7月26日(日)、福島県福島市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
福島からも「戦争法案」反対の声をあげるべく結成された「戦争法案に反対する福島県若者有志の会」が主催し、福島駅東口周辺を約200名で行進した。盆地の福島市は非常に蒸し暑かった。


[動画]戦争法案に反対するデモ@福島 – 2015.7.26 福島市(12分14秒)

福島県庁前を出発したデモ隊は、ふくしま自民党(自由民主党福島県支部連合会)が入る中町ビル前で、「なんか自民党感じ悪いよね!」「内閣支持率何%?内閣支持率35%!」「未来のために今声あげよう!」等のシュプレヒコールを上げた。
そして、街宣車に乗り込んだ若者たちは次々に「戦争法案」に反対するスピーチをしていった。

「僕のおじいちゃんは戦争経験者です。
小さい頃から戦争の話を聞いて育ちました。
小さい頃、おじいちゃんに『人を撃った事あるの?』って聞いたことがあります。
しかし、その質問にはきちんと答えてくれませんでした。
今ではもう聞くことができないけど、絶対に大変な経験をしたんだろうなあと思います。
『戦争ほど酷いものはない』と何度も言っていたおじいちゃん。
戦争ほど何も生み出さないものはないと思います。
その戦争を今安倍首相はやろうとしています。
僕たち若者の未来を、一政権の勝手な独断で決めてほしくありません。
僕たちは、自分の未来は自分で決めます。
その為に、今こうして全国の仲間たちと一緒になって声を上げています。
今集まっている人、今聞いている一人一人、様々な想い、
確かな決意があって来ていると思います。
僕は、今回の戦争法案で若者が政治に対して声を上げること、
政治に関心を持つことのきっかけになったと思います。
もう安倍政権は僕たちの声は無視できない」

「安倍首相は、この間テレビで、『この法案はいわば隣の家の火事を消すことだ』
と言ったそうですが、はっきり言って全然説明になってません。
戦争は消火活動なんかじゃないんですよ。人殺しですよ。
消すのは火じゃなくて人の命です。
それに手を貸す、それがどうして日本の安全に繋がるというのでしょうか。
そんな犠牲を負ってまで、強硬な軍事同盟による抑止力なんてものが必要なんでしょうか。
バカの説明には納得されず、自分で思考し、自分で行動していきましょう」

「4年前、福島の原発事故が起きた時、
たくさんの人が、先の見えないままに避難を余儀なくされました。
私はボランティアを通じて、いろんな人に出会いました。
家をなくした人、仕事をなくした人、仲の良かった友人と離ればなれになった人、
生き甲斐にしていた畑を原発事故によって奪われてしまい、
あの日から時間が止まったままだという人もいました。
それを知って私は、どこか罪悪感を感じ、今まで原発に対して、
まるで無知で無関心だった自分にすごい腹が立ちました。
どうしてこんなことになる前に、原発に反対しなかったんだろう、
もっと早い段階で気付いて行動を起こしていたらどれだけの被害者を出さずに済んだんだろう。
今回、無理やり成立させようとしている戦争法案も、決して他人事じゃないです」

それぞれが思い思いの言葉を街に響かせた。
安倍首相をバカ呼ばわりしているが、バカはきちんとバカとして扱わないといけないと思うので、必要に応じて今後も罵倒すれば良い。
全国各地で多くの人々が立ち上がっているのだから、自分たちの属している自治体で行動を起こした時は、よりパーソナルなレベルの話をするのは戦略的に間違っていないだろう。
地元の構成員たる自分が、自らの言葉を使い、当たり前のことを堂々と発言していくべきだ。そのようなことが全国各地で行なわれれば、本当に大きな力となるだろう。この福島市での行動は小さなものかもしれないが、大きな力の中のひとつだと感じた。

今回のデモでは、立派な大型街宣車を借りてきていたのだが、備え付けられたスピーカーは使用せず、より音の良いスピーカーを別に用意して設置していた。
音は非常に良かったのだが、それをモニタリングするスタッフがおらず、BGMと話す声のバランスが悪かったり、商店街を通行する時に音量が大き過ぎたりしていた。
話す人によって声量が違うし、かける曲によって音量が違う。それだけでなく、立地によってスピーカーから出して良い音のレベルが違うので、それを車の外からチェックしオペレーターに音量変更の指示ができればベストだ。

デモは正当な権利であるのだけど、時と場合を考えないと逆効果になってしまうこともある。
例えば、学習塾や病院、冠婚葬祭を行なう施設、イベント会場のそば等では、楽器を鳴らすのをやめたり、スピーカーの音量を下げたりする配慮は、その街を大事に思っている人として当たり前ではないだろうか。
防音対策が施されている建物だろうと、その施設の休みの日であっても、そのことを知らない人がいないとも限らない。デモは「イメージ」でもあるので、配慮があってこそ効果を生むと思う。

若者たちの感性をストレートにぶつけ、それなりの配慮のデモをしていけば、こんなに強い武器はないだろう。

[2015年7月26日(日)・福島県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社) にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《017》戦争法案に反対する若者たち VOL.11 長崎
◎《016》戦争法案に反対する若者たち VOL.10 津
◎《015》戦争法案に反対する若者たち VOL.9 熊本
◎《014》緊急寄稿・朝日新聞と冨永特別編集委員のおわび
◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡

『NO NUKES voice』第5号amazon.co.jpでも発売中!

するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号!

7月25日(土)、長崎県長崎市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
主催の「N-DOVE(エヌ・ダヴ)」は長崎県内の10代?20代が中心のグループで、今年6月にSEALDsの活動に触発され、被爆地長崎から反戦の声を上げるべく発足した。
彼らは若者を「高校生から大学生、30歳まで」と規定しており、戦略的に良い判断だと私は思った。大都市以外では「若者」の間口を広げる傾向があるが、デモはアピールなので、見ている人々の目にどう映るかを意識した場合、「若者」を年齢で限定するのは得策とも言える。


[動画]戦争立法に反対する若者の緊急デモin長崎 – 2015.7.25 長崎市(3分4秒)

全国で一番最初に「安保法案の成立を求める意見書」を県議会で可決した長崎で、若者たちは声をあげることを決めた。非常に保守的なこの地で、彼らが自民党を明確に批判したシュプレヒコールを街に響かせたことは、地元議員にとっても相当衝撃的だったはずだ。
「なんか自民党感じ悪いよね!」
「強行採決マジふざけんな!」
「勝手に決めんな!」
「戦争したがる総理はいらない!」
こんな刺激的なコールを叫び、民主主義とは何かを問うている無党派の若者の出現を想像した人はいただろうか。長崎にも新たな風が吹き始めた、いや新たな風が彼らによって起こされたと言うべきか。

安倍政権が進めている国作りが国民に与えているインパクトは相当なもので、今回の「戦争法案」を受け、デモそのものが成熟しておらず勢いがあまりない地域でも次々と若者によるデモが企画され反対の声があがっている。無党派のデモがほとんど無い土地で、ほとんど見ることの無かった年齢層の人々が動き出していることは驚きだ。
全国のデモや抗議を4年以上、年間100回以上撮影している私でも、鳥取県・長崎県・大分県・熊本県の4県だけは今まで撮影ができずにいた。タイミングが合わなかったり、開催頻度が少なかったり、情報発信の充実度、行きやすさなど様々な理由があったが、それが今年7月の「若者デモ」の撮影だけで大分県以外の3県へ行くことができてしまった。なかなか伝わらないかもしれないが、すごいことが今日本で起きていると私は痛感している。

デモ出発前、長崎市中心部にある銕(くろがね)橋で1時間ほどの集会が開かれ、順番にスピーチが行われた。

「70年前の8月9日、たった一発の原子爆弾が一瞬にして7万人もの命を奪いました。
僕らは今、その彼らが眠る土の上に立っています。
僕たちには、もう二度と戦争を繰り返すなという、彼らの声なき声を受け継いでいく使命があります。
その声は、一内閣の解釈一つで変えられるほど、軽いものではないはずです」
「強行採決後、菅官房長官は『三連休を挟めば国民は忘れるだろう』と言いました。
僕たちが隣国の方々と共に歩んできたこの70年の歳月をたった3日間で忘れることはありえません。
3日休んだからと言って、平和への祈りは途切れることはありません。
国民をなめんな。
安倍さん、あなたは僕たちの平和への祈りを怒りへと変えました。
憲法も守れない。
国民への説明も尽くせない。
拡大の一途を辿るしかない武力では、平和を守ることができなかったのだという反省を踏まえた憲法9条の価値が分からない、そんな人にこの国の総理大臣でいる資格はありません」(N-DOVE 森爽さん 18歳)

若者たちがマイクを握り、「安保法案の成立を求める意見書」に反対をした民主・吉村正寿県会議員、社民・坂本浩県会議員、共産・堀江ひとみ県会議員もマイクを握る。70年前に原子爆弾による攻撃を受けた都市の老若男女が一致団結し、戦争法案に反対する声をあげた。この節目の年に長崎で行動を起こしたことは大きな意味を持つはずだ。

今回のデモは全長600m、普通に歩いて7?8分程度の非常に短いコースだった。出発時間になっても警察官が来ないのでどうしたのかと思ったら、長崎市のデモには警察が警備に来ないこともあるらしい。ちょうどこの日はお祭りがあって、長崎警察署も忙しかったのだろうという話も耳にした。そんなことで、今回は先頭に街宣車ありの車道通行のデモ行進が警察がいない状態で行なわれた。
公道を警察の警備なしに行進が行なわれていたのは、私が知るだけで長崎県長崎市・山梨県甲府市・宮崎県宮崎市の3ヶ所だけだ。私個人が取材に行った場のデータだけなので、恐らくはもっと存在しているのだとは思う。

警察がいなくても車道通行デモを行なうことは可能なのだが、参加者の誘導をきちんとしないと街の人々に迷惑を掛けてしまうことになるので注意が必要だ。デモに慣れている大人たちには、どう警備されたら安心して行進できるのか分かるはずなので、若者たちが表に立ち自らが理想とするデモのビジュアルを作ることに専念できるようにサポートに回るのが大人たちの役割だろう。

『ながさきみなとまつり花火大会』の会場が宿泊していたホテルのすぐそばだったので、夜はちゃっかり花火を見に行ってきた。台風の影響で2日目が中止になったので、初日に二日分の1万発を一気に打ち上げたので本当に凄かった。
花火が終わった後に特設ステージへ足を運ぶと、長崎出身の歌手・福山雅治さんの『クスノキ』を長崎市長ら大勢の人々が合唱していた。『クスノキ』は平和を願った歌として知られている。
お祭りでも平和を願う長崎は、昔から海外に開かれた異国情緒あふれる国際色豊かな街だ。安倍政権が進める戦争ができる国づくりにより、隣国との平和的な交流を妨げることにならないことを祈るばかりだ。



[2015年7月25日(土)・長崎県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
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◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取

《総力特集》福島─沖縄 犠牲のシステム!世代、地域を繋ぐ脱原発誌『NO NUKES voice』第5号は8月25日発売!

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7月24日(金)、三重県津市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
津城趾そばの広場で集会を開き、津駅前まで行進をした。約70名のデモ隊を組織したのは安保法案に三重からも反対の声をあげたいと思った若者たちだ。


[動画]戦争法案に反対する、津・若者デモ – 2015.7.24 三重県津市(3分23秒)

SEALDsに刺激された「若者デモ」は全国に広がり、三重の県庁所在地・津でも行われた。コールは東京で聞く短いシュプレヒコールがメインになっているのだが、ここ独自のシュプレヒコールもあった。

「強行採決忘れないぞ!」「連休過ぎても忘れないぞ!」
これは、安保法案を7月16日に衆院本会議で強行採決して通過させた安倍政権が「三連休を挟めば忘れるだろう」と国民を鼻で笑ったことに対するコールだ。連休中も連休後も各地のデモで怒っている人はたくさんいたが、それをシュプレヒコールにしていたのは津だけだった。
また、三連休(7月18~20日)の期間に行われた山梨県甲府市のデモでは以下のようなスピーチがあった。
「安倍さん達は『この三連休で国民が戦争法案を強行採決したことなんか忘れるんだ』って言ってますけど、国民たちを本当にバカにしてると思います。
この三連休は日本各地で反対のデモや集会が行われたり、国会前にもたくさんの国民が集まっています。
日本中の国民がたくさんこの戦争法案に反対しているんだってことを歩いてアピールしているわけです」
連休が終わっても、各地からあがる反対の声は静かになるどころか激しさを増す一方だ。

「WAR IS OVER!」「IF YOU WANT IT!」
これも津で初めて聞いた、ありそうでなかったシュプレヒコール。正直なところ聞き取りにくかったが、注意して聞いてみると聞き取れないことはないし、意外と耳馴染みも良かった。
「戦争は終わる。あなたがそれを望むなら。」そういう意味の英文だが、今の日本においては「行動すれば戦争は止められる」というような感じの意味を持つ言葉なのではないだろうか。このような反戦の言葉を全国で若者たちが掲げ叫ばなければいけない日が来るなど想像もしていなかった。戦争の不安を抱いている人々が多くいる事実を政府は直視し、安全保障についての方針を見直すべきだろう。

三重で働く男性保育士のスピーチがあった。
「今、安倍政権がやろうとしている戦争法案が成立してしまったら、自分たちが見ている子供たちが戦場に行くかもしれない。そんな社会になるのは絶対に嫌です。」
職業上、彼は子供たちの心配をするのは自然なことだが、安保法案反対デモに参加している若者たちの口からも次の世代を心配する声をよく耳にする。10代20代の学生や若者らがそう叫ぶことに戸惑いを感じなくもない。しかし、まだ親にもなっていない人々にも自分の子や孫の心配をさせるほどの危機感を与えている安倍政権が進めている国づくりが異常過ぎるのだ。

今、日本全国であがっている声は、日本の未来を奪おうとしている安倍政権に対しての反発の声だ。未来のある若者が強く反応するのは当然のことだろう。
「安倍政権から未来を守れ!」このシュプレヒコールを津で聞いて、そんなことを思った。



[2015年7月24日(金)・三重県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
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◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
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反骨の砦に集え!『紙の爆弾』9月号絶賛発売中!

7月20日(月・祝)、熊本県熊本市中央区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。路面電車がすぐ横を通る辛島町公園で集会を行い、アーケード街を下通?上通まで総勢600名で行進した。
このデモを企画したのは、熊本の学生・若者を中心に組織された『WDW(We Disagree with War=「私達は戦争に反対する」)』だ。


[動画]戦争法案反対×若者デモin熊本 – 2015.7.20 熊本市(4分8秒)

600という数字を聞いて正直驚いた。
この街でそれだけの人数を集めるのがどれだけ大変か、熊本でのコンサートやイベント等があまりないことからも想像に難くない。ましてや、エンターテインメント分野でも何でもない「デモ」でのことだ。熊本県には水俣病問題があり、社会運動の土壌がないというわけでもないのだが、非常に保守的な土地なのである。無党派市民のデモは成熟しておらず、大学生たちが独自に企画したデモがここまでの盛り上がりを見せたのは本当に凄いことだと思った。

私は全国のデモや抗議を撮影して5年目になるのだが、熊本でのデモ撮影は今回が初めてだった。デモの絶対数が多くないだけでなく、年齢の高い人々が運動の中心になっており、情報がほとんどネットに上がらず関東に住む私には捕捉することができなかった。
それに対し今回の若者デモは、ネットでの告知にも力が入れられており、告知が開始された日に私はデモの存在を知ることができた。もちろん、情報は結果として必要としている人へと届けば良いので、オフラインの告知が悪いわけでもないし、その優劣の話をしているわけではない。

今、全国各地で起こっている「若者デモ」を分類する場合、ネットでの告知をしていることが必須条件と言えるだろう。あるいは、SNSを活用しているというのが「若者デモ」の特徴の一つと言える。
今回のデモも見ず知らずの大学生ら4人の若者がネットで出会い、行動を起こしたという。それはインタラクティブなデジタルメディアが切り開いた、情報収集と発信を欠かさない今の運動を象徴しているようだ。

上に掲載した映像にスピーチが収録されていないのは、デモコースがアーケード内だったので、拡声器の音が物凄く反響していて内容が聞き取れなかったから編集でカットしてしまった。
これは録音した音声だけでなく、現場にいても喋っている内容を聞き取るのは大変だったので、アーケード内では思い切ってスピーチを無しにしたり、拡声器を向ける方向や音量を下げたりして反響を減らす工夫をしたほうが良いだろう。またアーケード街は商店街であるので、音が大き過ぎる行進は迷惑になる。

厳しいことを言うようだが、現場でのスピーチの効果については疑問を持つことが多い。それは、足を止めてデモのスピーチを聞く人は少ないし、話し手は移動し続けているので、沿道で通して聞ける人はいないからだ。断片的な言葉が耳に入るだけでは、歩いている人は聞き流してしまい、何の話かもわからずアピール力は少ないと思ってしまう。
であるので、取材や記録のカメラに向けた良質な音声の提供ということを戦略的選択としてするのも一つの手としてあることを頭の片隅に置いておいて欲しい。撮影されたデモの動画が拡散されることによって、街中では断片的にしか耳に入らなかった言葉がひとつのスピーチとして再びその存在が形となり、全世界をも駆けることになる。市民にとって意思表示をするツールとして、動画は非常に有効で大きな「武器」になる。

とは言うものの、カメラを意識し過ぎては街の人に伝わらないので、その場にいる人を意識してアピールをしなくてはならない。街の人々に届かない言葉は、カメラや記者を通した先の人々にも届かないと思って臨むべきだろう。



ここ火の国からも安倍政権が進める国づくりに抗う狼煙があがった。

[2015年7月20日(月・祝)・熊本県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《014》緊急寄稿・朝日新聞と冨永特別編集委員のおわび
◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
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反骨の砦に集え!『紙の爆弾』9月号絶賛発売中!

 

朝日新聞社の冨永格・特別編集委員が、”Japanese nationalist demonstration in Tokyo. They are supporting PM Abe and his conservative administration.”と、ナチスの旗の写真とともに(要するに「ナチス旗デモ参加者は安倍政権支持者だ」と)ツイートし、批判を受けて削除した事が問題になっています。

これに対し、朝日新聞は8月5日午前5時に『報道姿勢に疑念抱かせおわびします 朝日新聞社特別編集委員、不適切なツイッター』と題し、「冨永記者はツイッターにナチスの旗などを掲げてデモをする人たちの写真を載せ、英語で『東京であった日本の国家主義者のデモ。彼らは安倍首相と保守的な政権を支持している』と投稿し、フランス語でもほぼ同様の内容の投稿をしました。
冨永記者は投稿について、事実関係の裏付けをしておらず、写真も撮影者の許可をとらずに転載していました」とのおわびの文章を掲載しました。

冨永さんがツイートした写真は、私が2014年3月に西葛西で撮影したものです。それで「秋山理央の写真を無断借用してる!」と怒っている人々がいますけど、私的にはあのツイートの趣旨であれば別に使ってもらっても構いませんし、本日現在、朝日新聞の担当者と、冨永さんからは直接、無断借用に関しての謝罪を受けています。
そもそもこの件についてまだよく知らない方に読んでもらいたいのが、以下の記事です。
リンク先で記事全文を読んでもらいたいのですが、面倒な場合は引用部分だけでも目を通して下さい。

『朝日記者ツイート:カギ十字写真に「安倍政権の支持者」』(毎日新聞)

「朝日新聞社の冨永格特別編集委員が、自身のツイッターにナチスの『カギ十字』の旗や旭日旗を掲げたデモとみられる写真とともに『東京での日本のナショナリストによるデモ。彼らは、安倍首相と彼の保守的な政権を支持している』との内容を英語と仏語で書き込み、その後削除していたことが分かった」

『ナチス旗デモ掲載「首相を支持」 朝日編集委員ネット書き込み』(共同通信)

「朝日新聞社の冨永格・特別編集委員が、同社公認の自身のツイッターに、ナチスの旗や旭日旗を掲げてデモする人たちの写真を掲載し、英語とフランス語で『東京での日本の国家主義者のデモ。彼らが安倍首相と保守政権を支持している』と書き込んでいたことが4日、分かった。既に削除している」

『朝日新聞特別編集委員 不適切ツイートで謝罪』(NHK)

「朝日新聞の特別編集委員が、自身のツイッターにナチス・ドイツのカギ十字の旗などを掲げたデモ活動の写真とともに、『彼らは安倍首相を支持している』などと英語で不適切な書き込みを行い、その後、削除して謝罪しました」

富永さんが私の撮った写真をツイートしたのも何かの縁ですし、本来なら消すべきではないのに消してしまったものですから、私は撮影者として、改めて「ナチス支持者が安倍を支持している」と以下のようにツイートしました。

「【撮影記録】2014年3月・東京での日本の排外主義者によるネオナチデモ。
ハーケンクロイツを掲げたデモの参加者は、8月2日に銀座で行われた安保法案賛成デモにも参加。彼らは安倍首相と彼の保守的な政権を支持しているのだ。(撮影:秋山理央)」

同時に英文でもツイートしています。
「Japanese neo-nazis with swastika, Tokyo Mar.2014, its members joined in the rally supporting LDP’s war bill Aug.2015.」

自分の写真を使い、事実をつぶやいているだけですから誰からも文句を言われる筋合いはないのですが、筋違いなリプライが非常に多いです。ネトウヨが凄い勢いで攻撃してきて大変なことになってますが、在特会みたいなネットのカス達を普段から批判しまくっているので、こういうことにも慣れてしまいました。
「ナチス支持者が安倍支持者」ということを否定する人も多いのですが、そういう人たちがどう捻じ曲げて信じたくても、これは事実です。それにも関わらず、冨永さんがツイートを削除・謝罪してしまったから、そのツイートの内容がデマだという印象が生まれてしまい、それが事態をややこしくしていると思います。
私が改めて上記の「事実」をツイートすることにしたのは、そういうわけです。

文句を言ってくる人の中には、私が書いた日本語の文章を理解できない人も多く、トンチンカンな意見や先入観だけで語ったり、頭が痛くなってしまいます。
これは今回の件に限らないのですが、「それ、言う前にちょっと調べろよ!」という意見が本当に多いです。まずは検索してから発言する事をお勧めします。
というか、誰も彼も、もっと検索する癖をつけるべきで、高校で「とりま検索」って教えた方が良いと最近よく思います。
前衆議院議員・次世代の党の中山成彬さんもちゃんと調べてからツイートした方が良かったかもしれません。
「かつて天声人語も書いていたという朝日の富永格編集委員がナチスの旗を掲げたデモの写真と共に『東京での日本人の国家主義者によるデモ、彼らは安倍首相と彼の保守的な政権を支持している』とツィートした。相変わらず日本人を貶める為なら捏造も厭わない。削除したが本音を呟くというから本音だろう』

この中山氏のツイートに対し、対レイシスト行動集団のC.R.A.Cが「在特会の前会長桜井誠が呼びかけた安保法制賛成デモに、元国家社会主義者同盟(ネオナチ)の瀬戸弘幸が星条旗を掲げて参加し、ここでハーケンクロイツ持ってるやつらがそれに続いてましたよね。どこが捏造?」というリプライをしていました。

「ナチス支持者が安倍支持者」って事は、否定できないでしょう。
ナチス旗デモ主催の荒巻氏は、安倍政権を支持していないらしいのですが、デモ主催者と参加者が全く同じ考えとは限らないですし、ナチス旗デモと安保賛成デモの参加者が実際に一致しているのは事実です。
それに加え、白昼堂々ハーケンクロイツ(ナチス旗)を掲げ、外国人集住地域に出向き、そこに住む外国人を排斥するデモを行なっている集団がいることも大問題でしょう。しかも、オリンピックを控えた東京都内でのことです。
今回の写真に対し、「ナチスの旗なんて合成だろ!」と言われもしましたが、何を寝ぼけたことを言っているんでしょう…。むしろ、合成ならどんなに良いことか。しかし、事実なのだから仕方ありませんし、事実だからこそ問題にしなくてはならないと思います。
こうしたデモは例外なくヘイトスピーチを伴うものであることも忘れてはいけません。そうした事実こそが問題とされ、メディアがしっかり事実を探り、公にするべきだと思います。

安倍内閣、自民党、その支持者、ヘイトスピーチ、ネオナチ、ハーケンクロイツ(ナチスの旗)といったものが結びついていることは、もっと社会的大問題とされて良いと思いますので、引き続き、私は撮り続けていきたいと思います。

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
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全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
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7月19日(日)、福岡県福岡市中央区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。天神駅前の警固公園を出発し、駅周辺を一周するコースで歩道上を行進するデモの為だったからなのか、警備の警察官の姿はなかった。
言われて後から気付いたのだが、赤い物を身に付けて参加して欲しいという呼びかけがあったようで、確かに赤が多い気がする。


[動画]若者憲法デモ@福岡 – 2015.7.19 福岡市(5分2秒)

こんな大雨の中、デモの撮影をしたのはもしかしたら初めてかもしれない。雨が強過ぎて撮影できなかった部分もあり、映像でどこまで雨の激しさが伝わったか分からないが、傘をさしていてもびしょ濡れになるレベルの雨であった。

何を隠そう。私は晴れ男(…と思っているの)で、雨に降られることはそんなに多くない(…と思っている)。
論より証拠だ。それを証明する為、過去1年間のデモ撮影時に雨に降られた確率を出してみると、「14%」という低そうな数値が出てきた。
年間降雨日数の全国平均は大体120日くらいなので、日本の年間降雨確率は大雑把であるが「33%」になる。果たして、この数値と比較して良いのか疑問が残るが、秋山理央の降水確率は平均値とかなりの差をつけて良好であることが分かった。
データを調べるのに時間が掛かったわりに、「自称 晴れ男」というちょっと頭悪そうな称号が得られただけだったのは、反省したほうが良いかもしれない…。
実際にあまり雨に降られないという感覚もあるが、天気が悪そうなら行き先を変更するという選択もしているので、数値が低かったのはそれもあったのかもしれない。


これほど凄い雨の場合は基本的には中止になるのだが、デモが出発した時点で雨は降っておらず開始20分後に降り出した。それから30分ほど土砂降りの雨が降り続いた。デモは1時間くらいだったので、大体半分くらい雨に降られていた事になる。最後尾がゴールする少し前に雨は上がり、中止になることなく行進は完遂された。デモ隊の人々はよく耐えたものだと思う。

社会運動において、「気合い」や「根性」という言葉は必須であるというようなイメージがあるかもしれないが、必須なんてことはない。むしろ、「日常」とか「持続可能」みたいな言葉の方が必須であるし、今の実態を良く言い表しているような気がする。
一部のコアな人々が「気合い」や「根性」で行なうのではなく、「日常」に即した「持続可能」で無理をなるべくしないようにして多くの人で行なった方が楽だし、効果が高いはずだ。
しかしながら、無理をしなくちゃいけない局面はあるし、押さえきれない想いが無理をさせてしまう時もある。ただ、その無理をしてでも行動をするべき時期は後になってみないと分からないので、今を生きる我々にとって非常に難しいところだ。

私はどうしても今回の安保法案に反対する各地のデモと、2012年の大飯原発再稼働に反対するデモが全国に広がった時のことを重ねてしまう。当時感じた勢いや力強さを、今回の雨の中のデモや各地のデモでも感じているからだ。
今のデモは当時に比べ参加者の幅が広く、若者が主催しているデモが全国各地で起きていることが最大の特徴である。ここのところ撮影に「若者デモ」だけを選ぶことができているくらいに全国的にデモの回数も多く、気付けば「戦争法案に反対する若者たち」シリーズも8回目である。

間もなく九州北部も梅雨明けし、安倍政権に反対する暑い夏がくる。



[2015年7月19日(日)・福岡県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』

7月18日(土)、山梨県甲府市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
コーラーを務める大学生が乗ったサウンドカーを先頭に老若男女150名が、甲府駅北口「よっちゃばれ広場」を出発し、JR中央本線・身延線に架かる跨線橋を渡り、甲府城跡前・甲府駅南口を通り、山梨県庁前で解散という約1時間のコースを行進した。


[動画]戦争いやじゃん 若者怒りのデモYamanashi – 2015.7.18 山梨県甲府市(7分58秒)

この映像を観て、警察官の姿が全く写っていないことに気付いただろうか。もちろん、写さないように撮影したわけではなく、編集で消したわけでもない。単に警察がデモの警備に来ていなかったのだ。
通常、デモの際はその地区を管轄している警察署の警備課や交通課のお巡りさんが警備にやって来て、交通整理やデモ隊の安全確保をする。申請をして許可されたデモの警備は警察の仕事ではあるのだが、場所や人数によっては来てくれないこともある。

これまで取材で全国約460回のデモ行進を見てきたのだが、警察の警備がない状態で行われていたのは「12県15ヶ所」だった。しかもこのほとんどが、車が走っていない歩道を通行する「歩道デモ」だった。
車道を通行する「車道デモ」に警察が来ない例は少なく、宮崎県宮崎市・宮崎北警察署の管轄と山梨県甲府市・甲府警察署の管轄の2ヶ所だけだった。今回のように、デモ隊に車両がある状態で警察ゼロというのは特にレアケースである。

警備の警察官がいないと自分達だけで車の走る車道を歩かなければならず、それなりの警備スタッフも必要だし、交通量の多い車道では恐怖を感じることもある。普段は警察なんてデモの邪魔だと思っていても、デモに警察官が来てくれなかったり、極端に人数が少なくて危なかったりすると、「もっといて欲しい」という気持ちになる。
実際、彼らはプロなので車の整理には慣れていて手際が良い。時には信号操作を行い車道の混乱を最小限に抑えながらデモ隊を進ませてくれる。地域によってドライバーの性質も違うので、信号を操作して一気にデモ隊を通す所もあれば、信号でデモ隊を停める所もある。ついでに言えば、信号で分断されたデモ隊を待って合流させる所もあれば、構わず進めてしまう所もある。このように警察のデモ警備は地域によって全然違うので、普段と違う場所のデモに参加した時は面白いので観察してみて欲しい。


上の写真はサウンドカーとして使っていたトラックの荷台を写したものだ。南国っぽいフラワーリースばかりに目が行ってしまうのだが、ここではそれが飾っている本体に注目して頂きたい。デモで良く見かける大きめの拡声器を4台並べて置いていて、そのうち2台からワイヤレスマイクの音を出し、残りの2台から音楽を流していた。音質はスピーカーには劣るものの、大きな音が出ていたし必要充分な装置であると思った。
非常に簡素なサウンドシステムなので、スピーカーやアンプが不要なので発電機もいらなくて非常に手軽だ。荷台の上は機材らしきものがほとんど見当たらず、誰かの部屋から持ってきたような黒いカラーボックスが水を入れた重しに支えられて置いてあるだけだ。もちろん、これは車が動いている時につかまる為だけにあるわけではなく、棚の上段には音楽を出力しているiPhoneが置かれている、いわばサウンドシステムの心臓とも言える部分なのだ。

そんな手作りで実戦向きのサウンドカーに若者たちは交代で乗り込み、思い思いのスピーチを行なった。

「安倍さん、あなたの仕事はなんでしょうか。
安倍さんの思いを国民に押し付けることではないのです。
国民の思いを聞くことが安倍さんの仕事です。
正直、ちょっとこういうところは慣れていないんですけれど、
自分が何もせずに、『いつかそうなるだろうな』って思ってたっていうのはずるい言い訳だと思ったので、
今日参加させて頂きました」

「この国の主権者は僕たちです。
僕たちが政治を動かすし、僕たちが政治家を動かすんです。
今回、安保法制、衆議院本会議でこないだ可決されましたけど、絶対止めたいと思います。
でも、絶対止められなくても、これ止められなくても、
いやこれ自衛隊海外に出そうとしたらふざけんじゃねえと、
絶対海外に出そうとしたら投票してやんねえぞ、絶対引きずり下ろすぞ、
と圧力をかければいいんです、僕たちが。
僕たちが政治家を動かすんです」

何もできず、見ていることしかできないなんて決して言わない。絶望以外の未来を信じるだけでなく、実際に山梨から国会前で行なわれている抗議にも参加し、こうやって地元でも声を上げている若者がいる。
いや、「自分がやる」と決めた若者たちがここ山梨にもいた。



[2015年7月18日(土)・山梨県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』








「戦争法案」が衆議院の特別委員会で強行採決された7月15日、それに反対する市民10万人が国会議事堂前に大集結した。
19時半、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)が主導した抗議時間になると、「安全保障関連法案に反対する学者の会」からは発起人の上野千鶴子・東京大学名誉教授、同会呼びかけ人の山口二郎・法政大学教授が登壇。学生を鼓舞するスピーチに国会前は一気に怒りのピークタイムを迎えた。野党からは民主党・枝野幸男幹事長、共産党・志位和夫委員長、社民党・吉田忠智党首といった党幹部らも続々と駆けつけ、学生らに囲まれながらマイクを握り、共に怒りの声をあげた。
国会前にはこのようにスピーカーや参加者として学生を支える「大人」の他に、抗議を無事に終えられるよう、抗議に慣れていない参加者でも安心して来ることができるようにと、自主的にガードをして見守る「大人」や、ボランティアの給水所や救護所を作り、抗議の場を支える「大人」が学生と「共闘」している。

今や、世代、立場、党派を超えた人々の抗議の「器」となったSEALDsの国会前抗議ではその夜、歩道から溢れ出した人々が国会正門前の車道上にまで広がり、若者たちの怒号のようなコールが深夜まで鳴り響いた。

SEALDs:サイト / Twitter / Facebook

[2015年7月15日(水)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

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7月12日(日)、鳥取県鳥取市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。県内や島根県、兵庫県北部から集まった若者が安倍政権に対し反対の声をあげた。総勢30名ほどのデモ隊であったが、約15名の若者がおり全体の半数を占めていた。少ないと言われてしまえばそれまでだが、この一団が踏み出した一歩は決して小さいものではない。


[動画]7.12戦争法案反対デモ@鳥取 – 2015.7.12 鳥取市(3分26秒

この中にはデモに参加することに強い抵抗があり不安を抱きながら歩いていた若者もいて、本当に凄い勇気を出してデモに来ていたのだ。そんな想いを考えてしまい撮影している最中に泣きそうになってしまった。
山陰ではそもそもデモが頻繁には無いし、無党派デモは成熟していない。きっと孤独な想いをしている人が多くいるはずだ。

だからこそ、この鳥取の若者デモは山陰の希望に見えた。
デモは単なる示威行為ではなく、同じ考えを持つ人々の集まる場所でもあるので、人数が少なかろうが大きな一歩を踏み出した若者たちがそこにいたことは事実だ。

話は変わり、ここでご当地ネタを挟んでおく。デモが通った、人通りのない商店街にスイカが植えてあった。鳥取県はスイカ国内生産4位なので、鳥取の誇り(あるいは単にポピュラーな植物なのだろうか…)として商店街でも育てているのだろう。ちゃんと手入れがされていたので、平日はもしかしたら人がそれなりにいるのかもしれない。
そして、デモを撮影して気になったのは、映像2分35秒に写る「鳥取カレー」のノボリだ。鳥取市は1世帯あたりのカレールー消費量が全国1位らしく、住んでる人みんなカレーが大好きらしい。しかしそんな売り出し方をされても「だから何なんだ」と思ってしまう。とは言いつつも鳥取グルメには魅力的なものが多く、私は鳥取カレーは後回しにし「牛骨ラーメン」を選んだ。どうしても気になっていたので、デモ後、汗だくにも関わらずラーメンを食べてきた。これがさっぱりしていて非常に美味しい。もっと時間があったら話題の「すなば珈琲」にも寄ったり、美味しい物をもっとたくさん食べてきたかったのだが、鳥取駅から自宅まで電車で7時間もかかるので、16時50分にはもう出なくてはならなかった。
毎週のように全国を旅しているので、名残惜しさにはもう慣れてはいるのだが、それでも「また来れるよね」と思いながら私は帰路につく。

もう一つ名残惜しい、というか心残りだったのが、鳥取大学3年生の実行委員長が都合で来れず会えなかったことだ。
代表が欠席というのは、忙しい大学生らしく、リアルな生活が透けて見えるのでそれはそれで良いと思う。
デモをやるような人も何ら普通の人と変わりない単なる生活者で、当然自身の生活がある。
自分の都合を優先するのは信頼できる仲間がいるからできることで、主催したデモを欠席したことで彼の評価が下がることもない。

そんな彼、実行委員長の堺泰樹さんからのメッセージがデモ出発前の集会時に読み上げられたのだが、以下に一部を抜粋する。

「戦争で待っているのは罪無き人間の死ではないでしょうか。
自衛隊員が死に、他国の兵士が死に、民間人が死にます。
テロが起これば日本国内で戦死者が出ます。
そんな愚かな国、そしてそれを認めた愚かな国民になりたくありません。
僕は僕達の声でこの命を守りたいと思います。」

そう、私たちは今ならまだ「声で守る」ことができるのだ。
だから、鳥取から、各地から、私たちはもっともっと声をあげていかなければならない。
鳥取で再び若者が声をあげる時、彼らをまた撮りに来ようと思う。



[2015年7月12日(日)・鳥取県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
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世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』

 

小雨が降り、風が吹きすさぶ新潟市で戦争法案(安保関連法案)に反対するデモが行なわれた。
出発前にはもう先導車に施された装飾は全て吹き飛んでしまい、ただの軽トラックになっていた。
コーラーも今回が初めてだと言っていたが、慣れていない人々が動き出しているという良い例である。


[動画]若者憲法デモin新潟 – 2015.6.28(4分13秒)

新潟駅前を北西へ向けて出発したデモ隊は、萬代橋で強風に煽られながら信濃川を渡り、白山公園前まで約1時間の行進を行なった。
雨ということもあって街にそんなに多くの人が歩いていなかったのだが、それでもデモ隊を応援してくれる人は何人もいた。
デモを見た女子高校生達からも「集団的自衛権」「安保」「自衛隊」などの単語を使っての会話が聞こえてきた。

国民の「戦争法案」への関心は高いだけでなく、こうして「若者デモ」という新たな現象が発生してきている。
この新潟のデモに関して言えば、若者は10名程度で全体としては「大人」の方が多かった。
しかし、主催したのは若者で、普段の新潟市のデモには若者はほぼいないため凄い変化だと私は感じた。


ところで、私は全国各地のデモを撮影して回っているのだが、なるべくその地域の特色を出すように心がけている。
新潟は酒どころだけあって、街に日本酒の看板や酒瓶の展示があったので動画や写真に入れ込んでみた。
各地の人々の想いは、その土地の風景とセットで届けるべきもので、街の記録と共にデモを撮影し広めることに努めている。
その場所でデモをすることを選んだ人々を全面的に肯定したいと思ってのことだ。



ローカル・ムーブメントは確実に起こっている。
今、多くの大人たち、そして若者たちが彼らの街で声を上げている。

[2015年6月28日(日)・新潟県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
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《ウィークリー理央眼》
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都
◎《004》若者に影響された沼津の戦争法案反対デモ
◎《003》自民党街宣へのカウンターin福岡・天神
◎《002》福島/名古屋ヘイトデモ反対行動
◎《001》150回目の首相官邸前抗議

巻頭グラビアは「理央眼」!話題の『紙の爆弾』8月号発売中!

 

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