7月20日(月・祝)、熊本県熊本市中央区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。路面電車がすぐ横を通る辛島町公園で集会を行い、アーケード街を下通〜上通まで総勢600名で行進した。
このデモを企画したのは、熊本の学生・若者を中心に組織された『WDW(We Disagree with War=「私達は戦争に反対する」)』だ。


[動画]戦争法案反対×若者デモin熊本 – 2015.7.20 熊本市(4分8秒)

600という数字を聞いて正直驚いた。
この街でそれだけの人数を集めるのがどれだけ大変か、熊本でのコンサートやイベント等があまりないことからも想像に難くない。ましてや、エンターテインメント分野でも何でもない「デモ」でのことだ。熊本県には水俣病問題があり、社会運動の土壌がないというわけでもないのだが、非常に保守的な土地なのである。無党派市民のデモは成熟しておらず、大学生たちが独自に企画したデモがここまでの盛り上がりを見せたのは本当に凄いことだと思った。

私は全国のデモや抗議を撮影して5年目になるのだが、熊本でのデモ撮影は今回が初めてだった。デモの絶対数が多くないだけでなく、年齢の高い人々が運動の中心になっており、情報がほとんどネットに上がらず関東に住む私には捕捉することができなかった。
それに対し今回の若者デモは、ネットでの告知にも力が入れられており、告知が開始された日に私はデモの存在を知ることができた。もちろん、情報は結果として必要としている人へと届けば良いので、オフラインの告知が悪いわけでもないし、その優劣の話をしているわけではない。

今、全国各地で起こっている「若者デモ」を分類する場合、ネットでの告知をしていることが必須条件と言えるだろう。あるいは、SNSを活用しているというのが「若者デモ」の特徴の一つと言える。
今回のデモも見ず知らずの大学生ら4人の若者がネットで出会い、行動を起こしたという。それはインタラクティブなデジタルメディアが切り開いた、情報収集と発信を欠かさない今の運動を象徴しているようだ。

上に掲載した映像にスピーチが収録されていないのは、デモコースがアーケード内だったので、拡声器の音が物凄く反響していて内容が聞き取れなかったから編集でカットしてしまった。
これは録音した音声だけでなく、現場にいても喋っている内容を聞き取るのは大変だったので、アーケード内では思い切ってスピーチを無しにしたり、拡声器を向ける方向や音量を下げたりして反響を減らす工夫をしたほうが良いだろう。またアーケード街は商店街であるので、音が大き過ぎる行進は迷惑になる。

厳しいことを言うようだが、現場でのスピーチの効果については疑問を持つことが多い。それは、足を止めてデモのスピーチを聞く人は少ないし、話し手は移動し続けているので、沿道で通して聞ける人はいないからだ。断片的な言葉が耳に入るだけでは、歩いている人は聞き流してしまい、何の話かもわからずアピール力は少ないと思ってしまう。
であるので、取材や記録のカメラに向けた良質な音声の提供ということを戦略的選択としてするのも一つの手としてあることを頭の片隅に置いておいて欲しい。撮影されたデモの動画が拡散されることによって、街中では断片的にしか耳に入らなかった言葉がひとつのスピーチとして再びその存在が形となり、全世界をも駆けることになる。市民にとって意思表示をするツールとして、動画は非常に有効で大きな「武器」になる。

とは言うものの、カメラを意識し過ぎては街の人に伝わらないので、その場にいる人を意識してアピールをしなくてはならない。街の人々に届かない言葉は、カメラや記者を通した先の人々にも届かないと思って臨むべきだろう。



ここ火の国からも安倍政権が進める国づくりに抗う狼煙があがった。

[2015年7月20日(月・祝)・熊本県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《014》緊急寄稿・朝日新聞と冨永特別編集委員のおわび
◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

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