担当し面倒を見ていた子どもが相談所を出る日で、労いと激励の声をかけてやりたかったということでしたが、戸田さんが相談所を出られてから、上司に呼ばれ事情を聴かれたり大変だったようで、それができなかったことを悔やんでおられました。戸田さんが仰られる「子どもや社会的弱者に寄り添う気持ちが持てない者」(申し入れ書)とは逆のイメージです。

特段N氏を庇うわけではありませんが、戸田さんはN氏について牽強付会な物言いをされているのではないか、と感じました。

また、「凪論」は在特会などの「行動する保守」らに対しても批判記事を掲載していて、N氏なりにバランスを取っていたのではないか、と思います。

野間氏、久保田氏、そして戸田さんらによるネットでの非難や職場訪問が重なれば、私なら音(ね)を上げていたでしょう。私のみならず多くの方もそうだと思います。

さらに戸田さんは児童相談所を出てからN氏の自宅まで行き、自宅の写真を撮っておられます。このことはサイトでも書かれていますが、サイトに書かれていないことがありますよね? 戸田さんのサイトは複雑なので私が発見できないのかもしれませんが、その写真をN氏宛に配達証明郵便で送られましたよね? これは事実ですか? 事実であれば、これはどういう意図なのでしょうか? 常識的に見たら脅しとしか思えませんよ。実際にN氏は脅しだと感じたそうです。読者の皆様はどうお感じになるでしょうか?

ご存知のように鹿砦社は、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で壊滅的打撃を受けました。しかし多くの皆様方のご支援で再興し、一時はヒット作が続き、かなりの利益が出て税務署に持って行かれそうになり、運動に還元することにしました。この一つに、野間氏らと繋がる「首都圏反原発連合」(反原連)に1年間で「広告代」名目で300万円余り拠出しました(が、反原連からは、感謝の言葉もなく一方的に「絶縁」されました)。反原連や、これに繋がるSEALDs-しばき隊-カウンターに疑問を持った最初のきっかけは、韓国からの京大研修員・鄭玹汀(チョン ヒョンジョン)さんへの凄まじいネットリンチでした(2015年)。母子で異国にやってきて、凄まじいネットリンチを受ければ、正義感の強い戸田さんがこれを見たら、「これはひどい!」と思われるでしょう。外国から来た人に対し、いろいろ親身に世話を焼くのではなく、逆に激しいバッシングをする――私は日本人として恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。 

くだんの静岡地裁判決は、N氏に対する戸田さんの言動について、ほとんど「原告(注:N氏)の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」と判示しています。

特に、いまだに削除していないN氏の本名をフルネーム(最初は名字のみ、後にフルネーム)で表記し勤務先等も公開していることもまた同様の判示をされています。

さらには、「原告がヘイトスピーチを行っていたことやヘイトスピーチを先頭に立って主導していたことを被告が真実であると信じたことについて、相当な理由があるとは認められないというべきである」としています。

そうして、「本件戸田記述の記載内容について、違法性は阻却されず、原告に対する名誉毀損が成立する」と結んでいます。

ちなみに、くだんの箇所は戸田さんのサイトではいまだに掲載されています。久保田氏への訴訟で一審勝訴判決を得たN氏が今後どうするか分かりませんが、もしN氏が一審勝訴判決を基に戸田さんを提訴すれば戸田さんの敗訴は免れないと思われますので、老婆心ながら、今からでも削除されることをお勧めいたします。

〈4〉戸田さんからの具体的質問項目についてお答えします

これまでの記述で、私の回答の概略なり骨格はお分かりになるか、と思います。以下、戸田さんからの個々の具体的質問項目について申し述べます。

Q1.異論はありません。ただ、N氏が職場に居ずらくなるような、勤務先の児童相談所を訪れ、この所長宛に「申し入れ書」を渡し面談を要求する行為は賛成できません。また、戸田さんが仰られるような人に該当する者とは誰がどんな基準で判断するのでしょうか。

Q2.これも異論はありませんが、ここでも、誰がどんな基準で、戸田さんが否定される人物だと判断するのでしょうか。先の静岡地裁判決では、「原告(注:N氏)が人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせていない冷酷な人物であるという印象を閲覧者に与えるから、原告の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」と判示されていますが、この判示は戸田さんのサイトの文章の少なからずの箇所に及んでいます。

Q3.これには異論があります。当事者の静岡市の市議なら、申し入れたり改善を求めるのは理解できますが、戸田さんは大阪門真市の市議でいらしたのですから、他県他市の公務員の人事にまで口を出すのはいかがなものでしょうか。N氏の言動をすべて支持するわけではありませんが、遠隔地から勤務先にまで来られて抗議されるほど悪質であったとは思えません。仮に悪質であったにしろ筋違いでしょう。

Q4.戸田さんがN氏の勤務先を訪れ所長に面談したこと自体が迷惑行為ですし、N氏はおそらく数日仕事が手につかなかったんじゃないでしょうか。気が小さな方のようですし尚更です。戸田さんには、N氏が嫌がるということは分かった上での来所―所長面談だったのではないんですか? 立派な「業務妨害」です。

Q5.N氏とは市民や子どもらに「恐怖」を与えるような人物なのでしょうか。先の静岡地裁の判示で、「原告が人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせていない冷酷な人物であるという印象を閲覧者に与えるから、原告の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」とし、「本件各戸田記述の記載内容について、違法性は阻却されず、原告に対する名誉毀損が成立する」とされています。私はこの判決を支持します。

戸田さんの訪問や数多くの電凸攻撃などあれば、普通の企業なら解雇か、これに近い処分を受けるでしょう。N氏が、あれだけの攻撃を受けながらもいまだに勤務できているのは、「人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせて」いるからではないでしょうか。

Q6.2014年にはしばき隊/カウンター問題にはさほど関心がなく、「ああ、戸田さんがマズイことやったな」ぐらいにしか考えていませんでした。そして、「もうこういう人とは付き合わないでおこう」と思い、連絡などやめました。また、事実関係について戸田さんのサイトでの記述には間違いないだろうと思っていました。なので、戸田さんには特段確認する必要もないと考えていました。逆に事実関係を確認すべきなのはN氏に対してだと思います。

(2)静岡市児童相談所には取材していません。N氏の立場を顧みると、平穏に戻っているところで、再び「寝た子を起こす」ようなことはしたくありませんから。

(3)N氏本人には、取材班メンバーの協力を得て長時間取材し疑問点を幾つかたずねましたが、戸田さんの訪問や野間氏らによるネット攻撃には非常に迷惑し精神的に参ったということを繰り返しておられました。私がN氏の立場だったら同様だと思います。

(4)N氏は、戸田さんらによる攻撃には精神的も参り、戸田さんの勤務先来所を機にサイトを閉じたということです。「逃亡」でもなんでも構いませんが、人ひとりの言論を封じる結果になりました。N氏はたかが地方の一下級公務員ですよ、果たしてここまでやる必要があったのか疑問です。N氏には確かに右翼的言辞も散見されますし、逆に在特会やネトウヨに対する批判的コメントもあります。私は、平たく言って、N氏の言動をかなりの部分で評価できません。支持できる部分は、むしろ少ないです。組織をバックにしているわけでもありませんし、これぐらいは言うに任せたらいいんじゃないでしょうか。

戸田さんともあろう方が、こんな地方の下級公務員をイジメてどうするんですか。弱い者いじめとしか映りませんよ。せっかく直撃するのなら、もっと大きな相手、強者、権力になすべきでしょう。

今回、戸田さんによる「凪論」主宰者・N氏攻撃について、N氏本人への長時間の電話取材や前出の判決文の解読など徹底的に調べました。知らないことがずいぶんと判りました。「デマ中傷」どころではなく、戸田さんがサイトに記述されている以上に、凄まじい事実が出てきました。もうこんなことはやめるべきです。いくら「反差別」「反ヘイト」を旗印にしても、その頃から今に至るまで続く、暴言や電凸攻撃を一斉に行うようなネットリンチ(私刑)、ましてや職場訪問などはやめるべきだと思います。私の言っていることは間違っているでしょうか?

非礼を顧みず忌憚なく申し述べさせていただきましたので不快な点があれば何卒ご容赦ください。

以上、戸田さんの「弾劾質問状」への回答とさせていただきます。

《付 記》

【前田朗教授―鹿砦社・松岡利康の公開書簡】

◎松岡利康 前田朗教授の豹変(=コペルニクス的転換)に苦言を呈す!(2019年5月23日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30689
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(2019年5月26日付け前田朗氏ブログ)http://maeda-akira.blogspot.com/2019/05/blog-post_56.html
◎松岡利康 前田朗教授の誤解に応え、再度私見を申し述べます(2019年5月28日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190528
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(2)(2019年6月1日付け前田朗氏ブログ) http://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post.html
◎松岡利康 「唾棄すべき低劣」な人間がリーダーの運動はやがて社会的に「唾棄」される! 前田朗教授からの再「返信」について再反論とご質問(2019年6月4日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30796
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(3)(2019年6月9日付け前田朗氏ブログ) https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_22.html
◎松岡利康 前田朗先生、私の質問に真正面からお答えください!このリンチ事件をどう本質的に解決、止揚するかが社会運動の未来のために必須です(2019年6月13日付けデジタル鹿砦社通信) http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190613
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへのお詫び(2019年6月13日付け前田朗氏ブログ) https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_13.html
◎松岡利康 前田朗教授が「お詫び」ブログを公開! 私との公開書簡も、私の質問に答えず一方的に「終了」宣言。はたしてこれでいいのでしょうか?(2019年6月17日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=31064

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◎横山茂彦 しばき隊リンチ事件をめぐる松岡利康氏と前田朗氏の相論 ── 論点の整理、および事件の解決・和解のために (2019年6月18日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=31121

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

戸田ひさよし様
             

ご 質 問

                           

2019年6月30日
                           株式会社鹿砦社
                           代表取締役  
                            松岡利康  

戸田さんからの「弾劾質問状」には、私なりに真っ正面から取り組み真摯にお答えいたしました。

このたびは、あらためて戸田さんに以下のご質問をさせていただきますので、来る7月21日(日)までにご回答お願い申し上げます。ご回答の期限は、戸田さんからの「弾劾質問状」のご回答期限と同じ3週間とさせてください。

ご質問1: 戸田さんは6月6日付けサイトにおいて、私を「こじれサヨ」と揶揄されていますが、この根拠を具体的に明らかにしてください。

私は、鹿砦社が発行している『NO NUKES voice』で原発反対を謳い、この関係の集会には時々参加することはあっても、こうした反原発運動以外には、社会運動の場にはほとんど登場していません。他に「カウンター大学院生リンチ事件」被害者支援と真相究明活動ぐらいですが、私がどこで何をどのように「こじらせてしまった」のか教えてください。

ご質問2: 先の「ご回答」でも連々申し述べさせていただきましたが、私が悪意を持って、具体的にはどのように戸田さんへ「酷いデマ中傷」(6月6日付け「ちょいマジ掲示板」)を行ったのか明らかにしてください。

「凪論」追及(児童相談所所長への「申し入れ書」、勤務先の児童相談所への訪問など)に対する事実関係については戸田さんのサイトの記事をほぼ100%信じていますので「デマ」ではなく、これに対する私の論評や意見は、静岡地裁の判決に沿ったもので根拠があり「中傷」にはあたらないと考えています。

私たちは、この3年余り、「カウンター大学院生リンチ」事件の被害者支援と真相究明に関わってきましたが、「カウンター/しばき隊」界隈の方々が真っ先に口にするのは「デマ」という言葉です。戸田さんのケースには戸田さんご自身のサイトでの記述を基にしていますので「デマ」ではありません。私の論評が「デマ」であれば、戸田さんの記述も「デマ」ということになってしまいます。

ご質問3: 6月1日の戸田さんのサイトで、「『松岡氏の旧ブント仲間OBからの借金踏み倒し事件』を戸田が信頼する複数の被害関係者から話を聞いて」「『借金事件』は裁判になったけれども、原告(貸した側)が(不当に?)負けた」云々とありますが、この原告の名前、裁判所、事件番号を明らかにしてください。これが明らかにできなければ提訴も可能ですが、戸田さんは間違いなく敗訴しますよ。

私にはここで戸田さんが指摘されるような経験の記憶が全くありません。借金関係でこれまで裁判になったことはありません。戸田さんは、おそらく人の噂や悪口が好きな連中の言葉を簡単に信じられているのではないでしょうか。逆に私は貸し付けて返済しない人に対して法的措置を執り差し押さえたことが最近でもありましたが。

お蔭様で現在の鹿砦社は再起を果たし健全経営で支払いなどの遅れもありません。むしろライターさんなど個人事業主には、支払い期日よりもなるべく早く支払うように努め感謝されています。

ちなみに、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で、ひどい話ですが、銀行や公的機関などからの借り入れもできなくなりましたので、いきおい業績アップに頑張らざるをえなかったのですが。

ご質問4: 「財政厳しき左派メディア」の『救援』『人民新聞』に「大規模連続広告を出し続けて『重要な金主』になっている」、「松岡氏にしたら『オレが左翼を支えてやってるんだ』、という『驕り』が強まっているんじゃないでしょうか?」と書かれていますが、これは一体どういう意味でしょうか? ご説明いただけますか?

『救援』の広告は1回5万円、『人民新聞』は1万円です。これで「オレが左翼を支えてやってるんだ」もないでしょう。ご承知のように、私と鹿砦社は、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で壊滅的打撃を蒙りました。運よく、多くの方々のご支援で再起できました。このお返しの意味も込めて、できるだけ運動に還元しようとしていて、私なりの恩返しのつもり以上の気持ちはありません。この行為のどこがいけないんですか? 人の厚意に対し、真っ直ぐに捉えず、「オレが左翼を~」というように曲解して仰るのはおやめください。

ご質問5: 私(たち)は、この3年余り「カウンター大学院生リンチ事件」の被害者支援と真相究明に関わってきました。この事件について戸田さんはどう思われますか? 正義感の強い戸田さんなら、きっと「許せない!」と思われるはずです。

私たちが心血を注いで作った本5冊を送りましたので、ご一読の上、ぜひともご意見をお寄せください。リンチの加害者らの周辺からは、「デマ」「でっち上げ」「リンチはなかった」「リンチではない」という言葉でしか、“反論にもならない「反論」”があるのみですが、戸田さんならもっと違う反応があるものと信じています。

ご質問6: 前田朗教授は『救援』紙に2度「反差別運動における暴力」という論評を発表されました。最近ではこの論評をみずから否定される言動に接し、私たちや、発表時に前田教授の勇気ある言動に感激し高く評価した多くの人たちは落胆いたしましたが、前田教授の2つの論評と、これをみずから否定されるような前田教授の言動について戸田さんのご意見、ご感想を述べてください。

『救援』(580号。2017年8月10日発行)
『救援』(589号。2018年5月10日発行)

ご質問7: このかんの前田教授と私とのやり取りについて戸田さんのご意見をお述べください。また、最後には私からの設問には答えず、逃げた印象がありますが、これについても戸田さんのご意見をお述べください。

ご質問8: 「リンチ事件」の被害者支援と真相究明の過程で、当初被害者の味方のように私たちの前に現われ、すぐに掌を返した、6月7日の学習会の共催者の趙博氏の行動をどう思われますか?

被害者が趙博氏に渡したリンチ事件関係の貴重な資料は戻って来ていません(結局、この資料の取得と被害者サイドの動きを探ることが目的だったという人もいます)。私から申し上げれば、はっきり言って、簡単に人を裏切り、先の「ご回答」でも述べましたように前田朗教授が李信恵氏に対して『救援』紙上で断罪された「唾棄すべき低劣」な類いの人間で、正義漢で少なくとも人を裏切ることをよしとしない戸田さんが付き合うような人物ではありません。実際に趙博氏に裏切られた私が言うのですから間違いありません。「朱に交われば赤くなる」という諺を想起してください。

ご質問9: その学習会の参加者の仲岡しゅん弁護士の、リンチ事件についての言動についても戸田さんはどう思われますか?

以上、よろしくお願いいたします。

なにが「デマ」だ! なにが「でっち上げ」だ! 徹底した調査・取材によって発行したリンチ関連本!

滋賀医科大学附属病院問題をめぐるMBSのTVドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」今晩深夜0時50分より放送!

前立腺がんの放射線治療打ち切りを巡り、滋賀医科大学附属病院の医師や治療を望む患者らと、病院側との間で持ち上がった対立に、関係者の証言から迫るドキュメンタリー「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」が6月30日深夜(7月1日午前)0時50分、MBS(大阪市)で放送される。

◎MBSのドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか~」
https://www.mbs.jp/eizou/backno/190630.shtml

 
MBSのドキュメンタリー「映像'19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」6月30日深夜(7月1日午前)0時50分放送

滋賀医大病院をめぐる問題については、本通信でも継続的に取り上げてきたが、いよいよ在阪キー局であるMBSが1時間のドキュメンタリーを今夜放送する。

MBSはTBS系の大阪にある放送局だ。歴史的にTBSへの対抗心が強く、これまでも優れた報道番組を多数生み出してきている。滋賀医大病院問題とは関係ないが、わたしたちが子供のころから現在まで続く「仮面ライダー」シリーズをテレビ化したのも、MBSだった。

「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」のディレクター、橋本佐与子氏が、取材班とともに問題の現場へ登場されたのは、今年の早い時期だったと思う。滋賀医大病院問題については、わたしが関わる前から、朝日新聞が継続的に報じていたが、テレビメディアで継続的な取材・報道を続ける局はなかなか出てこなかった。患者会の皆さんは昨年の秋以降、短期間で2万8千筆の署名を集めた。「岡本医師の治療継続」を求める声は、厚労省、文科省、国会議員へ届けられた。その場面にも橋本ディレクターはじめ、MBS取材陣の姿があった。

しかし、まさか1時間もの長編ドキュメンタリーを放送することになろうとは、わたしも考えなかった。大手メディアとは異なり、小さな影響力しか持たないわたしのようなフリーライターにとっても、橋本ディレクターとMBSのアクションは、うれしい誤算だった。この問題を取材し、話すと「ああよくある医学界の話ね」と反応する方が少なくない。正直な感想なのであろうが、こういう問題が「よくある」ことであってはならない、とわたしは痛切に感じる。

たとえば、現在滋賀医大のHP「病院からのお知らせ」には、6月11日に「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載されているが、その内容は国立がん研究センター発表の報告を、明らかに改ざんしたものだ(この問題については6月28日、本通信で【[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん──岡本メソッドに対する印象操作か?】が黒藪哲哉氏により報告されている)。

こういう明らかな改ざんが、病院長の名前で堂々と行われて問題はないのか?
黒藪氏の報告の中に映像が紹介されている。この映像(https://youtu.be/w3rPzAk9G3E)をぜひご覧いただきたい。

質問をする女性に対して事務職員は、明確に「この資料は国立がん研究センターが作成したものです」と語っている(映像では質問者と回答者の名前も確認することができる。不審に思われる読者諸氏は滋賀医大病院の当該職員に直接確認されたい)。

 
滋賀医大小線源患者会HP

さらに、6月25日にも「病院からのお知らせ」に、一部明らかな虚偽が掲載された。

続発する問題の発生源、滋賀医大病院を橋本ディレクターはじめMBS取材陣はどのように描き出すのか? 視聴可能区域にお住まいの方は、是非ご覧いただきたい。拙宅にはテレビがないので、わたしは既に知人のお宅にお邪魔する準備を整えた。なお、滋賀医大病院にかかわる問題の総体は、以下のサイトに詳しく掲載されている。引き続き正当な「解決」を見届けるまで、この問題は追及したい。

◎滋賀医大小線源患者会HP https://siga-kanjakai.syousengen.net/

◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
〈原発なき社会〉を目指して 創刊5周年『NO NUKES voice』20号 【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

《殺人事件秘話19》死刑回避を求めた遺族 坂出3人殺害事件の知られざる後日談

発生当初に大々的に報道された事件について、のちにわかった重大な事実が十分に報じられず、世間に知られずじまいになっている例は多い。12年近く前に起きた坂出3人殺害事件もそういうことがあった事件の1つだ。

◆報道が過熱し、被害者の父親を犯人視したメディアも・・・

2007年11月15日の夜、香川県坂出市で両親と暮らす5歳と3歳の姉妹が、隣で暮らす58歳の祖母A子さん方に泊まりに行き、翌朝までに3人揃って失踪した。A子さん方では、寝室のカーペットがL字に切り取られ、その下の畳には血が染み込んでいた。

警察は3人が犯罪に巻き込まれたとみて、捜査を展開した。マスコミも現地で熾烈な取材合戦を繰り広げた。そんな中、姉妹の父親がマスコミから確たる根拠もなく犯人視される報道被害も発生。若手女優がブログで男性を犯人扱いするようなことを書き、芸能活動の休止に追い込まれたりもした。

そんな事件で、容疑者として検挙されたのは、川崎政則という61歳の男だった。川崎は、A子さんの妹B子さんの夫だったが、B子さんが川崎に内緒でA子さんに繰り返し多額の金を貸したため、川崎家も借金生活に陥り、家庭が崩壊。さらに事件の少し前、B子さんは肺がんで亡くなっていた。そんな事情から、A子さんを恨んでいた川崎は、事件の日の深夜、A子さん宅に侵入し、持参した包丁で就寝中のA子さんを刺殺。さらに泊りに来ていた小さな姉妹も刺し殺したのだ。

川崎は3人を殺害後、車で遺体を運び出し、坂出港近くの空き地の土中に埋めていた。

被害者3人の遺体が埋められていた空き地

◆娘と曽孫2人を殺害された男性が裁判で情状証人に

川崎はその後、2009年に高松高裁で死刑判決を受け、控訴、上告も棄却されて2012年に死刑判決が確定した。そして2014年に収容先の大阪拘置所で死刑を執行された。この間、発生当初は大きな注目を集めた事件も、いつしか人々の記憶から消え去っていった。

私がこの事件を調べ直し、ある特異な出来事が起きていたのに気づいたのは、2017年のことだった。川崎に対する高松高裁の判決によると、被害者のA子さんの父親が控訴審の公判に弁護側の情状証人として出廷し、「寛大な処罰」を求めていたというのだ。これはつまり、川崎の死刑が回避されることを求めたに他ならない。

A子さんの父親は、A子さんと共に川崎に殺害された小さな姉妹の曽祖父でもある。親族を3人も殺された犯罪被害者遺族が、犯人の裁判で死刑回避を求めるというのは、極めて異例の出来事であるのは間違いないだろう。

そこで私は、A子さんの父親本人に話を聞いてみたいと思い、川崎の弁護人を探し当て、取材の仲介を依頼した。だが、複数いた弁護人の中でA子さんの父親と連絡を取り合っていた者はすでに亡くなっており、弁護人もA子さんの父親と連絡を取れない状態になっているとのことだった。A子さんの父親は、2017年の時点で生きていれば相当高齢のはずだから、そもそも存命かどうかも微妙だったが、こうして結局、私はA子さんの父親と会えなかったわけだ。

◆異例の出来事に関する報道は一切見当たらず

判決に示された事実関係を見ていくと、A子さんの父親は事件前、A子さんのことを批判する川崎を逆にしかったこともあったという。また、A子さんの父親から見ると、川崎は娘や曽孫たちを殺した犯人である一方で、殺された娘とは別の娘(B子さん)の夫でもあり、孫たちの父親でもあった。そのような複数の事情が重なり合い、川崎の死刑回避を求めるに至ったのではないかと私は推測したが・・・今となっては、真相を追及するのは難しい。

私は、新聞社各社の過去記事のデータベースを調べたが、A子さんの父親が控訴審の公判で川崎の死刑回避を求めたことを報じた記事は一切見当たらなかった。新聞各社がこの事実を知りながら、あえて報道しなかったのか、裁判を取材しておらず、この事実に気づかなかったのかはわからない。いずれにせよ、マスコミの事件報道は必ずしも事件の全体象や核心を伝えたものではないことを示す顕著な例ではあるだろう。

殺人事件の現場となったA子さん方。奥は、殺された姉妹の家

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。最新作は編著「さよならはいいません ―寝屋川中1男女殺害事件犯人 死刑確定に寄せて」(Kindle)。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん ── 岡本メソッドに対する印象操作か? 黒薮哲哉

滋賀医科大学医学部附属病院が、国立がん研究センターが公表したプレスリリースを改ざんして、6月11日に、同病院のウェブサイトに掲載していたことが分かった。

この資料は、国立がん研究センターが公表した時点では、1ページに満たない短い資料だった。ところが滋賀医科大は、これに約2ページ分の情報を複数の資料から抜粋して再構成し、3ページに編集した。そして、これら全部が国立がん研究センターによるプレスリリースであるかのように装って掲載したのである。

何が目的でこのような大がかりな改ざん行為に及んだのだろうか。既報したように、滋賀医科大病院は、岡本圭生医師による高度な小線源治療(前立腺癌が対象)を年内で中止して、岡本医師を病院から追放しようとしている。それを正当化するためには岡本メソッドが、他の癌治療と比較して、継続するだけのメリットがないという世論を形成することが必要になる。そこで権威のある国立がん研究センターのロゴが入ったプレスリリースを改ざんして、自分たちの目的に沿った内容に改ざんしたである。

具体的な手口は、次のYouTubeで紹介している。滋賀医科大病院に問い合わせた際の音声も、そのまま収録した。


◎[参考動画]滋賀医科大学のフェイク(安江博 2019/6/26公開)
https://www.youtube.com/watch?v=w3rPzAk9G3E

◆がんセンターの資料は1ページ目だけ

フリーランス記者の田所敏夫さんらが、この改ざんについて、国立がん研究センターへ問い合わせたところ、YouTubeで示されている部分のみが同センターが発表した部分であることが判明した。

国立がん研究センターは、元々のプレスリリースと改ざん部分の区別について、田所さんに対し、次のように文書で回答している。

「お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
 当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。」

つまり約2ページ分を滋賀医科大病院が我田引水に「編集」して、元々のプレスリリースを含む3ページの資料に編集し、あたかもそれが国立がん研究センターが発表したものであるかのように装って、病院のウェブサイトに掲載したのである。

改ざんされた資料は次のURLでアクセスできる。オリジナル(国立がんセンターのプレスリリース)と比較してほしい。

◎[参考資料]改ざんされたプレスリリース
https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/cms/file.php?action_disp&id=1156&fid=2013

 
改ざんされたプレスリリース

◆何が加筆・編集されたのか?
 
滋賀医科大学病院が改ざん・編集により印象操作を企てたのは、前立腺癌に対する4つの治療法における5年後の非再発率である。それによると次のような成績になっている。

・ロボット支援前立腺全摘除術(弘前大学):97.6%
・外照射放射線治療(群馬大):97.6%
・小線源治療(滋賀医大):95.2%
・重粒子線(放射線医学総合研究所病院):不明
・小線源治療(京都府立医大):94.9%

これらのデータを見る限りでは、滋賀医科大学の小線源治療(岡本メソッド)にはまったく優位性がないことになる。それどころかロボット支援前立腺全摘除術か外照射放射線治療を受けた方が、岡本メソッドを受けるよりも5年後の非再発率が高いことになる。当然、岡本メソッドの中止と岡本医師の追放はやむを得ないという世論が形成されかねない。おそらく滋賀医科大の塩田浩平学長は、それが目的でこのような誤解を与える記述の掲載を許可したのである。

◆データのトリック

これらのデータには、専門家でなければ見破れない巧なトリックが隠されている。端的に言えば、基準が異なるものを比較しているのだ。比較するのであれば、比較の基準が同じでなければならない。滋賀医科大病院は、その基本的な学術上のルールすらも無視しているのだ。

周知のように前立腺癌の検診は、血液を調べるPSA検査により行われる。PSAの数値が4.0 ng/mLを超えると前立腺癌の疑いがあり、精密検査で癌を発症しているかどうかを確定する。

意外に知られていないが、実はこのPSA検査は、前立腺癌の治療を受けた後の経過観察でも行われる。

施術方法のいかんを問わず、治療を受けた患者のPSA値は下降線をたどり、横ばいになるのだが、再発すると再上昇に転じる。この原理を応用して、医師は、PAS値の変化を観察することで、癌が再発したかたどうかを判断するのである。
 
この点を前提にしたうえで、データの改ざんについて説明する前に、前立腺癌の治療法についてもあらかじめ言及しておかなくてはならない。前立腺癌の治療では、ホルモン療法と呼ばれるホルモンを投与する療法により、施術前に癌を委縮させる方法が適用されることがままある。癌を小さくしたうえで、施術するのだ。

ホルモン治療が効力を発揮した場合、PSA値は下降する。そしてホルモン治療が終わった後も、1年から2年ぐらいの期間はその効用が維持されるので、PSAは上昇しない。

滋賀医科大が提示した他の医療機関のデータは、ホルモン治療の効用が持続している期間を含めた非再発率なのである。

とりわけ、弘前大学のデータにいたっては、論文の中でも、経過観察の期間が30カ月であることを明記している。それにもかかわらず都合のよいデータだけを提示して、あたかもロボット支援前立腺全摘除術と岡本メッソドでは、大きな違いがないような印象操作を行っているのである。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

◎[関連記事]黒薮哲哉[特別寄稿]小線源治療患者会が国会議員と厚生労働省へ嘆願、2万8,189筆の命の署名を提出(2019年3月15日付けデジタル鹿砦社通信)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
フリーランスライター。メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)の主宰者。「押し紙」問題、電磁波問題などを取材している。

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安倍イラン訪問と国益の危機 ── タンカーが攻撃されて戦争が起きようとしていた時、この男は何も出来ずに晒しものになっていた!

◆単に「会った」というだけの外交

帰国した安倍総理が、イラン訪問の「成果」を誇っているという。銀座のステーキ屋で森喜朗元総理らと会食し、「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に会えたのは自分だけだ」と「成果」を誇示したというのだ。

自分の訪問中に日本の企業の船舶が「攻撃」され、帰国後にはアメリカの無人機偵察機が撃墜されるという交戦事態が起きた。これが偶発的なことではない証拠に、アメリカは戦争を準備していたのだ。帰国と入れ替えにアメリカによる「戦争の危機」が迫っていたというのに、この男はそれを「成果」だと言っているのだ。

つまり、国際的な政治危機のなかで、なんら具体的な政策を持たずにイランを訪問してみたものの、アメリカの説によればその訪問国によって自国のタンカーが攻撃され、みずから「同盟国」としているアメリカはイランを攻撃しようとしていたのだ。悪くすれば、アメリカとイランが戦争を始めているなかで、安倍は出国できなくなる可能性すらあったのである。


◎[参考動画]“仲介役”の安倍総理 イラン最高指導者とも会談(ANNnewsCH 2019/6/13公開)

◆訪問が戦争への「最後通牒」になっていた可能性も

そもそも今回のイラン訪問の最大の目的は、アメリカとイランの「対話」を仲介することだった。そしてそれは、ハメネイ師によって明確に否定されたのだ。「アメリカは体制転覆を狙う意図を持っていない」というトランプ大統領のメッセージが、安倍首相を通じてイラン側に伝達された。これに対してハメネイ師は「アメリカは体制転覆の意図を持っていないのではなく、体制転覆を引き起こす能力を持っていないだけだ」と喝破したという。

「トランプはメッセージをやりとりするには、ふさわしい相手ではない」(ハメネイ師)と言うのを、黙って聞いているしかなかった安倍総理が「日本外交の成果」などと言えたものか。もしも20日のイラン攻撃が中止(10分前にトランプがビビった)されていなかったら、安倍総理は「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に最後通牒を伝えたのは自分だ」ということになっていたはずだ。植民地国のかいらい政権よろしく、アメリカの「特使」のような立場でイラン訪問をしていたことになる。

アメリカは10年に一度は戦争をしないと成り立たない、軍産複合体(産業関係者は家族をふくめると3000万人で、人口の11.5%にあたる)を、その社会に抱えている国家だ。戦争が産業であり、戦争をやめてしまうと失業者が出る戦争国家なのだ。したがってその外交は平和を維持するためにものではなく、戦争を生じさせるために緊張感を高める役割をもっている。今回、安倍総理はアメリカの戦争のためにイランを訪問した。その本質をあますことなく暴露するものとなった。

◆歓迎されてあたりまえの日本とイランの関係

イランは親米だったパーレビ国王を倒したイスラム革命(「アメリカに祖国を売るシャーに死を!」)から40年である。反米思想は社会の隅々にまで浸透している。中東諸国では初等教育時から広島・長崎の原爆投下の残虐性が教育されているという。トルコやイランなど、中東諸国が日本に友好的なのは、ロシアの脅威を日露戦争が取り除いたことに始まり、イランにおいては日章丸事件での日本の原油輸入によるものだ。

すこし解説しておくと、1953年当時イギリスが支配権を継続していたイランの原油を、出光石油の日章丸が海上封鎖をくぐりぬけて日本にもたらしたもので、イギリスの植民地支配を最終的に終わらせる結果となった。いわばイラン独立を日本が支援したといえるのだ。

こうした両国の歴史から、安倍総理が歓待されるのは当たり前のことなのである。出光佐三および出光計助ら当時は中小企業にすぎなかった出光石油の功績によるものなのだ。イランをよく知るジャーナリストによると、1991年湾岸戦争直後に、イラン領内に逃れたクルド難民支援をしているNGOに携わるボランティアとしてであったが、「日本は、次はいつアメリカと戦うんだ、次回は事前にイランにも教えてくれよ」と事あるごとにイラン人に言われるのに閉口したという。

そんな反米思想をもっているイランに、こともあろうか安倍総理はアメリカの手先として訪問したのである。トランプが離脱した核合意など、もっぱらアメリカへのおもんぱかりで、日本のイランからの原油輸入はかつての30%近くから一桁にまで減っている。その分、サウジなど価格の高い国から買わざるをえない、国の損益を招いてきた。安倍外交は、まさに国益を損ずることにのみつながりそうだ。

日本の貿易会社がチャーターしたタンカーが攻撃をうけても、ソマリアに派遣されている自衛隊護衛艦あさぎりは動かなかった。アメリカが派遣している空母打撃団がイランに攻撃されたら、どう動くのだろうか?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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創刊5周年〈原発なき社会〉を目指して 『NO NUKES voice』20号 発売中!【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ

日本は多言語社会になりうるか?──言語とメディアリテラシー(前編)

最近は外国からの移住者が増え、教育の現場でも外国にルーツを持つ児童が増えてきたし、地域によっては横浜のいちょう団地のように住民の4分の1が外国籍というところも出てきた。ここまで来ると、日本語だけわかればよいという状況ではもはや対応できない。

日本では言語教育については、ほとんど英語と日本語の2つだけについてしか論じられない。「グローバル化の急速な進展に伴い英語は必須」「国語力がしっかりしないとどっちもつかずになる」といった賛否両論がある。私にはこれらの類の議論には、メディアリテラシーを高めるためだという観点が決定的に欠けているように思えてならない。


◎[参考動画]10ヵ国の児童が学ぶ 驚きの多国籍小学校(SUMIYA Spa & Hotel 2019/1/13公開)

日本語で「韓国人 ムスリム」と検索した様子

◆言語とメディアリテラシー

そもそもなぜ外国語を学ぶのかというと、海外との接点を持ちそこから情報を集め、視野を広めるためである。英語はあくまでそのためのツールにすぎず、より本質を突き詰めると「他の言語を使いこなしそれによって多角的に物事を俯瞰できる」能力が重要になる。

言語が異なると同じテーマであっても、発信情報はかなり異なってくる。韓国について日本語で検索するとネガティブな内容が多い。例えば、Googleで「韓国人 ムスリム」と検索すると韓国人によるムスリムへの差別的な行為などがヒットする。韓国は悪い国だと言いたい内容が多い。

しかし、英語で「korean muslim」と検索すると韓国人の改宗者の話などがヒットする。中立的な立場から韓国におけるムスリムの状況が書かれている。同じことでも言葉が異なると、検索結果も異なるのである。これが日本語や英語だけではなく、中国語やフランス語などの検索結果なども含めると様々な視点を得ることができよう。

英語で「korean muslim」と検索した様子

(余談だが、日本人が想像している以上に韓国の国際的な評価は高いと思われる。あるチュニジア人女性と話した時に韓国について聞くと、アラブ世界では韓国は「礼儀正しい国」「イノベーションの国」と認知されているという。また韓国ドラマも多数アラビア語に翻訳され、チュニジアでも放送されているとのことであった。私たちはアラブ世界やヨーロッパといった第三者の観点から韓国を見ることが重要なのかもしれない)

日本語は日常生活から高度な学問用語まで網羅しており、日本で暮らすにあたっては日本語しか理解できなくてもビルの清掃員やバーテンダー、プログラマーや大学教授、ペットショップの従業員に至るまで様々な職に就くことが可能である。しかしメディアリテラシーの観点から考えると、日本語しかわからないということは極めて致命的なことである。

そもそも日本語を公用語している国は日本だけである。そのため、日本語で発信された情報の圧倒的多数は日本発になる。それは日本一国からの視点に偏りがちになる。英語ならば公用語とする国は米英の他にシンガポール、ケニア、フィジーと数多く、よって英語で発信された情報は様々な国からの視点を持つ。スペイン語にしても公用語とする国は、メキシコ、アルゼンチン、赤道ギニアなど数多く、やはりスペイン語で発信された情報も多くの視点を備えている。多くの日本人は日本語しか理解できないため、ネットで情報収集する時も日本語で検索しがちである。その結果、日本的視点でフィルタリングされた情報ばかりを取得することになる。

過去に話したことのあるシンガポールからの帰国学生の意見によると、日本政府は「日本人が海外の情報を閲覧しないように英語能力をあえて低くしているのではないか」とのことであった。真偽はともかく、これは政府にとっては極めて都合がよいことである。日本語しか理解できないゆえに国民が「自発的」に日本から発信された情報しか見ないとすれば、中国のようなファシズム大国のようにわざわざ高度な検閲システムを構築しなくてもすむからである。(つづく)

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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《殺人事件秘話18》ロボトミー殺人事件の犯人、老後の悲惨な獄中生活

刑務所の老人ホーム化が進んでいると言われる。ある報道によると、20年前に比べ、65歳以上の検挙者数は4倍以上となり、今や全国の刑務所の被収容者は5人に1人が60歳以上なのだという。

かくいう私もそういう現実に直面し、複雑な思いにとらわれたことがある。今から40年前に起きた「ロボトミー殺人事件」の犯人の“その後”を取材した時のことだ。

◆ロボトミー手術により人生が暗転

ロボトミー手術とは、昔行われていた精神外科の手術で、日本では主に統合失調症の患者に行われてきた。しかし、脳の前頭葉を切除するなど危険性が高く、てんかんや無気力などの重大な副作用を引き起こすため、現在は行われなくなっている。

桜庭章司が都内の病院で、このロボトミー手術を無断で施されたのは1964年11月のことだった。当時30代半ばだった桜庭は、著述業者として活躍していた男だが、粗暴な性格で、何度も暴力事件を起こしていたという。そして精神鑑定の結果、措置入院することになったのだが、病院が当初行った精神療法は効果が上がらなかった。そのため、病院側は桜庭の母親の同意を得て、ロボトミー手術を行ったのだという。

ところが、手術以降、桜庭は原稿の執筆ができない状態に陥った。そればかりか、手術の後遺症により通常の社会生活すら営めなくなり、職も住まいも転々とし、人生に絶望するに至る。そして1979年9月、執刀医を殺害して自分も死のうと決意し、執刀医の自宅に押し入った。しかし、執刀医は不在だったため、その妻と義母を刺殺。裁判では、無期懲役判決を受けたのだった。

◆文字の大半が判読不能の手紙

私がそんな桜庭に関心を抱いたのは、2013年の夏頃だ。昔の事件について調べていたところ、宮城刑務所で服役中の桜庭が特異な国家賠償請求訴訟を起こしていたのを知ったのだ。

「体調不良で生きていても仕方がないにも関わらず、自殺する権利が認められずに精神的苦痛を被った」

桜庭はそう訴え、国に160万円の支払いなどを求めているとのことだった。

そこで、私は桜庭の現状を知りたく思い、取材依頼の手紙を出したのだが、返事はいっこうに届かなかった。だが、それから2年ほど過ぎた2015年の暮れ、別の取材で宮城刑務所を訪ねた折、売店から桜庭に封筒や便箋を差し入れたところ、意外な反応があった。桜庭から文字の大半が判読不能の手紙が届いたのだ。

文字の大半が判読不能な桜庭の手紙

便せん7枚の手紙から、かろうじて読めた文字をここに書き起こしてみよう。

「片岡健様」
「拝復」
「暗号的ナ文字トナリ」
「宜シク お願イイタシマス」
「お手紙ニアリ」
「以前ニ一度」
「正シクハ二度」
「片岡様カラノ 二回ニワタリ」

このようにかろうじて読める言葉だけを見ても、桜庭の手紙は伝えたいことがほとんどわからない。高齢に加え、おそらくロボトミー手術の後遺症も悪化したのだろう。この時点で80代後半の年齢になっていた桜庭は、生きているだけでも大変なほどの体調不良で、だからこそ自殺を希望するのだろうと思われた。

桜庭が服役していた宮城刑務所

◆返送されてきた年賀状

私は、その後も何度か桜庭に手紙を出してみたが、結局、2度と返事は届かなかった。そして2017年の正月明け、私が桜庭に出した年賀状が「あて所に尋ねあたりません」と返送されてきた。これはつまり、桜庭はもう宮城刑務所にいない、ということだ。

桜庭は、医療刑務所などに移されたのだろうか。それとも、ついに獄中で人生を終えたのだろうか。いずれにしても、老人ホーム化した全国各地の刑務所でも、桜庭ほど悲惨な老後を過ごした受刑者はそんなに多くはいないだろう。

桜庭とは直接対話できなかったが、これまで私が取材した様々な殺人犯の中でも、そういう事情から桜庭はとくに印象深い人物の1人だ。

なお、例の国家賠償請求訴訟は桜庭の敗訴に終わっている。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。新刊『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)が発売中。

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「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

見当ちがいの年金改革 在職老齢年金制度(減額制度)の見直しとは? 

厚生労働省は、給与のある高齢者にたいする「在職老齢年金制度」の廃止・縮小を検討する方針を決めた。給与を得ている年金対象者が、年金を減額されることから、働かなくなるのを防止するための措置である。

具体的に、現状の制度をみてゆこう。60歳以降で給与と年金の合計が28万円を超えると、超過分の半額を年金から差し引くことになる。たとえば給与が20万円で年金が14万円の人の場合、34万円-28万円=6万円÷2=3万円。つまり3万円が年金から差し引かれ、手取りは28万円+3万円で、収入31万円ということになる。だったら、給与を17万円に抑えようということになるかもしれないが、この程度なら気にすることもないはずだ。

給与が35万円、年金が25万円の場合はどうだろう? 35万円+25万円で60万円の収入がある人は、60万円-28万円=32万円÷2=16万円で、収入が44万円ということになるはすだが、そうではない。現行制度では60歳以上で47万円を超える場合は、超過分の全額が差し引かれるので、60万円-47万円=13万円(超過分)で、60万円-13万円となり、収入47万円ということになる。60万円が47万円になるのだから、35万円も稼がずに22万円でいいや、となるかもしれないのだ。ちなみに、65歳以上は47万円から半分減額である。減額されるのなら、仕事を辞めようと思うかもしれない。

◆5人に1人の「減税」措置

そこで減額制度の廃止・縮小をとなってきたわけだが、これは実態をかけ離れているのではないだろうか。60歳以上64歳までで現行制度の対象になっているのは約88万人、65歳以上では36万人である。人口比では、ほぼ五分の一と考えていいだろう。つまり5人に1人のための減税措置なのだ。思わず減税措置と書いてしまったが、年金を減額しないということは年金拠出の増加である。その年金が税収から捻出せざるをえない将来を考えると、これは明らかに高額所得層への「特定減税」であろう。そしてこの年金減額分の見直しでは、1兆円の拠出が見込まれているという。将来世代の年金の食いつぶしである。

考えてもみてほしい。ふつうのサラリーマンは定年後、企業に嘱託として残る道しかない。現役時代に額面40万円だった給与は20万前後に減額され、諸手当も出なくなる。いや、いまどき額面40万円というのは大手企業、および大手の傘下にある中堅企業であろう。中小零細のサラリーマン・労働者は年収300万すなわち25万前後の給与がふつうではないか。いや、40歳代のロストジェネレーション世代においては、時給1000円すなわち年収200万弱、月額給与15万円がいいところではないだろうか。つまり年金改革は社会のうわずみの人々を対象にしたものにすぎないのだ。

◆年金制度は国が補償せよ

現行の年金制度では、定年後2000万円が別途に必要になると政府は言う。国は面倒をみきれないから、若いころから投資運用などで蓄財をはかれというのだ。失敗つづきの年金基金の株式運用を真似ろというのだろうか。蓄財をはかれという方針自体、消費の低下をうながす経済政策にほかならない。物価は徐々に上がっている。しかるに給与は企業の内部留保(400兆円)によって抑えられたままだ。これで景気が良くなるはずはないのだ。

われわれ国民は、破綻に瀕している年金制度を「保証」せよとはもう言わない。国民の生活を年金で「補償」しろと言っているのだ。なぜならば、政府はそれ自体、そもそも国民の税金で成り立っているのだ。政治家はもとより、省庁の官僚・職員・自治体職員は、国民への公共サービス産業の従業員なのである。税収が途絶えれば、即座に食い扶持をうしなう公共サービスの役人・政治家たちが高給を取りながら、働き手である国民の年金の増減を操る構造こそ、おかしなものではないか。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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NKBフェザー級王座決定戦で髙橋亮がNKB2階級制覇! PRIMA GOLD杯決勝戦は10月12日、田村聖vs清水武戦に決定!

左ミドルキックを繰り出す高橋亮
左ローキックをヒットさせる高橋亮、上下の打ち分けが上手い

◎出陣シリーズvol.4 / 6月15日(土)後楽園ホール 17:15~21:20 
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第14試合 メインイベント 第16代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

NKBフェザー級1位.ひろあき(=安田浩昭/プラスα/57.0kg)
   VS
NKBフェザー級3位.髙橋亮(真門/57.0kg)
勝者:高橋亮 / 判定0-3 / 主審:前田仁
副審:竹村光一47-50. 鈴木義和46-50. 佐藤友章46-50

ハイキックは狙い過ぎたが、圧力掛け続けた高橋亮

蹴りの鋭さや試合運びは高橋亮が上手だが、ひろあきは強い右クロスカウンターがあり、一発当たればそれだけで勝利を導く怖さがある。高橋三男・聖人との初戦(2017年12月16日)はこれで倒したこともあり、緊張感ある対峙となった。

ひろあきの強打を警戒しつつも、高橋亮もパンチの強打は無くても的確さは十分あり、先に当たるジャブやストレート、当たれば痛そうな素早いローキック、ミドルキックが炸裂。ひろあきは左瞼が腫れ、鼻血を出すほど高橋亮のパンチがコツコツ当たっていた。

第4ラウンド、高橋亮は一発KOを狙うハイキックを出すのはちょっと早過ぎたか、聖人との2戦目(2018年6月16日)で倒されたハイキックが教訓となっていたひろあきにはヒットしても浅く、ノックアウトには結び付けられなかった。やや不完全燃焼となるも、各ラウンドを抑えた大差判定勝利で王座獲得。高橋亮は「倒す技は幾つも考えていた」と言うが、「力み過ぎました」と反省点を述べていた。

パンチでも負けてはいない左ストレートを打ち込む高橋亮
左ヒジ打ちを打ち込む高橋亮、細かい技が冴える

◆第13試合 PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント準決勝3回戦

右ストレートカウンターで今野を倒すイレズミの田村聖

NKBミドル級1位.田村聖(前・C/拳心館/72.2kg)
   VS
ジャパンキック協会ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.5kg)
勝者:田村聖 / KO 2R 2:24 / テンカウント / 主審:佐藤友章

トーナメント初戦(4月13日/準々決勝)で、吉野健太郎をKOした田村聖。井原浩之をヒジ打ちでカットし、ダウンを奪う判定勝利した今野顕彰。

距離を取った蹴りとパンチを打ち込むタイミングは今野が先手を打つペースで始まるも、田村が一気に距離を詰めパンチを打ち込むと今野はやや貰って効いてしまい、ロープ際へフラつくように下がってしまう。

これで出難くなった今野、第2ラウンドにはパンチの交錯が見られるも、田村のパンチで切られたか、今野の左目尻から出血。終始冷静に距離を見計らっていたのは田村。今野の右ストレートで出るところへ逆に右ストレートをカウンターで打ち込んだ田村がノックアウトで倒し切った。

あっさり倒した田村聖と見上げる今野顕彰
決勝戦は清水武vs田村聖に決定

◆第12試合 PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント準決勝3回戦

清水武の左ローキックが小原俊之にヒット

清水武(元・WPMF日本SW級C/sbm TVT KICK LAB/72.5kg)
   VS
J-NETWORKミドル級3位.小原俊之(キングムエ/72.25kg)
勝者:清水武 / ヒジ打ちによる瞼のカットでドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:鈴木義和

トーナメント初戦(準々決勝)、郷野聡寛をヒジ打ちで終わらせた清水武。西村清吾を左縦ヒジ打ちでノックダウンを奪取し終わらせた小原俊之。

第1ラウンドはローキック中心に静かな展開からパンチに繋ぐ交錯が続き、第2ラウンドに、清水がここでもヒジ打ちで小原の右眉尻辺りと額をカット、2ヶ所とも傷は小さいが、第2ラウンドに入っての打ち合いで清水のパンチとヒジ打ちが何度か小原の顔面をかすめていたが、今度はヒジ打ちで右目瞼を深く切り、これがストップの直接的原因となって試合を終わらせた。

やがて接近戦になり、清水武のパンチが当たりだす

◆第11試合 64.0kg契約3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/63.85kg)
   VS
セーンアーティット・ワイズディー(タイ/63.6kg)
勝者:セーンアーティット / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:佐藤28-30. 鈴木28-30. 前田28-30

(セーンアーティットはフェザー級で元・ルンピニー系6位、元・ラジャダムナン系5位)

棚橋はローキックのけん制から強打を狙っていくが、セーンアーティットが柔軟なかわしと距離感を上手く利用したキレ味ある蹴りとヒジ打ちの返し技で大きく上回る判定勝利。

棚橋のパンチは貰わず、ムエタイ技が冴えるセーンアーティット

◆第10試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/66.6kg)vs蛇鬼将矢(テツ/66.3kg)
引分け 0-1 / 主審:前田仁
副審:佐藤29-29. 鈴木29-29. 竹村28-29

◆第9試合 55.0kg契約3回戦

NKBバンタム級2位.高嶺幸良(真門/54.6kg)
     VS
NJKFバンタム級6位.鰤鰤左衛門(CORE/54.5kg)
勝者:鰤鰤左衛門 / 判定1-2 / 主審:竹村光一
副審:佐藤29-30. 前田30-29. 鈴木29-30

◆第8試合 スーパーライト級3回戦

NKBライト級3位.野村怜央(TEAM-KOK/63.4kg)
   VS
ジャパンキック協会ライト級7位.大月慎也(治政館/63.15kg)
勝者:大月慎也 / 判定0-3 / 主審:鈴木義和
副審:佐藤27-30. 前田27-30. 竹村27-30

◆第7試合 バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ/53.45kg)vs TOMO(K-CRONY/53.52kg)
勝者:TOMO / 判定0-2 / 主審:佐藤友章
副審:前田29-29. 鈴木28-29. 竹村28-29

◆第6試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制

TAMA(ReBORN経堂/51.9kg)vs sasori(テツ/52.16kg)
勝者:sasori / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:前田25-30. 鈴木25-30. 佐藤25-30

◆第5試合 フライ級3回戦

山野英慶(市原/51.06kg)vs則武知宏(テツ/50.8kg)
勝者:則武知宏 / TKO 3R 1:48 / レフェリーストップ
主審:鈴木義和
山野英慶はリミット超オーバーウェイトにより減点1

◆第4試合 フェザー級3回戦

森田勇志(真門/56.4kg)vs渉生(アント/57.15kg)
勝者:森田勇志 / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:鈴木30-28. 竹村29-28. 佐藤30-28

◆第3試合 フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ/57.1kg)vs藤平泰地(花澤/56.1kg)
引分け 0-1 / 主審:佐藤友章
副審:鈴木28-28. 竹村28-29. 前田28-28

◆第2試合 バンタム級3回戦

五嶋龍太郎(真門/52.9kg)vs剣汰(アウルスポーツ/53.52kg)
勝者:五嶋龍太郎 / TKO 2R 2:39 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

◆第1試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM-KOK/61.1kg)vs哲太(Team S.A.C/60.6kg)
勝者:哲太 / 判定0-3 / 主審:前田仁
副審:佐藤24-30. 竹村24-30. 鈴木24-30

バンタム級に続き、フェザー級を制覇した高橋亮。次は兄が持つライト級王座?

《取材戦記》

高橋三男・聖人が返上したNKBフェザー級王座を次男・亮が獲得し、いずれはライト級も目指し3階級制覇すると言う。現在、ライト級は長男・一眞が王座に君臨する

「三兄弟でリーグ戦やれよ!」という身内間のジョークには3人とも笑って否定したが、兄弟対決は本当はやるべきではない。だが、王座の譲り合いとなる返上も望ましくはない。

他団体に見られる、“後輩に道を譲る”という選択肢が幾度かありましたが、個人競技たるもの、同門であっても上がってくる後輩は本来、返り討ちにすべきもの。下克上が起こればそれは世代交代の時。一概に選手を攻められず、本人の意思に関係なく、返上させられたという話も聞くが、王座たる頂点をビジネス優先に進め、好カードの面白さを奪ってはならないだろう。

PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメントは10月12日に決勝戦を迎えます。この4ヶ月の期間が空くのは勿体無いところ。調整試合でも挟めそうなほど間が空くが、他のイベントの陰に隠れ、ファンが忘れそうになるほど熱が冷めないことを願いたい。

高橋兄弟2人のチャンピオンがそれぞれ王座を防衛し続けたら、現在無冠の三男・聖人はどうなるか。まさかウェルター級王座を狙うなんてことは有り得ないが、「KNOCK OUT」をはじめとする国内ビッグイベントに進出するでしょうか。

仮に、ライト級辺りでPRIMA GOLD杯トーナメントが大人数参加で行なえば盛り上がることでしょう。それこそ兄弟対決もトーナメント制なら仕方無いところです。

出陣シリーズvol.5は9月29日(日)大阪・すみのえ舞昆ホールに於いて開催。出陣シリーズvol.6は10月12日(土)後楽園ホールに於いて開催。出陣シリーズvol.7(ファイナル)は12月14日(土)後楽園ホールに於いて開催されます。

数年前から交流戦で盛り上がって来た日本キックボクシング連盟とNKB、高橋三兄弟をメインに何が行なわれるでしょうか。

PRIMA GOLD杯トーナメントに登場したラウンドガール

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
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