7月12日(日)、鳥取県鳥取市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。県内や島根県、兵庫県北部から集まった若者が安倍政権に対し反対の声をあげた。総勢30名ほどのデモ隊であったが、約15名の若者がおり全体の半数を占めていた。少ないと言われてしまえばそれまでだが、この一団が踏み出した一歩は決して小さいものではない。


[動画]7.12戦争法案反対デモ@鳥取 – 2015.7.12 鳥取市(3分26秒

この中にはデモに参加することに強い抵抗があり不安を抱きながら歩いていた若者もいて、本当に凄い勇気を出してデモに来ていたのだ。そんな想いを考えてしまい撮影している最中に泣きそうになってしまった。
山陰ではそもそもデモが頻繁には無いし、無党派デモは成熟していない。きっと孤独な想いをしている人が多くいるはずだ。

だからこそ、この鳥取の若者デモは山陰の希望に見えた。
デモは単なる示威行為ではなく、同じ考えを持つ人々の集まる場所でもあるので、人数が少なかろうが大きな一歩を踏み出した若者たちがそこにいたことは事実だ。

話は変わり、ここでご当地ネタを挟んでおく。デモが通った、人通りのない商店街にスイカが植えてあった。鳥取県はスイカ国内生産4位なので、鳥取の誇り(あるいは単にポピュラーな植物なのだろうか…)として商店街でも育てているのだろう。ちゃんと手入れがされていたので、平日はもしかしたら人がそれなりにいるのかもしれない。
そして、デモを撮影して気になったのは、映像2分35秒に写る「鳥取カレー」のノボリだ。鳥取市は1世帯あたりのカレールー消費量が全国1位らしく、住んでる人みんなカレーが大好きらしい。しかしそんな売り出し方をされても「だから何なんだ」と思ってしまう。とは言いつつも鳥取グルメには魅力的なものが多く、私は鳥取カレーは後回しにし「牛骨ラーメン」を選んだ。どうしても気になっていたので、デモ後、汗だくにも関わらずラーメンを食べてきた。これがさっぱりしていて非常に美味しい。もっと時間があったら話題の「すなば珈琲」にも寄ったり、美味しい物をもっとたくさん食べてきたかったのだが、鳥取駅から自宅まで電車で7時間もかかるので、16時50分にはもう出なくてはならなかった。
毎週のように全国を旅しているので、名残惜しさにはもう慣れてはいるのだが、それでも「また来れるよね」と思いながら私は帰路につく。

もう一つ名残惜しい、というか心残りだったのが、鳥取大学3年生の実行委員長が都合で来れず会えなかったことだ。
代表が欠席というのは、忙しい大学生らしく、リアルな生活が透けて見えるのでそれはそれで良いと思う。
デモをやるような人も何ら普通の人と変わりない単なる生活者で、当然自身の生活がある。
自分の都合を優先するのは信頼できる仲間がいるからできることで、主催したデモを欠席したことで彼の評価が下がることもない。

そんな彼、実行委員長の堺泰樹さんからのメッセージがデモ出発前の集会時に読み上げられたのだが、以下に一部を抜粋する。

「戦争で待っているのは罪無き人間の死ではないでしょうか。
自衛隊員が死に、他国の兵士が死に、民間人が死にます。
テロが起これば日本国内で戦死者が出ます。
そんな愚かな国、そしてそれを認めた愚かな国民になりたくありません。
僕は僕達の声でこの命を守りたいと思います。」

そう、私たちは今ならまだ「声で守る」ことができるのだ。
だから、鳥取から、各地から、私たちはもっともっと声をあげていかなければならない。
鳥取で再び若者が声をあげる時、彼らをまた撮りに来ようと思う。



[2015年7月12日(日)・鳥取県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』