今回も豪快なKOが続いたNKB闘魂シリーズ!

高橋聖人の左ハイキックが安田浩昭にヒット
立ち上がってきた安田浩昭に飛びヒザ蹴りの高橋聖人

  

◆安田浩昭 vs 高橋聖人

過去1勝1敗の、ひろあき(=安田浩昭/SQUARE-UP)vs 高橋聖人(真門)戦は予想された展開で、安田浩昭のパンチ主体と高橋聖人の上下散らす多彩な蹴り。

昨年12月は一瞬の隙を突いた安田浩昭が右フック一発で倒しているが、今回の流れは前回の轍を踏まない高橋聖人の距離を保った蹴りが増していく。

安田浩昭は蹴りでは優ることが出来ず、前回同様パンチしかない中、高橋聖人がローキックから左ハイキックヒットに繋ぎ、見事にダウンを奪った。

効いている安田浩昭に更にパンチ連打とローキック、ヒザ蹴りとラッシュし、最後もローキックから左ハイキックで倒すとレフェリーはノーカウントで試合を止めました。

NKBタイトルでの三兄弟による同時三階級制覇を達成した高橋聖人は「ここからがスタート」と言うとおり、今後はファンの厳しい目線で注目される、真の日本のトップに立つチャンピオンロードが始まります。

崩れ落ちた安田浩昭、高橋聖人は勝利確信
勝利の瞬間、高橋三兄弟が喜ぶ
打ち合いに出る西村清吾
夢中でヒザ蹴りヒットさせた西村清吾
ヒットしたらYOSHIKIが転落した
無意識に戦う本能でリングに戻ろうと立ち上がる
カウントアウトされたことに気付くYOSHIKI

◆西村清吾 vs YOSHIKI

パンチとローキック主体の攻防は単発で流れが盛り上がらない中、第2ラウンドにはパンチから軽く飛んだヒザ蹴りでダウンを奪った西村。しかしその後、組み合っての西村のヒザ蹴りでYOSHIKIに股間ファールブローを当ててしまい中断。再開後、組み合ってのブレイクの際、今度はYOSHIKIのヒザ蹴りで西村の鼻骨部分を切る負傷。折れた疑いもあってドクターチェックが入る。その後、組み合って反則紛いの加撃にエキサイト気味に進むが、クリーンヒットそのものは少ない。

第4ラウンドに西村のパンチ連打でバランス崩したYOSHIKIがロープ際に吹っ飛ぶと西村は勢いつけて飛びヒザ蹴りを当て、YOSHIKIはリング下に転落。パンチと飛びヒザ蹴りとリング下に落ちた衝撃でダメージ深いYOSHIKIは何とか立ち上がり、リングに戻るが規定の20カウントアウトとなり、西村のKO勝ちとなる。

◆パントリー杉並 vs 白井達也

ローキックのけん制からパンチのスピーディーな打ち合いは次第に距離が詰まり、ボディーへストレートパンチから左フック、そしてローキックへ繋ぐパントリー杉並。互いに似たような戦略で激しさが増していく。

ガードが空き気味の両者。パントリー杉並の左フックで白井からダウンを奪う。更に仕留めに掛かろうとパンチの打ち合いが増す中、白井の左フックがヒットし、パントリーがダウン。

立ち上がろうとするも足がもつれるとすぐにレフェリーがカウント中の試合ストップ。悔やむ表情のパントリー杉並。8月には新日本キックの治政館興行に臨むパントリー杉並は、打たれない注意をしなければならないでしょう。

既存する団体の中では最も古くキックボクシングに関わってきた代表同士の団体、新日本キックボクシング協会との交流が実現へ!

7月8日(日)新日本キックボクシング協会MAGNUM.47では、ライト級3回戦、日本フェザー級1位.髙橋亨汰(伊原)vs NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館)戦が予定され、8月4日(土)新日本キックボクシング協会WINNERS 2018.3rdに於いて、NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK)、NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並)、NKBバンタム級5位.海老原竜司(神武館)らが出場予定。

10月13日(土)日本キックボクシング連盟・闘魂シリーズvol.4では、NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK)vs 日本ミドル級1位.今野明(市原)戦が予定されています。

◎闘魂シリーズ vol.3 / 2018年6月16日(土)後楽園ホール17:15~20:40
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第13試合 第15代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE-UP/57.05kg)vs 3位.高橋聖人(真門/57.15kg)
勝者:高橋聖人 / TKO 3R 2:30 / 主審:前田仁

◆第12試合 73.0kg契約5回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM-KOK/72.9kg)
VS
YOSHIKI(大和魂一族/72.5kg)
勝者:西村清吾 / KO 4R 1:19 / 主審:鈴木義和

◆第11試合 ライト級3回戦

NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/61.05kg)vs 白井達也(TRY-EX/61.15kg)
勝者:白井達也 / TKO 2R 2:20 / 主審:佐藤友章

◆第10試合 ライト級3回戦

NKBライト級4位.野村怜央(TEAM-KOK/60.9kg)
VS
WMC日本フェザー級5位.藤野伸哉(RIKIX/60.8kg)
勝者:藤野伸哉 / 判定0-3 / 主審:川上伸
副審:前田28-30. 鈴木27-30. 佐藤28-30

白井達也(左)の反撃で再び打ち合い
白井の逆転の左フックでパントリー杉並が倒れる
崩れ落ちたパントリー杉並
セコンド陣と喜びツーショットの白井達也

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

ガオパヤック・ワイズディー(タイ/55.6kg)vs 加藤有吾(RIKIX/56.0kg)
勝者:加藤有吾 / TKO 2R 0:35 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

◆第8試合 フェザー級3回戦

NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/56.9kg)vs 石川翔(BIGMOOSE/57.15kg)
勝者:石川翔 / 判定0-3 / 主審:佐藤友章
副審:川上27-28. 前田27-29. 鈴木27-29

◆第7試合 ウエルター級3回戦

NKBウェルター級5位.SEIITSU(八王子FSG/66.68kg)vs 青地大祐(TRY-EX/66.55kg)
勝者:SEIITSU / TKO 1R 2:38 / ヒザ蹴りによるカット、ドクターの勧告を受入れ、レフェリーストップ
主審:川上伸

◆第6試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.佐藤勇士(拳心館/53.4kg)vs スダ456(BRING IT ON/53.52kg)
勝者:佐藤勇士 / TKO 3R 1:39 / ヒジ打ちによるカット、ドクターの勧告を受入れ、レフェリーストップ
主審:鈴木義和

◆第5試合 女子フライ級3回戦

サソリ(テツ/49.0kg)vs 後藤まき(RIKIX/49.5kg)
勝者:サソリ / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:佐藤30-28. 川上29-28. 鈴木30-29

◆第4試合 フェザー級3回戦

キョウスケ(大塚/57.1kg)vs 山本太一(ケーアクティブ/56.7kg)
引分け / 0-1 (30-30. 30-30. 29-30)

◆第3試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM KOK/61.1kg)vs 海登(光/60.7kg)
勝者:海登 / 判定0-3 (26-29. 26-29. 26-30)

◆第2試合 バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ/53.3kg)vs 五嶋龍太郎(KENSEIKAI/52.2kg)
勝者:古瀬翔 / 判定3-0 (30-27. 29-28. 29-28)

◆第1試合 フェザー級3回戦

岩田行央(大塚/57.15kg)vs 森田勇志(KENSEIKAI/56.6kg)
勝者:森田勇志 / TKO 1R 2:50 / カウント中のレフェリーストップ

《取材戦記》

アクシデントが発生した西村清吾vs YOSHIKI戦。

選手がリングから転落することは、なかなか遭遇することはありませんが、それでも過去の長い歴史の中では何度も起きています。有効打を浴びて転落した場合、プロボクシングでは20カウントでKO。キックボクシングでは団体によりますが、昭和の時代は日本系、全日本系とも通常のノックダウンと同様の10カウントでした。

昭和54年に、日本系では、当時の日本ライト級チャンピオン.有馬敏(大拳)のボディから顔面パンチの連打を浴びた小野寺仁(横須賀中央)はリング下に転落、リングに戻る前に10カウントアウトされた試合がありました。

プロボクシングでは、リングから落ちた選手を誰も助けることは許されないのがルールで、キックに於いては、落ちそうになっている選手を支えてやるジャッジや役員、セコンド、カメラマンを見ることがありますが、これも厳密には選手に触れてはいけません。しかし、落ちて深いダメージを負うことを未然に防ぐ為の、審判や試合役員が支えてやる処置は仕方ない範疇かと思うところでもあります。

また次の興行で何が起こるか、あらゆる事態を想定しておかねばならない審判員です。

NKBの日本キックボクシング連盟と、新日本キックボクシング協会との交流戦が発表されたのは、この日の興行より数日前でしたが、両団体代表が会談の場を持ったのは5月上旬だったと言われています。

キックの団体交流戦は昔からあり、乱立した現在では頻繁に行なわれ、珍しくはないものの、この両団体代表は、昭和のキック黄金時代からの波乱万丈の歴史を知り、ある時期は同じ団体で活動した仲であり、見ている側からは、金正恩委員長と文在寅大統領が南北軍事境界線で握手したことや、米朝首脳会談に至る諸々のシーンがダブってしまいます。

順調に進むことを願いつつ、一波乱あっても将来に繋がる何らかの進展があるであろう両団体の交流戦を届けたいものです。

チャンピオンベルトを掲げる三兄弟、歴史的快挙はこれから

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈31〉タイで三日坊主!Part.23 還俗・いい日旅立ち

やがて還俗する4僧とメーオを含む5僧の朝の読経
懺悔の儀式、まず先輩僧と後輩僧が組んで行なうのが基本
立場を交替で行なう懺悔

寺に入って1ヶ月が経過。それなりに悩み、真新しい発見があり、今度は信者さんから撮影を頼まれたり、寺の生活に対応力が付いてきたのも確かな手応えでした。

◆ブンくんらの還俗!

11月30日は3僧の還俗式。朝4時30分から読経があると聞いていたので、私もいつもより早く起き、皆の様子を伺い撮影に入りました。今日の3僧の他、近々還俗するトゥムくんも参加。先輩僧として4僧の懺悔に立ち会うメーオくんも加わり、5僧が読経と懺悔の儀式を行ないました。

私は托鉢に向かうも、還俗する3僧はクティに残り還俗式の準備に掛かります。その後、朝食前に3僧の還俗式が始まりました。還俗式と言っても得度式のような半日掛けるような儀式は無く、和尚さんと還俗者だけの問答で終わる数分のことで、3僧が和尚さんの前に座り、形式的な流れながら、還俗を願い出る言葉と認める和尚さん。

その後、部屋に戻って黄衣を解くと、もう黄衣を纏うことは許されない俗人に生まれ変わります。新たな旅立ちとなる白いシャツを着て、元の俗社会に居た時のジーパンを穿き、和尚さんの元へ戻って最後の挨拶。時間にして10分程度。あっけなく終わるのが還俗式でした。黄衣を脱いだ3人は初々しい姿。いい日旅立ちとなった彼らはこれからどういう人生を歩むのだろう。短い間だったが、“同窓生”として絆を深めた仲を忘れないでいてやりたいと思う。

懺悔の儀式。全員でやる場合はあちこちに広がります
この日還俗する3僧と立ち会ったメーオの4僧で撮影
還俗式に入り、和尚さんの前に向かう3僧
再び和尚さんのもとへ戻るが、今度は俗人として一段低い位置に座ります
聖水を掛けられ、今後も仏教徒として教えを守り、務めを果たしていくことを誓って終了
還俗したばかりの3名を撮る
部屋に戻って黄衣を解き、私服姿となったブンくん

◆ブンくんの部屋に引っ越す!

朝の雑用を終えると、今度は私の部屋引越しが始まりました。ブンくんが居た部屋は藤川さんの部屋と同じ広さ。陽射しが入り暑い。外は道路工事が始まっており、土埃が舞い、部屋まで入ってくる厄介さ。元の部屋は広く涼しく、葬儀場が見えて比丘の動きが分かりやすかったのに、今度は周りの様子が見え難く聞こえ難いが、一人部屋の魅力は捨てられない。部屋の左隣はやがて還俗するトゥムくん。右隣はアムヌアイさん。皆が私の部屋に出入りし、ブンくんが残していく物を貰おうと集まる心理は、鬱陶しいが仕方ないか。黄衣やバーツは誰も手を付けず、ブンくんが「使っていいからね」と私に置き土産を頂きました。還俗した者は恩返しに数日寺に残り、比丘のお世話をしていくそうで、今日はまだ寺でのブンくんの姿を見ていました。

◆藤川さんの長話!

一人部屋となってウキウキしていると、時間の経つのは早いもの。夕方頃、外で洗濯していると藤川さんから声が掛かりました。

「ケーオに書類頼んだか?和尚が何も分かっていないから文書にせい、内容を教えるから来い!」と言われて藤川さんの部屋に向かうも、それから想定外の事態に至りました。移った部屋にはまだブンくんも覗きに来ているだろうし、話したいこともあって部屋に戻りたいが戻れず、そこから延々藤川さんの話が続くのでした。

「ビザというもの、何の為にラオス行くかも、バンコクに行ったのも和尚も副住職もケーオも何も分かっとらんぞ。そういう事情を和尚宛に文書にしておけ。そうしておけば後々“知らん”では済まされんから!」

そんなことはもう準備していたし、普通立ち話で2分で済む話。しかしそこから延々続く説教話。私の日々を見ての苦言、藤川さんの生き様となる大林組、不動産業、タイでのビジネスを経験してきた話、笑い話もない中、その他もう何を言われたか覚えていないぐらい延々続きます。

ほんの数日前もナコンパノムへ行った際、立ち寄ったバンコクで先日のような知人に散々喋って来ただろうに、何をまた私にここで鬱憤晴らしする必要があろうか。説教とは言えない、単なるストレス発散である。お陰で私はストレス溜まるだけ。夕方6時過ぎから延々続く中、1回トイレに行かせて貰った以外、12時過ぎまで喋っていた藤川さん。止まらないのである。こちらは頷くだけ、対話になっていないのだ。気付けよ、明石家さんまか、アンタは(心の訴え)。その間、何も飲まずに、冷蔵庫に飲み物を持っているくせに何も出してくれなかった。この喋り出したら止まらない人間の思考回路はどうなっているのだろうかと思う。

12時を回って眠くなったか、ようやく話を終えてくれた藤川さん。最後に部屋を出る時に「少々“ヤケド”してもいいから還俗したら思い切ったことをやってみい」と忠告だけは記憶に残る。修行中は藤川さんを師匠と位置付けていた為、頭に来ることはいっぱいあって、時々私もキレるが、極力逆らうことはしませんでした。
クティ内は皆眠りに付いて静まり返った暗い中、移ったばかりの部屋へ向かう。還俗したブンくんはどこで寝ていることやら。待っていたとしたら申し訳ないところ。

◆ビザというもの──難航する書類作成!

私と藤川さんは仏門で227の戒律を守り、修行する比丘の身である。しかし我々は所詮日本人。戒律以前に日本の法律、国際ルールを守らねばならない。タイでは観光ビザは60日(延長含め90日)、ノンイミグレントビザは3ヶ月滞在できますが、この期間を超えて滞在すると不法滞在となります。その為、期限前に国外に一旦出なければなりません。タイ周辺国に出るには、ノービザで行ける国がマレーシア、ビザが要る国がミャンマー、ラオス、カンボジアだったと思いますが、日本へ一旦帰国することも一つの手です。この辺の事情が、ウチの寺の和尚さんはどこまで分かっているか。時期が来ると毎度、タイ滞在ビザ取得の為にタイ国外へ出る苦労を、分かっていないだろうと藤川さんは感じられるのでしょう。

そんな不安を持ちつつ、ラオスのタイ領事館に提出する寺在籍証明書作成をケーオさんに頼みます。

「我々外国人はビザというものが必要で、比丘であってもタイに滞在する外国人なのです……」とまで説明すると、「分かってるよ、不法滞在になってしまうことは。ビザが要るんだろ、だからラオスに行くと。マイペンライ!書類は作ってやる。いつ行くんだ?」
と話は早かった。期限が迫ってもなかなか慌てないのがタイ人。せかす意味で「バンコクの友達に先に渡すから早目がいい」とウソをつく。戒律違反のウソである。

このケーオさんは前に述べたとおり、元々勘が良く、すぐに動く人だった。パスポートと比丘手帳を持って行き、手が空くと部屋に戻って必要事項をタイプライターで打ってすぐ持って来てくれました。しかし各所日付が間違っています。出家前のタイ入国日は必要無く、得度した日と申請日が間違っている。やること早いが打ち間違いが多く、その都度、修正液塗って打ち直し、また修正液。それが折り目となると乾いた修正液がヒビ割れする始末。ここを「マイペンライ!」で済まそうとする一般的タイ人でなく、「やり直そう!」と白紙から打ち直してくれるケーオさん。

面倒な作業を繰り返し時間を掛けて寺在籍証明書完成。これを持って和尚さんのサインを貰いに、ラオスに行く必要性を話しつつ文書にしたものを渡しますが、分かってくれるでしょうか。分からなくても書類にサインさえ貰えばいいので、極力機嫌の良い手の空く頃を狙ってお願いに向かいます。ラオスに向かう、いい日旅立ちも間近に迫りました。

移った部屋の外は道路工事中。土埃が舞う。数年後にはこの広い土地が商店広がる住宅街となる

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき最新刊『紙の爆弾』2018年7月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

若さとベテラン入り混じり、王座争うM-ONE興行!

2016年11月23日にデビューしたMASATOと柊斗が6戦目でWPMF日本王座狙うも、スーパーバンタム級の柊斗は計量失格の波乱。医科大学生MASATOがウェルター級で王座獲得。「KNOCK OUTイベント」の主軸のRIKIXジムからベテランの長谷川健がライト級で王座獲得。

◎M-ONE 2018 2nd 6月3日(日)新宿フェイス 16:30~19:26

主導権支配して、どの距離からでも攻めに出たMASATO
MASATOの前蹴りが喜入衆の距離感を狂わす

◆第9試合 第5代WPMF日本ウェルター級王座決定戦 5回戦

1位.MASATO BRAVERY(BRAVERY/25歳/66.35kg)
VS
3位.喜入衆(フォルティス渋谷/39歳/66.68kg)
勝者:MASATO BRAVERY / TKO 3R 1:19
主審:チャンデー・ソー・パランタレー

MASATOの前蹴り中心のけん制が目立つ第1ラウンド、時折ハイキックも繰り出す。喜入はいつもながらのパンチとローキックが力強い。第2ラウンド、続く攻防が激しくなり、組み合うとヒジ振るうMASATOはインパクト強い攻め。喜入は続けてパンチ・ローキック中心の展開。第3ラウンドには、MASATOのヒジがヒットし喜入の額をカット、喜入の決死の猛攻が始まるが、レフェリーが出血具合を見てドクターを要請。ストップ勧告を受入れレフェリーストップとなりました。

MASATOの左ヒジ打ちが喜入衆の顔面にヒット
MASATOが王座獲得、右はウィラサクレックWPMF日本支局長
渡辺優太の左ローキックが柊斗の左太腿を潰しに掛かる

◆第8試合 第8代WPMF日本スーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

2位.渡辺優太(PKムエタイ/28歳/55.34kg)
VS
バンタム級4位柊斗(WSR・F西川口/18歳/56.35kg)
勝者:渡辺優太 / TKO 2R 2:02 / 主審:ソンマーイ・ケーオセーン

柊斗が前日計量で900gオーバー。当日再計量は16:00に行なわれ57.7kg
この試合は、渡辺が勝利した時のみ王座を認定となります。

初回は両者ローキックからミドルキックへ繋ぐけん制で様子見のラウンド。第2ラウンド、渡辺のローキックが決まりだす。蹴り応えあったか、左内腿を蹴ると呆気なくダウンする柊斗。続けて狙い定めた左太腿にローキックを続けると再びダウンした柊斗。そのままレフェリーがノーカウントのストップとなりました

足が麻痺してしまい、ヒザをついてしまう柊斗
渡辺優太が王座獲得、次は他団体チャンピオンと勝負か
2度右ストレートを喰らったDAIJUはダメージ深くレフェリーに支えられる

◆第7試合 第7代WPMF日本ライト級王座決定戦 5回戦

DAIJU(尚武会/36歳/61.23kg)VS 長谷川健(RIKIX/34歳/61.23kg)
勝者:長谷川健 / TKO 2R 1:27 / 主審:北尻俊介

初回、DAIJUのパンチとローキックの手数が長谷川を上回るが、長谷川の右ストレートでスリップ裁定ながらDAIJUが尻餅をつく。これで勢いに乗りかけた感じの長谷川だったが、第1ラウンド終了。次も長谷川がパンチで攻勢を掛け、接近すると膝蹴りも繰り出す。懸命に打って出るDAIJUだが、長谷川の優位の距離となって右ストレートをヒットするとDAIJUは一気に後退。すかさず組み合って更に右ストレートを打ち込むとDAIJUは倒れ込み、ダメージ深くレフェリーが試合をストップしました。

DAIJUの突進を防ぐ長谷川健の右ローキック
長谷川健が王座獲得、セレモニーでチャンピオンベルトを巻かれる

◆第6試合 スーパーバンタム級3回戦

島んちゅ泰(Y’ZD 沖縄/55.05kg)
VS
MITSURU(WSR・F三ノ輪/55.25kg)
勝者:MITSURU / 判定0-3 / 主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:ナルンチョン28-29. ソンマイ28-29. チャンデー28-29

MITSURUの左ミドルキックが島んちゅ泰にヒット

◆第5試合 58.0kg契約3回戦

疋田拓巳(T’s KICKBOXING/57.65kg)VS 酒井洋一(WSR・F西川口/57.55kg)
勝者;酒井洋一 / 判定0-3 / 主審:北尻俊介
副審:ナルンチョン28-30. ノッパデーソン28-29. チャンデー29-30

◆第4試合 スーパーライト級3回戦

嵐士(AKT/63.0kg)VS 池上貴将(WSR・F西川口/63.0kg)
勝者:嵐士 / TKO 3R 0:34 / 主審:ソンマーイ・ケーオセーン

パンチと上下の変化をつけた蹴り合いから池上貴将の左ローキックを返した嵐士の左ハイキックが池上の側頭部にクリーンヒット、バッタリ倒れた池上は担架で運ばれました。

嵐士の左ハイキックが池上貴将にクリーンヒット
この日も輝いていた2名のラウンドガール

◆第3試合 53.0kg契約3回戦

大崎草志(Struggle/52.75kg)VS 福間光佑(WSR・F三ノ輪/52.6kg)
勝者:大崎草志 / TKO 3R 1:45 / 主審:チャンデー・ソー・パランタレー

◆第2試合 57.0kg契約3回戦

JACK(WSR・F三ノ輪/55.95kg)VS 鮫島博人(WSR・F荒川/56.7kg)
勝者:鮫島博人 / 判定0-3 / 主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:チャンデー26-30. ソンマイ27-30. 北尻26-30

◆第1試合 67.0kg契約3回戦

TAMAJIRO(尚武会/67.0kg)VS 関川翔平(WSR・F三ノ輪/66.4kg)
勝者:関川翔平 / 判定0-3 / 主審:ナルンチョン・ギャットニワット
副審:チャンデー28-30. ソンマイ28-30. 北尻27-30

《取材戦記》

柊斗の計量失格でこの王座決定戦は、グローブハンディと減点1が課せられる条件となっていましたが、「ハンディは付けないことになりました」と審判団より連絡がありました。これは渡辺優太陣営からの「ハンディは不要」という要望だったようですが、これはプロボクシングルールと同様で、タイトルマッチに於いてはハンディは付きません。更に公式計量後での両者の体重差制限があり、「どうせ失格なら思いっきり増量してやろう」という思惑は許されません。また更に、グローブハンディは数年前から廃止されている様子で、失格側にグローブを重くすること自体に異論があるようです。

キックボクシング系での、タイトルマッチに於いても失格者に付けられること多いグローブハンディや減点は、タイトルマッチ制度のあらゆる見直しも必要かと思うこの競技です。

柊斗は2000年4月生まれで、2009年に誕生したM-1ジュニア(後にWPMFジュニア)格闘技で、25kg級から55kg級まで制覇し、2016年11月23日プロデビュー。計量失格と敗北で王座は遠のき、今後も試練は続くでしょうが、幼児期から鍛えられた力を今後見せて欲しい新世代組の選手です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき最新刊『紙の爆弾』2018年7月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈30〉タイで三日坊主!Part.22 比丘とカメラマン

葬儀で並ぶ8僧、ベテランほど上座側に座ります

◆藤川さんもデックワットも居ない理想の一人部屋が近くなる

滑舌よく読経するコップくん

仲のいい奴ほど還俗者が増えていく11月下旬、私の存在感が違った形で表れました。

寺の行事に振り回されながら、その様子に変化が見られる中、11月20日過ぎた頃のある日、「明日の朝は6時から9僧でニーモン(比丘を招く寄進)に行くから托鉢は行かなくていい」と前日にアムヌアイさんから言われるも、「私が行っても仕方ないだろうに」と思い、「読経出来ないからメンバーに入れないで欲しい」と言っても「日本人比丘に来て欲しい」のだと。それは藤川さんのことを指して言っているんじゃないかと思うも、私も含むのだという。

1台の車の固い荷台に比丘がギュウギュウ詰めに乗って向かった先は、観光地風のレストランがある土産物売店のようなところ。お店開きのお清めのようなニーモンでした。そこで読経後、食事になるのかと思ったら仕出し弁当のような料理を差し出され、持ち帰るだけ。特に日本人比丘が必要とは思えないのに、私をメンバーに含む意図は、和尚さんが企む客寄せパンダとなって、「ウチの寺は国際的じゃ、日本人比丘が二人も居る!」と言っているのだろうか。それに加え、「メンバーに入れてやってるんだから、さっさとお経覚えろよ!」とプレッシャー掛けられているのかもしれません。

午後はアムヌアイさんに着いて2人で広い境内の水撒きも続け、夕方の疲れてくる頃、境内にリヤカー式カキ氷屋がやって来ると、アムヌアイさんが奢ってくれて休息。結構体力回復するもんだ。身体が軽くなった感じ。けどカキ氷にアイスクリームが掛かったものを、比丘が午後、食べていいのだろうかと思う。

葬儀が終わって寛ぐ、左からイアットさん、アムヌアイさん、コップくん
女性から寄進を受ける際は、パー・プラケーン(黄色い布)を通して受け取ります

翌朝は竹の筒に入ったカーオラーム(蒸した餅米の甘いお菓子)売りが来て、みんな寄って集って買って食べていたが、そんなもの食ったら昼飯食えんだろうに。でも美味そうで私も欲しかった。物売りが寺に入って来るのは、比丘相手の商売にもなり、木陰で休息する場でもあるのです。人力三輪タクシーも同様。そのまま比丘が利用して外出することもありました。

またある日の朝は、アイスパン屋が来ました。コッペパンにナイフで縦に切れ目を入れ、アイスクリームを挟んで練乳が掛けられたような冷たく甘いパンである。これも結構上手い。若い比丘は続々買って食べる者多かった。

その日は私がブンくんに奢ってやりました。ブンは30日に還俗する奴。短い間だったが、彼にはいちばん世話になり、黄衣の纏い方やそれぞれの呼び方、分からないこと聞けば、大体は教えてくれて、覚えた方がいいという日々行なうお経や、葬式で使うお経の範囲を読経本に記入してくれた奴。この部屋が空いたら私がこの部屋に入ることを相談すると、ブンくんも賛成。今迄の部屋はデックワットが出入りする共同部屋。サイバーツされた信者さんの心がこもったお菓子や果物を、高校生デックワットが勝手に持って行くのでどうも落ち着かなかった。小学生デックワットは性格いいが、やっぱり何かと一人部屋がいいのである。

この日は8僧、招かれる葬儀のスケールによって人数も違ってきます
聖水を注ぐ親族のおばあさん達

◆葬式カメラマン!

25日にアムヌアイさんがやって来て、「ハルキはカメラマンだろ?葬儀を撮れないか?」と言われ、和尚さんが「頼んでみてくれ」と言ったらしく、私は葬儀を撮る“カメラマン”となりました。翌日もアムヌアイさんが「今日も頼む!」と言って来たり、和尚さんがいきなり部屋をノックして「オーイ、撮ってくれんか!」と言う日もあるほど。と言っても当然“プロカメラマン”ではなく、黄衣を纏った修行僧に変わりはない。日本では僧侶が副業を持つことは可能だが、タイ仏教では許されません。

部屋で準備して葬儀場に向かう際は、心はカメラマンに戻り、一眼レフカメラを構える。カメラなんて持ったこと無い奴らが、「あれ撮れこれ撮れ!」と煩いが、そういう素人意見は無視していちばん前まで行って記者会見でも撮るようにカメラを構える。元々、撮影は上手くはない上、信者さんのいる手前、比丘として振舞いに気を付けながらシャッターを押す。比丘の役目を果たしていない私が、寺の役に立っていることに、少し安堵の気持ちが沸いていました。

この連日の葬儀の重なりで、クティのホーチャンペーンにもお婆さんの遺体が運ばれて来て、後日ここで葬儀だという。遺体に寄り添っていた娘さんらしい人が去り際に急に泣き出し、送り人となる人生の節目を見ること多いこの数日。

翌日もこの遺体のある棺桶の前で普通に朝食。身近にこんな遺体があっても怖くも気持ち悪くもないが、朝早く起きてトイレに行く際はまだ暗く静まり返ったクティに棺桶がある。そこを横切る際に、ややビビッてしまう自分が居る。ただ手を合わせて通り過ぎるのみ。

連日の葬儀の中、数日前に還俗したラスくんとパノムくんが訪れました。ジーンズ姿で現れると、ずいぶん変わった人相と人格に見えます。ラスくんは「パンサー3回経験したんだ」と言う。私が3月に藤川さんを尋ねて来た時のこと覚えてるようだった。他の一時僧に混じっていると気が付かなかったがベテラン比丘だったのだ。
パノムは私の部屋に来て、「還俗してから女買いに行って来たぞ、ハルキは還俗したらどこの店行くんだ?」と言い出すアホである。「オレはなあ、バンコクの1000バーツする高級店だ!!」と負けずに自慢だけするも何か虚しい。

男性から寄進を受ける際は、普通に手渡しされます
葬儀の1シーン、親族関係の方々

◆和尚さんと取引き

後日、写真屋さんに行って、葬儀撮影フィルムを同時プリントではなく、現像後にスリーブ上にチェックを入れて「これプリントして!」とお店のオバサンにフィルムを差し出すと、「手出しちゃダメでしょ!」と窘められる始末。フィルムをジッと凝視していると比丘の立場をすっかり忘れ、女性に手渡しする行為に発展。うっかりしてしまった。オバサンも笑っていたが、こんなことも起こる比丘の日常です。

プリントした写真は約100枚。買ったアルバムに入れて和尚さんに差し出すと、その量に驚き「いっぱい撮ったな、幾らだった?」と言う和尚さん。経費は出してくれようとした様子ながら、そんなものすべてタダ(無料)渡しである。

その代わり、お願い事を立て続けに三つ言わせて貰いました。30日のブンくんら3人の還俗式を撮ること。空室となるブンくんの部屋に移ること。ビザ取得の為、寺在住証明書類に和尚さんのサインが要ること。いつもの簡単な「ダーイ」ではない、ちょっと“間”があるものの、「分かった、許可してやろう!」と言う返事。

「キヨヒロは旅が趣味で、ハルキはカメラが趣味か!」とでも思ったろうか。写真代は日々のタンブンで受けたお布施を使ったまでである。

◆続く還俗者!

27日の朝は、小太りのブイくんが還俗。飯を食う同じ輪を囲んだメガネのブンくんと同じ気心知れた奴だった。

そう言えばブイが、「ハルキがキヨヒロ(藤川さん)と話してるの見たこと無いけど話すことあるのか」と言われたことがありました。無視された日々だったから周囲からはそう見えるのだろう。こうして私の出家後、6僧が還俗して行きました。後日、更に5僧ほどが続くのでした。

寂しさが増す中、気になるのは近づくラオスのこと。相変わらずの黄衣の纏いの下手さ、足の痛い裸足の托鉢は、それらがあまり気にならなくなった頃でした。そして葬儀カメラマンやったことから、また新たな注文を受けてしまいます。

数日前に還俗したラスくん(左)、パノムくん(右)が寺に遊びに来ました

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき月刊『紙の爆弾』6月号安倍晋三“6月解散”の目論見/「市民革命」への基本戦術/創価学会・公明党がにらむ“安倍後”/ビートたけし独立騒動 すり替えられた“本筋”
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

石原將伍、初のメインイベントは大差で敗れる!!

ケンスワンの強い右ハイキックが石原を苦しめた
組み合えばヒザ蹴りの餌食に、組まれると最も苦しいヒザ蹴り
ケンスワンの何十発もの右ハイキックは石原の右腕脇腹が赤く染まる

昨年10月にチャンピオンとなってから一段と自信と発言力が増した石原將伍が「強い選手とやりたい。強い選手とやらなければ面白い試合にならない」と臨む。

それは強い蹴り、巧みなテクニック、アグレッシブな展開を見せる選手が望ましい。そうして選ばれ呼んで来られたのが、ケンスワン・サシプラパー。アグレッシブな展開を見せると言われるテレビマッチ、昨年までBBTV(タイ7ch)スーパーバンタム級4位だったという、こういった選手にどう立ち向かうかを石原將伍に与えたメインイベントの役割。

◎WINNERS 2018.2nd
5月13日(日)後楽園ホール17:00~
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆メインイベント 59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー/58.6kg)
VS
ケンスワン・サシプラパー(タイ/58.8kg)
勝者:ケンスワン・サシプラパー / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:少白竜46-50. 宮沢46-49. 仲46-50

想定どおり、ケンスワンは重く速いハイキックを繰り出し、石原を襲う。石原はパンチを狙うがその距離に入るには危険な賭けとなる。ケンスワンは首相撲に持ち込めばヒザ蹴りの脅威もあり、ボディ攻めや捻じ伏せての顔面ヒザ蹴りにピンチの石原。何とか致命的被弾は逃れるがケンスワンの右ミドルキックを再三受けた石原の左腕は赤く染まる。

第5ラウンドにはブロックした上からでも蹴ってくる威力に疲労困憊した石原はよろけるが、パンチの距離に持ち込むと最後の力を振り絞り一気に連打。ケンスワンにダメージを与えるには至らず、大差が付く判定負けとなったが、石原も持ち味を出し切った試合。

石原も得意のパンチを振るうが、なかなか難しい攻略
政斗の粘り強い蹴りもリカルドを苦しめた
打ち合う二人、リカルドも気を抜けない展開が続く

◆日本ウェルター級王座決定戦 5回戦

1位.政斗(治政館/66.3kg)
VS
3位.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/66.68kg)
勝者:リカルド・ブラボ / TKO4R 1:41 / ヒジによる顔面カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:桜井一秀

リカルド・ブラボはアルゼンチンでアマチュアキックを経験し、昨年4月に日本でプロデビュー。6戦全勝(4KO)の戦績を残している。日本に来て修行したキックボクシングとタイ人トレーナーから学んだムエタイ技とはまた違う、中南米のパワフルなリズム感と攻撃力が光った攻め。わずか1年でチャンピオンに達する実力が身に付いていたリカルド・ブラボ。

政斗も2度目の王座挑戦となり、ここまで勝ち上がって来た中には粘り強い攻撃力があったが、政斗を上回るリカルド・ブラボの重いパンチがヒットする数がラウンド毎に増していき、第3ラウンドにはヒジ打ちで政斗の顔面カットに成功。これが運命を決定付け、第4ラウンドに入ると、攻撃力が増すリカルド・ブラボで政斗の負傷箇所が悪化し、TKOで下す王座獲得となった。

今後の目標はWKBA世界王座と、ラジャダムナンスタジアム王座奪取を目指すことという。いちばん難しいムエタイ殿堂にアルゼンチンのチャンピオンが誕生する日が来るか、今後の関心はここに集まるでしょう。

リカルド・ブラボのパンチの重さと当て勘が政斗を上回ってヒットが増えていった
内田雅之はロング右ストレートで主導権を奪った

◆ライト級3回戦

日本ライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/61.1kg)
VS
日本ライト級2位.内田雅之(元・日本Fe級C/藤本/61.0kg)
勝者:内田雅之 / TKO 3R 2:40 / ヒジによる顔面カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:少白竜

パワーで前進する永澤の蹴りがやや優勢に見える中、やや離れた距離からの内田の右ストレートが何度かヒット。更に前蹴りが永澤のアゴにヒットさせとリズム掴んだ内田。しかし、永澤もジワジワと出てくる圧力があるが、第3ラウンドに内田が放ったヒジ打ちで顔面カットさせ、更に右バックヒジ打ちを強烈にヒットさせると永澤の負傷箇所が広がり、続行不可能となり、ライト級で2階級制覇狙う内田雅之のTKO勝利。

内田はパンチに続いて前蹴りを永澤のアゴにヒット
皆川裕哉vs新人(あらと)。前半は皆川のハイペースでハイキックがヒット

◆59.0kg契約3回戦

WBC・M日本フェザー級チャンピオン.新人(=あらと/ESG/58.7kg)
VS
日本フェザー級4位.皆川裕哉(藤本/58.8kg)
勝者:皆川裕哉 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-29. 少白竜28-29. 桜井28-29

新人と皆川裕哉の交流戦での新旧対決は、皆川の若さあるアグレッシブな攻めが新人を上回る攻勢。第2ラウンドには皆川が軽い右ストレートながらヒットしダウンを奪う。

しかし、ダメージが無いことをアピールする新人は、ここから盛り返し、ジワジワ力を発揮する新人、長身を利した蹴りを多用したり、組んだら崩したり、本来の持ち味を出し始めた新人の、経験値の差が出てきた展開になるが、3回戦ではダウンの劣勢は取り戻せず、皆川は逃げ切った形の判定勝利。

皆川裕哉vs新人(あらと)。新人も反撃に出るカウンターがヒット

◆ミドル級3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.3kg)vs齋藤智宏(Ys.k/72.57kg)
勝者:今野顕彰 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:少白竜30-28. 桜井30-28. 仲30-28

過去、斗吾に敗れている両者。そして2年前には今野が齋藤智宏にヒジによるTKO勝利している。今回は初回に今野の軽い右ストレートで齋藤智宏がダウン。接近戦になると齋藤の長身からくるムエタイ技を発揮するが、今野を掴まえるに至らず、今野も更なるダメージを与えるに至らないまま判定勝利となる。

◆フライ級3回戦

日本フライ級2位.幸太(ビクトリー/50.7 kg)vs同級5位.空龍(伊原新潟/50.6kg)
勝者:空龍 / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:少白竜29-30. 宮沢誠28-30. 仲29-30

◆バンタム級3回戦

日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館/55.0kg)vsチェ・ジェヨン(韓国/54.3kg)
勝者:.馬渡亮太 / TKO 1R 1:10 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

◆バンタム級3回戦

日本バンタム級3位.阿部泰彦(JMN/54.6kg)vs同級6位.田中亮平(市原/54.6kg)
引分け 三者三様 / 主審:少白竜
副審:椎名28-29. 宮沢30-29. 桜井29-29

◆フライ級3回戦

日本フライ級3位.細田昇吾(ビクトリー/50.6kg)vs山野英慶(市原/50.6kg)
勝者:細田昇吾 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-28. 少白竜30-28. 桜井30-27

新人戦4試合まで割愛します。

ライト級3回戦勝者の内田雅之。プレゼンターとラウンドガールと我が子とともに

《取材戦記》

この日メインイベントとセミファイナルに出場した、ケンスワン・サシプラパーとリカルド・ブラボは生まれ育った国と環境は全く違うものの、戦う基本となる土壌がしっかりしている環境で育った二人でした。とにかくパワフルでリズム感がある。リカルド・ブラボはムエタイとしてはまだ新人の域でも、アルゼンチンで育った格闘技の基礎は、アジア系とは違う強さがある印象。

過去12名が出現した外国人ムエタイ二大殿堂チャンピオンの中、かつてブラジルから誕生した、ジョイシー・イングラムジムは2度防衛に成功。他、石井宏樹とダミアン・アラモス(フランス)も2度防衛。本場タイ選手でも連続防衛はなかなか難しいムエタイ殿堂王座であります。

6月27日には元・日本ウェルター級チャンピオン.緑川創(藤本)が現地、ラジャダムナンスタジアムで王座決定戦出場が決定しました。

相手は2016年10月23日に後楽園ホールで対戦、三者三様で引分けた相手で、前チャンピオンのシップムーン・シット・シェフブーンタム。現地プロモーターからお声が掛かったようで、念願のラジャダムナンスタジアム王座初挑戦となります。

「応援に来て頂ける方は早めにパスポートの準備をお願いします。何言われようが向こうで強い相手に勝てば文句言われないと思うので、今迄のキック人生、応援して頂いている皆様や仲間に応えられる様、命懸けてやります。」というフェイスブックでアピールの緑川選手。

王座奪取は難しいが、仮に獲っても過去12名が残した実績を上回らなければ“伝説のチャンピオン”とは言われない現在の厳しさがある殿堂王座です。

次回の新日本キックボクシング協会興行「MAGNUM.47」は7月8日(日)後楽園ホールで17時より開催予定です。

かなり上手くなった日本語で周囲の仲間へ感謝を述べたリカルド・ブラボ

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈29〉タイで三日坊主Part.21 比丘仲間と信者さん

背格好だけ違って皆同じに見える比丘の顔触れから、遠慮なく本音で喋る時期に入り、仲良い奴にも癖があり、性格悪そうな奴にも賢い判断がある、そんな自然な振舞いがいろいろな場面で見えて来ました。

ベテランのアムヌアイさんは三輪自転車トゥクトゥクの運ちゃんと雑談(1994.11.22)

◆春原さんからの激励

11月18日、春原さんから得度式で撮って貰った写真が届きました。中の手紙には大きな字で、「ワッハッハッハ、何を弱気な!」

出家した間もない頃、「藤川ジジィが無視しやがって」とか「黄衣の纏いが下手糞過ぎて托鉢中に解けそうになって情けない、もう辞めたい」など心境を愚痴を溢して書いた春原さんへの手紙の返事がこれでした。

「誰も真似できないような仏門に自ら飛び込み、日々の苦労はあっても坊主修行を続けている姿に、私は情けないとは思いません」

「もう慣れている頃だと思うので、何も心配していませんが、頑張って話題豊富な修行を送ってください。期待しています」と呑気なことを書いて寄こしやがって。

でもこんな手紙に背中を押されるような元気を貰いました。ボクサーが真のファンに「応援してるよ、頑張って!」と励まされるのは、こんな涙が出るほど嬉しい心境なのかと思います。

皆の写っている写真をそれぞれに渡すと、やっぱり笑顔で受け取ってくれて大変喜ばれました。和尚さんも性格の悪い奴も、ブンくんもコップくんもみんな見せ合って笑う賑やかさ。それは小学校の頃に、年度末に撮った学級集合写真を貰ってみんなで笑って見ているような光景でした。

◆寺の内側で起きている個性的な比丘らのこと

ちょっと悪賢いヒベ(左)、すでに還俗したインド(右)(1994.11.5)

ヒベという奴は普段から不良ぽく、卑猥な言葉らしい“ヒベ”を連発して言っていたので、品の無いこいつを「ヒベ」とちょっとだけ小声で呼んでやりました。

性格は優しいがヒベ並みに品の無い奴がパノムという奴。
「オーイ、ハルキ!“オメ○”って何だ? キヨヒロ(藤川さん)から聞いたんだけど!」と、庭でデッカイ声で呼びやがる。

「それは“ヒー”のことだよ。日本語では“オ○ンコ”って言うんだ」と言ってやったら、更にデッカイ声で「オマ○コ!」よ呼びやがる。

「みっともないからやめろ!」と言っても、「マイペンライ!タイ人しか居ないから、誰も分からない!」・・・!?

パノム(左)、ティック(中央)、ルース(右)。この3名もやがて還俗します(1994.11.5)

近くには山の上にナコーン・キーリーというケーブルカーで上がる観光地がある。この辺を日本人女性が歩く可能性もあるから止めて欲しかった。

初めてタイに来た日本人女性が、神聖なるお寺のお坊さんから“オマン○”なんて聞こえたら、タイ・テーラワーダ仏教の権威が崩れるではないか。

更にパノムは夜遅くに「腹減った、ラーメン無いか?」と私の部屋にやって来たことがある。

「オイ、今食うんじゃないだろうな、明日の朝食えよ!」と言って托鉢でサイバーツされたカップ麺を渡すと、隠すように持っていったパノム。夜食ったら戒律違反である。比丘の中にはこういう体たらくな奴も居るのかと思う。ケーオさんは心が病んでいるようだ。

藤川さんにこの寺を紹介したのがバンコクにいる知り合い弁護士で、この方の末弟に当たるのがケーオさんらしく、他の兄弟と違い、複雑な思春期を過ごしたケーオさんはちょっと問題あって、お坊さんにでもさせておくしかない事情の下、この寺で出家させたという、藤川さんは元から縁あるお坊さんなのでした。

話せば面白い奴で頭も良い。機械イジリが好きで和尚さん所有の車をメンテナンスしたり、秘書的存在でタイプライターで文字を打っていることも多いケーオさん。私もストロボが発光しなくなった時、こんなタイの田舎の寺に居ては修理は無理と諦めていたところ、ケーオさんが「ちょっと貸してみい!」と持って行ったら翌日までにしっかり直して、ちゃんと撮影に同調する問題無い修理をしてくれた、器用な人なのである。

アムヌアイさんは誰もやらない3K仕事をやる真面目な優しい奴。これも藤川さんから聞いた印象で、「毎日、牛の糞を捨てに平気で運んどるが、ケーオのような要領の良さは無いな。仕事は何でも出来そうやが鈍感なタイプやな」

「メーオは、学の無い奴で還俗しても他に就職先なんか無いやろうな。ペッブリーから出たことも無いらしいし、坊主やっとるしかないんちゃうか!」
当たらずと雖も遠からずの藤川さんの意見でありました。

ズル賢いケーオさん(左)、ワット・マハタートの高僧(中央)、やがて還俗するブイ(右)(1994.11.27)

◆比丘達の試験!

21日の午後はペッブリー県でいちばん大きい寺のワット・マハタートへ皆が試験に行った様子。新人僧はパンサー明けに全国の寺で行なわれる仏教試験を受けることが義務付けられており、合格すると初めて一人前の比丘となるそうである。

翌22日も試験。疲れた表情で帰って来る仲間達。「難しかった」「たぶん落ちた」と言う奴が多い。古い比丘や藤川さんは試験は無い。私はパンサー経験無い上、新入りなので、全く声は掛からず。

試験に向かうティック(左)、ブン(中央)、テーク(右)(1994.11.22)

◆初めての一人托鉢!

26日は一人托鉢。昨日から藤川さんはナコンパノムへ旅立っています。何しに行ったのかは分からない。普段から寺では話さないから仕方ない。

いつも最後に立ち寄る砂利路地で、御飯と惣菜の他、お菓子を必ず入れてくれるおばさんに英語で声掛けられ、私がタイ語でたどたどしく応えるので、日本人と知られてしまう。するとその向かいの家の、身体に障害があって手が震えるオジサンに、
「このお坊さんも日本人なんだってさあ!」と教えてしまう始末。藤川さんを日本人と知っているのに、私も日本人だと今迄知らなかったのかなと意外に思う。

お菓子おばさんには「いつ還俗するの? もう一僧はどうしたの?どうして比丘になったの?」と聞かれても、適当に都合のいい返答しつつ、気さくな会話が出来る仲となれました。オジサンの家には年頃の綺麗な娘さんが2人居て、日々入れ替わり出て来ること多い中、この日は後から娘さん2人とも出て来て、その娘さんにも伝えてしまうお菓子おばさん。短パン姿で、太ももが綺麗でつい見て見ぬフリをしてしまう。もう下手な黄衣の纏いも痛い石コロも忘れてしまう、こんな楽しい托鉢でいいのだろうか。

ここに来るまでにも結構声掛けられ、別の路地で、元横綱琴桜に似たおばさんにも「今日はひとりなの?いつまで比丘やるの?還俗したら何やるの?」と聞かれたり、目が合えば微笑んでくれるオバサンも居て、普段は眼力ある藤川では声掛け難いのか、私一人の今日はちょっとした人気者でした。

こんな日が29日朝まで続き、ようやく帰ってきた藤川さん。翌日にまた二人托鉢になると、途端に以前どおりの無言の托鉢に戻りました。

◆ラオス行きの最終準備

藤川さんはどこへ行くにもバンコクを経由することになるので、先日の旅行代理店に立ち寄り、預けてあるパスポートを受け取っています。そのラオス行きのビザが取れたパスポート差し出されて、「あと300バーツや!」と言う。

「300バーツぐらい奢れよ、日本でどれだけ奢ってやったことか!」と思うが、行って来てくれたのだから仕方ないか。

ラオスに行く日までに、まだ準備しなければならない、和尚さんのサインが要る申請書類の作成の為、和尚さんに相談しなければならないことが幾つかありました。またいつもの調子で「ダーイ!」と言ってくれるでしょうか。

煙突は火葬で使われます。叫べば結構響く境内(1994.11.22)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

絆Ⅹ── 回を重ねて10回目、絆で結ばれた興行 !

「絆」でデビューした二人が今チャンピオン、石川直樹(左・治政館)と良星(右・平井)
白井達也の右ストレートで澤田曜祐を攻める
右ストレートを決定打に澤田曜祐をKOした白井達也

「絆まだまだ突っ走ります」というフレーズが光るプログラムの見出し。

絆Ⅹ
4月30日(月・祝)埼玉県春日部市ふれあいキューブ / 16:00~
主催:PITジム / 認定:NJKF

2013年4月13日に第1回「絆」興行が行われ、ここでデビュー戦を勝利し、その後、チャンピオンに至った2名の選手がリングをリング上で紹介されました。Bigbangスーパーバンタム級チャンピオンの良星(平井)と、日本フライ級チャンピオンの石川直樹(治政館)が御挨拶。

良星は6月3日の「Bigbang」興行出場予定で、過去、祐トーン・エー(真樹・AICHI)に判定勝利していますが、今度はKO勝利して次に繋がるような試合をしたいと宣言。

石川直樹は6月8日の「KNOCK OUT」興行から始まる軽量級トーナメント戦初戦に出場し、秋以降の決勝戦で優勝することを誓い、両者ともまた「絆」のリングに戻って来ることを約束し、「強い選手を用意してください」と述べられました。

◆メインイベント 60,5kg契約3回戦

白井達也(TRY-EX/60.1kg)vs NJKFスーパーフェザー級1位.澤田曜祐(PIT/60.3kg)
勝者:白井達也 / KO 3R 1:37 / テンカウント / 主審:竹村光一

好戦的に打ち合った両者。パンチ主体で、ローキックとのコンビネーションで攻勢が続いた白井、蹴りはフォロー的にパンチが小気味良く繰り出される。応戦する澤田も劣性ながら打ち返す踏ん張りが凄かった。

第2ラウンドに白井は右ストレートで2度ダウンを奪い、勢いは増すばかり。第3ラウンドには再び右ストレートでダウンを奪い、澤田はそのままカウントアウトされて終了。

白井達也が攻勢を強めていくパンチの連打
拳士浪の連打が将泰を圧倒する

◆セミファイナル フェザー級3回戦

日本フェザー級3位.拳士浪(治政館/57.1kg)vs 将泰(PIT/56.8kg)
勝者:拳士浪 / KO 2R 2:47 / 3ノックダウン / 主審:プアナイ

キャリアで優る拳士浪が余裕ある展開。「蹴りまくる」と意気込みを語っていた将泰は、ミドルキックからハイキックへ積極的に蹴るが、ブロックされたり交わされたり、拳士浪のリズムを崩すには至らない。

第2ラウンドにはパンチでダウン奪う拳士浪。将泰はバックハンドブローを狙うが、拳士浪は冷静に交わし、更なる連打の後、右ストレートで3度目のダウンを奪って終了。

試合後、拳士浪は「15年前に治政館に入門し、選手として13年ほど現役を続けてきました。ですが、今日を持ちまして現役を引退しようと思っています。今迄有難うございました。」と語ってリングを降りました。

拳士浪の連打で将泰が仰け反る
「絆」のリングに治政館陣営が集合して拳士浪の勝利を祝う

◆NJKF女子アトム級(-46.266kg)挑戦者決定戦 3回戦(2分制)

2位.佐藤レイナ(TeamAkatsuki/46.0kg)vs 3位.美保(KFG URAWA/46.0kg)
勝者:佐藤レイナ / 判定2-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:竹村30-28. プアナイ30-29. 君塚29-29

セーラー服がコスチュームの佐藤レイナは高校卒業したばかり。しかし「セーラー服は卒業しないが、チャンピオンになったらこのコスチュームは卒業する」という。

接戦となった試合で、両者のパンチ打って蹴って出る積極性は、ポイント付け難い中、佐藤レイナがパンチの有効打がやや打ち勝った印象。これでチャンピオンの百花に挑戦が決定。

佐藤レイナの前蹴りで美保のボディを攻める
佐藤レイナ(左)が、チャンピオン.百花(右)に挑戦決定

◆女子ライトフライ級(-48.987kg)3回戦(2分制)

NJKF女子ライトフライ級4位.楓(LEGEND/48.8kg)
vs
同級8位.坂本優(CROSS LINE/48.8kg)
勝者:楓 / TKO 1R 0:17 / カウント中のレフェリーストップ
主審:中山宏美

女子キックでは滅多にない一撃KO、開始早々様子見から坂本優が出て行くと、楓の右前蹴りが坂本優の顎にまともにヒットすると、そのまま仰向けに倒れ、レフェリーストップ。立ち上がる様子はなく、セコンド陣営に抱えられリングを去った坂本優。

楓の右前蹴りが坂本優の顎にヒットした直後
楓が勝利を掴む
ここにも元ムエタイチャンピオン登場、武田幸三が御挨拶

◆女子バンタム級3回戦(2分制)

美優美(錬武館上尾/53.4kg)vs 七美(真樹・沖縄/53.1kg)
勝者:美優美 / 判定2-0 / 主審:君塚明
副審:多賀谷30-29. プアナイ30-29. 中山30-30

◆ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級3位.Jun Da雷音(E.S.G/65.9kg)
vs
同級5位.富士山勝敏(OGUNI/66.4kg)
勝者:Jun Da雷音 / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:君塚30-29. 中山30-29. 多賀谷30-29

他、前座4試合は割愛します。

メインイベント 60,5kg契約3回戦勝者の白井達也

《取材戦記》

休憩時のセレモニーには御挨拶にリングに上がる方が幾人か居られました。選手として御挨拶に立った良星選手と石川直樹選手の他、この興行には新日本キックボクシング協会の治政館ジムが協力されており、武田幸三さんもリングに登場。ここを走る東武線は高校時代に通った路線で、春日部は通過した地点でしたが、この地域は想い出の地でデビュー当時を思い出す様子でした。

埼玉県議会議員の権守幸男氏はPITジム松永嘉之会長と幼稚園時代からの幼馴染みで、毎度の来場で御挨拶の常連の方。10回目を迎えた絆興行の開催に勝った選手、負けた選手にも労いの言葉と、松永会長やNJKF役員各位に敬意と祝辞を述べられました。

この4月30日は興行が重なった日でした。

藤原敏男古稀祭が終わった後、一部の皆さんが向ったのは、新宿を目指す人が多い「ムエタイオープン」でしたが、私は埼玉県春日部市で行われた「絆Ⅹ」に向かっていました。決してビッグマッチがある訳ではありませんが、PITジム松永会長から、過去何度も誘われながら行けること少なかったのと、「マスコミももしかしたら一人も来ていないかも」という読みでの選択でもありました。

ふれあいキューブはなかなか綺麗な近代的施設。三分割された一つのホールを使用。「照明がもう少し明るければなあ」と撮影を考えると勝手なことを望んでしまいますが、都心から離れた“やや地方”としては立派な試合会場です。いずれここの大ホールひとつでビッグマッチも期待したい絆興行です。

次回「絆11」興行は11月25日、ふれあいキューブにて開催されます。

「絆」では常連となったラウンドガール、未来(みく)さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

藤原敏男氏古稀祭開催! 「キックの神様」が放ち続ける明るく強いオーラ

藤原敏男氏を囲んで祝辞を述べた勇者達。乾杯の音頭は渡嘉敷勝男氏
世界を極めた者同士の握手、渡嘉敷勝男氏と藤原敏男氏

過去のキックボクサーの中で、最も大きい功績を挙げた選手は、藤原敏男氏でしょう。改めてそう思わせるのが、4月30日に代々木上原のファイヤーキングカフェ(Fireking cafe)にて行われた藤原敏男古稀祭で、藤原氏の70才の誕生日を迎えて、更にキックボクシング目白ジム入門して50周年、タイ国ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座獲得して40周年という節目を記念しての祝賀会なのでした。

ファンや興行関係者の記憶にいちばん残る存在に対し、よほどの事情が無い限り、参加募集人員から漏れない限り、「行かねば」と集まった人ばかり。

そしてこの日、参加者は会場定員予定数を超える70名。祝辞を述べる代表に選ばれた関係者は、同じキック時代を生きた元・全日本ミドル級チャンピオンの猪狩元秀さん、元・WBA世界Jrフライ級チャンピオンの渡嘉敷勝男さん、K-1チャンピオンで第一人者となった佐竹雅昭さんらが集結。

渡嘉敷さんは「私は空手をやって来た経験から当時の藤原さんの試合もよく観ておりました。」と語り、佐竹雅昭さんは「子供の頃に映画”四角いジャングル”から藤原さんを観る機会が始まり、ニールセンと戦った頃は、放送席に”伝説の人が居る”と思って感動していました。」という、そんな世代の時代に移った選手から、藤原さんの試合をリアルタイムでは見ていない世代まで幅広い中で酒を酌み交わし、戦った者同士が過去の名勝負を熱く語り合ったり、現在の近況を語ったり、皆がそれぞれの人生を歩み、挫けることの無い身体と精神を持つ者同士は、また再会も約束する絆で結ばれた仲間でした。

藤原敏男氏の御挨拶に笑顔がこぼれるチャンピオン達
藤原敏男氏の御挨拶

先月25日には”前夜祭”が行われており、6月と8月にも主催者が替わって地方でも行われる予定という、しつこい程の節目の年の豪勢さ。

藤原敏男氏の御挨拶の言葉には、織田信長の言葉を借り、
「人間の一生は50年、あっという間に過ぎてしまう。悔いの無いように一生懸命やることが大事だ !」と語った後、御自身の人生に触れ、「3月で70才になりました。あと30年、どうやって生きて行こうかと思い(一同笑)、清く正しく美しく、そんな感じで生きて行こうかと思います ! 」

いつもの期待に応える笑いを誘うスピーチでした。

笑いを導く御挨拶は、先月に行われた古稀祭”前夜祭”で述べられたスピーチにもあり、「私の人生で、いちばん夢中になったものは何でしょう。”女”とか”ゴルフ”という声が挙がっていますが、全く当たっておりません(一同笑)。本当は”キック”が最高でした。」と笑いを誘いつつ、「今は走ることもサンドバッグを蹴ることも出来ません。」と自由に歩き回るには困難な日々でも、明るく強い精神力を持つ男のオーラがありました。

古希を祝って花束贈呈
「男の友情」を注いで周る藤原敏男氏
古希祝いTシャツにサインを入れる藤原敏男氏

足の症状は、現役時代の後遺症で、両足首周辺の疲労骨折とも言える脆くなった数ヶ所の負傷、10本ほどのボルトを打ったり抜いたりの手術を何度か受けている様子で、今は杖をついての歩行となっている毎日です。

藤原氏が獲得したムエタイ・ラジャダムナンスタジアム王座は、わずか3ヶ月足らずで現地防衛戦で奪われていますが、それまでにもランカー以上の選手と幾多の接戦の名勝負を展開し、ギャンブラー(現地観衆)から高い評価を受け、現地でも知名度あるのが藤原敏男氏であり、1997年にはタイでスポーツ記者クラブによるムエタイ殿堂入りするほどの功績。これを越える選手が現れていないことが、現在もその功績を称えられる要因でしょう。

キックボクシング界に於いて、これまでチャンピオンは沢山存在し、幾多の祝勝会は開かれていますが、10年、20年と、節目の年に多くの参加者が集う祝賀会を開くことが出来る選手はどれだけ出現するでしょうか。

今後のキックボクシング界に必要な名選手は、チャンピオンベルトの獲った数ではない、周囲に長く称えられる功績での”藤原敏男超え”なのでしょう。期待できる選手は幾らか存在する中、どうやって輝くか、今後の課題であるかもしれません。

チャンピオンを主に集まっての記念撮影

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈28〉タイで三日坊主Part.20 自分以外が見えてきた

デーンの頭を剃るラス、眺めるトゥム。剃髪は互いに剃り合うコミュニケーションの場でもあります

寺に戻ってまた続く修行の日々。と言っても修行とは程遠い、単なるノラリクラリと送るお坊さん生活でありました。

◆托鉢も楽しい!?

今日も藤川さんの後について托鉢が始まる。1件目の信者さんは初めて出会う17歳ぐらいで凄く可愛い女の子。例えればアグネス・ラムのような。向かい合うともう手の届きそうな近い距離。比丘の身分でウキウキ気分になってしまう。なんと不謹慎な。もちろん顔には出さない。日々出会う信者さんの顔触れも覚え、こんな邪念が頭を過ぎるほど余裕が出て来た私。

坊主仲間だったインドくん(私が勝手に付けた名前、インド人みたいな顔)がバイクでスレ違う。「こいつも還俗したんだ」と気付く。しばらくしてそのインドくんが先の道で待ち構えていて寄進する側となっていました。ニコッと笑ってやると、「ハルキはいつ還俗するの?」と言われ、「とりあえず年明けまで!」と言うとニコッとワイ(合掌)を返してくれました。

◆衝撃の遺体

今日も暇な日で、この日は私の得度式前日に剃髪してくれたアムヌアイさんに付いてちょっと賢い上品グループに加わってみました。彼らもやること無い日は、溜まり場となる本堂脇のベンチでコップくんらも集まり井戸端会議。そこにはガキっぽい話は無く、どことなく大人の会話を感じる比丘達。

やがてアムヌアイさんは寺に入って来た霊柩車を葬儀場脇の霊安室へ誘導。付いて行くと、遺体置き場の冷凍室から一体運ばれて行きました。初めて見た遺体。紫色のコチンコチンに固まったマネキン人形のようでした。こんな姿になったら人も牛も豚も大差は無く、単なる肉塊。ここに至るまでの、この人の人生はどんなだったろうとフッと考えてしまう。この遺体は他の寺で火葬されるようでした。

少々自分で剃ってみるルースくん

◆満月の前日

明日は満月の日で、その前日は剃髪する日と決められています。決まった儀式として、全員読経して静粛にやるのかと思っていたら、夕方4時半過ぎから賑やかに、笑いもこぼれながら水場のあるところなら、あっちこっちで始まりました。私は得度式の前の日に剃髪して貰ってから半月あまり経った頃。他のみんなはほぼ一ヶ月である。私は撮影目的を持ってクティ下で、こんな時だけあつかましくも「先にやってくれ」と名乗り出ました。普段、言葉や態度が悪く、性格悪いなあと思っていたヒベという奴が意外と快くやってくれるも、私の頭はデコボコでやり難いのか、すぐにパンサー3年目のベテラン、ラスくんに代わり最後までやってくれました。やっぱり上手い奴の剃り味は気持ちいいモンである。私はあと何回剃髪するのだろうか。

私は終わるとサッと水浴びしてカメラを持ち、比丘は走ってはいけないのに突っ走り、葬儀場の方でも和気藹々と剃髪が進む中、ブンくんやコップくんらがやっていたので撮ろうとすると和尚さんが「みっともないところを撮るな!」と叱られてしまいました。

「何がみっともないのか」と、そこは日本人感覚で文句言いたくもなるも、黄衣を纏っていない姿は“みっともない”と言う解釈もあるでしょう。和尚さんの言うことでもあるし、そこは大人しく引き下がっておいて、クティ下に戻って他の者をしっかり撮り終えました。これこそ旅の思い出。今撮っておかねば後で絶対後悔する。ブンくんらは撮れなかったが次の機会を狙おう。それにしても誰も嫌がらなかったではないか。比丘として間違っているかもしれないが、時折カメラマン意識に戻ってしまいます。

今日の“調髪”はほぼタダ。カミソリ代のみ。もちろん皆、エイズ感染防止策で使い回しはしません。

他の比丘にいたずらされたパノムの頭を剃るラス。和尚さん居ないところで、こんな姿にすることもあり
新しい仏塔完成行事で参列した後、カメラを向けるとキチンと立つケーオさん(左)とアムヌアイさん(右)。皆の兄貴的存在の二人

◆いつか我が身も、最後の送り出し

この翌日の午前中にまた葬儀の準備に行かされると、葬儀する遺体が股間にガーゼを当てた程度の裸で置かれていました。本物の遺体、40歳ぐらいの刺青しているオッサン。ピストルで撃たれたようでした。親族が入れ替わり見に来る。小さい5歳ぐらいの女の子が笑いながら遺体を覗いたり、母親らしき人の間をスキップ気味に行ったり来たり、それがやがて事態を把握したのか本気で泣き出してしまいました。ピストルで撃たれた胸と貫通した背中の傷を縫っている検視官? 側頭部にも傷がありました。寝ているような、すぐ起き上がりそうな遺体。私はそんな遺体をしばらく眺めていました。ほんの2~3日前まで普通の生活をしていただろうに、ほんの数秒の出来事でこんな姿になってしまうです。

以前、藤川さんから頂いた手紙に、「葬式では歳取った自然死が少なく、事故で亡くなられた方が多いのです。交通事故、水の事故、殺人など。ピストルで撃たれた遺体もあり、身元不明で葬式ができない遺体もあります。お釈迦様の無常の教えが実感として分かってきます。本当に真実は今この瞬間だけ、それ故今この一瞬一瞬を大事に生きていくしか確かなことはないのです。」

そんな遺体が置かれた葬儀場に親族の方がリポビタンDを持って来て比丘に配ってくれました。見てるだけでくれるなんて恐縮でした。そんな場でちょっと麻痺していた認識。“くれる”のではなく、これもタンブンです。

葬儀後、藤川さんが、「今日の葬儀はいつもとちょっと違った殺伐とした雰囲気やったねえ、何で死んだか聞いたか?、警察に賭博の現場見つかって逃げて、追われて胸撃たれてもまだ意識あって、自分のピストルで頭撃って自決したんや!」と言う。タイでは法規制はあれど、個人でピストルを持てる国なのです。噂だけでなく、実際に発砲事件が多いことでそれが証明されている現実でした。

葬儀後、親族がお布施を配りにやって来ました。私は内心、「毎度あり~」といった気分でしたが、すぐに藤川さんの言葉を思い出しました。

「坊主がお金を受け取る時は、あっさりと当たり前のように受け取るもんや。坊主が葬式に行って『毎度ありがとうございます。また宜しくお願いします』など言って、お布施を受け取ってみい、殺されるぞ(例えの表現)! お布施とは何となく差し出し、何となく受け取るもんや。間違っても『ありがとう』なんて言うなよ。知らない顔して当たり前のように受け取れよ、その方が有難味があるんやから!」
お布施といった徳を積む行為に応えることはそういうものなのです。

葬儀の様子(イメージ画像、別日)

◆諸行無常を実感

これも過去、藤川さんに説かれた言葉で、
「明日は必ずやってくるモンか?各々に“必ずやって来る”とは言えんのとちゃうか?平和な日常でも、明日もこの命があるとは限らへんのやからな!」

そんな話を聞きながら、その時は漠然とその意味を理解していました。

先日の冷凍された遺体といい、今日の葬儀の遺体といい、死因は何にせよ、日々人は死んでいくもので、来世へ最後の送り出しをするのがお寺の役目。一方で、日々新しい命が産まれている。

順々に我が身も送られる日が近づいている。諸行無常の教えが実感として分かってくるのがお寺に暮らす我々比丘なのでした。

これまでノラリクラリ無駄な日々を送ってきたことは勿体無いこと。今やるべきことを先延ばしせず今やらねば。日本に帰ったら無駄の無い日々を送れるだろうか。三日坊主の私に──。

葬儀の様子(イメージ画像、別日)。当然、ベテラン比丘が前に並びます。要請される人数によっては他の寺から呼ばれたり、我々も向かったりします

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
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NKB VS MA日本キック 禁断の対決! 闘魂シリーズvol.2

蹴りにインパクトがあった井原浩之の右ミドルキックが西村清吾にヒット
西村清吾のパンチの距離での攻勢が目立った

NKB(日本キックボクシング連盟)とMA日本キック(マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟)とのチャンピオン交流戦、西村清吾vs井原浩之戦がメインイベント。

初回の探り合いから蹴り中心に前に出る井原に対し、パンチ、ヒジを合わせる西村。互いの決定打には至らないが、井原は接近すればヒザ蹴りに持ち込みたい体勢。そこから自分のペースに引き込めない井原は攻め難そうながらミドルキックは勢いがいい。西村のパンチとヒジの距離感は隙を突くように打ち攻勢が目立つ。ラストラウンドは疲れが見える両者。それでも強いヒットを狙って打ち合う両者。判定は分かれたが僅差で西村が勝利。

西村清吾の顔面を押し付けるような右ストレート

◆棚橋賢二郎vs稲葉裕哉

長身を利した蹴りと、階級も上の稲葉には棚橋のいつもの豪腕パンチが決まり難い。第2ラウンドに接近戦での打ち合いから偶然のバッティングにより稲葉が右眉下をカット。第3ラウンドには棚橋の左フックで稲葉がダウン。第4ラウンドには負傷箇所の悪化で試合を止められ、最初の負傷原因である偶然のバッティングにより負傷判定となり、ノックアウトを逃した棚橋は不完全燃焼の勝利。

棚橋賢二郎のパンチ連打で稲葉裕哉を攻める

◆野村怜央vs外川夏樹

初回からの両者のパンチと多彩な蹴りの積極的な攻防から第3ラウンド目には外川がスタミナ切れか、やや戦力が弱まり、勢いづく野村の右フックかヒジがヒットし外川がダウン。立ち上がっても劣勢から巻き返せず野村のパンチの攻勢が続き、再び右ヒジ打ちで外川は2度目のダウン。陣営よりタオル投入による棄権により、野村のノックアウト勝利となる。

外川夏樹vs野村怜央。野村怜央の右ヒジ打ちがクリーンヒットした瞬間

◆パントリー杉並vsオッカム山際

両者のパンチ中心のアグレッシブな打ち合いが続く中、若さと勝利数のキャリアで優るパントリーが打ち勝つ展開に進み、山際はダメージとスタミナ切れから下がり気味。次のラウンドがあるならばパントリーがノックアウトに繋げたと思える圧倒気味に終了。

オッカム山際vsパントリー杉並。勢いが増すパントリー杉並のラッシュ
NKBの面子を保った西村清吾

◎闘魂シリーズvol.2
4月21日(土) 後楽園ホール17:30~20:27
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第10試合 ミドル級5回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM.KOK/72.5kg)
VS
MA日本ミドル級チャンピオン.井原浩之(Studio-K/72.05kg)
勝者:西村清吾 / 判定2-1 / 主審:前田仁
副審:川上49-48. 亀川48-50. 佐藤友章50-48

勝者 棚橋賢二郎

◆第9試合 64.5kg契約 5回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/64.05kg)
VS
NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/64.5kg)
勝者:棚橋賢二郎 / 負傷判定3-0 / TD 4R 1:16
主審:鈴木義和
副審:佐藤友章40-38. 亀川40-37. 前田40-37

勝者 野村怜央

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

NKBライト級4位.野村怜央(TEAM.KOK/64.0kg)
VS
JKIライト級6位.外川夏樹(MWS/64.0kg)
勝者:野村怜央 / KO 3R 1:45 / 右ヒジ打ち、カウント中のタオル投入
主審:川上伸

勝者 パントリー杉並

◆第7試合 63.0kg契約3回戦

NKBライト5位.パントリー杉並(杉並/62.5kg)
VS
オッカム山際(MKH/62.35kg)
勝者:パントリー杉並 / 判定3-0 / 主審:亀川明史
副審:鈴木30-29. 佐藤友章30-28. 川上30-28

◆第6試合 ミドル級3回戦

NKBミドル級1位.田村聖(拳心館/72.45kg)
VS
同級4位.釼田昌弘(テツ/72.57kg)
勝者:田村聖 / 判定3-0 / 主審:佐藤彰彦
副審:鈴木30-27. 川上30-26. 前田30-27

◆第5試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級4位.チャン・シー(SQUARE-UP/66.68kg)
VS
滝口幸成(WSR・F幕張/66.05kg)
引分け 0-1 / 主審:佐藤友章
副審:鈴木30-30. 佐藤彰彦28-30. 亀川30-30

◆第4試合 フェザー級3回戦

岩田行央(大塚/57.1kg)
VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/56.8kg)
勝者:海老原竜二 / KO 1R 2:24 / ハイキック、カウント中のタオル投入
主審:川上伸

◆第3試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM.KOK/60.95kg)vs誠太(アウルスポーツ/60.95kg)
勝者:小笠原裕史 / 判定3-0 / 主審:佐藤彰彦
副審:亀川30-27. 前田30-29. 川上30-29

◆第2試合 バンタム級3回戦

ノーマーシー・カズ(テツ/52.8kg)vs北田竜汰(光/52.0kg)
勝者:ノーマーシー・カズ / KO 1R 1:47 / テンカウント
主審:鈴木義和

◆第1試合 フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ/56.95kg)vs孝則(総合格闘技TRIAL/57.15kg)
勝者:山本太一 / TKO 1R 2:38 / カウント中のレフェリーストップ
主審:亀川明史

《取材戦記》

「禁断の対決が実現!」という見出しが目立ったプログラムの文言。

90年代の、団体が細分化する前なら興味深い団体交流となるところ、現在も存在する両団体でも、33年前の分裂当時から存在する加盟ジムは非常に少ないでしょう。当時の加盟ジムは、その後、この両団体以外にまで分かれて行ったジムや辞めていった関係者が多いということです。戦った西村清吾と井原浩之にとってはチャンピオン対決として勝利を目指すも、33年前の事情など“何のことやら”でしょう。それでも他団体交流戦も増えてきた日本キック連盟は、今後も更に“禁断の対決”を実現して話題提供に力を注いで欲しいところ。時代の流れは進み、若い世代の力に期待が掛かっています。

MA日本同級チャンピオンを下した西村清吾はまた一歩前進。35歳デビューの現在39歳で、10戦7勝(1KO)2敗1分となりました。

大阪での次回興行は、4月29日(日)大阪市立旭区民センターで14:30よりNKジム主催「闘魂シリーズ ヤングファイトZ-1 Carnival」が開催されます。

6月16日(土)後楽園ホールでは17:15より「闘魂シリーズvol.3」が開催され、ここでの興味深いNKBフェザー級王座決定戦では昨年12月、高橋聖人の蹴りのペースが続く中、右フック一発で勝利した安田浩昭(SQUARE-UP)との再戦となります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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