国民監視を強め「とことん吸い上げる」ための住基ネットとマイナンバー制度

「住基ネット」(住民基本台帳)という大変便利なシステムが2002年から導入されている。読者の皆さんは既にその「恩恵」を受けているはずだ。「恩恵」を受けているけれども、その実いったい「住基ネット」ってなんだ?とご存知ない方も多いであろう。

◆「無理矢理」個人識別番号が付与される「住基ネット」は気持ち悪い制度

簡単に説明しよう。総務省によると「住基ネット」(住民基本台帳)は 、
「住民基本台帳は、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民の方々に関する事務処理の基礎となるものです。住民基本台帳の閲覧や住民票の写しの交付などにより、住民の方々の居住関係を公証するとともに、以下に掲げる事務処理のために利用されています。
・選挙人名簿への登録
・国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、国民年金の被保険者の資格の確認
・児童手当の受給資格の確認
・学齢簿の作成
・生活保護及び予防接種に関する事務
・印鑑登録に関する事務 」だそうだ。

「住基カード」を受け取っている人も受け取っていない人にも、既に個人識別の番号が「無理矢理」付与されている。こんな気持ち悪い制度、私は勿論大嫌いだからカードを受け取ってもいないし、私に「無理矢理」付与された番号も知らない。

◆総務省は「510億円の経費削減」と言うが、国民には「無用の長物」

総務省のHPではあれこれ「住基ネット」のメリットが書かれているけれども、こんなもの多額のシステム導入費をかけてわざわざ導入するほどのメリットがあるのだろうか。

総務省の「住基ネットはどのように役立っているの?」では、「以下に掲げる住民基本台帳法に定められた国の行政機関等や地方公共団体の事務の処理に関し、約5億6,000万件(平成25年度)の本人確認情報の提供が行われています。
・パスポートの発給申請
・厚生年金、国民年金等の支給
・恩給、共済年金の支給
・司法試験
・建設業法による技術検定 など」とされている。

が、私の身近な厚生年金、共済年金受給者の中に「住基ネット」を利用している人はいない。「司法試験」や「建設業法による技術検定」などに関係する人は国民全体から見ればごくごく少数に違いない。パスポートの申請だって通常は10年に1度の手続きだ。「年間130億円のコストがかかり510億円の経費削減」に貢献していると総務省は言うが、国民の側から見ればこんなものは、「無用の長物」以外の何物でもない。

◆住基ネットのさらに上をいく「マイナンバー」導入の権力濫用

ところが「無用の長物」のさらに上をいく「マイナンバー」制度が導入されようとしている。

内閣官房によると、
「マイナンバーは、住民票を有する全ての方に1人1つの番号を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。

マイナンバーは、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現する社会基盤であり、期待される効果としては、大きく3つあげられます。
1つめは、所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります。(公平・公正な社会の実現)
2つめは、添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。(国民の利便性の向上)
3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。(行政の効率化)」とされている。

「住基ネット」でこのようなことは出来ないのか(してほしくはないけども)と疑問が湧くだけでなく、恐るべき本音が浮かび上がる。「負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに」という文言だ。

これは要するに「行政がより監視を強める」との宣言に他ならない。「本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります」などという客引きまがいの釣り言葉に騙されてはならない。「公平・公正な社会の実現」を目指すなら高額所得者から所得税をしっかり取り、消費税を撤廃すればいいじゃないか。詐欺まがいの口上でまたも国民を騙そうとの意図がありありとうかがわれる。

「マイナンバー」が導入されたところで、これは「住基ネット」の「屋上屋根」のようなものだから、仮にあなたが経済的に窮乏しても行政から「生活保護が受けられますよ」などといった申し出がなされることはない。現在窓口に「生活保護」申請に出向いてもあれこれ難グセをつけられ断られることが社会問題化しているのに、その対策を論じることなく単に国民に「2重」の識別番号を付与してどんな福祉政策が展開されるというのだ。

2つ目に「行政手続きが簡略化される」とあるが、それならば【太字】なぜ今ある「住基ネット」を活用しないのだろうか。「行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります」とあるが、そんなもの今でも市役所や区役所に行けば問題なく確認できることばかりだ。

3つ目に「3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。(行政の効率化)」と言っている。これは「住基ネット」が「全く行政の効率化に役立たなかった」と開き直っているのと同義である。

◆「税金の滞納や未納、不正受給を徹底して洗い出す」ための「マイナンバー」

つまるところ、「マイナンバー」は決して福祉目的ではなく「税金の滞納や未納、不正受給を徹底して洗い出す」のが主目的であることは明らかだ。

「平成27年10月に、皆様にマイナンバーを通知するための通知カードが配布されます。 また、平成28年1月以降には、様々なことに利用出来る個人番号カードが申請により交付されます」らしいが、ここで登場する「通知カード」は「通知カードは全ての方に送られますが、顔写真が入っていませんので、本人確認のときには、別途顔写真が入った証明書などが必要になります」ということで、これは「全く何の役にも立たない行政の無駄」の典型に他ならない。

また「個人番号カードは、券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーなどが記載され、本人の写真が表示されます。平成27年10月に通知カードでマイナンバーが通知された後に、市区町村に申請すると、平成28年1月以降、個人番号カードの交付を受けることができます」というわけで、これもわざわざ役所まで出向いて写真を提出するなどしないと入手できないし、入手したところで役に立つのは「本人確認」の時だけだろう。

健康保険証や免許書があれば本人確認は出来るのに、わざわざこんな面倒くさい手続きを喜んでする人がどのくらいいるだろうか。

「マイナンバー」制度はしきりに「本人確認に使えますよ」と宣伝をしているが、逆に言えば取得してもそれくらいの利用価値しかないということだ。

だが、この悪辣な国家は窮乏している人達を主目標に「とことん吸い上げる」為に「マイナンバー」制度を導入する。こんな制度が導入されて普通の国民には何の利益もないことは明白だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎労働者にメリット・ゼロの「残業代ゼロ」法案を強行する「悪の枢軸」企業群
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎自民党の報道弾圧は10日施行の秘密保護法を後ろ盾にした恫喝の始まり

さらば「護憲派」! 「改憲主義者」の憲法条文改正案を公開する!

今や満身創痍の感すらある「日本国憲法」が1947年施行されて今日で68年になる。私の高校時代に政治経済を教えてくれた先生が「私は5月3日が誕生日なので『憲治』と名付けられました。私はこの名前をとても気に入っています」と話していたのを思い出す。師は数年前に定年退職されたはずだが、「日本国憲法」には「退職」してもらうわけにはいかない。

かといって、私はゴリゴリの「護憲」主義者ではない。日本国憲法が保持する精神の大方には賛同しつつも、自主憲法制定を「党是」とする自民党や多くの「改憲主義者」の目指す方向とは全く異なるが、厳密に分類すれば私は「改憲主義者」である。なぜか。それは「日本国憲法」の前文とそれに続く1条から8条の間に横たわる、あまりにも大きい乖離と不和解をどうしても受け入れることができないからだ。

◆私たちは憲法の前文に見合うような「努力」をしてきただろうか?

「日本国憲法」前文は文章として読んでも相当に躍動感がある。今この時代には考えられないような崇高な文章だが、それを生業とする人が「語る」と刺激や味わいは倍化する。「テレビに出ることのできない芸人」松元ヒロ氏の「憲法前文」はその好例だろう。

「革命宣言」と言っても過言ではないようなみずみずしい言葉が並ぶ「憲法前文」は、その思想性と到達目標の高さにおいて、芸術の域に達しているともいえよう。省みて私達はこの憲法前文に見合うような「努力」をしてきただろうか。政治家はこの理念を頭において行動しているだろうか。

さて、前述の通り私は「憲法前文」や9条以降には賛同するけれども。1条から8条までは、どう考えても納得がいかない。この憲法が施行された第二次大戦直後とはそれまで「現人神」だった天皇が「人間宣言」をした直後という事情を鑑みれば、この不徹底さは致し方なかったのかもしれないが、それこそ施行からもうすぐ70年になろうとしているのだ。自民党や「改憲派」が言うように「時代に合わせた」憲法を、彼らとは正反対の立場から、現憲法の精神を保持しながら模索するのは許されないことではあるまい。

◆これが私の改憲案──条文をこう改正すれば、憲法前文の理念を実現できる!

そこで私の改憲案を以下記す。

前文=現行憲法のまま

1条 日本国の主権は国民に存する。外国籍をもつ居住者にも不利益がないように諸法律は配慮されなければならない。

2条 天皇制、貴族制その他出生により身分を定めるあらゆる制度、因習はこれを絶対的に排除する。

3条 日本国に生活する人々は平等に生まれ平等に生活する権利を保持する。

4条 あらゆる差別はこれをしてはならない。差別を温存、助長するいかなる制度も認めない。

5条 日本国は国民に強制するいかなる国旗、国歌も保持しない。

6条 日本国民は本憲法に対立し、国民の恵沢に尽力しない政府が成立した際はその政府を排除する権利を有する。

7条 国会議員及び公務員は国民の福祉実現の為に尽力する公僕であり、その権力を過剰行使することはあってはならない。

8条 国民は主権者たる責務と公正な社会の実現に向け努力する義務を負う。

9条以降=そのまま

2015年5月3日現在、日本国憲法21条により「言論表現の自由」は、まだ認められている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
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◎読売「性奴隷表記謝罪」と安倍2002年早大発言が歴史と憲法を愚弄する
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これが真の愛国対談!内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え 強い国になりたい症候群』!

 

占領期日本の闇──731部隊「殺戮軍医」石井四郎はなぜ裁かれなかったのか?

3月22日、ウィズ新宿にて開催された西里扶甬子(にしさと・ふゆこ)さんの講演「証言で辿る731部隊の最後」 に行ってきた。

今現在、「731部隊展実行委員会」では、「731部隊映像コンテスト」の出品作品を集めており、その「事前学習会」という位置づけの学習会だ。731部隊の直接的な関係者がどんどん亡くなっていく中で、直接、部隊の生き残りや被害者遺族の声を聞いた西里さんの取材資料は極めて貴重だ。

西里扶甬子『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(草の根出版会2002年5月)

731部隊とは、正式名称を「関東軍防疫給水本部」という。1932年に陸軍軍医学校に「防疫研究室」を設立。中国・背蔭河に「東郷部隊」を設置し、小規模な人体実験を開始した。38年、ハルビン郊外に細菌の研究・製造・実験のための巨大な秘密施設が建設された。これが満州第731部隊本部だ。日本の憲兵隊は抗日戦士らを捉え、裁判にかけることをせずに、特移級として731部隊に送り込んだ。そして3千人もの中国人・ロシア人、朝鮮人、モンゴル人などを使って細菌・凍傷・毒ガスなどの実験を行い、全員を殺害。これらの実験を担ったのが、石井四郎を中心とする軍医だ。

西里さんは海外メディアの日本取材のコーディネーターで、インタビュアー、ディレクターだ。2001年からドイツテレビ協会(ZDF)東京支局のプロデューサーを務め、現在は契約プロデューサーだ。著書として「生物部隊731」、翻訳本として「七三一部隊の生物兵器とアメリカ」をリリースしている。

西里さんはとりわけ、「医学的、軍事的、歴史的、専門分野に属さないドラマチックな場面を切り取って紹介したい」と、731部隊の基本的な知識を展開した上で、部隊長の石井四郎の娘に取材したときの内容や、石井四郎が脱出・帰国したときの経緯などを解説してくれた。

◆石井四郎は「保身のためにアメリカに実験データを売り渡した」

興味深い点は、石井四郎の長女、石井春海さんの証言で、731部隊の資料をすべてアメリカ側に渡したとされるが、「ずいぶんあとになって父がひとりのこらず戦犯にならないように部下たちを全部助けるのが条件だったって。研究情報も80%しか渡していない」と春海さんが話していた事実だ。

それでは、「なんのために石井は資料を残したのだろうか。残りの20%はどうなっているのだろうか」と私は質問した。

「アメリカに対して交渉のカードを残したのでしょう。今もどこかに残りの資料があるはずですが、これこそもっとも危険なものだと私は考えます」と西里さんは話した。この「20%の残りの資料は何か」で1つ小説が成り立ちそうだ。

今もなお、731部隊の問題が語られるのは、「当時、多くの中国人やモンゴル人などを殺戮した戦犯たちが今も裁かれていない」という点が注目される。ところが、「なぜ戦犯たちが裁かれないのか」という点は、今ひとつ忘れさられようとしている。そう、石井四郎が「部下も含めて自分や家族の保身のためにアメリカに実験データを売り渡した」からだ。

◆「満州の細菌部隊の中で、航空機をもっていたのは、731部隊だけだった」

西里扶甬子(にしさと・ふゆこ) =北海道札幌市生まれ。北海道大学英米文学科卒業後、北海道放送アナウンサー室入社。報道部を経てオーストラリア放送(ABC)へ転職。メルボルンからの日本向け短波放送(ラジオ・オーストラリア)のアナウンサー・翻訳者として3年間勤務。1977年に帰国、海外メディアのコーディネーター、インタビューアー、プロデューサーとして活動し、2001年からはドイツテレビ協会(ZDF)東京支局の契約プロデューサー。主著に『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(2002年5月草の根出版会)など。

春海さんはこう証言している。

「父は関東軍の山田乙三司令官や竹田の宮様と話しあって、特殊部隊なので、一人も残さず引き上げさせたいと粘ったそうです。それで先に帰って態勢を整えろと言われた.私たちが山口県の先崎で船に着いたのが(終戦の年の)8月31日で、その2日前に父は自家用機で羽田か厚木に着陸したはずです。9月は、東京の若松町の自宅にいました。私たちも一緒でした。陸軍省の幹部と打ち合わせをやっていました。復員してくる人たちと本当に密室で会っていました。マッカーサーが厚木に降りたときに『ジェネラル石井はどこだ』と聞いた。それは、マッカーサーは非常に科学的なかたで、石井に聞きたいことがあるということだったのに、側近が誤解して、石井が巣鴨に拘置されるとたいへんだということで、服部参謀など陸軍省が父を隠したわけなの。加茂にも確かいましたね。日本特殊工業の宮本さんの東北沢のお宅にもいたと思います。何カ所か移ったと思います。その間の根回しは服部参謀がやっていました」

ここに出てくる「日本特殊工業」とは731部隊の施設の施行をしていた会社で、戦後、急遽、飛行機で日本に戻ってきた石井を当時、社長だった宮本がかくまったというのが、多くの人が指摘するところだ。

西里さんは、石井専用機が熊谷飛行場に着いたときに、その機体を発見し、飛行機から羅針盤を抜き取っていた松本征一パイロットの証言もとっている。

松本さんによると「満州の細菌部隊の中で、航空機をもっていたのは、731部隊だけだった」とのこと。つまりこの実験部隊は、戦略的にも重要だったのだ。

◆証言多数の731部隊「実験殺戮」が「なかった」ことになっている戦後70年

さらに、未来にわたって責められる事実として、石井四郎は、多くの人を実験で殺戮しつつも、自らはとっとと帰国していたのだ。そして慧眼をもつ石井は、ソ連よりもアメリカが世界の中枢になっていくことを見越して、アメリカに資料を渡す。

この講演の参加者は語る。

「吐き気がするような話だね。政府は今もなお、731部隊が防疫給水のための部隊で、誰も殺戮していないと主張している。まさにヒトラーのユダヤ殺害に匹敵する悪業なのに、石井は誰にも裁かれず、731部隊などもうなかったかのようなムードだ」

戦後70年がたち、「戦争」を証言する人はつぎつぎと亡くなっている。しかし旧日本軍よ、政府よ! 731部隊は「なかった」ではすまない。

従軍慰安婦とはちがって、こちらは山のような証拠があるのだから。

(小林俊之)

《参考動画》 西里扶甬子「731部隊,原爆,ABCC,そして福島~科学者の倫理を問う」
(立命館国際平和交流セミナー=2014年8月4日広島)※2014年8月6日三輪祐児氏公開

《参考資料》 西里扶甬子「731部隊の秘密を追って 奉天捕虜収容所で何があったか?60 年後に判ったこと?(PDF)」 (POW研究会調査レポート)

◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して
◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告
◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

話題の対論本!内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え 強い国になりたい症候群』

 

 

もしもいま、日本で韓国の高校生たちが「集団万引き」をしたらどうなるか?

日本の高校のサッカー部員らがこの3月、韓国で「集団万引き」をした事件で、被害に遭ったソウル・東大門のショッピングモールの商店主たちが、処罰を望まないという意思を警察に伝えていたことが分かった。4月14日の朝鮮日報日本語版によれば、商店主たちは、高校生らが韓国で重い処罰を受けた場合、東大門商圏の主な顧客である日本人観光客たちの客足が途絶える可能性があると懸念したという。

ソウル中部警察署が4月13日に発表したところによると、被害に遭った9店舗のうち一部の店主たちは「日本の高校生たちに寛大な措置を講じてほしい」との意向を警察に伝えたという。店主たちはその理由として「高校生たちは未熟で、彼らが処罰を受けた場合、周辺の商圏に否定的な影響を与えかねない」と述べたという。

埼玉県の私立高校がソウルへ練習試合に出かけた帰路、集団(22人)で万引きを行ったことが発覚した事件だ。東大門のショッピングモールと表現されているが実際は小さな商店が軒をならべる「市場」と言った方が似つかわしい雰囲気の場所だ。

この悪戯が過ぎる高校生たちは、親や学校からこっぴどく叱ってもらわねばならない。高校生(中学生)の集団万引きは今日に始まったことではなく、「あれが欲しい」という動機ではなくても「あいつがやっても大丈夫だから」と付和雷同的に引きずられ、ついつい気楽に悪さをしてしまう。そんな心理が生徒たちには働いたのだろう。

◆「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌えた80年代韓国の不良たち

同様の「悪さ」は昔、韓国でも問題になったと留学生から聞いたことがある。韓国社会は急変しつつあるとはいえ、いまだ日本に比べれば封建的な側面が残っており、特に「教師」への尊敬の念は幼少の頃から叩き込まれる。だから日本同様に生徒同士の喧嘩や、万引きなどは同じように昔からあったけれども、「正面切って教師に刃向う」不良生徒は皆無だったそうだ。

そして韓国では80年代まで多くの高校で日本の詰襟同様の制服が残っていて、不良生徒は丈の長い上着に、ズボンをダブダブに太くするのが「不良文化」だったそうだ。誰が伝えたのか(自然発生なのか)知らないけれども、似なくてもいいところが似るものだ。もっとも詰襟の制服は日本支配時代の遺物であり、彼らは「ラジオ体操」まで学校で習っていたというから笑えない歴史でもある。

そんな韓国の不良たちはラジカセを抱えてタバコを吹かしながらある日本の歌謡曲を繰り返し聞いていたという。それはいしだあゆみの「ブルーライト横浜」だ。なぜに「ブルー・ライト・ヨコハマ」なのか、複数の元不良に調査したが誰も理由は分からないと言っていた。日本語が分からなくても「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌える不良が結構いたらしい。

◆もしもいま、韓国の高校生たちが日本で「集団万引き」をしたら……

さて、今回の集団万引き事件だが、もし逆の事が日本で起こっていたら、どんな報道がされて、インターネットではどんな言説が飛び交っていただろうか。こんな「仮定」自体が韓国には失礼だけれども、想像するだけで気分が悪くなるようなヒステリックな差別が飛び交っていたのではないか。

問答無用の「嫌韓人」には何も伝わらないだろうけれども、「東大門のショッピングモールの商店主たちが、処罰を望まないという意思を警察に伝えていたこと」ことは謙虚に受け止めるべきではないだろうか。

日本だけにいると、あたかも韓国は世界中から嫌われているかのような雑誌の特集や書籍を多く見かけるが、毎年BBCが実施している国別好感度調査によると2014年度日本の好感度は第5位で韓国は11位だ。逆に嫌悪度では日本が11位で韓国が9位だ。因みに好感度1位はドイツで最下位はイスラエルとパキスタンである。参考までに米国の好感度は8位で嫌悪度は7位となっている。

世界は多様な価値観で構成されている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎大阪発の映画『60万回のトライ』で知ったラグビー界の自由と公平
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◎就職難の弁護士を貸付金強要で飼い殺すボス弁事務所「悪のからくり」
◎関西大で小出裕章、浅野健一、松岡利康らによる特別講義が今春開講!

内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え─強い国になりたい症候群』

 

《誤報ハンター03》「テロの危機」煽れば増える「警備利権」と警察天下り

裏がようやくとれたので「アサヒ芸能」の誤報について書く。その記事は2月26日号の「戦慄スクープ イスラム国『東京マラソン2.22襲撃』は防げない!」についてだ。

「東京マラソン」については、マラソンコースを走りながら警備する警官、「ランニングポリス」が話題になった。たとえば、毎日新聞の2月22日にはこう出ている。

日本最大規模のマラソン大会「東京マラソン2015」が22日開催され、3万5797人が都心部を快走した。テロ対策を強化した警視庁は約4500人の警察官を投入。国内のマラソンでは初となる「ランニングポリス」も初めて導入した。警備部所属の男女計64人が2人1組で、それぞれ割り当てられた10キロほどの区間をリレー形式で市民ランナーに伴走。頭に着けた小型カメラで沿道の様子を撮影、ライブ映像を警視庁本部に送信した。

都庁(新宿区)から日比谷公園(千代田区)までを担当した中澤浩警部(43)は「沿道の様子がかなり把握できた。小型カメラも気にはならずマラソンには有効な警備になる」と話し、「観客やランナーから『警備頑張って』と声援をいただき励みになった」と振り返った。【岸達也】(毎日新聞

◆「東京マラソン」一日で数百万円を売上げる警察天下り先の警備会社

確か、「東京スポーツ」(2月14日)でも東京マラソンのテロの可能性は指摘された。

実は、この「東京マラソン」には警備員が6000人ほど配置された。例年よりも1000人増やしているのにはからくりがある。

「警備会社としては、1日で数百万円を売り上げるおいしいイベントです。実は、この『イスラム国が東京マラソンを狙っている』という情報は、警察庁が、天下り先の警備会社を儲けさすために流した情報だということです。実際、この情報が流されたのは、1月の末のこと。警察から警備会社に流れたOBたちが、警察幹部と赤坂で会合をもってからすぐの出来事ですから、これはもう、出来レースだと見ていいでしょう」(全国紙社会部記者)

そして、配置された警備員も、短時間で稼げるおいしいバイトとなった。
「なんせ、コースから応援する人がはみ出ないように『人の盾』となるだけ。かかしになっていれば4時間で8000円ですからおいしいバイトですよね。警察から流れてきた仕事なんですか? どうりで支社でも幹部たちがやたら警察の幹部に挨拶に行くわけですね」(警備員)

◆「元警官」を日当2万円で1000人弱雇った「警視庁雇用」枠

実は「元警官」も「警視庁雇用」枠で1000人近くが呼ばれており、「日当2万円なり」をゲットしたとされる。

「70歳とか73歳とかの年寄りが通行止めのポイントに立っていました。彼らがうまく車を裁けるのかどうかヒヤヒヤして見ていましたが、うまく裁いていましたね。でもこういうイベントのたびに『小遣いを稼げる』から、役所のOBっていいですね」(同)

筆者も短い時間、警備会社で短時間にアルバイトをしていたが、実は警察OBが偉そうにしているのを間近で見た。彼らは、警察から仕事をもってくるための「大切な人質」だったのだ。

かくして、各マスコミには、「東京マラソンが危ない」という情報があふれ出る。アサヒ芸能は、東京マラソンが危ないという話を、大学教授を使って展開している。

「イスラム国が最も憎む相手、それはいまだにキリスト教側の白人です。しかし、安倍政権が〝積極的平和主義〟を打ち出して以降、反日感情が高まってきているのは事実でしょう。そして基本的に彼らのテロの成功は、その脅威を世界的に見せつけること。もし日本国内でテロの標的になるとしたら、場所としてはやはり首都・東京が最も危険。中でも世界的スポーツイベントの東京マラソンは、格好のターゲットです」こう指摘するのは、国際テロが専門の青森中央学院大学の大泉光一教授だ。(「アサヒ芸能」より)

そしてイスラム国を支持するフィリピンの過激派組織「アブ・サヤフ」やナイジェリアの武装組織「ボコ・ハラム」の動きを警察が警戒していると「アサヒ芸能」は言及している。

記事はこうして終わる。「『世界一安全』と言われてきた日本。その称号を、はたして東京マラソン後も維持できているのか。もはや運を天に任せるほかないと思えてしまうのである。」(「アサヒ芸能」より)

◆『危険』を食い物にして稼ぐ警察の天下り警備会社と御用マスコミの共犯関係

警備に呼ばれた「シンテイ警備」関係者が語る。

「3.11の大地震が起きたときも、警察をあげての避難訓練でたくさんの警備員が出て、かなり稼いだ。『危険』を食い物にして、稼ぐ警察の天下り警備会社は、その考えからして腐っている。情報にのるマスコミも同罪でしょう」

「アサヒ芸能」よ! 警察情報を垂れ流す記事を出す思考停止の誌面はもうやめたまえ。ただでさえ「まったく芸能の記者会見にも来ないのに芸能ネタをやたら書く」と芸能プロダクションに嘲笑されるあなたたちに未来はない! 地道に裏をとる「週刊ポスト」や「週刊現代」の記者のほうがまだ好感がもてる。

「ここはもう、取材のやりかたから根本的に変えないと週刊 文春や週刊新潮にはたち打ちできないでしょう。なにしろ取材しないで平気で書くのですから」(藤堂香貴・ジャーナリスト)

さて次は何の誤報を取り上げようか。手元にはたくさん資料があるが、裏がとれたものから報告しよう。うししししし。(鈴木雅久)

◎《誤報ハンター02》誤報の横綱『週刊大衆』よ、白鵬はまだまだ引退しない!
◎《誤報ハンター01》芸能リポーターらが外しまくる「福山雅治」の結婚報道
◎アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年号絶賛発売中! 警察が必死に隠蔽「取調室で容疑者死亡」の裏側に隠された“真実”


マクドナルド最終局面──外食産業が強いる「貧困搾取」ビジネスモデル

日本マクドナルドが一部社員の基本給を下げるという。本コラムで既に報告したが、マクドナルドは最終局面を迎えているのかもしれない

◆儲かろうが儲かるまいが、現場労働からの「搾取が儲けの元」に変わりなし

「日本マクドナルドが、基本給に手を付けるのは初めて。関係者によると、4月以降、評価に応じて分けられた4つの等級のうち、上から3、4番目の社員を対象に、昨年の基本給から1~4%カットする。現在、会社側が社員への説明を始めている。これまで、業績いかんに関わらず基本給を引き下げることはなかったが、業績の悪化は底なしの様相を呈しており、手を付けざるを得なくなった。好業績を背景に、今春は多くの企業がベースアップを打ち出しているが、こうした流れに逆行した動きだ」とダイヤモンド記事は報じている。

一方で、「今年3月25日に退任した原田泳幸前会長には、役員報酬と退職慰労金合わせて3億3900万円、サラ・カサノバ社長には2014年度の報酬として1億0700万円が支払われている。また役員5人にも報酬3億9300万円の役員報酬が支払われており、1人当たり7800万円に上る計算だ」だそうだ。

業績は毎月悪化の一途で2月からで3月も28%売り上げが落ちている。なのに経営陣は責任を取るどころか原田泳幸前会長は4億円近い金を持ち逃げし、現社長にも1億円の給与が払われている。

でも、このような「不条理」は驚くには値しない。最初からマクドナルド社の商法は現場アルバイトや従業員には「えげつなく」、儲かろうが儲かるまいが「経営陣」は高給を頂く姿勢は一貫していた。さらに言えばマクドナルドだけでなく、全国に多数のチェーン店を持つ飲食業者のほとんどは同様の「現場にえげつなく、経営陣はいつでも儲かる」経営システムを採用している。だからあのように安価に商品提供が可能となるのだが、その間で削り取られているのは、「労働者」の賃金である。つまり「搾取が儲けの元」なのだ。

と、ここまで書いたところで15年度見通しの発表が日本マクドナルドからあった。営業損益が250億円の赤字(前期は67億円の赤字)と、前期の上場来初の営業赤字から赤字幅が拡大する。期中に131店を閉鎖するそうだ。

役員報酬もさすがに手つかずとはいかず、役員報酬は6カ月間減額で、サラ・カサノバ社長の削減幅は20%になるという。マクドナルドの斜陽は加速しているとみて間違いないだろう。

◆「ワンオペ」という「一人労働」で「過労死ライン」超え

安価ファミリーレストランとして知られる某有名チェーン店にアルバイトとして勤務した人によると、店舗によっては厨房内の調理(といっても大方は工場で調理された「加工物」を電子レンジなどで元に戻すだけだが)を1人で担っていたという。繁忙時間には厨房内で体の動きを止めることは勿論、トイレに行くことすら出来なかったそうだ。

「ワンオペ」という横文字を使い「一人労働」を強いていたファーストフードチェーンの「すき屋」も同様だが、実際に収益を上げる現場の労働環境を限界近く(時には限界以上)に切りつめることにより収益を上げているのが外食チェーン店だ。「すき屋」を経営するゼンショーホールディングスの小川賢太郎会長兼社長は『週刊東洋経済』(2014年12月6日号)で次のように語っていた。

「創業の頃は私も年間4700時間働いた。それから4000時間、3500時間と減らしてここ数年は3000時間以内だ。(中略)われわれの父親の世代は戦後復興で皆長い時間一生懸命頑張ってこの国の礎を作ってきた。働くことは尊いという価値観を日本人が失ってはいけない」

これは小川氏の本音だろう。だが個人事業主が自己責任でがむしゃらに働くのはかまわないけれども、多くの従業員を抱えた企業に成長し、多数のアルバイトなどの低賃金労働者を雇用するようになれば、このような考え方は社会的に許容されるものではない。戦後の焼け跡時代と、経済指標では世界でも上位に位置する現在の日本を同一視するのは時代錯誤であるし、このような考えの経営者の下で働く労働者はたまったものではない。4700時間の労働は年間の法定労働時間(2000時間余り)の倍以上であり「過労死ライン」とされる月間80時間以上の残業を大きく上回る。

経営者が好きで働くのは勝手だが、労働者にそれを押し付けるのは論外だ。

◆「普通」の生活すらできない給与体系

本音を語らせば、大手外食チェーンの経営者は似たり寄ったりの考え方で労働者をこき使っている。だから全国に同じ看板の店舗があれよあれよという間に乱立できたのだ。今幼少の子供の中には、これらチェーン店の名前を知ってはいても、個人が経営する「食堂」の存在自体を知らない子がいる。

学生が小遣い稼ぎのために週に数時間働くのであれば、人生に大きな影響はないだろうけれども、そこを主たる生計の稼ぎの場といている人にとっては、労働の割にどれだけ働いても決して楽な(否「普通」の)生活すらできない給与体系になっている。

ファーストフードとは「簡単に食べることのできる」食を指すが、「簡単な食」によって「豊かな生活」が遠ざかって行っているのが今日の日本社会だ。

「定食屋」や「一膳飯屋」果ては「食堂」という単語が聞こえなくなるのに共鳴するように、私たちの生活は貧しくなってゆく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎ジャンク化マクドの「疫病神」原田泳幸の経営手腕は「合理化=搾取と混乱」
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

自粛しない、潰されない──創刊10周年『紙の爆弾』5月号発売中! 安倍政権に反対すべき「七つの理由」を総力特集!

 

「イラク派兵」で29人が自死した自衛隊を再び派兵させる日本のPKO責任

2004年1月、陸上自衛隊はイラクに派兵された。名目上は「PKO」を名乗っていたけれども、滞在地サマワではロケット砲が飛び交う、実質的な戦地だった。

この派兵は当時の首相小泉によって決定されたものであるが、現首相安倍は自衛隊派兵中に官房長官に就任している。

米国を中心とする「多国籍軍」によるイラク攻撃は「大量破壊兵器所持の疑い」が理由であったが、そんなものは実際にはなく、主犯格のブッシュはイラクをめちゃくちゃにした後に「あの戦争は間違っていた」と述べている。日本は同様にイラクが「大量破壊兵器所持の疑い」があるとして米国のイラク攻撃を支持するにとどまらず、実質的な戦地に自衛隊を派兵した。

◆思い込みだけで冤罪イラクを崩壊に追いやった多国籍軍・日本の責任

ブッシュが「間違っていた」と認めたイラク攻撃理由について安倍はどう考えているのだろうか。昨年5月28日衆院予算委員会での関連質問に「大量破壊兵器がないということを説明できるチャンスがあるにもかかわらず、それを証明しなかったのはイラクであったということは申し上げておきたい」と述べている。

イラクは当時何度も「大量破壊兵器など保持していない」と表明していた。それでも「いや、信用ならない。必ずイラクは持っている」という思い込みか、言いがかりかわからないけれども「多国籍軍」はとてつもない爆撃を行い、果てはフセイン大統領を殺してしまった。フセインの独裁政治に問題があったとしてもそれは内政問題であり、攻撃の理由などには到底ならない。その結果イラクはどうなった? イスラム国や米国傀儡政権、さらにはクルド民族勢力やアルカイダ系組織が戦闘を繰り返し泥沼の内戦が続いているではないか。

明らかな犯罪じゃないか。

いや犯罪などという言葉では軽すぎる。これは国家抹殺の大虐殺だ。であるのに安倍の見解は上記のとおりだ。冤罪で睨まれた容疑者と同じでいくら事実がなく「やっていません」といったところで「じゃあお前やっていないことを証明しろ」といわれてどうやって証明するのだ。犯罪が存在した事実を証明する義務を負うのは捜査当局であるし、この場合であれば米国や多国籍軍にその責任がある。

だが、主犯格の米国が「イラク容疑者は冤罪でした」とフセインを死刑にした後誤りを認めた。多国籍軍は向くのイラクに大虐殺を犯しただけのことなのだが、その責任があたかもイラクにあるかのごとき発言をいまだに安倍は行っているのだ。安倍はブッシュよりさらに悪質極まりない。

◆安倍の狂気で真っ先に犠牲になる自衛官たち

その安倍の狂気により最も生命の危機が脅かされているのは自衛官の皆さんだ。安倍が気まぐれに「シリアへ行け」、「イエメンへ行け」と言い出せば自衛隊の方々は拒否できない。もちろん現行法では戦地に自衛隊は赴けないけれども、解釈改憲を平然と行うような人間が安倍だ。憲法だって読み替えるのだから、法律などいくらでも屁理屈をこねて解釈を捻じ曲げるだろう。

こういった話を「物語」的に語れないのは不幸のきわみだけれども、真っ先に犠牲になるのは繰り返すが、自衛官の皆さんだ。そしてその対象が一般国民に広がるのにもこのまま行けばたいした時間はかからないだろう。

◆イラクから帰国後5年内に自衛官29名が自死した事実

実は、イラク現地での戦死者は出なかったけれども、実質的な戦死者は既に出ている。イラクから帰国後5年以内に確認されているだけで、陸上自衛官21名、航空自衛官8名合計29名が自ら命を絶っているのだ。

安倍は言うだろう「自殺と任務の因果関係は証明できない」と。

自衛隊は「交戦地帯」には赴かなかったはずだ。勿論実際の戦闘にも加わらなかったはずだ。にもかかわらずこれほど多くの自死者が出ているのは何故だ。報道されていたようにサマワで道路建設だけに従事していたのであれば自らを死に至らしめるような苦しみに苛まれるだろうか。派兵された自衛官の皆さんは公にされていないが心に熾烈な傷を負う経験をさせられたに違いない。そうでないというのであれば、安倍がイラクに求めたように「そんな苛烈な状態はなかった」ことを証明してみろ。

「安保法制の整備」などつまるところ「どうやって合法的に自衛隊をはじめとする国民を戦地に引きずり出すか」悪知恵の出し合いだ。

交戦なくして29名もの自衛官の戦死者が出ていることを国民は広く知るべきである。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎関西大で小出裕章、浅野健一、松岡利康らによる特別講義が今春開講!

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基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」

「菅義偉官房長官は(4月)6日午前の記者会見で、翁長雄志沖縄県知事が米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)移設問題をめぐって安倍首相との会談を求めたことについて「これから具体的に、どのような要望(が知事からなされる)かを詰めながら検討していきたい」と述べた。その上で、翁長氏が、名護市辺野古移設を進める政府の要人の口から「粛々」との言葉が相次いでいるのを批判したことに関し、菅長官は会見で「不快な思いを与えたということならば使うべきではないだろう」と述べ、今後は「粛々」という表現は用いない考えを示した。」(2015年4月6日時事通信

◆腹の中では「粛々」と「我が軍」を繰り返し唱え続ける狂気

この報道を目にしてから3日もたたないうちに、安倍は4月8日の参院予算委員会で米軍普天間飛行場の名護市辺野古異説に関する答弁で、「粛々と」と言い放った。「日本を元気にする会」の松田公太代表が「辺野古基地法」を国会で成立させ名護市の住民投票にかけることを提案(この提案自体名護市長選挙、名護市議選挙、沖縄県知事選挙、総選挙ですべて「辺野古基地建設反対」と絶対的な民意が示されているのに、何をいまさらとぼけた提案かと思うが)したのに対し安倍は「安全保障は政府が責任を負うのは当然だ」と切り出したうえで「既にある法令にのっとって粛々と進めているわけで、上乗せして法律を作る必要はない」と述べた。

これに先立つ3月30日に安倍は、やはりの衆院予算委員会で、先の国会答弁で自衛隊を「我が軍」と述べたことについて、「こうした答弁によって大切な予算委の時間が使われるなら、そういう言葉は私は使いません」と述べた。「大切な予算委の時間」が使われるから「我が軍」という言葉を使わないのが安倍の本心ということをまたしても吐露した形になり、こいつは防衛省自体が「自衛隊は軍隊ではない」と明言しているにもかかわらず、相変わらず腹の中では「我が軍」、「我が軍」と念じていることが明らかになった。

紹介したこの2つの発言は、首相として留まっていることを許される性質のものであろうか。官房長官が沖縄県知事と明確に約束した「粛々という表現は使わない」というごく簡単な合意でさえ数日で反故にしてしまう。無意識なのか故意なのか。どちらにしても沖縄の人だけでなく国民全体に対して馬鹿にするにもほどがある。私が心配する筋合いではないが菅官房長官はもう何があっても沖縄で信用されることはないだろう。

◆29回54カ国──2国間で直接協議すべき問題がない国ばかりを選んでの「外遊」という狂気

安倍の「粛々」発言は「暴言」や「失言」では済まされない。安倍の頭の中には自身の独りよがりの他に、沖縄(琉球)差別があるのではないか。というのは下記の国々の名前をご覧いただきたい。安倍が総理に就任(2013年1月)して以来訪問した国だ。

ベトナム、タイ、インドネシア(2)、米国(3)、モンゴル、ロシア(3)、サウジアラビア、アラブ首長国連盟、トルコ(2)、ミャンマー(2)、ポーランド、英国(2)、アイルランド、マレーシア、シンガポール(3)、フィリピン、バーレーン、クゥエート、ジプチ、カタール、アルゼンチン、カナダ、ブルネイ、カンボジア、ラオス、オマーン、コートジボアール、エチオピア、モザンビーク、スイス、インド、オランダ、ドイツ、ポルトガル、スペイン、フランス、ベルギー(2)、イタリア(2)、バチカン、ニュージーランド、豪州(2)、パプアニューギニア、メキシコ、トリニダードトバコ、ブラジル、コロンビア、チリ、バングラディッシュ、スリランカ、中国、エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区。

外遊回数は合計29回で、54カ国を訪問している。書き上げた国の名前はおおよそ訪問した順番でありカッコ内はその国に複数回訪問しているときの回数を示す。

いや、実に多くの国にお出かけで、と感心しているのではない。たとえば米国は3回訪問しているが、そのうち2回は国連総会出席のための訪問で、米国でオバマ大統領と個別に会談したのは1回きりである。

また中国訪問も1度あるが、これもAPEC首脳会議出席が主目的で空き時間にかろうじて25分だけ習近平国家主席と形ばかりの会談をしたに過ぎない。尖閣問題などについてワーワー騒いでいる割にはこの会談でまったくといってよいほど何も成果は得られていない。そして上記の国の中に韓国の名前は出てこない。

要するに2国間で本来直接協議すべき国問題がある国には出かけていけないのが「安倍外交」なのだ。それは国内でも同様で、一番問題のある「沖縄」へは「怖くて」行くことができないのだ。中国にだってAPEC首脳会議がなければ訪問していないだろう。

◆ごく簡単な約束すら「守れなくなっている」安倍は自身の体調もすでに「末期」

最初の訪問国ベトナムで安倍は何をしてきたか? 「5億ドル(466億円)の円借款を供与を行う意向を伝え」原発をセールスしてきたじゃないか。サウジアラビアでも、アブ首長国連邦といった産油国にも「原発どないでっしゃろ?」売り込みに余念がなかったじゃないか。そんな話する暇があったらOPEC加入国以外に比べて不当に高い原油価格の値切り交渉でもしたらどうなのだ。

今年の2月を除いて安倍は就任以来1月に1度も外遊に出ていない月がない。外務省のHPに詳細が掲載されているが訪問名目的や概要を読むとTPPに関連したものがやたら多いことが目に付くのと、この外遊がいったいなぜ必要なのかと首を傾げてしまうものがあまりにも多い。ちなみに安倍は前回首相に就任した2006年も10月から12月まで毎月外遊に出ていた。2007年に入り1月の欧州アジア訪問から4月末の米国中東歴訪まで間が空く。さらに、5月と7月も外遊がなく9月の豪州訪問で体調を壊し、辞任へと追い込まれた。

つまり、安倍は毎月のように「どうでもよい」外遊に出ないと体が持たないことをこの事実は示している。訪問先は「どうでもよい」場所でなければならない。間違っても単独で韓国や中国へは行けない。そして沖縄にも。

ごく簡単な官房長官と知事の約束すら「守れなくなっている」のが安倍の体調とみていいだろう。この男は3月末幸いにもシンガポールのリー・クアンユー元首相の国葬へ「出国」出来たがその前の外遊は、例の「人質見殺し」宣言をした中東歴訪だった。外遊だけが体調維持の支えになっているこの男、安保法制を審議する6月24日までは国会があるから余程のことがなければ長期外遊はないだろう(体調回復のためにゴールデンウィークに余分な外遊を入れる可能性はあるが)。沖縄の人々の怨嗟にむせび泣く直面できない安倍の体から悲鳴が聞こえる。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎労働者にメリット・ゼロの「残業代ゼロ」法案を強行する「悪の枢軸」企業群
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎福島原発事故忘れまじ──この国で続いている原子力「無法状態」下の日常
◎自民党の報道弾圧は10日施行の秘密保護法を後ろ盾にした恫喝の始まり

自粛しない、潰されない──創刊10周年『紙の爆弾』5月号発売中! 安倍政権に反対すべき「七つの理由」を総力特集!


「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?

4月2日、ケニアではアルカイダ系とされる「アルシャバーブ」の襲撃を受け大学で148人もの犠牲者が出る凄惨な事件が起きた。

国連安保理事会では4日イエメン情勢を巡り、非公開の緊急会合が開かれた。首都サヌアなどを占拠するイスラム教シーア派の武装組織「フーシ派」への、サウジアラビアなどによる空爆の停止などについて討議が行われた。イエメンでは、フーシ派の武力攻勢でハディ暫定大統領が出国する事態に陥り、サウジアラビアなど周辺10カ国の有志連合軍が先月下旬からフーシ派への空爆を開始する一方、フーシ派を支援してきたイランが攻撃の即時中止を求めるなど混乱が続いている。

◆チュニジア、シリア、パレスチナ──実態以上に混乱している理解力

3月18日には、チュニジアの首都チュニスで国立博物館が襲撃され、日本人3人を含む外国人観光客など21人が殺害される事件が起こった。

日本人の負傷者の中には自衛官がいたことが後に明らかになり問題視されたこの事件、現場で射殺された2人の実行犯はチュニジア人、26歳と20歳の若者で2人はアルカイダ系のイスラム過激派組織「チュニジアのアンサール・シャリーア」の中でも、最も過激なグループに属していたとみられている。チュニジア政府は事件後複数の外国人を含む23人を事件の容疑者として逮捕している。

チュニジアは「アラブの春の数少ない成功例」とも言われ、政変が起こった国の中では治安も安定しており、2月には世俗派政党からイスラム系政党も加わった挙国連立内閣が成立し、政権の形態としても安定を迎えているはずだった。

一方シリアでは4月5日現在、ダマス近郊のヤルム―ク・キャンプで、イスラム国(IS)対パレスチナ勢力と反政府軍の攻防が続いているが、シリアからの消息筋によるとイスラム国(IS)がキャンプの90%を占拠していると報じられている。同じく消息筋はシリア空軍機がヤルムークキャンプに複数回の空爆を行い、住民に死傷者が多数出ていると報じている。

他方、パレスチナ大統領府は同キャンプでの戦闘停止のために、国際社会、アラブ社会、国際機関と接触して、働きかけていると表明した。大統領府は、「パレスチナの立場はシリア内戦に不介入と言うことで一貫しており、パレスチナ人を紛争に引きづり込んではならないと語った」ということだ。

◆ISの後ろ盾はイスラエル?──俯瞰できない「イスラム国」をめぐる各地の政情

私はこれらの国々の混乱を前にして、「大義」や「正義」とは何かが改めて解らなくなっている。おそらく報道している方々もそうではないだろうか。正直なところ俯瞰が出来ないのだ。ことにシリア情勢は混乱の極みだ。イスラム国は文字通りイスラム信仰のはずなのにパレスチナ勢力と交戦してる。パレスチナはイスラエルから散々いじめられ続けている「悲劇」の国ではなかっいたのか。

「過激過ぎる」と避難される「イスラム国」の後ろ盾にはイスラエルがいるとの情報にはあちこちで接する。イスラム教徒にとって許すことのできないはずのイスラエルがこともあろうに「イスラム国」を援助しているのが事実だとすればその真意は何だろう。

シリア政府は国連から散々非難を浴び、米国から空爆を受けその残虐振りが伝えられているけれども、反政府勢力とパレスチナ勢力は必ずしも友好的ではないらしい。

有志連合各国はその名の通り「有志」に過ぎず正式な軍事同盟ではないから、この混乱ぶりを前に抜け出す国も出てくるのではないだろうか。

◆「知ること」を怠り、ただ「忘れていく」だけの日本社会

日本人人質がイラクで殺害された事件がもう遠い昔のように、次々と局面が転換してゆく。「イスラム国」は絶対悪だと声を揃えて非難をしていた報道も、このような混乱を前に声のトーンが落ちて来た。

中東やアフリカで起こっている数々の襲撃事件や交戦は確かに悲惨極まりない。そのすべてが「テロ」である。

だから我々はもう一度考え直す必要はないだろうか「テロとの戦い」、「テロは絶対に許さない」という言葉がぜんたいどれほどの意味をもつというのか。2者の対立ではない。伝えられない細かな分派闘争も現地ではあるだあろう。そんな状況に向かって「テロは許さない」という言葉を投げかけることに意味があるのだろうか。シーア派とスンニン派の違い、同じイスラム教を信仰していても民族文化の違いなど私達は事態を正しく理解する知識を持っているだろうか。

◆紛争地帯へ「武装して行く」と言えるほど私たちは世界が分かってはいない

私に言えることは「私たちはこれらの紛争地帯へ武装して行くなどと言えるほど世界が分かってはいない。仮に出しゃばれば混乱を悪化させるか、不要にまきこまれるだけではないか」ということのみだ。

その態度を「弱気だ、国際社会に対して無責任だ」と言われても構わない。責任を取って自体を収束させる処方箋を持つ !と自負する国が腹を据えて首を突っ込めばいい。そういう国は「有志連合」に既に参加している。勇ましさよりも、慎ましやかさが賢明な選択肢であることが、国際紛争ではしばしばある。と言ったら日和見主義と誹られるかもしれないけれども、いいじゃないか。「テロ合戦」延長の戦争に加わるよりも──。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
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◎『噂の眞相』から『紙の爆弾』へと連なる反権力とスキャンダリズムの現在

自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年号発売開始!

 

貴様!何様!産経様!──全ておかしい産経【主張】に逐一「喝!」を入れてみた

産経新聞は3月24日の【主張】で「道徳教科化『愛国心』を堂々と育もう」を掲載した。この表題自体、記事の見出しとはいえ、日本語として語感がおかしいが、内容は更に凄まじい。抽象的で論理が一貫していないだけではなく、誰に向けて書いているのかも不案内だ。自分で吠えて満足をしているのか、読者に訴えたいのか、あるいは特定の対象がいるのか。新聞の社説としては内容以前に文章の体裁から問題からしてレベルに問題がある。

◆産経新聞は「政府の広報紙」以下の宣伝ビラ

私は産経新聞をまともな新聞であるとは考えていない。出来の悪い歴史改竄主義者と差別者の宣伝ビラのようなものだととらえている。しかし少ない実売部数の割にはネットニュースなどで幅を利かせているので無視はできない。

この際いかにも産経新聞らしいエッセンス満載の【主張】が掲載されたので全文を逐語的に叩かせていただく。産経新聞内にも良心的な記者がいるのかもしれないが、少なくとも下記のような主張を乗せる新聞は「政府の広報紙」以下だ。尚、こんな徒労は出来れば今回限りにしておきたいのが本音である。
(※以下、文頭の「産経」は産経記事引用文、「喝!」が私の見解である)

◆「愛国心」を強制する道徳教育から「多角的」な視点などは生まれはしない

産経 道徳の教科化に対し、相変わらず「価値観の押しつけ」などと反対意見がある。

喝! 当然である。「道徳」の概念は単一ではないのだから国家が義務教育で強制するような性質のものではない。

産経 しかし、道徳は、立場による価値判断の違いを知るなど物事を多角的にみる力を養う。

喝! 物事を多角的にみる力は「価値の強制」によって育成されるものではない。また「愛国心」を強制するような教育から「多角的」な視点などは生まれない。

産経 公共心、愛国心などを否定する偏向教育こそ改め、子供たちの心を捉える指導を工夫したい。

喝! ほら、もう本音が出た。「公共心、愛国心などを否定する偏向教育」の逆は「公共心、愛国心を強制する偏向教育」だ。「公共の理念」ならばいざ知らず、「愛国心」など何故強制されなければならないのか。そもそも「愛」は強制の上に成り立つものなのか。強制しなければ成立しない「愛」などは本来の「愛情」と相いれないじゃないか。さすがに昔のように軍歌を教えて教育勅語を暗記させるわけにはいかないから「子供たちの心を捉える指導を工夫したい」のか。今度はいったいどうやって騙そうとしているのだ?

産経 道徳は、小学校で平成30年度、中学で31年度から教科書を使い、記述式で成績評価が行われる「特別の教科」に格上げされる予定だ。

喝! 勝手に決めるな。迷惑千万だから御免こうむる。

産経 この指導指針となる学習指導要領改定案について文部科学省が意見公募(パブリックコメント)したところ、6千件の意見が寄せられる関心の高さをみせた。賛否の割合は集計されていないが、賛成では「正直、誠実」など徳目を例示した改定案について「分かりやすくてよい」など評価する意見があった。

喝! 組織動員以外は反対意見が多かったのだろう。だから賛否の割合を公開しないのだ。中には賛成意見もあろうが、「分かりやすくてよい」とされた「正直、誠実」など徳目を評価の基準にすれば「嘘つき」で「不誠実」な自公をはじめとする多くの政治家は不合格になるが、それでもいいのか。

産経 一方、反対意見では「偏狭なナショナリズムにつながる」「国の考え方を子供に植え付ける危険性が極めて高い」などの批判があったという。

喝! それ以外に「道徳教科化」の目的があるのであれば教えてほしい。嘘、偽りばかり毎日述べている政治家や文科省の口から出る「道徳」など思想洗脳以外に何の目的があるというのだ

産経 しかしこうした特定の考え方を押しつけるような指導は、教科化を提言した中央教育審議会の答申で、道徳教育とは「対極にある」と明言されたことを知ってほしい。思いやりや正義、公正さなどを教えるのは押しつけではなく、戦後教育に欠けていたことだ。

喝! 中央教育審議会は文科省の意向に沿った答申しか出さない。文科省が隠れ蓑に使っている中教審「答申」が何を「明言」しようと、そんなものが信用できる道理がない。「思いやりや正義、公正さなどを教えるのは押しつけではなく」とある。それはそのとおりだ。根本法である憲法では「思いやり」という言葉自体は用いられていないが「公正と信義」という表現が前文にある。憲法の精神を教育現場で教えることはいわば義務教育の責務であり、それが欠けていたとすれば正されなければならない。但しこの文脈から読み取れるのはそのような批判ではないようだ。産経新聞にとっての「思いやりや正義」主語に「国に対して」がつく「思いやり」や「自己撞着的」な「正義」ではないのか。

産経 改正教育基本法で教育の目標として明示された「国と郷土を愛する態度」も、道徳教科化に伴い重視されているが、「愛国心の押しつけ」と反発がある。だが自国の伝統文化を知らず誇りを持てなければ、他国への尊敬の念も生まれず、国際社会で信頼も得られないだろう。

喝! 改正教育基本法自体が悪意に満ちた悪法だ。前回の安倍政権最大の負の遺産と言ってもいいだろう。またぞろ登場する「国と郷土を愛する態度」などどのような尺度で測るというのだ。「愛する態度がよろしい」、「愛する態度に問題あり」などという馬鹿げた議論や評価は義務教育の場で行われてよいものではない。「自国の伝統文化を知らず誇りを持てなければ」とはとんでもない論理破綻である。

◆日本文化に誇りを持つか否かはあくまで「個」の領域

喝! 産経新聞によると「自国の伝統文化を知れば全員が誇りを持つ」という前提で議論が進められている。勿論日本文化の中に優れた要素はたくさんある。また逆に恥ずべき歴史だってある。それらすべてを知った上で個人がどの程度この国に思いを寄せるかは完全に「内面」の問題であって、いかに親兄弟であっても立ち入ってはならない「個」の領域だ。

さらにその前提がないと「他国への尊敬の念も生まれず、国際社会で信頼も得られないだろう」などと勘違いも甚だしい暴論が展開される。そんなバカなことがあるか。当の産経新聞自体が「日本の歴史文化を充分に理解して他国を尊敬」しているのか。中国や韓国への剥き出しの差別と憎悪を日々誌面に刻んでいる自分の態度をどうやって正当化するのか。

よその国にだって「愛国心」を教育で扱い、あるいは「強制」している国もある。はっきりしていることは「愛国心」を強制しなければいけない国のほとんどは「独裁国家」やそれに近く「自由」の少ない国たちであることだ。民主化が実現され、多様性を認めている国では「愛国心」教育など行われていない。なぜならばそういった国では国家が教育機関で「愛国心」を教えなくとも、多くの国民が自然に自国に好意を抱くからだ。

産経 内閣府の世論調査をみても、「国民の間に『国を愛する』気持ちをもっと育てる必要がある」と考える人は75%と多い。

喝! 恣意的な質問項目によって誘導された数字ではないか、そうでなければ少なくとも調査名くらいは掲載するのが新聞のルールだ(産経新聞に期待しても無理かもしれないけれども)。

産経 これまで学校では、愛国心や公に尽くすことの大切さを教えることを避けてこなかったか。

喝! 「避けて」と表現すると、あたかも卑怯なことをしているかの如き響きだが義務教育の公立学校で、「愛国心や公に尽くすことの大切さを教える」ことなどは間違っても「やってはならない」ことである。この部分の産経新聞の本音を代弁してやろうか。「国のために死ねる国民精神の育成がなされていなかったのではないか」じゃないのか。

産経 先人の偉業だけでなく失敗も含め、社会のために苦闘した物語などを積極的に取り上げ、考えることを通し、育んでいきたい。

喝! こういったことは「道徳」でなく「社会」あるいは「生活」の中で教えればよいことであり、ことさら道徳を教科化する根拠には全くなりえない。

◆「平成男」の小渕でさえ「教育現場で国旗は義務付けられない」と公言していた

産経 意見公募では、道徳の授業を成績評価することについて「教師の求める発言をする子供が増える」など懸念する意見もあった。道徳は教師の資質、指導力が何よりも問われることを肝に銘じ取り組んでほしい。

喝! そんな些末な問題では済まないことはもう実例が証明しているじゃないか。「教師の求める発言をする子供が増える」以前に偏狭な「愛国心」教育を拒否する良心的教師が処罰され、職を追われてゆくだろう。

1999年に成立した国家国旗法審議に当り、当時の首相小渕は国会で以下のように述べていた。

「学校におきましては指導要領に基づき、国旗・国歌について児童生徒を指導すべき責務を負っており、学校におけるこのような国旗・国歌の指導は、国民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけることを目的として行われておるものでありまして、子供たちの良心の自由を制約しようというものでないと考えております。」

「国旗及び国歌の強制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております。

この答弁によれば教育現場で国旗は義務付けられないはずだし、ましてや君が代を歌わない教師への処罰などないはずだが、現状はどうだ? 子供の教育云々の前に教師が校長から監視され処罰を受けているではないか。小渕の「空手形」は懸念通り完全に反故にされているではないか。

「道徳は教師の資質、指導力が何よりも問われることを肝に銘じ取り組んでほしい」という産経新聞はこの【主張】を小学校の教師に向けて書いているのか。だとしたら思い上がりも甚だしいと言わねばならない。「お前は何様なんだ」と。

部数は少なくともこういった極端な分子を利用しながら権力は更に教育の統制を進めようとしている。道徳教育教科化策動は正にそれを証明している。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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