中高年はなぜ、グーグルのイングレス(Ingress)にはまってしまうのか?

ゲームというと、深夜、薄暗い部屋でパソコンやテレビ画面に向かってコントローラーを操作する印象がある。引きこもり、ニートなどと言う言葉を思い浮かべる方もいるだろう。

だが、そんな常識をくつがえすゲームが登場し、若者から中年にかけて、幅広く人気を獲得している。2013年にGoogle社が発表したスマートホン用ゲームIngress(イングレス)だ。

◆リアルな世界をスマホで遊ぶ

イングレスは基本的にはリアル陣取りゲームである。プレイヤーはゲーム内でエージェントと呼ばれ青(レジスタンス)と、緑(エンライテンド)のどちらかのグループに分かれて(登録時に選択できる)陣地を取りあうのである。

陣地はゲーム機上に設定されているわけではない。実在のリアルな世界だ。

ポータルそのものは駅前にあるモニュメントであるとか、神社仏閣であったりする。陣地を取るための基本動作はランドマーク(ポータル)まで出かけていって、そこを確保(ハック)する。三つのポータルを確保してリンクを張るとその内側が青なり緑のフィールドになる。ポータルの場所はプレイヤーのもつスマホ上に表示されている。ユーザーはその場所に行って具体的には画面をタップするだけだ。たとえば、ハチ公とモヤイと109をリンクすれば渋谷駅前はあなたのフィールドになる。

我々が街を歩く時、風景は道や、樹木、建物の並ぶリアルな世界である。しかし、イングレスプレイヤーにとっては、建物にはリンクすべきポータルがそびえ、道は青と緑が交錯する支配すべきダンジョンになる。

プレイヤーが個人で新しくポータルを作って欲しいと申請もできる。スマホで写真を撮って運営に送るだけだ。当初、設置されたポータルは全世界で5000しかなかったが、現在では数十万の数に昇り、まだ増え続けている。また、プレイヤー数の増大にともない、グーグル社の負担も増え現在ではポータル申請に三ヶ月かかる情況だという。

ポータル側の事情もある。つまり、自分の店舗や、観光名所がポータルになれば人が呼べるのだ。グーグル社が日本で目を付けたのがコンビニエンスストアのローソンで、ローソンの店舗はすべてポータルである。ポータルを求めて街を歩くプレイヤーは自然、ローソンに立ち寄る。

◆ゲームで遊びながら健康になれる

観光誘致に利用したのが岩手県だ。昨年、岩手県がイングレスのイベントを開催した。参加者は50名ほどだったが、プレイヤーが岩手県内で多数のポータルを申請し、グーグル社側でも岩手県の申請を優先し、300のポータルが新設された。岩手にダンジョンが新設されたのだ。次は別のプレイヤーがポータルを求めて岩手にやってくる。岩手県庁では海岸部のポータルにやってくると、震災前の写真を受け取るようなサービスを開始して復興にも役立てようとしている。

岩手に限らない。画面上に名所が浮かび上がる。グーグルが提供しているから、当然地図つきだ。観光名所を探してガイドブック見る必要もない。スマホからポータルの情報、由来来歴を読み取ることもできる。しかも、この情況は海外に行っても同じだ。海外旅行に行って労せずして名所を見いだせる。プレイヤーにとっても、ポータル側にしても便利なゲームとなっている。

全世界対応であるため、国を超えてリンクが張られる。日本全土を押さえようと、八丈島、根室、長崎でリンクを結ぼうとしたが、グアムから攻撃があったという壮大な話もきく。海外旅行の楽しみも増える。

しかし、イングレスの基本的な動作はポータル巡りであり、プレイヤーはまずは自宅近くから初めて、次第に遠くまでポータルを求めて歩き回る。自動車でポータルを訪れることもできるが、一旦駐車してスマホを操作する必要があるので、歩いた方が有利だ。また、電車の中からハックもできない。スマホの操作が間に合わないからだ。ポータルが公園内や、建物の敷地にあることもある。

やはり、歩く必要がある。イングレスを始めた結果、それまでのバス通勤を徒歩に変え、通勤途上でハックする。いつもと違う道を歩いてみる、休日には遠方のポータルまで出かけてみる、など非常に活発に出歩くようになる。一日に五キロ十キロ歩くようになり、メダボが解消したとか、ダイエットに効果があったという話しすらある。ゲームで遊びながら健康になれるのなら、言うことはない。

しかも、完全無料である。グーグル社側では営利企業が申請する際に料金を徴収しているようだが、ユーザーには無関係だ。

イングレスのダウンロード数は全世界で1000万。しかもまだまだ増え続けている。

▼青山智樹(作家、軍事評論家)
1960年生まれ。作家、軍事評論家。著書「原潜伊六〇二浮上せり」「ストライクファイター」等多数。航空機自家用単発免許、銃砲刀剣類所持許可、保有。
HP=小説家:青山智樹の仕事部屋 http://www.din.or.jp/~aoyama/

◎輸入できても国産化はアメリカに阻止される日本の「無人戦闘機」導入計画
◎《未来小説》イスラム国日本潜入!「ISIL VS 自衛隊」もし戦わば…[前編]
◎《未来小説》イスラム国日本潜入!「ISIL VS 自衛隊」もし戦わば…[後編]

『紙の爆弾』!同時多発で炸裂発売中!

中原徹の越権と橋下徹の無法──憲法軽視の弁護士上がりが大阪を壊す

本コラムで先に取り上げた大阪教育長で「パワハラ」が認定された中原徹 が辞任した。知事の松井が「辞職の必要はない」と「パワハラ擁護」を展開していたが、4月の統一地方選挙を忖度したのか、あるいは「引導」が渡されたのか中原は辞任した。

そもそも中原は公立高校校長として「憲法」(21条:「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」)を踏み倒す学校行事での「君が代」唱の際に、教員が歌っているかどうか口元を調査するような人間だったので、「パワハラ」を起こすこと自体に驚きは全くなかった。むしろ人格的には「当たり前のことをしでかした」といっていいだろう。弁護士でありながら憲法を無視する行為を平然と行い、それを橋下(当時知事)に「素晴らしいマネージメント」と褒められていたが、橋下の気まぐれな賛辞ほど無責任なものはないことはようやく世間でも認識が広まってきた。

日本は憲法を最高規範とする法治国家であるらしい(私はあまり信用していないけれども)。一定の権力を手に入れた法律の専門家である弁護士が行政に関わる際は自身の思想信条を施策として提起することは許されるだろうけれども、最低限常識的法律解釈から外れてはいけないのではないか。

◆支離滅裂に中原を擁護し続ける橋下の「往生際の悪さ」

橋下は中原の辞任に対して「本当に残念で仕方がない」と語っている。だが、あろうことかパワハラ行為については「反省すべき」だとは言及しているものの、被害者である大阪府教委職員に対して「全く言うことを聞かなかったと聞いている。とんでもない」と述べるにとどまらず、中原のハラスメントを審議した第三者委員会の報告書について、「でたらめだ。中原氏の発言が一切採用されていない、名誉にかかわるので思う存分言った方がいい。2年間で改革の道筋をつけてくれた」と全面的に中原擁護の姿勢を崩していない。二重の嫌がらせもいいところだ。橋下の無茶苦茶な言動を追っかけていると本当にきりがない。この男にあれこれ言葉を投げかけること自体が無駄だと思う。「バカは死ななきゃならない」という子供の言葉を思い出した。

だけれども、これが橋下の本性だ。

いいんですか、大阪市の皆さん? くどいと叱られるかもしれないが、こんな人間が中心となってぶち上げている「大阪都構想」の本質は前大阪市長平松邦夫氏が『紙の爆弾』3月号 に明らかにされている。

間近に控えた統一地方選挙で関西にはいくつもの改選議会がある。「維新」勢力に対しては徹底した異議申し立ての投票行動が期待される。

「往生際が悪い」という言葉を理解する格好の例が橋下の支離滅裂な中原擁護だが、それ以外にも橋下のお先棒を担いだ人間を忘れてはならない。

一応スタンスとしては「脱原発」を売り物にしていた飯田哲也を囲ってみたり、経産省出身の古賀茂明を子飼いにしようと試みたり。橋下は確かにテレビ受けする(しかも一見「良心派」と思われる)人物の登用にも抜け目はなかった。

◆橋下徹も中原徹も憲法を軽視する本末転倒な「弁護士」

一方、中央大学の野村修也、中原徹、そして本人橋下徹(大阪弁護士会で懲戒の経歴有)。いずれも弁護士だが些末な法律や条例を盾にとり人権を踏みにじっている。あらゆる法律の前提となる最高規範「憲法」をあまりにも軽視し過ぎる本末転倒弁護士連中だ。

国会議員に西村眞悟という男がいる。この男は行き掛かり上あちこちの党を渡り歩き現在は「次世代の党」の所属しているが、以前は民主党所属だった時期もある。西村は弁護士資格を持っていた。が民主党所属だった時期に「現行憲法でも日本は北朝鮮に宣戦布告をして叩きのめすことが出来る」と怒鳴りまくっていた。資金繰りに困ったためか「弁護士の名義貸し」を行い弁護士法違反で逮捕起訴され有罪が決定し弁護士資格は剥奪されている。

西村は堺の出身だ。現在堺市長は「反維新」だが大阪には理解しがたい感覚の「弁護士」や元弁護士が集まって来る。我々一般人は「弁護士」と言えば法律に詳しい特別職と思いがちだが、どうやらその枠から外れる人間も多数生息しているようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
◎恣意的に「危機」を煽る日本政府のご都合主義は在特会とよく似ている
◎福島原発事故忘れまじ──この国で続いている原子力「無法状態」下の日常
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」

統一地方選を前にエラー連発!空中分解寸前の自民党大阪府連!『紙の爆弾』4月号

 

川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化

さんざん報道されているので、ここでは殺害された川崎の中1、上村遼太さん(13)について「事件の概要」については省く。私が注目したいのは、この事件は、中心者や仲間、そして「仲間に引き入れる手法」、やたら弁護士をあてにする主犯、とにかく登場するキャラや筋書きが、関東連合を彷彿とさせることばかりだという点だ。

◆10代「半グレ」カラスの仕事が山のようにある多摩川沿い

つまり、これは「半グレ」が起こす典型的な事件だということ。事件が起きた川崎大師線沿いの半グレは、とにかく凶暴のようだ。

取材にあたった事件記者の藤堂香貴が言う。

「事件の起きた現場はかなり治安の悪い場所で、暴走族や不良がらみの事件が珍しくありません。最近では関東連合など暴力団と一線を画す連中が、準暴力団として動いていますが、逆にいえば組織の拡大で、目的は金稼ぎにシフト、小中学生をいじめるような意味のない悪さをするチンピラは減る傾向にありますが、ここらでは地元の暴力団関係者と顔見知りになって、我が物顔で繁華街に繰り出す、昔ながらの不良も見かけます。川沿いの工場で働く低所得者の家庭で育った不良少年が多く、そういった連中が歩いていても違和感のない日常があり、大人も関心を示していないです。避けています」とのこと。

オレオレ詐欺の出し子、クレジットカードのスキミング詐欺、違法オンラインカジノの運営、闇金の取立てなどなど、10代の半グレの仕事は山のようにある。

「とくに川崎あたりの不良が伝統的に評価されるのは『短期間で金を稼ぎ、人に奢る』奴がビッグになるってこと。ケンカが強いのは、そうだな、二の次だな」(川崎の元愚連隊)

この中1殺害事件と平行して、多摩川沿いでは、少年によるレイプ事件が続発しており、防犯パトロールを有志が毎日のようにしていたとされる。

「ナイフを突き付けられて、レイプされそうになった未遂事件が昨年の末から5件くらい連続で起きました。まあ、表にはあまり出ていない情報ですけどね。なんでも黒いジャージの集団で、地元では『カラス』と呼ばれている不良軍団のようです。高校生が中心のようですね」(川崎市住民)

◆「町田派」VS「川崎派」の抗争──いじめが文化のように育っていった

川崎の半グレ、不良たちは、実は、町田の不良たちとケンカばかりしている。川崎の連中は「町田をとってやる」と息巻き、町田の連中は「あいつら、多摩川に沈めてやる」と息巻く。川崎も町田も、昔から不良の巣窟としてつとに有名だ。

今回の殺人において、あまり報道されていないが、町田と川崎の意地の張り合いが影響していないとも限らない。リーダー格で主犯の男を、川村君に紹介した男が「町田派」と言われているからだ。

「そもそも、町田の治安が悪くなって、町田の不良たちが居場所を求めて川崎に進出して抗争を繰り返したことが、『これはなんとかして返り討ちしないと』とかえって川崎の不良たちの数を多くした感があります。そうした抗争の中で、『いじめが文化のように育っていった』と見るのが正しい分析の仕方だと思いますよ」(暴力団員)

もっとも、川崎や町田が荒れてくれたほうがヤクザにとってはラッキーだ。警察の目がそちらに行くし、イキのいい若者は、手下にして集団を仕切らせて風俗でも詐欺集団でもなんでもいいから金を作らせれば儲かるのだ。

そして、今回、関東連合を彷彿とさせるのが、やたら犯人が弁護士を頼る点だ。これもヤクザの入れ知恵か。捜査段階なのに、主犯の男には父親が手配し、早々に弁護士がついて、マスコミ対応していた。こうしたことを誘導するのは、その筋しかいない。そう、背後にヤクザがいると見たほうが妥当だろう。

「今回の件は、弁護士から接触した面もあります。また、そうした不良のしがらみの中で独特の活動をする弁護士もいるのは確かで、不良のトラブルがあると不良少年側として、お約束で得意げに出てくるおなじみの弁護士もいます。そういう弁護士は着手金は高いのですが、平気でウソの口裏合わせをしてくれる不良少年を証人として担ぎ出すこともあると聞きます」(前出・藤堂香貴)

◆まったく機能していなかった「学警連」

新聞などによれば、事件で、地域の公立校、市教育委員会、神奈川県警が集まる会合の中で1月と2月に、上村さんが通う中学校が「最近、登校できなくなった子がいる」と上村さんについて報告していたようだ。市教委などによると、上村さんが暴力を受けているとの情報を把握していなかったため、不登校の報告にとどまり、特別な対応は取らなかった。(2015年2月26日朝日新聞

上村さんは冬休み明けの1月8日から学校を欠席していた。市教委によると、市内では8地域に、公立小中高の指導担当教諭や、市教委の指導主事、警察署の少年事件担当者らでつくる「学校警察連絡協議会(学警連)」があり、定期的に情報交換して非行防止などに取り組んでいたが、まったく機能していなかったということだ。(2015年3月11日神奈川新聞

◆朱に交われば赤くなる──悲しみは、川のせせらぎの中に

不登校は、実は1日が2日に、2日が1週間に、1週間が1ヶ月に、1ヶ月が1年と、あっという間に時間がすぎていく。そして「暇をつぶすために」悪い仲間がつぎからつぎへと誘いに来る者だ。筆者も実は高校を数えながら休んだ。進級できるぎりぎりの日数を登校していた。僕にとって幸運だったのは「そんな狡をしてはいけない」と怒ってくれる友人がいたことだ。もし怒られなければ、僕は高校をおそらく辞めていた。

「朱に交われば赤くなる」ではないが、やはり仲間を選ぶ、ということは中学生とて重要なことだ。そして、そうした「友を選ぶ」慧眼が身に付く前に不良たちと交わり、抗争の中心にいつしかいる。それは、関東連合や巷の暴走族やギャングのメンバーにも言えることだ。

今でも殺害現場には、花がつぎつぎと供えられている。上村さんの悲鳴は川のせせらぎの中に消えて、友達の悲しみも川が吸い込んでいくようだ。これを機に、少しでも川崎、とりわけ多摩地区の治安がよくなることを願う。

(ハイセーヤスダ)

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12歳「ヘリウム事故」──少女アイドルビジネスの凄惨現場を『紙の爆弾』最新号が暴露!

 

反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

3月8日の「NO NUKES DAY 反原発★統一行動」を取材した。日比谷野音での集会で福島から来られた方が福島の現状を訴え、宇宙飛行士の秋山豊寛さんも原発の危険性について語る。全国から反原発を真剣に訴える2万人超が、「原発いらない」「命を守れ」のコールとともに国会を囲む請願デモを敢行した。

曇天の中、反原発のエネルギーは、「第二部」の首都圏反原発連合が主催する「国会前大集会」の登壇者にも乗り移ったのか、菅直人元首相、志位和夫(共産党委員長)、福島みずほ(参議院議員)、香山リカ(精神科医)などが登壇。それぞれに熱く反原発についてデモ参加者に訴えた。

「原発維持や推進をしようとする人たちは、私、精神科医からみると、心の病気に罹っている人たちに思えます」と香山は叫んだ。なるほど、その通りだと思う。

「NO NUKES DAY 反原発★統一行動」での菅直人元首相(2015年3月8日東京)

◆民衆の連帯が無視されるのはなぜか?

「原発」について、誰も「いいものだ、稼働してもよし」とする人は関係する業者と省庁しかいないはずだ。それでも、与党は原発を再稼働させようとしている。いったい、この民衆の連帯が無視されるのは、なぜだろうか。

理由のひとつとして「アメリカから押しつけられたプルトニウムを燃やさないといけない」という暗黙の協定は大きいと思う。

僕は、これだけ大きな事故を起こしながらも、原発に反対の声をあげる人は少しずつ減っていき、毎週、金曜日に行われている首相官邸前のデモが、ついに100人を切ってしまったのを肉眼で見た。集会では、「たんぽぽ舎」の柳田真共同代表が「原子力規制委員会は、じっさいは原子力推進委員会です」と叫んでいたが、まったくその通りで、田中委員長には、原発を止める気概などみじんも感じることはできない。むしろ「安倍首相の操り人形」だ。

◆原発ADRを拒否し続ける東電に対して相次ぐ「生業(なりわい)訴訟」

故郷に帰れず、先の暮らしを見通せない人々の苦悩は、時の経過とともに逆に深まっている福島の現状。

新たな土地で生活の基盤を築くにはきちんとした賠償が必要となる。しかし、東京電力はこの間、賠償に誠実だったとは言えない。国の指導も同じくだ。

町の大半が帰還困難区域に指定された浪江町では2013年春、町民1万5,000人が月10万円の精神的慰謝料の増額を求める集団申し立てを原発ADR(裁判外紛争解決手続き)で行い、一律5万円増の和解案が示された。だが和解案には強制力がなく、東電は受け入れを拒み続けている。

申立人には高齢者も多く、すでに大勢の人が亡くなっている。

原発ADRは被災者に裁判という重い負担を負わせず、早期に賠償問題を解決するために導入されたものだ。その趣旨に照らして出された和解案だ。東電はこれ以上解決を遅らせてはならないし、国はADRの仲介に強制力を持たせる仕組みを作るべきだとの声は多い。

ADRだけでは金銭賠償の解決が期待できないと、裁判所に訴える動きも相次ぐようになった。

「生業(なりわい)訴訟」と呼ばれる集団訴訟がそのひとつ。「故郷を返せ!生活を返せ!」と、北海道から福岡まで。17地裁・支部で精神的慰謝料の支払いが訴えられている。

昨年の夏、福島に行ってみた。

「いや、文化人も評論家も『原発はダメだ』と語るけれど、東京や大阪などの都市にいて論じられてもねえ。私たちにはまったく響かない。『脱原発』を飯の種にしているとしか思えないよ。本当に原発がダメだというなら、福島に住んで主張してみろって」と地元の自営業男性は言う。まさにその通りだと思う。

◆来年、電力が自由化になり、電力会社が選べるようになる

見逃せない事実として、「電力を自由化する」といいながら、東京電力が、他の電力会社の進出を阻んできた事実は大きいと思う。来年、電力が自由化になり、文字通り、電力会社が選べるようになる(※東京新聞2015年3月10日)。 つまり、個人がA社、B社などと電力会社を選べるというわけだ。ここにおいて期待できるのは、企業形態が利益をメンバーで折半する非営利目的の会社であるため、消費者は大電力会社と契約していた時よりはるかに安い値段で電気を購入することができるかもしれない、ということだ。

たとえば、イギリスの新規事業者の中には、Good Energyという、再生可能エネルギーを多く取り入れ、環境に優しいプランであることに力をいれている事業者もある。

Good Energyのプランは、化石燃料などを元にした安さが売りのプランと比べると電気料金は少し高め。だが、それでも大手電力事業者の料金と同等程度で、再生可能エネルギーを主に利用するプランを提供できる。消費者は、環境面を重視してプランを選べるのだが、こうした形の会社も登場するだろう。

いずれにせよ、原発は時代遅れで殺人兵器だ。僕たちは「原発は凶器である」という認識を忘れてはいけない。原発を輸出してもいけない。もしも原発を推進する者があるとすれば、魔物であり、サタンなのだ。

(伊東北斗)

◎「福島の叫び」を要とした百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号!
◎福島原発事故忘れまじ──この国で続いている原子力「無法状態」下の日常
◎《屁世滑稽新聞19》皇居を核最終処分場にする話……の巻
◎東電はKDDI、規制委員会は日立が請け負う原発関連コールセンターの無責任

より深層へ!横議横行の『NO NUKES Voice』第3号!

 


3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

4年が過ぎた。2011年3月11日東北を中心に東日本を襲った大震災から。腰を抜かしそうな大津波、首都圏でも長時間にわたる激しい揺れ、交通・通信の途絶と寸断。そして人類史上初めての原発4基爆発。

今私たちがああだのこうだの、まだこの島国に住みながら、くだらない発語が出来ているのは、奇跡かもしれない。いや奇跡だと言い切っていいだろう。

◆「放射能という名の化け物」との格闘は半永久的に続くという現実

昨年12月に福島第一原発4号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しが終了した。

これを「技術の勝利」と呼んだ人がいた。

傲慢に過ぎる。

勿論、技術者や現場での作業に関わった方の「命がけ」の賜物には違いない。彼らの勇気と優秀さには尊敬の念を払う。

だが、それは燃料棒撤去作業を断念させる4号機の建屋崩壊に繋がる、余震が「偶然」起こらなかったことの僥倖に起因することを忘れてはいけない。人間の技術依存への慢心は常に不幸の誘引剤だ。これからまだ3号機、2号機、1号機の燃料取り出しと「廃炉」作業が待ち受ける。政府が言うには「30年程」で片が付くらしい。

馬鹿を言うな。人類的な時間尺で言えばこの「放射能という名の化け物」との格闘は半永久的に避けられない。

◆「復興」は全く進まず、「絆」という言葉の意味が剥奪された

復興?

全く進んではいない。「全く」だ。阪神大震災と比較すればその違いはことさらに際立つ。

勘違いしないで欲しい。私は被災された方々の不幸をことさら取り上げ、それを材料に騒ぎ立てようとしているのではない。被災された方々が納得のいく形で生活再建をなされることだけが「復興」の名に値すると考える。

「絆」という言葉が意味を剥奪された。

「不条理に耐え忍ぶため事実に目をつぶり、ひたすら思考せず支配者へ従うこと」へと意味の蹂躙・変換が行われた。J・オーウェルが『1984』や『動物農場』で予見した「意味の収奪」(Newspeak=新語法) とはこのように2011年以降の日本で現実化している。

屍。累々とした屍。200いや300を超える屍。数時間前まで昨日と変わらぬ日常を過ごしていた人々が津波に飲み込まれ、海の上をたゆたう姿となっとなったその姿を見て、事実のみを本社に伝えた記者が直後号泣し、座り込み立ち上がることが出来ずその後の取材活動が出来なかったことを私は知っている。

勘違いが過ぎたのだ。思い上がりが過ぎたのだ。自然の力に人間はかくも無力だ。

悲しみも、無力感も、後悔も、怒りも、そして疲労の余りに至る諦念。全て「自然に対抗できうる」などとの身の丈を過ぎた傲慢が導いた結果なのだ。

◆人災を「風評被害」と言い換える人々が、原発を輸出し、戦争に邁進する

寒い。しびれるほど寒い。春近いと言ったって東北の冬は地面の底から寒さが突き上げてくる。

どうかマスメディアよ、これ以上無意味な言葉で必死に生きる人間を軽んずる「侮辱」を止めてはくれまいか。

どうかマスメディアよ、自然に対して人間は無力ではあるけども、人間の行為は人間が制御できることを想起してはくれまいか。

どうかマスメディアよ、避けられぬ自然災害にあれこれ意味づけををするのではなく、避けようがいくらでもある「人間によって引き起こされる災害」の意味こそを問うてはくれまいか。

津波、地震によって亡くなった方々の鎮魂は、亡き人を思い忍び前を向く遺族の方々の日常で十分だ。薄っぺらい言葉やイベントなど一時凌ぎの慰めにしかなりはしない。

これ以上苦しめるな!

これ以上蹂躙するな!

被災地の人々、とりわけ子供を放射能で病ませるな、殺すな!

私はあなたに「ねぇ、だから一緒に行動しませんか」などと言うつもりは全くない。

私一人で怒る。

自然災害と人災は違う。

人災を「風評被害」と言い換えて原発の再稼働・輸出、あろうことか「戦争」に邁進する人間どもを満身の怒りで指弾する。殺意に近い感情は消えない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎「福島の叫び」を要とした百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号本日発売!
◎恣意的に「危機」を煽る日本政府のご都合主義は在特会とよく似ている
◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
◎福島原発事故忘れまじ──この国で続いている原子力「無法状態」下の日常
◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致

恣意的に「危機」を煽る日本政府のご都合主義は在特会とよく似ている

「テロの脅威」だそうだ。とにかく「テロとの戦い」だそうだ。そして「イスラム国」だそうだ。「何が何でもイスラム国を潰す」のだそうだ。なぜならイスラム国は残虐で過激主義だから。

私には訳が分からない。イスラム国の前は「アルカイダ」だった。その前は「タリバン」だった。小さいところでは「イスラム同胞団」や他にも数知れずイスラム系の組織はある。それらは全て健在だ。アフガニスタンの実効支配面積はタリバンが優勢を保っている。でもそのことは全然問題にされない。何故だ。

◆忘れさせるために、その場その場で政府は「脅威の対象」を変えてくる

それにもまして、直ぐにでも攻めてくるような朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)の脅威が全く語られなくなったが、どうしたことだろう。中国との間だって尖閣諸島あたりで毎日緊張が高まっていたはずじゃなか。全くと言っていいほど政治の場の論戦や報道には登場しなくなっているけど、状況が変わったのだろうか。古いことろでは北方領土問題はどうなったのだろう。ソ連時代はあれほどキャーキャー叫びまくっていた北方領土問題は解決したのか。していないじゃないか。ロシアのチェチェンはどうした? インドネシアのアチェは? ビルマのカレンやカチンは?

どれ一つ大きな変化はないはずなのに何故かこの国の政府やマスコミの関心は「イスラム国」に偏りっぱなしだ。おかしくないか? ああそういうことだったのか。たぶん今日も朝鮮中央放送は例によって金正恩を讃える放送をしているだろう。ロシアではモスクワ中央放送がチェチェンでのタタール人を不安視する放送を流しているだろう。ウクライナ情勢について米国批判が語られているだろう。

◆危機の在りようは変わらず、政府の思惑次第で「危機」が変わる

かように世界のあり様は何一つ変わってはいないのだ。変わっていっているのはこの島国を支配する政府連中の思惑だけだ。「危機」は専ら政府の恣意と目的によって創造される。それをマスコミが下支えする。疑いを知らぬ市民は「そんなに世界は動揺しているのか」と不安になるが、そうではない。不安は創り出されたものなのだ。例えば「朝鮮の新たな軍事計画が明らかになりました」とアナウンサーは冒頭紹介した後に朝鮮中央放送の日常的な放送を流せば、それだけで「また北朝鮮はけしからんことをやっている」と世論形成のお手伝いが出来る。でもそれは日常的な放送内容に過ぎないのだ。

出来もしない「邦人人質救出」のための法整備に的外れな時間を割いてみたり、周辺事態法を「恒久法」に作り替える根拠をあれこれ並べているけれども、そんなものが必要な根拠はもとより何処にもないということだ。軍事国家を目指す安倍を筆頭とした連中は旬の野菜を選ぶように、その時一番国民に不安を煽るような材料を提示する。手下のマスコミも進んで材料探しに日々奔走するのだ。こいつら一体何が目的なんだろう。「陰謀論者」ならば「アメリカが背後で操っていて日本が軍事化を進めて自滅するのを待っている」と言うかもしれない。

私は「イスラム国」なんかどーってことはないと思う。関係ない。日本国内でテロが起きる可能性がある? それはあるだろう。「イスラム国」だけでなく他の勢力からも日本は恨みを買っているから仕方がない。因果応報と言うやつだ。こちらが何もしていないのに一方的に殺されちゃあたまらないけど、戦後の歴史の中だけだって日本はえげつない経済侵略を山ほど行ってきている。このことを日本人は決定的に忘却している。

米国に至っては防御の方法は無いだろう。侵略の歴史を歩み続けてきたこの国は「世襲的罪」ともいうべき逃れることのできない宿命を自ら重ねてきたのだから。個人的に防衛策を考えるのであれば、NYやワシントンD.Cなど大都市に住んだり近寄ったりしないことくらいだろうか。国の背負った罪を個人で贖わされるのは確かに割には合わないのだから。

◆在特会と日本政府に共通する「行動する保守」のご都合主義

それよりも「在特会」元気がないじゃないか? 「行動する保守」(在特会の正式名称は「在日特権を許さない市民の会」である)としては「イスラム国」問題をどう考えるのか、見解を明かすべきじゃないのか? 保守にとっては深刻な問題じゃないのか? それともおたくらは半径1000キロ範囲の世界の事にしか手や思考が回らないのかい。

まあ、仕方なかろう。日本政府のご都合主義だって在特会と大して変りはしない。

ありもしない危機を煽るために、ある時は朝鮮を利用し、ある時は中国、中東で火が付けば嬉々として飛びつく。軽薄な10代の若者がアイドルタレントのケツを追っかけているのと変わらないじゃないか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
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炸裂!『紙の爆弾』最新号!

機動戦士ガンダム──人はなぜ「シャア」という生き方に惹かれるのか?

機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅰ 青い瞳のキャスバル」を映画館で見た。ガンダムシリーズを語るのに欠かせない重要なキャラクターである「シャア・アズナブル」(本名はキャスバル・レム・ダイクン)の生い立ちを描いた同作品について、語り部が少ない。とりわけ、ふだんはしたり顔でいわゆる「ガンダム」について語る芸人、つまり「ガンダム芸人たち」もしくは「にわかガンダム文化人」も圧倒的に少ない。

それもそのはずで、シャアを語るには、シャアについて描かれた小説、アニメ、そして「ガンダム」の生みの親である富野由悠季 (原案は矢立肇)の世界観を深いところまで掘り下げて理解しなくてはいけない。くわえて、シャアが背負っている、あるいは主張している「人類の革新について、人類の価値について、あるいは未来図について」深く考察しなくては、やけどをするようなキャラクターなのだ。かろうじて語っている芸人たちも、誰とは言わないがシャアの世界観についてわかっていない。シャアを論じるということは、しつこいようだが、己の哲学が問われるのだ。

人は、「ガンダム」について語りたがる。戦争について、人類の未来について、あるいは愛について、平和について語る。これは、「宇宙戦艦ヤマト」や「ドラえもん」にもなかったアニメの現象だ。したがって、この映画にも見た人は100通り解釈があると思う。

◆人間は人間を粛正できるか? ──シャア VS アムロの命題

「機動戦士ガンダム」の骨格をなしている世界観はこうだ。

地球の人口が増えすぎて、なおかつ汚染された。だから一部の人たちは、宇宙へと移民せざると得なくなった。スペースコロニーで暮らすこの移民を「スペースノイド」と呼ぶ。この、地球から追い出されたはずの「スペースノイド」たちは、しだいに地球圏からの支配を嫌い、自治区になる道を選択し、地球圏と戦争に突入する。

「腐った地球圏の人類を根絶やしにする」との目的に立つシャアは、人類の革新ともいうべき「ニュータイプ」(認識力と知覚力に優れたもの)であると自身を自覚した。同じく「ニュータイプ」である地球連邦軍のアムロ・レイは、「人間が人間を粛正できない」として、ことごとくシャアに敵対する。これが「機動戦士ガンダム」ファーストの物語の骨格だ。

「スペースノイド」の独立を訴える為政者、シャアの父が、ザビ家の陰謀によって暗殺されて、ジオン公国ができあがる。父の復讐に燃えるシャアは仮面をかぶり、本名を隠してザビ家に復讐していくのだ。「機動戦士ガンダム」を見た者は、なぜシャアがあれほどまでに、ストイックに自分しか信じぬ乾いた男になっていったのかわからなかっただろう。だが、ようやくこの映画を観て、シャアが幼少期に陰謀により翻弄されて、人のやさしさに対して懐疑的になっていったのかが納得できるだろう。

シャアを理解するのには、膨大な資料の読み込みが必要だが、やはり漫画を読むのが早い。ビギナーには『ガンダムエース』に連載された北爪宏幸の漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』をオススメする。だがアニメ作品ではないためサンライズにおける公式設定ではない。

さて、この映画は1時間を少しオーバーするほどの短い尺だが、冒頭の戦闘シーンは迫力満点だ。監督が、人物を描いた安彦良和(漫画も描いている)なので、当然、人物描写は細かい。幼いシャアが気高い復讐心を保つことができのはなぜかファンならずとも興味があるだろう。若いドズル・ザビやランバ・ラルなどもファンを喜ばせるだろう。

◆「ガンダム」を見た時からアニメを卒業できなくなった

この映画はガンダムの35周年企画だそうだが、僕自身は、この作品(機動戦士ガンダムのファースト)を見たときからアニメを卒業できなくなった。

なにしろ、美しいメカニックデザイン(デザイナーは大河原邦男)だけでなく、そこかしこに哲学や人類の欲求が業深く描かれているのだから。

僕自身は、シャアの声を演じている池田秀一にインタビューしたことがある。
「シャアのように男らしく生きてみたい」という点で僕と池田さんの意見は一致した。そして、シャアには独特の言い回しがあり、有名な台詞として「若さゆえの過ちか。認めたくないものだな」というのがあるが、「認めなくないもんだな」ではなくやはりかたくなに「認めたくないものだな」と語尾で言い切る気高さがあるという。

もともと、手塚治虫の弟子であった富野監督は、その世界観はものすごく奥深い。細かい台詞も後々、伏線となってくるから見逃せない。ガンダムの新シリーズとして、今は『ガンダム Gのレコンギスタ』を手がけている。これは、富野由悠季監督が手掛ける、『ガンダム』シリーズの最新作で人気を集めている。本作では、『機動戦士ガンダム』で描かれた宇宙世紀(U.C.)のつぎの世紀にあたる“リギルド・センチュリー”が舞台となる。宇宙エレベーターを守る組織“キャピタルガード”のパイロット候補生、ベルリ・ゼナムの冒険が描かれていくものだ。

これこそ「新世紀の哲学」が問われる作品だが、この作品について語れる「自称ガンダム芸人」「自称ガンダム好き文化人」を見ないのは、ついに馬脚を現したと見ていいのだろうか。それともガンダムを「卒業」したのだろうか。

(ハイセーヤスダ)

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粗製濫造で編集劣化──「女性向け官能小説」電子書籍化事業がこけた理由

もはや実売部数で『ハリー・ポッター』や『ダ・ヴィンチ・コード』を超えた史上最速のベストセラー小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(ハヤカワ文庫刊)の映画が日本でも公開され、スマッシュヒットとなっている。ちまたの映画館は「官能的世界を味わいたい」男女であふれている。この「グレート・コンテンツ」である『フィフティー』に意外な「被害者」がいるという。

◆『エロければよし』で「ドル箱」狙いの果てに負債を抱える出版社

「E・L・ジェームズが書いたこの作品は、大学教授と若い女が一風変わった恋愛とセックスをくり広げる、R18指定の映画となりました。この『フィフティー』は、原作本が世界で8000万部以上も売り上げている『モンスター・コンテンツ』です。実は、この小説がリリースされて日本でもじわじわ売れ出し時期、こぞって出版エージェンシーや出版社、編集プロダクションらが『とにかく女性官能家を探せ』と目が血走るがごとくコンテンツをかき集めて、こぞって電子書籍を立ち上げたのです。ちょうど、『女性向け官能小説』が注目を集めていたころで、新潮社が「女による女のためのR-18文学賞」で注目作家を生んでいたり、(ただし後に方向転換して官能小説ではなく女性向けの一般小説へとリニューアル)、松文館の女性向け官能漫画がブレイクしたりと、『女性向け官能コンテンツ』がドル箱と化した時期で、仮に高校生であっても、文章がめちゃくちゃでも『エロければよし』として「女性向け官能小説」の電子書籍を立ち上げ、すぐにあきやすい日本の読者の関心が『彼氏を作るゲーム』に移行すると、女性向け官能小説はうまくいかずに今、コンテンツビジネスを始めた多くの会社が負債を生んでいるケースが目立ちます」(出版エージェンシー社員)

一時期、判を押したように「第2の『フィフティー』を目指せ」と女性向け官能小説家をかき集めて大金を原稿につぎこんだところ、今になって大損している会社が多いという。

女性向け官能小説コンテンツに1000万円以上つぎこんだ編集プロダクションの幹部は言う。

「今から思えば、女性向け官能小説なら、なんでもいいってものじゃない。『フィフティー』は、ミステリー作品としても、文学としても一級であり、原作に忠実な映画は今もなお観客を集めています。 日本でもアメリカでも観客の特徴としては、『本で読んだが、映画でも見てみたい』という感想が多いことです」(映画ライター)

映画スタジオの推計に基づく2月20日─22日の北米映画興行収入ランキングは、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」が2320万ドル(約27億6000万円)で2週連続首位を飾った。日本の興業統計は出ていないが、観客の出足は好調のようだ。

「出版社に乗せられて、官能小説を書いた女流作家や、そうした作家を紹介したコーディネーターらのうち『失敗組』は、苦々しく見ているでしょうね」(出版関係者)

まさに官能小説ブームの被害も「フィフティ・シェイズ」(50通り)のようだ。

◆問題は電子書籍編集のクオリティライン

おそらく紙の本の10分の1、もしくはそれ以下の予算で作れるので、猫もしゃくしも電子書籍化しようとするので「電子書籍は、クオリティラインがかなり下がっている」と僕は見ている。一度だけ電子書籍を書いたが、うるさく編集者が赤字を入れてくるかと思いきや、それもなく、ほぼ書いたままの状態で販売された。

僕についてくれたベテランの編集者は長いつきあいだったが、「初稿を出さないのですか?」と聞くと、「おいおい、これは電子書籍ですよ」と言い返してきた。

「電子書籍ですよ、とはどういう意味ですか」と問い返すと「そこまで経費をかけらないという意味だよ」という冷めた答えがきた。その声には「当たり前だろう」というトーンが含まれている。

紙の本を作るときには「ここがわからないから書き直せ」「構成を変えろ」「取材が甘い」と厳しい癖に、電子書籍となるとこうも甘くなるのはなぜか。古いつきあいのビジネス書ライターに聞くと「しかたないですよ、電子書籍は、別に小学生でも理論的には出せますから、市場は粗製濫造という印象があります。そこまでパワーをかけてられない」と言ってのける。このライターとて紙の本となると、執拗に赤字を入れるくせに、電子書籍は、ほぼ書いたまま世の中に出すから嘆かわしい。

僕はこれまで、一度だけ電子書籍である中堅作家の小説を買ったが、その改行はきわめて機械的で、内容と関係なく、7行ごとに改行してあった。よく作家が文句を言わないなあ、と驚いた。これは、「編集」と文化の否定であり、冒涜だ。「人の考えはあとで変わる」ということを前提にすれば、今の考えで言えば、電子書籍など僕は糞くらえだ。こんなものが市場でまわっているうちは、おそらく出版水準は永遠に上がらないであろう。(伊東北斗)

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毎月7日『紙の爆弾』炸裂発売!

輸入できても国産化はアメリカに阻止される日本の「無人戦闘機」導入計画

国はそれぞれ独自の事情を抱えており、国情に見合った軍備を整えている。たとえば、陸のないスイスに海軍は不要だ。北朝鮮の南下を恐れる韓国は陸軍を重視する。

日本は海から来る敵と、物資流入を確保するため「シーレーン防衛」を最大目的としている。仮想敵がシーレーンを寸断しようとした場合の最も有効な兵器は潜水艦である。艦上自衛隊の装備は潜水艦排除を重視している。

そのため対潜哨戒機は重要だ。水中の潜水艦を発見し、攻撃する事に特化した偵察機で、鉄で作られた潜水艦を探す磁気探査装置や、音響で位置を特定するソノブイを装備している。ソノブイは高性能のソナーを積んだ浮きで空中から海に投下して使い捨てにする。

以前、対潜哨戒機としてアメリカ製「P3C」を使用していたが、同機の旧式化にともない日本は「川崎P1対潜哨戒機」を独自開発した。一方アメリカでも旧式化は免れず、「ボーイングP8ポセイドン」を開発した。ただしポセイドンは従来型と違い複数のトリトンを空中で指揮運用する前提で設計されている。トリトンの武装は明確にされていないが、最低でも爆雷、対潜魚雷、対艦ミサイルのうえに在来型が搭載する程度の武装は装備して、トリトンだけでも一定の対潜攻撃能力を持つと考えられる。

日本はポセイドンを買う予定はない。なにしろ、「P1」の倍以上する高価な機体である。しかし、補助的にトリトンを運用するのは有効だろう。日本も無人機の研究はしているが、十分ではない。アメリカはここに商機を見つけたのだ。

一方、無人武装機と考えた場合、「その次」に目をやる必要がある。いまや、アメリカ空軍の攻撃機は無人化され、メーカーでもプレデターをジェット化した海軍型を提案している。

◆アメリカが阻止する日本の国産戦闘機開発

となると、いよいよ無人戦闘機である。現在、アメリカの最新鋭戦闘機は「F35」であり十数年の内に西側の戦闘機は「F35」が主流となるだろう。一方、「F35」は有人であるためどうしても飛行限界が存在する。地上の十分の一以下の気圧、氷点下50℃の低温から人間を守らなければならない。

アメリカが開発中なのが「無人攻撃機X47ペガサス」である。速力はマッハ1以下と戦闘機としては遅いが、それでもプレデターの三倍以上。ステルス性は優れ、航続時間に至っては10時間を超える。空対空ミサイルをもち戦闘機としても使用できる。陸軍と海軍の共同プロジェクトであるので空母上の運用が前提で、昨年、完全自律での離着艦の実験が成功した。

日本の技術レベルはまだ無人機を買う状態であるが、陸自は無人偵察ヘリを運用している。空自も開発中の「F3戦闘機」の無人化を計画している。F3が完成したらF35は一気に陳腐化してしまう。そうなる前にアメリカは日本の無人機市場の発展を押さえる、あるいはまたも国産戦闘機開発の阻止を狙っているのである。

「無人攻撃機X47ペガサス」写真はOVAL OFFICE(http://ovaloffice.jp/)より
「無人攻撃機X47ペガサス」写真はOVAL OFFICE(http://ovaloffice.jp/)より

▼青山智樹(作家、軍事評論家)1960年生まれ。作家、軍事評論家。著書「原潜伊六〇二浮上せり」「ストライクファイター」等多数。航空機自家用単発免許、銃砲刀剣類所持許可、保有。HP=小説家:青山智樹の仕事部屋

7日には気をつけろ!──炸裂!『紙の爆弾』!

東電はKDDI、規制委員会は日立が請け負う原発関連コールセンターの無責任

いったい事故の真相はどうなっているのだろうと気がかりで東電に電話をかけてみる。ネット上で東電案内窓口と示されている案内一般のフリーダイアルに電話を掛けると「申し訳ございません」、「この度は大変ご迷惑をおかけしました」と言葉と態度は平身低頭だが、肝心の内容には全く回答してくれないオペレーターが応対に出てくる。

これは2011年事故直後からしばらく続いた東電の「電話対応」体制だ。当時この電話対応を請け負っていたは「TEPCOコールアドバンス」でこの会社は名前が示す通り東電の子会社だ。マスコミや記者を相手にした「記者会見」でもまともな発表を行わない東電が個々の電話問い合わせに真っ当な回答をする道理はないのだが、遠隔地に住む人間としては毎日東電記者会見に通うわけにもいかないから時々、東電に電話をかけて情報収集の真似事と、対応がどう変化してゆくかを追っていた。

◆「正社員は誰も責任を取らず傷つかない」仕組みとしての東電コールセンター

ある時期から東電HP上では一般問い合わせのフリーダイアルがなくなり、賠償対象者のみにフリーダイアルが公開されている。試しにこの番号へかけて事故の内容などを質問すると別の電話番号を案内される。その番号は050からはじまる「ナビダイアル」と呼ばれる番号で、電話をかけた方が通話料金を負担するようになる。

まあ、こちらは質問をしたいので、番号が無料であろが、有料であろうが文句を言う筋合いはないのだが、問題はそこで出てくる人間の応対だ。前述の通り東電は当初(事故前は不明)「TEPCOコールアドバンス」から派遣された電話応対部隊を使っていたのだが、理由は分からないもののある時期にオペレーターの総入れ替えを行う。「TEPCOコールアドバンス」は撤退し、代わって「KDDIエボルバーコールアドバンス」社が電話応対業務にあたるようになる。「エボルバーコールアドバンス」とは何とも強い怪獣のような名前だが、業務自体が変わったわけではないのでこちらが電話をかけた際の応対にさしたる変化は見られない。

この体制を敢えて短い言葉で表現するとすれば「正社員は誰も責任を取らず傷つかない制度」と言えよう。

私を含め東電に電話を書ける人の中には質問や、怒りが煮えたぎっている人が多かったに違いない。それを受け止めるのは正社員ではなく子会社もしくは、別会社で専ら電話受け付けのみを担当する人だ。

その人々には何の権限がないことは言うまでもなく、また「貴重なご意見として承り、必ず上司に伝えておきます」と決して実現することのない慣用句を口にするが、あの電話は直接、東電社員や幹部が時には体験してみるべきだ。そうしない限りいつまでたっても東電正社員の傲慢さと責任感のなさが改めれれることはないだろう。

◆日立システムズが原子力安全規制委員会のコールセンター業務を請け負う

電話対応で、これまた東電以上にえげつないのが「原子力安全規制委員会」だ。「原子力に関するお問い合わせはこちら 03-5114-2190」とHPに電話番号が載っている。こちらは官庁なのでフリーダイアルでないのは当たり前だが、ここへ電話をかけても「絶対」と言ってよいほどに公務員へつないでくれることはない。ここもコールセンターなのだ。「あなたは公務員のですか?」との質問に「こちらはコールセンターです」と答えをはぐらかす回答をするので、こちら意地になり同じ質問を5分ほど続けたことがある。

意固地な女性のオペレータはこれでもか、これでもかと私が質問を投げかけても「こちらはコールセンターです」の一点張りで機械のように回答を続けた。「あなたの所属する会社はどこですか」との質問へも「私はコールセンターの人間です」としか答えなかった。「ややこしい質問へはすべて『私はコールセンターの人間です』と回答しなさい」とのマニュアルがあったのだろう。

その応対が数か月前から変わった。現在「原子力安全規制委員会」コールセンター業務を請け負っているのは「株式会社日立システムズ」だ。こちらは日立の子会社と言うには規模が大きく、資本金が190億円もある大会社だ。その「日立システムズ」から派遣された6、7人が「規制委員会」コールセンターの電話受付業務にあたっている。「どこの会社か」と聞けば正直に答えるし、以前よりも多少人間らしい対応にはなっている。

しかし、原子力安全規制委員会と日立である。

余りにも怪しい組み合わせではないか。オペレーター氏に聞くと「契約は入札で行われた」という。原子力安全規制委員会にアクセスする方法がこちない以上、オペレーター氏の答えを信用するほかない。

日立は福島第一原発原子炉の設計にかかわったていた。原発を売って儲け、爆発させてもまだ儲ける。

公平な入札で「規制委員会」の仕事を日立が落札したとすれば、両者の因縁は断ち切りがたく深いと言わねばならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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フクシマの真実を礎に百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号!