5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」で前田朗東京造形大学教授への苦言と、この内容で送った手紙に対して、当の前田教授よりご丁寧な返信がありました。公開の形になっていますので、私もこれに対する再私見を公開書簡の形でアップさせていただきます。急いで書き上げましたので誤認や誤読の箇所もあるやもしれませんが、その際はご容赦ください。これが実りある議論になれば幸いです。(松岡)

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前田 朗 先生

冠省 長文のお答えをいただき、感謝にたえません。差別問題に対する前田先生のこれまでの取り組みの数々には深く敬意を示すものでございます。
 
ご返答いただいた回答ですが、前田先生は肝心の「リンチ事件裁判」の判決について、大変な誤解をなさっています。先生は、

〈しかし、刑事事件としては、実行犯は一人とされて、判決が確定しました。民事事件としても、同様の結論になったと言えます。「リンチ事件」という言葉が、複数犯によるリンチを指すとすれば、リンチ事件はなかったことになります。李信恵さんについて言えば、共謀はなかったし、不法行為もなかったことが裁判上確定しました〉

と勘違いなさっていますが、刑事事件も民事訴訟も実行犯は2人(単独ではない)との判断が出ています。したがって先生が前提とされる「複数犯によるリンチを指すとすれば」の前提に立っても、「リンチ事件はなかったことになります」は完全なる間違いであり、「複数犯によるリンチを指すとすれば、リンチ事件は刑事・民事であったことが確定しました」でなければなりません。この点、事実関係は非常に重要ですから、強調して、先生の誤解を指摘させていただきます。先生の定義に沿った「リンチ事件」は存在したと刑事・民事(現在上告中)でも判断されている点は、認識を改めていただきますよう、強く要請いたします。

ちなみに、リンチとは「法によらない私的制裁。私刑」(広辞苑第七版)で、複数の者によらなければならないわけではありませんが、M君リンチ事件は、5人で深夜にM君を呼び出し、M君に対する「私刑」ですからリンチです。李信恵氏自身が供述しているように「日本酒にして一升」ほどの酒を飲み酩酊状態で集団暴行を行ったのですから、そこに同座した5人全員に〈連帯責任〉があり、また師走の寒空の下に重傷でのた打ち回っている被害者M君を放置し立ち去ったことを、先生は人間としてどう思われますか? このことだけを見ても、李信恵氏らの言う「人権」が偽物だということが判ります。

リンチ直後に李信恵氏が出した「謝罪文」の1ページ目。のちに撤回。少なくともこの「謝罪文」に立ち返るべきだ。

リンチ直後に出された辛淑玉文書の1ページ目。なぜか、のちにみずから否定する。

また、先生は「共謀はなかったし、不法行為もなかったことが裁判上確定しました」とも仰っています。「裁判上確定したから…」云々で言えば、冤罪で闘っている方々は救われません。裁判官も人間ですから〈誤判〉もあるでしょう。先生もお聴きになりご覧になったであろう、リンチの最中の音声データやリンチ直後の被害者M君の顔写真という動かぬ証拠があるのに「共謀はなかったし、不法行為もなかった」とは子供騙しの物言いです。冤罪とは、罪のない人が権力の策謀で罪を押し付けられることですが、このリンチ事件では逆で、実際にリンチの場にいた5人(その中の1人は格闘技の達人)でM君に暴力を行使し重傷を負わせたことは否定できない事実です。これが裁判所で認められないのは、いわば“逆冤罪”といえるでしょう。『救援』は半世紀にわたり、権力からの弾圧と闘ってきた「救援連絡センター」の機関紙です。その運営委員で、連載を担当されている、前田先生に「冤罪」「誤判」の話を持ち出すのはためらわれますが、「裁判上確定したから…」とのご判断には、首肯しかねます。

また先生は「松岡さんが裁判所の認定を批判するのはもちろん自由ですが、その理屈を李信恵さんに差し向けるのは不適切です」とご注意いただいておりますが、私たち鹿砦社が李信恵氏と係争関係になっているのは、李信恵氏が一方的に、鹿砦社に対して、容認できない汚い言葉での攻撃をツイッターで続けてきたからです。誹謗中傷、罵詈雑言を「差し向け」てきたのは李信恵氏ですよ。先生も『救援』記事以降、ある人から30件ほどの罵詈雑言を受けたとのこと、罵詈雑言メールは他にもあるでしょうから合計すれば多数にわたるでしょう。それらのメールなりツイッターの詳しい内容は分かりませんが、おそらく李信恵氏らにつながる「カウンター」関係者と推察します。同様の罵詈雑言を私たち鹿砦社も受けているのです。

幾度となく述べていますが、李信恵氏とは付き合いもなく(顔を見たのはリンチ裁判での本人尋問の時1回だけです)、よって私怨や私恨もございませんが、「リンチ裁判」の途中から李信恵氏は、鹿砦社や代表の私を攻撃(攻撃というより罵倒に近いでしょう)するツイートを重ねてきました。出版社としての業務にも支障が生じるほどの内容でしたので、代理人を通じ「そのようなことはやめるように」と「通知書」を送りましたが、それでも李信恵氏の鹿砦社罵倒は、やまなかったため、仕方なく提訴した次第です。

先生の文章では、この経緯をご存知ないように拝察いたしましたので、重要なプロセス故、事実関係とこの推移をご説明させていただきました。私たちがあたかも李信恵氏だけにこだわって「批判」を続けているように誤解なさっているようですが、そうではありません。また先生は以下のように述べられています。

〈『救援』記事に対して、松岡さんとは全く逆の立場から、私を非難してきた人物が数名います。中には私を「敵」として非難し、「おまえのような馬鹿はもう相手にしない」と罵倒する絶縁メールを30回も送りつけてきた人物がいます。返事は出していません。この種の人物に返事を出しても時間の無駄です。ただ、ここで紹介したのは、この人物と松岡さんには一つ共通点があるからです。それは「敵/味方」関係で物事を考えていることです〉

 

李信恵氏らの代理人である神原元弁護士による鹿砦社と支援者らに対するツイートの一例

このご指摘はまったく失当です。私並びに特別取材班は、「正義の味方」と「敵」を峻別しようなどと微塵も考えていません。ただ実直に「リンチ事件」についてどう考えるか?を事件に直接ではないものの、「隠蔽」や「二次加害」で関わった可能性のある方々(そのほとんどは「可能性」ではなく濃淡はありますが、実際に手を染めておられました)に「これでも『リンチ事件』がなかったというのですか?」「あなたは隠蔽に加担して心が痛まないのですか?」と尋ねているにすぎません。

また、事件の加害者と、組織的隠蔽に加担した者は、程度に差がありこそすれ人道上の〈罪〉や〈連帯責任〉がある、と私は考えます。ですから「事件隠蔽」に関わって素知らぬ顔をしている人々を私たちは、まったく信用することができません。この点では事件の加害者、その代理人である神原元弁護士をはじめとする、隠蔽加担者。あるいは被害者に対する二次加害加担者を批判するのは当然ではないでしょうか。「敵/味方」関係で物事を考えているとのご指摘は的を射ていません。私たちは「事実に忠実か、そうでないか」で人物の評価を行っています。誤解なさいませぬように。

次いで、先生はこうも述べておられます。

〈私はもともと「敵/味方」関係で考えていません。上記のように、反差別と反ヘイトの研究と活動の仲間たちですから、その行動に疑問があると指摘しましたが、敵対関係ではありません。「敵」がいるとすれば、それは差別する権力、差別させる権力、差別を利用する権力です〉

このご意見には大賛成です。ですから、権力が恣意的な運用を図るきっかけを与えた、「ヘイトスピーチ対策法」を私たちは、まったく評価しません。ここは、先生のお立場と全面的に異なる点です。が、この問題は冷静に先生と議論させていただく機会があれば、実のある議論が展開できるのではないかと存じます。

しかし、以下のご指摘はまったく承服しかねます。

〈松岡さんがあくまでも自説に固執して、従来と同じ発言を繰り返し、李信恵さんを非難し、関係者を非難し続けることは、今や不適切なことと言わざるをえません。李信恵さんは、在特会や保守速報による異様なヘイト攻撃に立ち向かい、闘い続けました。在日朝鮮人というマイノリティが猛烈な差別を受け、同時に女性差別を受けながら、ついには裁判所に「複合差別」認定させました。このことの積極的意義を私たちは認め、李信恵さんの闘いに敬意を表すべきではないでしょうか〉

李信恵氏が裁判所に「複合差別」を認めさせたことを評価なさるのであれば、同じ大阪地裁で記者会見を申し入れるも一切無視され(記者会見を開かせてもらえず)大阪司法記者クラブにより、完全に「事件」をなきものにされた、「リンチ被害者」M君への“複合重層差別”を先生は度外視なさるのでしょうか?この事件を論じるにあたり、まず先生は基礎的事象について正しく理解されていません(刑事・民事とも「リンチ」は認定されていることなど)。したがって先生のご見解は事実をお知りになれば大きく、根本的に変化するのが自然であろうと思慮いたします。先生は、お送りしたリンチ関連本5冊をどれほど深く読まれているのでしょうか? 深く読まれたので『救援』での2度の論評を書かれたものと推察しておりましたが……。「複合差別」との闘いが大変であるとすれば“複合重層差別”との闘いがさらに困難で、厳しいものかはご想像に難くないはずです。

 

リンチの現場にいた伊藤大介氏の恫喝メール。とても、「反差別」や「人権」を語る者の言葉ではない。

話は前後しますが、私は「自説に固執」などしていません。誤りがあれば潔く認めます。これも幾度となく公言していますが、私は自分にも他人にも「私たちは正しいのか?」と常に問い返してきました。この問題への私たちの関わりが、これだけ激しいリンチを受け、さらにはかつての仲間らから村八分(これは差別ですよね?)された被害者を前にして人間として見て見ぬ振りはできませんでした。支援を始めてからも、しばらくは半信半疑のところはありましたが、取材や調査を重ね、リンチがあったのは事実で、被害者への正当な補償もなされておらず、逆にネット上でセカンド・リンチを受ける理不尽に不条理を覚えました。ネットでの誹謗中傷は私たちにも及び過熱化する兆しがありましたので、M君は、先頭に立ってネット・リンチを行っていた野間易通氏を名誉毀損で提訴し、また鹿砦社も李信恵氏を提訴し、どちらも野間氏、李信恵氏の不法行為が認められ勝訴しています。

また私は、李信恵氏らがいったんM君に渡した「謝罪文」に立ち返り真摯に謝罪するのであれば和解に向けて汗を流すことも厭わないとも何度も述べています。なのに、開き直っているのは李信恵氏らではないでしょうか? 李信恵氏の代理人の一人、神原元弁護士は「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」などと私たちを罵っています。私たちは素朴かつ愚直に被害者支援と真相究明に関わったにすぎず、トンデモない物言いです。

ちなみに、私は40数年前の学生時代にノンセクトの学生運動に関わったことはありますが、そんな私以外には、M君は勿論、社内、取材班、支援会に左翼運動の経験者は誰もいません。

ところで、昨年公開されてから何度かコメントしましたが、先生の「出版記念会」に名がありましたので、5月27日付け「デジタル鹿砦社通信」で、あらためて採り挙げた師岡康子弁護士が金展克氏に宛てて送ったメール、俗にいう「師岡メール」について、先生はどう思われるか、ぜひご意見を伺いたく存じます。師岡弁護士には以前に取材の電話を差し上げたところ、けんもほろろに切られましたが、被害者の人権もなにもあったものではありません。こんなメールを送る人がいくら「マイノリティの人権」だとか言っても私は信用しません。

先生のご主張には、『救援』での論評から「豹変」したと感じることが少なからずございました。たびたび引用させていただきますが、『救援』では李信恵氏に対し、
「反差別・反ヘイトの闘いと本件(注:リンチ事件)においてC(注:李信恵氏)を擁護することはできない」
「しかし、仲間だからと言って暴力を容認することは、反差別・反ヘイト運動の自壊につながりかねない。本書が指摘するように、今からでも遅くない。背筋を正して事実と責任に向きあうべきである」
と述べられ、さらに「被告C(李信恵氏)」の人格については、
「長時間に及ぶ一方的な暴力の現場に居ながら、暴力を止めることも立ち去ることもせず、それどころか『顔面は、赤く腫れ上がり、出血していた』原告(引用者注:M君のこと)に対して『まあ、殺されるなら入ったらいいんちゃう』と恫喝したのがCである。唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なうものである」
と断罪されました。さらに上瀧浩子弁護士らに対しては、
「被告らの弁護人には知り合いが多い。かねてより敬愛してきた弁護士たちであるが、彼らはいったい何のために何をやってきたのか。(中略)あまりに情けないという自覚を有しているだろうか。差別と暴力に反対し、人権侵害を許さない職業倫理をどう考えるのか」
と述べられています。今でも至言だと思っています。

言いたいことが山とあり、脈絡のない手紙となりましたが、何卒ご容赦ください。
先生のますますのご活躍をお祈り申し上げ擱筆いたします。      早々

[参照記事]
松岡利康【カウンター大学院生リンチ事件】前田朗教授の豹変(=コペルニクス的転換)に苦言を呈する!(2019年5月23日デジタル鹿砦社通信)
前田朗東京造形大学教授「鹿砦社・松岡利康さんへの返信」(2019年5月26日前田朗Blog)
鹿砦社特別取材班【カウンター大学院生リンチ事件】カウンター/しばき隊の理論的支柱・師岡康子弁護士による犯罪的言動を批判する! 前田朗教授に良心があるのなら、師岡のような輩と一緒に行動してはいけない!(2019年5月27日デジタル鹿砦社通信)

 

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