「あいりん総合センター」が解体されたら、釜ヶ崎の困窮者はどこへ行けばいいのだ……

尾﨑美代子

センターが解体される。困窮者はどこへ行けばいいのだ。

5月15日、大阪市議会で、新今宮駅前にどんと建つ「あいりん総合センター」、通称センターが解体されることが決まった。維新の会と共に解体したいと考える人たちは「耐震性に問題がー」と言っていた。しかし、それが嘘だったことは、「問題だー」と叫び始めて以降、何年間も問題視していなかったことからも明らかだ。「老朽化して危ない」ともいわれるが、70年に作られた際、この頑丈な構造物は100年持ちまっせ!と言われてたのだ。その後、何度も震災にあいながら太い柱はそのままだ。何より、ここは釜ヶ崎の人たちが生活するのに重要ななくてはならない場所だった。ここに来れば本当になんとかなった場所だった。それが解体される。次に出来る構造物に、そうした人たちが入れるスペースはほとんどないだろう。

この大量の荷物の下に台車が置かれ、おじさんはそれを必死で押しながら地区内で休める場所を探している

上の写真のように、台車に全財産積んで、休める場所を探す人たちはまだまだ釜ヶ崎の周辺に大勢いる。これらの写真は、この半年の間に撮った写真だ。私が昼のバイトから帰る途中で会うおじさん、高齢で足が悪く5メートルを数分かけて歩く。 

センターがあった時は昼間センターで段ボール敷いて休んでいたのだろう。足も顔も洗えるし、洗濯も出来る。シャワーも浴びれた。釜ヶ崎に来れば、毎日どこかで飯が食える。釜ヶ崎地域合同労組の炊き出しは毎日昼と夕方にある。朝飯や昼飯があちこちでやってる。弁当を配る人たちもいる。中には貧困ビジネスの連中もいる。「うちのアパートに入れますよ」と甘い言葉で勧誘している。いい物件ならばよいが、生活保護費をむしり取る酷いところもある。気いつけてや。 

それでもどこかで飯が食える。冬になれば冬物、夏になれば夏物をあちこちで「放出」してくれる。セーターやジーパンも露店で100円で買える。三角公園の「西村商店」でも300円だ。月初め、西成警察横東側の「子どもの里」で、毎週水曜日、西成警察西側の「いこい食堂」前でバザーが出て、かみそり、石鹸、タオル、靴下、下着も安く買える。生活に困った人には本当に住みやすい釜ヶ崎、そこに住む人たちが大切にしてきたセンター、それが解体される。

この国で、貧困や差別がなくなるというのならばまだしも、今後も生きるのに難儀な人たちはもっと増えていくだろう。 今でも、炊き出しの列には30、40代の人も並んでいるで。

この釜ヶ崎は、本当にふところの広い町。ニッカポッカ履いた鉄筋の兄ちゃんが、立ち飲み屋で大きな縫いぐるみ抱きながら飲んでても誰も何もいわない。女装するおじさんも山ほどいる。誰も何もいわない。いっとき、Tバックで釜ヶ崎を闊歩する兄さんもいたな。さすがにそのままうちの店に入ろうとしたから、「兄さん、店に入るときはズボンはいてな」といったけど。

罪を犯し刑務所に服役し、出てきた人も多い。ある時、店で仕事も年齢も全く違う、ほとんど接点のない客同士が、目で挨拶するのを見た。話はしないが、必ず「元気か」みたいに目で話をしている。親しい客の方に「あの人、知っているのか?」と聞いたら、「刑務所で一緒だった」という。突然店に来なくなり、数年後また顔を出すようになった人に、普通なら「久しぶり。どこへ行ってたの?」と聞くだろうが、私は聞かない。「久しぶりやね」というだけ。病気で入院してたか、借金が膨れて飯場に入ってたか、あるいは服役していたか。間違っても、故郷に戻って家族と楽しく暮らしていた、などという人はいない。素性も前歴も家族の有無なども、こちらからは聞かない。今でこそ、生活保護など受けたから本名を教えてくれる客が多いが、昔は労働者ばかりで、多くは偽名。山ちゃんなんか10人以上いた。のっぽ山ちゃん、ちび山、おデブな山ちゃん、がりがり山ちゃん、黒い山ちゃん、犬好き山ちゃん、女好き山ちゃん……仲間に刺されて亡くなったバンダナ山ちゃん。素性も前歴も関係ない。釜ヶ崎人情ではないが、「誰に遠慮がいるじゃなし じんわり待って出直そう」が出来る町だ。

星野リゾート近くのコインランドリー前に立てられた非常に差別的な幟。「浮浪者出禁」と書かれている

本当にこの町はどうなるのだろう。もう一度言うが、貧困や差別が無くなるのならばまだしも、無くなるどころか増えていくのだから。こういう町がひとつくらいあってもいいではないか。いや、なければ困る人たちがたくさんいるではないか。 

そのために、西成特区構想を進める維新の会こそ解体していこう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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拝啓 広島県知事 湯崎英彦先輩 大学の後輩、そして県庁での元部下として、御勇退を勧告します

さとうしゅういち

初夏の候、いかがお過ごしでしょうか? 湯崎先輩。私は、先輩のかつての部下でもあり、大学の後輩でもある佐藤周一と申します。

湯崎先輩。いきなり失礼をご承知で申し上げます。2025年11月執行予定の広島県知事選挙への立候補をおやめになるようご忠告申し上げます。

◆最初は感動したけれど……

湯崎先輩。わたしは、最初に先輩が当選された時、もちろん、先輩に一票を入れました。 「演説がうまいとか、プレゼンがうまいとかそういうことではない。子育てをしているお母さん、農業のおじいちゃんおばあちゃん、漁師さん……一人一人の広島県民の声を聞くことが出来る、そういう知事が求められている。」先輩の最終日の演説には感動しましたよ(写真右)。

湯崎先輩。先輩は、私の生まれ故郷である福山市の鞆の浦の埋め立て架橋問題について、極めてうまく捌かれたと思います。今にして思えば、他のこともあの調子で行けばよかったのです。

鞆の浦の通過交通をさばくために、鞆の浦の美しい海を埋め立てる。こんな計画は、当時反対派の福山市民だったわたしには論外に見えました。しかし、賛成派がおっしゃるように、観光客が通る狭い道を通過交通の車がバンバン飛ばすのも危険すぎるのも事実でした。

そこで、先輩は、就任早々、賛成反対両派の対話集会を開催。通過交通をさばく、という一致点を見出して、山側にトンネルを建設する案でまとめました。2025年春、つい先日、鞆未来トンネルとして結実しています。

◆尻すぼみの『こどもを大事にする』社会への価値観転換

しかし、湯崎先輩。他のことでは成果があまり上がっていないようにも見えます。先輩は、2010年には育休を取られ「子どもを育てるということも仕事同様大事にする」という価値観の転換を訴えられました。

ところが、あれから15年を経過。広島県は「子育て・家事は女性がすべき仕事」という考えの県民が全国最多の4割です。それと並行して、広島の人口流出は4年連続ワーストワンです。

人口流出についていろいろと議論はあります。給料が低すぎる。若い女性に人気の仕事が少ない。空港が遠い。いろいろ言われていますが、価値観のアップデートが遅れてしまい、若い人が敬遠するのはもちろん、一定都会で最新の価値観を学んだ人たちもUターンを躊躇されている可能性が高いのではないでしょうか?

◆本当にこどもを大事にしていますか?

もちろん、湯崎先輩ばかりの問題ではございません。しかし、15年以上も知事をされていて、もっとやりようはなかったのでしょうか? そもそも子どもを大事にしようといいながら、子どもを大事にする県政だったでしょうか?子ども医療費への補助は、全国でもワーストレベルで遅れてしまっています。

湯崎先輩。あなたは、子どもたちに人気のマリホ水族館も含むマリーナホップを事実上追い出して、東京の企業によるモビリティーパーク、そして外国人富裕層向け高級ホテルにしようとしています。

マリホ水族館

あなたは本当に、広島に住むこどもたちを大事にしようとしていたのでしょうか?こういう点が疑問に思えるのです。ちなみにマリホ水族館が県民世論の支持を背景にアルパークに復活することになりました。

湯崎先輩。貴方の見通しの誤りをこのことは示しているのではないでしょうか?

◆県民の声もスタッフの声も聴かず「暴走」する病院問題

湯崎先輩。あなたは南区宇品の県病院を潰して、JR広島病院や中電病院と統合した巨大病院をつくり、全国トップレベルの医療!小児救急!中山間地医療!などの美辞麗句を並べ立てておられます。

県立広島病院

だが、それらは本当に実現可能なのでしょうか?既に、病院を運営する法人が資金ショートで、雲行きが怪しくなっています。

さらに、県病院の職員たちは、身分が独立行政法人になることで不安を感じ、退職が相次いでいます。そして、新病院は予算不足で規模縮小となり、患者の憩いの場となる喫茶店もない、先生方の控室には先生一人一人の机もない。患者もスタッフも窮屈な病院になろうとしています。

また、広島の市街地は島で構成されています。南海トラフまで行かずとも芸予地震や直下型の岩国断層帯地震などがおきれば、橋が寸断されるでしょう。こうしたことも視野に入れれば、広島の「各島」に救急対応ができる行政直営の病院があっても贅沢とは言えません。

独立行政法人だと、災害時でもコロナのような危機時にも行政直営のようにはいきません。兵庫県では阪神淡路大震災を教訓に公的病院の再編時には基本的に県立病院に変えてきたそうです。

また、中山間医療というが、エキキタに病院が移転すれば、島しょ部の患者さんにとって不便になります。そもそも、中山間地医療は安佐市民が基本的には担っているのです。

◆当初の志『現場主義』から大きく逸脱

湯崎先輩。先輩は2009年の就任の時、県職員全員に対して以下のようなお言葉を述べられました。「知事ではなく湯崎さんと呼んでください。」「現場が第一。現場のスタッフを局長が支え、局長をわたしが支える。逆ピラミッドの組織に。」 「予算をいくら使ったかではなく、成果をいかにあげたかが大事。これからは予算は使い切るのではなくあまらせたほうがえらい。」

ところが、県病院・新病院の問題ではまったくスタッフの声も聴かず、お金を国の補助金も含めて湯水のように使おうとされていますね。

スタッフの大多数は先輩の案に反対だそうではないですか?ところがスタッフたちは声を上げられる状態ではないそうです。

湯崎先輩。先輩は15年知事をされて最初にご自身が想定したような県庁にできていないのです。これ以上知事を続投される資格はない。

◆公文書偽造・補助金不正受給・公益通報もみ消し……他人事すぎる!

湯崎先輩。西部建設事務所呉支所では、公文書偽造と補助金の不正受給がおきました。それを職員が公益通報したのですが県の人事課はろくに当事者に資料提出も求めないまま「事実は確認できなかった」などと回答し、公益通報を事実上握りつぶしていた。大変な犯罪ではないですか?!

先輩。あなたは「事実なら遺憾」とおっしゃっていましたが、他人事すぎませんか?

湯崎先輩。これとは別に本庁の主査クラスの職員が知事印を適切な上司の決裁も経ずに押印するなど多数の不適切な事務処理をしていた。公文書偽造ですが、先輩は刑事告発をみおくられた。

湯崎先輩。今の広島県はあまりにも腐敗しすぎてこの程度の犯罪を告発していたらエライことになりそうな状態なのかもしれませんね。県庁OBとして恥ずかしいし情けない。

だが、そんな県庁にしたのは15年以上知事をされていた湯崎先輩。あなたです。

◆教育改革どころか崩壊招いた湯崎先輩の肝いり教育長・平川氏

湯崎先輩。あなたが肝いりで連れてきた平川理恵前教育長。結局、高校入試をはじめ、生徒や保護者、先生の負担になるような方向にかき回しただけだった。挙句に、官製談合という名のお友達に県費で仕事をつくってあげる事件を起こしました。

そして、平川前教育長は、給与の一部返納だけで正式な処分は受けず。刑事責任も部下に擦り付けて、2024年3月末限りで東京にまんまと「逃亡」してしまいました。今も、広島で改革を成功させた!と東京でご講演して吹聴して回っておられるとか。こんな教育長を6年間頂いた広島県の教育。学校現場では先生方の不祥事が今年も高止まりで深刻です。それはそうだ。あんなことをした教育長が捕まらないのですから。

これ以外にも、人口が減っているのに、また県立大学をつくって、定員割れ(叡啓大学)など、ちぐはぐさが目立ちます。県民や現場スタッフの声をちゃんと聴いているのですか?

湯崎先輩。先輩は女性副知事の人事でも、結局は大学のご自身の後輩でもある官僚を連れてこられた。いま、広島に必要なのは、もっと、広島で地道に頑張って来られた女性・若手の力を発揮できるようにすることではないのか?島根県では県庁たたき上げ、農業や教育、土木など幅広く経験されてきた高卒の女性職員が副知事になられています。こういうところをもっと広島も見習うべきです。

◆業者とズブズブ、県民に敵対 三原本郷産廃処分場問題

湯崎先輩。あなたにはさらにがっかりしたことがあります。三原本郷産廃処分場問題です。あなたは、水源地のど真ん中に許可したこの処分場の許可取り消しを広島地裁に命じられても、控訴している。そして控訴審では業者と一体となって住民に敵対しています。

2022年秋の稼働後、23年夏からは繰り返し汚染水が流出しています。湯崎先輩。先輩は、そのたびに警告や指導で稼働を止められるが、しばらくすると安全が確認できた、として稼働を再開する。その繰り返しです。

直近でも24年11月にいったん指導を行い停止させたが、その間も、産廃処分場拡張工事は野放し。そして、業者がタンクローリーで真水を撒いて薄めさせた上で県が調査し、「安全です」といって4月25日には稼働を再開させました。

汚染水の原因すらわかっていないのに、再開させるとは何事ですか?!

どうせ、産廃が持ち込まれれば、また、汚染水が出るでしょう。湯崎先輩。いい加減に、きちんと調査をし、また住民の被害の救済要求に応じるべきです。

湯崎先輩。あなたは、広島の食材や料理のアピールを県政の大事な柱としています。それは別に構わないのですが、産廃を野放しにしていて、食材や料理が成り立つのですか?!

◆もはや、勇退しかない

湯崎先輩。最近の先輩はやることなすこと、最初の志と乖離しています。もう、今期でご勇退なさることをご忠告申し上げます。

湯崎先輩。先輩がこれ以上知事を続投されるおつもりなら、わたくしは、後輩として、元部下として、先輩の首を取りに行きます。湯崎先輩の首を取り、県民の手に広島を取り戻す庶民革命。湯崎先輩の県政から、広島県民の命、健康、水、食べ物、教育……を守る庶民革命。その先頭に体を張って立つ覚悟です。

湯崎先輩。先輩は東京系の企業や東京系の知事のお仲間中心の県政で、イエスマンに囲まれ、物事が見えなくなっているのではないでしょうか?

御勇退され、後進に道を譲られることを心からお願い申し上げます。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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日本共産党さん、大丈夫ですか? 党員・支持者による筆者への罵倒相次ぐ 「参院広島・仁義なき候補者選考・楾―宮口事件」にもだんまり?

さとうしゅういち

2025年5月1日、筆者は、自身が幹部を務めさせていただいている労組の系列の県労連系の第96回広島県中央メーデーに参加しました。その時のことです。知り合いの日本共産党員A氏と目があったのでご挨拶しました。

ところが、A氏は「れいわ新選組はむちゃくちゃやないか」と罵倒してこられました。「野党共闘には参加しないし、けしからんやないか」とえらい剣幕です。
筆者は、困った顔をして、こう申し上げました。

「すいませんね。わたしはネットで誹謗中傷されていましてね。情報開示請求したのです。そしたら共産党系の活動家の方(B氏)でしてな。和解して、損害賠償はいただいています。ただ、民事はそれでよくても、政治的にはそうはいきませんよ。共闘という話にはならないのではないですかね。」

A氏はさらに「いや、君も大軍拡には反対だろう。そういう大きい点ではできないのか?」とおっしゃるので、「いや、わたしもそりゃあ反対ですけど。市民運動的には個人として一緒にいろいろさせてはもらっていますよ。だけど、ああいう誹謗中傷をされたのでは選挙協力という話に組織的にはならないでしょう」とお話しすると、とぼとぼとわたしから離れて行かれました。

最近、国政ではれいわ新選組を支持する筆者に対して、リアルでもネットでも罵倒してこられる日本共産党員の方が目立つようになっています。衆院選2024でれいわ新選組の得票が日本共産党を上回ったこと。このままだと、県議選や市議選でもしれいわ新選組の候補が出てくれば、共産党議員と入れ替わりになる確率が高いのでピリピリしておられるのかもしれません。

◆「仁義なき候補者選考」立憲民主党には大甘!

さて、そんな日本共産党さんですが、立憲民主党に対しては相変わらず「大甘」です。2021年4月25日執行の参院選広島再選挙と2025年の参院選を巡り、立憲民主党は「参院選広島・仁義なき候補者選考・楾―宮口事件」を引き起こしています。これに対して、日本共産党さんや日本共産党の支持者も多い市民連合さんが抗議したという話は寡聞にして知りません。

2020年、河井案里さんの逮捕・失脚が濃厚になった段階で立憲民主党は既に候補者に「檻の中のライオン」で有名な弁護士の楾大樹先生を内定していました。楾先生は仕事をキャンセルし、いつ選挙があっても良いようにスタンバイしていました。

ところが、案里さんが当選無効になった21年2月になっても、楾先生に対して党本部から連絡はなかったのです。立憲広島は突如として、楾先生のはしごを外し、森本真治参院議員の秘書の妻だった宮口治子さんを候補者として擁立。自民党候補や、筆者・さとうしゅういちらを破って宮口さんは当選します。この間の経過については楾大樹著「茶番選挙 仁義なき候補者選考」をご参照ください。

◆宮口さんへの対応分かれた筆者と日本共産党

筆者・さとうしゅういちは、告示直前の21年4月上旬前半、宮口さんとの一本化を申し入れるメールを送っています。趣旨は「伊方原発即時廃炉を含む原発ゼロを宮口さんが飲む代わりに筆者が降りる」というものでした。しかし、立憲広島からは「宮口さんは具体的な政策が分かる人じゃないから」というお話をいただきました。これは女性蔑視でもあると判断した筆者は、交渉をあきらめ、選挙に突入したのです。

一方、この選挙で日本共産党さんは、宮口さんを支援しました。当時の日本共産党さんは、立憲民主党というだけで、自民党よりも新自由主義的な方や権威主義的な方も推薦しまくっておられましたので、驚くべき対応ではなかった。一方で、この選挙の際には、少なくない日本共産党員や支持者の方で、党の指示に反して筆者・さとうしゅういちを個人的に応援してくださった方もおられました。このことには感謝申し上げます。

他方で、筆者が立候補したことを根に持って、当時も筆者を罵倒してこられた共産党員の方もおられました。もちろん、筆者への風当たりは当然ですが立憲民主党の方が酷く、「お前は二度と俺の地域に出入りするな」と脅しの電話をかけてこられた立憲民主党員の方もおられました。

◆宮口議員が離党に追い込まれるも冷たい?日本共産党

時は流れて2024年末。2025年参院選では、改選になる議員は2人とも立憲民主党です。すなわち森本真治さんと宮口治子さん。どちらかが降りることになります。立憲広島は、宮口さんを下ろしました。そして宮口さんは、比例での公認もされず、同党に「居場所がない」と2025年1月20日、離党届を出すに至ります。その後は無所属で活動されています。

こうした中で、日本共産党さんや、市民連合さんは、あれだけ熱心に応援した宮口さんが立憲広島により「首を取られた」にもかかわらず、全くもって、立憲広島に対して、抗議もなにもされていないようです。

さて、その後、れいわ新選組を国政ではあくまで庶民派保守・無所属の立場で支持する筆者・さとうしゅういちに対して「れいわ新選組は無茶苦茶じゃないか」などと罵倒してこられる党員の方(A氏)もおられますし、ネットで誹謗中傷してこられる同党系活動家の方(B氏ら)もおられました。

そういう方々が、きちんと自分たちが応援した宮口さんをぞんざいにした立憲広島に抗議したとは聞いていません。自分たちが応援した人の行く末をきちんとフォローしない。これは無責任ではないかと思います。

昔の日本共産党さんは、割と、責任をもってフォローできない人は最初から応援もしなかったように覚えていますがいかがでしょうか。このあたりも随分変わってしまったなあと嘆息しております。

◆野党が楾先生を立てていれば問題なかった

なお、楾先生が立候補予定者だったことは、筆者・さとうしゅういちは、2023年になって初めてご本人から伺いました。楾先生が候補者なら俺は最初から出ていないよ、と地団駄を踏んだのを覚えています。

「宮口さんは具体的な政策がわかる人じゃないから」という立憲広島の幹部の方のお話が非常に印象に残っています。立憲広島としてはそういう認識だったということでしょう。

これでは、「政策がない」新党を立ち上げた石丸伸二さんのことを立憲民主党はあれこれ言えません。

きちんと立憲広島が楾先生を擁立していれば問題なかった。ただ、「共産党さんも宮口さんをあれだけ押したのに、無関心とは薄情じゃのう」と思っております。まだ、ライバルとして闘った私の方が関心を持っているくらいです。

◆野党共闘の失敗を総括せよ

日本共産党の党員や支持者の皆様。きちんと志位和夫さん、田村智子さんら幹部に対して、野党共闘の失敗をきちんと総括するように意見された方がよろしいかとおもいます。「志位さん・田村さんらの機嫌を損ねたら松竹伸幸さんや紙屋高雪さん、あるいは紙屋さんの不当解雇に抗議した元福岡県議候補の砂川あやねさんや栃木県のかぴぱら堂ご夫妻のように除名・除籍される」とおっしゃるかもしれない。しかし、そんな政党なら、それまでのことではないでしょうか?

いま、自民党はボロボロですが、代わりにウケているのは立憲民主党でもなければ日本共産党でもありません。もちろん、国民民主党やれいわ新選組も伸びてはいる。しかし、危機感を持たなければならないのは石丸伸二さんや斎藤元彦・兵庫県知事らがウケていることではないでしょうか?既存野党のだらしなさ、野党共闘の失敗が、彼らを調子に乗らせているのではないでしょうか?

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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平野義幸さんの冤罪事件を知ってください! 京都で開催される平野さんの絵画展を見に来てください!

尾﨑美代子

徳島刑務所で服役中の平野義幸さん(60歳)の絵画展「為心願成就之也」が5月16日から京都で開催されます。

2003年1月16日、京都市下京区の平野義幸さんの自宅で火災が発生し、交際女性のAさんが焼死しました。3ケ月後、平野さんが殺人と現住建造物等放火の罪で逮捕、平野さんは、一貫して無実を訴えましたが、2005年3月25日、京都地裁は懲役15年を言い渡し、控訴しましたが、2006年4月28日大阪高裁は審理を行わないまま、平野さんが「反省していない」などの理由で控訴を棄却、無期懲役を言い渡しました。2006年10月2日、最高裁での上告も棄却され、刑が確定。現在、徳島刑務所で服役中です。この事件について私たちは冤罪と考え、支援する会(代表・青木恵子)を作り、活動を続けています。  

平野義幸さん

◆「動機」も「証拠」もない!「恩人」を殺せる訳がない!

平野さんは、三池崇史監督の「荒ぶる魂たち」「新・仁義の墓場」などに出演する俳優でした。事件前、兄貴分だった男性俳優と親友の俳優(菅原文太さんのご長男、踏切事故で死亡)、そして妻の3人を相次いで亡くし、自暴自棄になっていました。そんな頃知り合ったAさんは、平野さんを「あなたは絶対俳優やらないとあかん」と励まし続け、平野さんも再び俳優業をやろうとしておりました。

火災があった日、平野さんは、東京で開催される深作欣二監督の告別式に出席予定で、映画関係者に自身をプロモートするための資料作りを1階で行っていました。そんなとき、前日からAさんが泊まっていた2階で火災がおきました。平野さんは必死でAさんを救出しようとし、燃え盛る家に入り火傷を負いました。近所の人たちが「このままでは義くん(平野さん)が危ない」と数人がかりで止めたことも裁判で証言されました。しかし、それらの平野さんを無罪とする証言・証拠は検察官にことごとく隠され、平野さんに有罪判決が下されました。

そもそも平野さんには多くの思い出が残った自宅を燃やしたり、新たな映画のオファーを投げうってまでAさんを殺害するような「動機」も「証拠」もありません。何よりAさんは平野さんの「恩人」です。

一方、Aさんは平野さんと交際しつつ、常日頃から「目の前から消えます」「私は死にました」「タブーを犯してしまったんです」と自殺を仄めかす言葉をノートに多数書き綴っていました。また、遺体を解剖した安原正博教授は「このような熱傷死の場合は、焼身自殺の場合を除外すると極めて少ない」と、Aさん自殺説を裏付けるような証言しています。 

火災後、平野さんも覚せい剤使用で逮捕されましたが、担当の検事は「放火で逮捕はない」と何度も断言していましたが、3ケ月後交代した検事が、いきなり平野さんを放火殺人犯に仕立てました。ほかの冤罪同様、裁判ではさまざまな証拠や証言のねつ造などが行われています。詳細は、2022年に行ったクラウドファンディングのHPでご確認ください。


平野さんは現在、徳島刑務所で服役しながら、絵を描き、支援する会の代表・青木恵子さん(東住吉冤罪事件)や私たち支援者らに送ってくれていました。今回、この絵を一堂に集め、皆さんにごらん頂きたいと考えています。お一人でも多くの皆さまに、平野さんのこと、冤罪事件のことを知って頂きたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

◎平野義幸絵画展「為心願成就之也」
2025年5月16日(金)~18日(日)
京都府部落解放センター4階ホール(京都市営地下鉄「鞍馬口駅」徒歩5分)
平野義幸さんを支援する会(代表・青木恵子)

なお、会場ではミニトークショーが行われます。
16日は、午後6時半~30分(青木恵子)
17日は、午後2時半~30分(青木恵子)
18日は、午後2時半~(青木恵子、堀弁護士)

※毎日時間帯が違っています。チラシでご確認ください。
https://www.bll-kyoto.jp/topics/2025/3466/

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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原爆被爆と原発被曝に詳しい村田三郎医師に「被ばく」の話を聞いてきた

尾﨑美代子

5月2日、阪南中央病院の村田三郎医師に取材に行ってきました。ずっと前からお話を聞きたいと思っていた方。4月20日、「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」が主催する「チェルノブイリ原発事故39年の集い 被爆80年 核も戦争もいらない」に村田先生が講演を行うというので参加し、ご挨拶させてもらっていた。そのあとすぐに連絡し、お時間をとってもらうことになった。

村田三郎さん 高知県出身、大阪大学医学部卒業後、1978年から阪南中央病院(大阪府松原市)に内科医として勤務。広島・長崎の原爆被爆者、水俣病患者の検診・診療、原発で働く被ばく労働者の実態調査や労災認定などを行う。著書「福島原発と被曝労働」(共著)ほか

近鉄南大阪線布忍駅下車、徒歩8分にある阪南中央病院。そこで3時から4時半までびっしりお話をお聞きした。村田先生は、水俣病患者さん、広島・長崎の被ばく者の診療・治療にあたったほか、原発の被ばく労働者の治療や労災認定のお手伝いを行ってきた。今日はとりわけこの被ばく労働問題についてお聞きしてきた。お話の内容はまたどこかで報告させてもらいます。

村田先生、とにかく優しい方。病院へのアクセスもめっちゃ詳しく説明してくださったうえ、お会いするなり、「わかりましたか」と聞いてくださる。優しさのその原点は、生まれ育った高知県で、教師だった父親から言われ続けた「弱い人の立場で行動しろ。そうしていたら間違いはない」という言葉を信じてやってきたからだという。その言葉を信じ、子どもの頃、漠然と医師か弁護士になろうと考えていたという。両親は村田先生に「医師になれ」とはいわないものの、クリスマスプレゼントに野口英世など医師の伝記の本をくれたことも影響しているかなと話されていた。

◆釜ヶ崎では「原発の仕事に行った」と話す労働者に会ったことがない

一番最後の質問で、私が釜ヶ崎で25年店をやっていて、建設業界のほとんどの職種の労働者を知っているが、原発の仕事に行ったという労働者はほとんどいない。土工さんで掘削作業をした人でも「ママ、阿倍野ハルカス作ったの、俺やで」と自慢したがるのに、「敦賀原発行ってきたわ」などという人の話はほとんど聞かない。それは何故なのだろうか?という話を村田先生とあれこれお話させてもらった。

村田先生のお話とは別なのだが、初めて行った阪南中央病院、病院の前の道路を挟んだ向かい側に全国チェーンを展開する「スギ薬局」があり、病院の隣に「うめ薬局」があった。私はうめ薬局のほうが、スギ薬局に対抗して出来たものと思った。「おいおい、スギに対抗してうめかよ」と。それを村田先生にお聞きしたところ、うめ薬局が先なのだという。その後、病院前に広大な空き地ができ、何が出来るかと思ったら、スギ薬局が進出したのだという。まあ、どうでもいい話だが、ちょっと驚いた。うめにスギかよ。

阪南中央病院
阪南中央病院の向かい側にあるうめ薬局とスギ薬局

◆国と電力会社は原発推進のために仲間だって「殺す」

あと、村田先生の動画が何かをみてて、先生が「もんじゅのナトリウム漏れ事故では自殺者も出ていますよね」と話しておられたので、生意気だと思ったが、ひとこといわせてもらった。「先生、もんじゅのナトリウム漏れ事故で自殺者が出たと話してましたが、あれ、自殺ではないですよ。殺されてますよ」と。

村田先生は驚いたように「何か、資料や記事ありますか?」と聞かれたので、「私はずっと気になっていたので、直接亡くなった動燃の職員・西村成生さんの遺族、奥様の西村トシ子さんに何度もお会いしました。トシ子さんと息子さんは、今も裁判続けてますよ。私も裁判を傍聴したことがありますし、トシ子さんの家に伺って裁判資料全部見せてもらいましたよ」と話し、その内容をまとめたものを送らせてもらうと約束した。

原発は被ばく労働で大量の労働者を「殺して」いるが、そのうえ国と電力会社の原発政策に邪魔になる人、あるいは推進するためには、仲間だって「殺す」ということ、それを伝えたかった。

村田医師、本当に素晴らしい方だった。

もんじゅ、西村職員の事件について書いた記事(1~6)はコチラから読めます。どうぞ、ご一読を。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

『紙の爆弾』6月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

さて、6月号では前号に続きウクライナ戦争の裏側を解説。前号では戦争を勃発させ、終わらせない勢力について分析。今月号では“利権”に焦点を当てました。米国トランプ大統領が主導する停戦交渉ではウクライナ国内の地下資源がカギとして取り沙汰されていますが、それらに開戦前から手を付けていたのが米国巨大投資ファンド。そこでゼレンスキー大統領が果たした“役割”など、この戦争の実態と停戦の行方を考えるうえで不可欠な情報をお伝えします。

また、自公政権でもこれみよがしに減税論が取り沙汰されている消費税をめぐっては、マスコミで報じられないもう一つの側面である「輸出還付金」について解説。前号では政治経済学者の植草一秀氏が、高額療養費制度改悪について、「十分な医療」を富裕層だけが受けられるものとする制度改変だと指摘しましたが、消費税もまた、その逆進性だけでなく、輸出大企業優遇のシステムを内包しています。そうである以上、いまの減税論と関連報道も、“本質隠し”の側面があることに留意する必要があります。

そして、世界を揺るがせているトランプ関税。「格下も格下」の日米関係を正常化するために、「地位協定は変えられる」そして「日米安保は破棄できる」という事実を確認しました。それらはいずれも単なる理念ではなく、むしろ日本の安全保障と世界の平和・安定に寄与するものです。とくに元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、日米地位協定改定のための具体的な方法を提示。さらに、国際的に異常な日米安保を正当化するデタラメな中国脅威論がなぜこれほどまでに日本中を覆っているのか。その“犯人”と“目的”を明快に指摘しています。

必然的に、誌面で米国トランプ大統領に関する話題が多くなっています。両面での分析が必要ですが、いずれにおいても結論は、日本の自立が必要だということ。4月号・5月号をはじめ、本誌はこれまで戦争を勃発させる勢力・工作について指摘してきました。また新たな戦争が起きるとしても同じこと。それに与しないために、日本の再独立が求められています。

フジテレビ問題が、少しずつ動きを見せはじめています。もっとも注目すべきはフジHDの外国人株主、米国ファンドの動きです。原因はフジにあるにせよ、スポンサー離れのきっかけはダルトン社の書簡だったと報じられています。そして、取締役候補にジャニーズ瓦解後を引き継いだスタート社社長。ジャニーズ問題にしてもフジ問題にしても、「外圧」が日本を健全化するかの楽観的な報道が目立ちますが、“黒船”が日本に何をもたらしたのかをおさらいする必要があります。

大阪・関西万博が開幕し、形だけは批判することもあったマスコミは予定通り大本営化しました。すると俄然、勢いづいているのが万博推進派。開催意義、中抜き、危険性など、指摘されていた問題が何ひとつ解決されていないにもかかわらず、なぜか勝ち誇ったような振る舞いを続けています。事態の本質は「公金収奪のカジノ万博」です。

ほか、麻生太郎・自民党最高顧問の「参院選事前運動疑惑」、「無所属の会」を立ち上げた内海聡医師が語る「日本の医療と政治の関係」、警察による違法な「架空名義口座」開設など、今月号も必読のレポートの数々をお届けします。前号で創刊20周年を迎えた『紙の爆弾』は、全国書店で発売中です。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年6月号

『紙の爆弾』2025年 6月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年5月7日発売

アメリカ巨大投資ファンドが蠢くトランプ「相互関税」とウクライナ戦争 浜田和幸
“中国脅威論”をばらまく犯人は誰か「日米地位協定」は変えられる 孫崎享
「石破おろし」「玉木首相擁立」計画 麻生太郎 参院選事前運動疑惑 横田一
マスコミが報じない大企業への“8兆円補助金”消費税「輸出還付金」を廃止せよ! 青山みつお
内海聡医師インタビュー 権力の奴隷にならないために「政治と医療」を考える
際限なき権限拡大 警察が「架空名義口座」開設 足立昌勝
山形県上山市清掃工場 重金属汚染による健康被害 青木泰
人気女優を襲ったいくつもの“悩み”広末涼子「事件」の背景 本誌芸能取材班
会社分割で「外資の草刈り場」と化すのか フジテレビ解体 片岡亮
在日米軍を撤退させ日本が軍縮を主導すべし 木村三浩
不戦国家・日本がなぜ「停戦」に無関心なのか 青柳貞一郎
劣化した現代政治をAIは見下し嘲笑する 愚劣なトランプ外交と古い地政学の克服 藤原肇
「ラジオ英会話」という名の奴隷生産教程 佐藤雅彦
ミャンマーで日本が展開中「現代版インパール作戦」 平宮康広
教職員への処分取消第五次訴訟「“君が代”強制」めぐる教育現場の現在 永野厚男
シリーズ 日本の冤罪 三崎事件 片岡健
5月号記事「伊藤詩織監督映画上映妨害は言論弾圧だ」に反論します 佃克彦
[ご報告]『紙の爆弾』創刊20年『季節』10年 4・5「鹿砦社反転攻勢の集い」

〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0F74HJ262/

浅野健一さんの最近の言動に苦言を呈します!

鹿砦社代表 松岡利康

このところの浅野健一さんの言動には、長い付き合いの私でさえ違和感、いや不快感を覚えます。3点ほど挙げ、苦言を呈しておきます。浅野さんがこれをどう受け取られるかはご本人の判断に任せますが、私としては真摯に受け止められ、反省すべきは反省され軌道修正されることを願うばかりです。

また、私の言っていることが間違っているかどうか、読者の皆様のご意見も俟ちたいと思います。

◆《1》伊藤詩織監督映画問題と、浅野健一さんの『紙の爆弾』5月号掲載記事について

浅野健一さんは、『紙の爆弾』5月号(4月7日発売)に、『週刊金曜日』3月21日号の伊藤詩織監督の映画『Black Box Diaries』特集に因み、これに連携するかのように「伊藤詩織監督映画上映妨害は言論弾圧だ!」なる記事を8ページにわたり寄稿されています。

今は削除されていますが、4・8の浅野さんのFBに「石橋学神奈川新聞記者のジャーナリズム論に、全面的に賛同します。」とし「必読」とまで持ち上げておられました。石橋学記者は、知る人ぞ知る、いわゆる「しばき隊」界隈の中心人物で、あろうことか『紙爆』の浅野さんの記事でも好意的に名が出ています。

また、伊藤監督の新代理人は神原元、師岡康子弁護士で、これまたしばき隊界隈の中心人物です。『金曜日』の特集にも両弁護士のコメント(要約)が掲載されています。

鹿砦社は長年同誌に広告(ウラ表紙1ページ)を出広してきましたが、一昨年、この一部に森奈津子さんの『人権と利権 「多様性」と排他性』の案内が出ていたことで、『人権と利権』を「差別本」と見なし、これをいいことに取引そのものを絶たれました。この時のやり取りを記憶されている方もおられるでしょう。以降、『金曜日』は“しばき隊色”が濃くなっていったように感じられます。神原、師岡、石橋らしばき隊界隈の者らと、しばき隊色が濃くなった『金曜日』がなぜ、こぞって伊藤詩織監督映画問題に雪崩れ込んでいるのか? 彼らのこと、なんらかの“思惑”があってのことだと推察しています。

浅野さんはいつからしばき隊支持者になったのかと、私たちが「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び2016年以来、被害者救済、裁判支援、真相究明に当たり、多くの訴訟を争い、まさに死闘を繰り広げてきた(いまだに1件係争中)中で、非常に不快感を覚えました。

こうしたことについては私もFBで激しく批判しました。

そうこうしていると、伊藤詩織監督の元弁護団を代表し佃克彦弁護士から抗議の「通知書」が届きました。私たちなりに真正面から受け止め、その内容を吟味、検討いたしました。

こういう中で浅野さんは4月23日のご自身のFBにて、次のように記されています。

〈伊藤氏の前代理人弁護士たちの代理人、佃克彦弁護士から、鹿砦社気付で私にも、訂正要求の内容証明郵便が届き、同社から自宅に届いています。
 今回の映画上映妨害事件の真実を解明するために、この文書は貴重な歴史的文書になるでしょう。
 私は「訂正」は不要と考えています。
 「紙の爆弾」の中川志大編集長(鹿砦社社長)に対応を一任しています。〉

この「中川志大編集長(鹿砦社社長)に対応を一任しています。」という事実はありません。なぜ、こんなことを仰るのか? 中川に「対応を一任しています」と、浅野さんが意図的に事実でないことを記述されているのか、「対応を一任」したと勝手に誤認されているのかはわかりませんが、事実でないことだけは確かなことです。

私は4月11日付けの浅野さん宛てのメールにて、

〈佃弁護士からの「通知書」について、鹿砦社と浅野さんとでは立ち位置が異なりますので、鹿砦社は鹿砦社で対応しますが、浅野さんは浅野さんで別個に対応し回答してください。共同歩調は取りません。〉

と申し述べさせていただきました。実際に佃弁護士には4月14日(月)に、鹿砦社としての「回答書」を送り(ファックスしたのち原本郵送)、全文の提示は今は差し控えますが、次のように回答、提案しています。

〈一 先生方(注:佃弁護士ら)の反論を『紙の爆弾』次号(6月号。5月7日発売)に掲載する。すでに他に決まっている原稿もありますので、4ページぐらいが希望ですが、公平性を保つ意味で言えば、どうしても、ということであれば、浅野氏の記事と同ページの8ページでも構いません。思う存分反論してください。ただし、GW進行のため4月18日原稿締め切りでお願いいたします。4月21日校了ですので。

 二 浅野健一氏とは、立ち位置や見解が異なりますので、別々の対応でお願いいたします。浅野氏にも、必要に応じ氏は氏で対応し回答するように伝えています。

 三 当分の間、本件(伊藤詩織監督映画問題)のみならずすべてにわたり『紙の爆弾』への浅野氏の寄稿は差し控えることを、同誌中川編集長には指示しています。〉

なので、連休明け5月7日発売の『紙の爆弾』6月号に佃弁護士名の反論が掲載されます。

佃弁護士より指摘されている箇所は、浅野さんが事実確認されて記述されたのかどうか、浅野さんは浅野さんで、「中川志大編集長(鹿砦社社長)に対応を一任しています。」などと逃げないで、自分が蒔いた種ですから、今からでも佃弁護士ら伊藤監督元弁護団に真摯に答えてあげて欲しいと切に願っています。佃弁護士からいちいち指摘されていることが事実か事実でないか、事実でなかったら潔く「訂正」すべきではないでしょうか。

◆《2》金正則について

浅野さんが先ごろ、その訴訟判決をFBで採り上げ、次いでたんぽぽ舎(鹿砦社東京編集室の2軒隣)での講座に招いた金正則は、いわゆる「しばき隊」界隈の人物で、大学院生М君リンチ事件においても加害者側を積極的に擁護した人物でもあり、6月の都議選に出るということからか、最近、SNSでも採り上げられています。

特に、リンチ被害者М君を精神的に追い詰めた「エル金は友達」という村八分運動でも賛意を示し投稿もしています(別途画像参照)。

リンチ被害者の大学院生を精神的に追い詰めた「エル金は友達」なる村八分運動
リンチ被害者の大学院生を精神的に追い詰めた「エル金は友達」なる村八分運動
「エル金は友達」への金正則のツイート

また、彼の訴訟の代理人は、しばき隊の守護神といわれる神原元弁護士で、金正則を原告とし神原を代理人とする訴訟の勝訴判決では浅野さんのFBでも金、神原両人の画像が掲載され、私たちに不快感を与えています。神原弁護士は、今でもエル金こと金(本田)良平の代理人として鹿砦社と係争中ですし、私たちは2016年以来ずっと今に至るまで何件も訴訟を争っています。ほとんどの訴訟に神原弁護士が噛んでいますが、まさに死闘です。

金正則は6月の都議選に立候補するとのことですが、推薦人に大学院生リンチ事件で積極的に加害者側に立って動いた中沢けい、安田浩一らが名を連ねています。選挙が近づけば、浅野さんも名を連ねられるのでしょうか。

こういう人物を浅野さんは、たんぽぽ舎での講演に招いておられるのです。

先の伊藤詩織監督映画問題と併せ、傍から見れば、浅野さんがしばき隊に擦り寄っているように感じられます。

金正則の都議選立候補チラシより。中沢けい、安田浩一の名がある

◆《3》故・山口正紀さんへの誹謗について

ジャーナリストの山口正紀さんの生前、山口さんと浅野さんが義絶され、両氏と共通して交流のあった方々を悩ませて来ました。私もその一人ですが、お二人の間の確執について詳しい内容は置いておくとして、あろうことか、浅野さんは、先ごろ亡くなられた山際永三さんの追悼記事で山口さんを誹謗されています。いくらなんでもこれはご法度です。人として死者に鞭打つことはおやめになったほうがいいでしょう。浅野さんの人間性が疑われます。私に山口さんが長年寄り添ってくれたことと同様、浅野さんにも、例えば「文春報道」の際には、ショックの浅野さんに親身になって寄り添ってくださったんじゃなかったんですか。山際さんは、浅野さんと山口さんとの確執には直接関係ないでしょう。故人を追悼するという厳かな記事にて山口さんを誹謗されるとは……私ならずとも、まともな感性を持った人なら不快感を覚えるはずです。

山口さんは、20年前の「名誉毀損」逮捕事件の公判を毎回東京から神戸地裁→大阪高裁までお越しになり傍聴され、この的確な報告レポートをその都度『金曜日』(当時は私と同学年で懇意にさせていただいた北村肇さんが発行人としていらっしゃって、まだまともでした)に寄稿いただきました。

そして、大学院生リンチ事件にも、私たちの問題提起に途中から事の重大さに気づかれ、山口さんなりに調査され、気骨のある真のジャーナリストとして長大な「意見書」を裁判所に提出いただきました。これは名文で『暴力・暴言型社会運動の終焉 ──検証 カウンター大学院生リンチ事件』に収録されています。末期ガンで病床にあっても、亡くなる直前まで準備書面や陳述書作成を手伝っていただきました。私(たち)にとっては恩人です。

そうした山口さんに対し、直接関係のない山際さんの追悼記事の中で誹謗するというのはいかがなものでしょうか? まったく不快感を覚えます。おそらく不快感を持つのは、口にして言わないだけで私だけではないと思います。

以上のようなことは、年少者の中川が大先輩の浅野さんに言えないでしょうから、浅野さんとの長年の関係から忸怩たる想いですが、私の独断で、あえて苦言を呈させていただきました。決して放置しておけることではありませんから。

はっきり申し上げて、特にこのかんの浅野さんの言動は、現在の私や鹿砦社の立場とは相容れません。20年前の「名誉毀損」逮捕事件ですぐに駆け付けていただいた恩義もあり、これまでは「浅野を切れ」といった周囲の“雑音”があろうが、「一つぐらいは浅野さんの原稿を載せる雑誌があってもいいんじゃないか」と、いわば仏心で浅野さんの寄稿を認めてきました。浅野さんがほぼ毎号『紙爆』に寄稿されるようになり、『紙爆』や鹿砦社から離れていった方々もいます。ある方など、かつて『紙爆』創刊10周年にあたり、わざわざ東京から西宮での集会に来てくださいましたが、先の20周年の4・5の集いには返事さえくれませんでした。

浅野さんは、私たち鹿砦社が、大学院生リンチ事件に長年関わり、しばき隊界隈とされる者らと何件も裁判闘争を闘ってきたことをご存知だったはずで、親しばき隊化され、まさに背後から殴られたような気持ちです。

今や、私や鹿砦社とスタンスの違いが明確になった以上、この期に及んでは、なにも『紙爆』に寄稿しないでも、金正則と懇意であれば、彼を通じ、西宮ゼミでも一緒した安田浩一らに頼み、『金曜日』と関係を修復し、こちらにシフトされたり他の雑誌を紹介してもらったほうがいいんじゃないでしょうか。

佃弁護士ら伊藤監督元弁護団への提案を俟つまでもなく、長年鹿砦社と対立関係にある、いわゆる「しばき隊」系の人たちとの諸々の関係などを考慮すると、当分の間、『紙の爆弾』への寄稿は差し控えていただくほうがお互いにとってもいいんじゃないかと考えています。

特段回答を求めてはいませんが、5月2日に以上のような内容を盛り込んだメールを浅野さんに送りました。真摯に受け止めていただければいいのですが……。 以前にも2度(4月11日)抗議のメールを送りましたが、なんのリアクションもありませんでした。先の《1》に挙げた4月23日付けの浅野さんのFBの記事が、そのリアクションだとすれば遺憾なことと言わざるを得ません。なにかしら開き直ったように感じられるのは私だけでしょうか。(本文中一部敬称略)


松岡利康

◎しばき隊リンチ事件 https://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

「広島の森友疑惑」で住民提訴! 市長が不当低価格で市有地売却、市に83億円の損害か

さとうしゅういち

◆「広島の森友疑惑」の構造

「広島の森友疑惑」ともいえる疑惑が今、広島市中心部を舞台に持ち上がっています。「市が市有地を商工会議所に不当に安い値段で売り払ったのではないか?」という疑惑で、とうとう、2025年4月、中区在住の元市議の女性と佐伯区在住の元連合町内会長の男性が松井一實・広島市長含む当時の市幹部3人、商工会議所を提訴しました。

2021年6月、広島市と広島商工会議所は広島市中区基町の広島県庁近くの市営駐車場(広島市所有)と原爆ドームの道路を挟んで北向いの商工会議所をほぼ等価交換。市所有となった商工会議所は引き続き商工会議所が使用。広島市は商工会議所から家賃を受け取る一方で、家賃とほぼ相殺される金額の管理委託費を商工会議所に支払う契約を結びました。

そして、旧市営駐車場は25年4月現在、再開発工事が進んでいます。完成すれば南隣の朝日新聞社広島支局だった建物ともつながる形で瀟洒な商業施設になる予定です。

再開発工事が進んでいる旧市営駐車場

◆県庁直ぐ近くの旧市営駐車場と商工会議所の評価額がほぼ同額という怪

筆者も広島の街がきれいになること自体に反対はしません。問題はその過程で、市民に大きな損失が出ることです。

そもそも、県庁直ぐ近くの旧市営駐車場と商工会議所が同じ価値というのが、素人目に見ても怪しすぎます。

正確に申し上げると、市の鑑定調査では旧市営基町駐車場の評価額は24億5700万円、広島商工会議所ビルは24億9100万円で、差額3400万円が市から商工会議所に支払われています。

しかし馬庭恭子元市議(中区選出、在任2003-2023)らがあらためて鑑定した結果、旧市営基町駐車場の評価額は87億7600万円、広島商工会議所ビルは20億2100万円で67億円余りの差になりました。さらに、広島市が商工会議所からもらっている家賃が低すぎること、市が商工会議所に支払っている委託管理費が高すぎることなども併せて、2025年2月4日に馬庭元市議と、佐伯区で連合町内会長を務めていた木原省治さんが広島市に対して住民監査請求を実施しました。

しかし、住民監査請求は、住民の思う通りにならないことの方が圧倒的に多いのです。今回もご多分に漏れず、監査委員のレスポンスは「却下」。それを受けて今回の裁判への提訴となりました。

木原さんは今回の行動を起こすに際し、連合町内会長を降りられたそうです。

この問題を巡っては、馬庭さんが市議を勇退された直後の2023年5月にも不当に安い賃料と委託料について住民監査請求を実施。却下されたため同年7月28日に、21年度と22年度分の不当に低すぎる賃料や高すぎる委託料につき、提訴していました。

今回は、さらに、土地・建物の取引全体にまで拡大した形で、また、木原さんという地域の住民自治組織の幹部だった方も加わる形で訴訟を提起しています。

現役の市議だった時代の馬庭さんは、無党派市民派で保守系の松井現市長に距離がある会派で活躍されていました。松井市長への厳しい質問は筆者もうならされるものがありました。市議を勇退された今、市民として、市議の経験も活かしながら、市政をただそうとされています。

◆長期政権は必ず腐る

松井一實市長は2011年に初当選後は当選連続4回。やはり、権力は腐るものです。新人同士だった2011年の選挙を除き、2015年、2019年、2023年と、圧勝してきています。そのことが驕りにつながっている感は否めません。河井事件で河井夫妻からお金をもらったとして有罪・失職・辞職した議員の多くが松井市長と距離がある自民党議員だったことも大きい。市長のブレーキ役の議員が激減してしまったのです。

「市長本人は次回も立候補する気満々らしい」との観測が有力です。その場合は「連合広島や立憲なども松井氏を推すだろう」とのことです。しかし、このまま、松井さんを勝たせてしまってよいのですか? このことを何度でも筆者は市民の皆様に問いかけます。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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パレスチナ・ウクライナ・アフガニスタン・イラク…… 広島と筆者の25年を振り返る〈1〉

さとうしゅういち

筆者は、2000年4月、広島県庁に入庁するため、東京から広島県内にUターンしました。

筆者は、1975年、カープ初優勝の年に広島県福山市に生まれ、東京育ち。1984年のカープの最後の日本一の年に、広陵高校出身で被爆者の先生に担任をしていただきました。この時、カープと先生の被爆体験・平和についてはしっかり叩き込まれたのを鮮明に記憶しています。

高校時代には、故郷・福山の大先輩の井伏鱒二の小説『黒い雨』に涙し、1995年に大学進学後は、広島県内の大学の先生や小学校の先生と当時ようやく普及しだしたインターネットで交流を深めました。この大学時代の1996年4月に、「地域・平和・環境・人権」をテーマに「広島瀬戸内新聞」を創刊しました。そして、将来は、広島市長か広島県知事か広島県選出の国会議員として平和な世界をつくる政治家に、と決意をしました。

そして、広島にUターンしてから25年。2011年までは県庁職員として県内各地で労働や医療や福祉などの行政に携わり、2014年までは、医療法人の事務職、そして現在は介護福祉士として介護現場で働きながら、一貫して平和活動にも取り組んできました。当然、その時その時の世界情勢に対応してきました。

筆者も今年50歳です。人生の半分である25年が経過する今、そして、カープ初優勝50年であり、被爆80周年でもある今、この四半世紀を振り返ります。

◆米国が最も「調子に乗っていた時代」

2000年代初頭は、ある意味、米国が一番調子に乗っていた時代でした。冷戦構造が崩壊し、「向かうところ敵なし」状態でした。当時はまだ中国もそこまで発展していませんでした。ロシアは、エリツィンのもと、民主化したのはいいけれど、秩序が失われ、「強盗資本主義」とでも言うべき状況で大混乱。プーチンが就任して、混乱を収めようか、というところでした。

他方で、80年代末に経済的には米国の脅威とみなされていた日本も、自滅しつつある時期でした。

米国が政治的にも経済的にも「無双状態」で「世界にリベラルデモクラシーを広げるのだ!」良くも悪くもそういう覇気に満ちていた時代でした。それを背景に、当時、本格的にグローバルに連携しだした市民に譲歩する形を取って気候変動対策とか、2000年のNPT再検討会議における核兵器廃絶への明確な約束などがされていました。ある種、米国に余裕も感じた時代でした。

他方で、民主党のビル・クリントン(任1993-2001)にせよ、共和党のジョージ・ブッシュ(息子)(任:2001-2009)にせよ、新自由主義グローバリズムを押し付け、世界各国でその矛盾が出始めた時期でした。日本でも、米国型の新自由主義二大政党へ収斂していくかに見えた。労働の規制緩和や公務員削減も含む新自由主義を競い合う状況でした。

◆911テロとアフガン戦争

しかし、2001年9月11日。米国で同時多発テロ事件が発生。これに乗じて米国は報復と称して、アフガニスタンへの侵攻を開始。タリバン政権を打倒しました。アフガニスタンは、1980年代にはソビエトの勢力圏で共産政権でした。それに対して米国が支援するイスラム原理主義者が対抗し、冷戦崩壊後には共産党政権は崩壊。結局、タリバンが覇権を握りました。

皮肉にもこれにより女子教育が後退するなど、人権が後退する結果となったのです。冷戦時代には米国は「人権」を掲げながらも「反共」のためには「人権」を犠牲にするというダブルスタンダードも平気でやってきました。その矛盾が噴出した形でもありました。

このアフガン戦争に日本の小泉純一郎政権も後方支援とは言え、自衛隊を県内の呉からもインド洋に派遣しました。〈国連PKO以外〉での自衛隊の海外派兵が恒常化するきっかけとなりました。広島瀬戸内新聞と筆者も一貫して米国によるアフガン空爆や海外派兵に反対する立場で論陣を張りました。

ただ、米国も一度は、タリバンを打倒したものの、結局泥沼化。トランプ1.0政権(任2017-2021)で撤退を決め、バイデン政権の2021年8月15日、皮肉にも大日本帝国の敗戦記念日と同じ日に米国の敗戦が決定。その後、タリバン政権になったものの、女子教育が抑圧されるなどの状況は報道されている通りです。

一体、米国は何をしたかったのか? 結果としていえば、罪なき人々が殺され、女性の人権が介入前より後退しただけではないか?そう思わざるを得ません。故・中村哲先生のように、貧困を撲滅する取り組みをまず先行させて、安定させた方がよかったのではないか?

◆ブッシュの暴走……イラク戦争と日本の追随

ブッシュは、2002年の〈国家安全保障戦略〉及び〈核態勢〉見直しで〈イラン、イラク、朝鮮〉の〈悪の枢軸〉を〈核も含む予防的先制攻撃〉で打倒する。それにより、リベラルデモクラシーと市場経済(実際は新自由主義)を広げる。そういう方向へ突き進みました。

そして、大量破壊兵器をイラクが持っていると決めつけ、2003年3月20日、英国とともにサダム・フセイン政権のイラクへの攻撃を開始しました。(実は、イラクも、元々は反イランと言うことで1980年代に米国が武器を大量に売りつけていたのです。)。しかし、大量破壊兵器は見つかりませんでした。米国こそが、劣化ウラン弾、バンカーバスターなどの大量破壊兵器を使用し、罪のない人を殺戮。今に至るまで謝罪も補償もしていません。

2003年3月28日、イラク攻撃に抗議する街頭宣伝。戸村良人さん撮影

日本も小泉純一郎政権が米英によるイラク侵略を支持してしまいました。そして、後方支援とはいえ、陸上自衛隊や航空自衛隊もイラクに派兵しました。とくに、空自は米軍の輸送にかなり〈貢献〉していました。しかし、イラクでの戦争も泥沼化。結局、オバマ政権(2009~2017)で、撤退を余儀なくされます。また、イラク、そして隣国シリアの混乱の中からISも誕生し、世界を震撼させます。

また、朝鮮(金正日氏→金正恩氏)も「イラクが核兵器を持っていないから米国にやられた」と判断。ご承知のように核武装を加速させて現在に至っています。大量破壊兵器廃棄どころか、拡散をさせてしまいました。

◆ウラン兵器禁止運動

イラク戦争に反対する中で、劣化ウラン弾=ウラン兵器禁止運動が大きくなりました。米国は、実は1991年の湾岸戦争の時にも劣化ウラン弾を使用しました。その威力は絶大で、劣化ウランの装甲をした米軍の戦車が放つ劣化ウラン弾が、鋼鉄走行のイラク軍戦車を次々と撃破。しかし、戦後、イラクでは子どもたちに白血病などが増えていました。こうしたことから、2003年3月2日、イラク戦争開戦直前に、広島市の中央公園に6000人が集まり、NO WAR NO DUの人文字をつくりました。

豊田直巳さん撮影

その後、有志で、劣化ウラン弾禁止を求める市民団体を立ち上げました。筆者も2004年にベルギーの首都・ブリュッセルで開催された国際会議に参加したほか、2006年の劣化ウラン兵器禁止を求める国際会議で事務局を担わせていただきました。

その劣化ウラン兵器ですが、2022年からのロシアによるウクライナ侵攻において、防衛側とはいえ、ウクライナが劣化ウラン兵器を使用してしまっています。もちろん、戦争総体としてみれば、先に手を出したロシアが悪いのですが、自国の国土を放射能汚染させてしまうウクライナによるウラン兵器使用には断腸の思いです。

◆憲法調査会広島公聴会……25条を軸に憲法活かせと大物国会議員らと討論

イラク戦争が泥沼化していた2004年3月15日。広島でも憲法調査会広島公聴会が開催され、筆者も公述人として意見を陳述させていただきました。https://go2senkyo.com/seijika/75891/posts/1069883

戸村良人さん撮影

中山太郎さん、故・土井たか子元社会党委員長(当時も既に社民党に改称)、公明党の斎藤鉄夫代表ら、現立憲民主党の山花郁夫議員ら、錚々たる皆様と討論をさせて頂きました。

当時は、まさに、〈国際協力〉の名のもとに、米国の戦争に参加する文脈で、強弱はともかくとして、自民党はもちろん、枝野幸男さんらいま〈立憲民主党〉の中枢におられる皆様も、憲法〈改正〉に前のめりでした。2020年代には、明文改憲そのものは後退しましたが、安倍晋三さんや岸田文雄さんらが閣議決定でなんでも決めてしまう状況があります。

以下が、同公聴会での筆者の議論の概要です。

▼現在、失業率は 5%前後となっていることを始めとして若者も中高年も失業問題は深刻であり、27 条や 25 条に反する状況である。かつて、生活保護を巡る裁判で「憲法は努力目標」という判断を裁判所が出した例もあるが、当時の経済状況であればそうした弁明の余地があり得たかもしれないが、今の日本の経済規模からすると、もはやそのような弁明はできないはずである。

▼政府は、巨額の資金を投入してドルを買い支えながら、国民のために使う金を惜しんでいる。このような歪みを正し、雇用保険の失業等給付の給付期間の延長や医療費の負担増回避などの施策により、個人消費も回復し、景気全体も回復する。「改革なくして成長なし」ではなく、「人権なくして成長なし」ではないか。

▼現在、憲法を改定しようとする動きが強まっているが、まず、その前に、政府に憲法を守らせること、そのことを通じて人権を侵害させないようにするのが国会の役目である。 ・基本的人権が保障されるためには、戦争がないことが絶対条件であり、9 条こそ今後の世界の指針であり、9 条は絶対に変えてはならない。

▼地方公聴会の開催の在り方については、もっと多くの主権者が意見を発表できるよう再考すべきである。

当時は、れいわ新選組なども存在せず、共産党や社民党が一方的に後退。米国型二大政党制が進む中で、他の護憲派の方が9条に力点を置かれることを見越し、敢えて、憲法25条の生存権に力点を置いて発言させていただきました。

◆〈忘れられがち〉だったネタニヤフ被疑者らのパレスチナ侵略

一方、この時期に、長きにわたり、平和運動の主流からも忘れ去られてしまったのはパレスチナでした。

あまりにもネタニヤフ被疑者らによる侵略が〈日常化〉してしまったのはあるでしょう。

それでも、広島瀬戸内新聞では、大阪まで出張して抗議活動を取材することもありました。

2009年1月、京都大学時代の岡真理先生。大阪にて筆者撮影

1993年にいわゆるオスロ合意で〈二国家共存〉が合意されました。だが、イスラエルでは、ネタニヤフ被疑者ら極右的な人たちの権勢が強まり、ヨルダン川西岸への〈入植〉という名の侵略を続けます。国連でも米国を除きイスラエルを非難する決議は毎回採択されるのですが、イスラエルはガン無視。ドイツを筆頭にEU諸国も口先だけは批判するが、実際には、イスラエルに武器を売るなどして同国の虐殺や侵略を支えてきました。

こうした中で、パレスチナの総選挙ではハマスが圧勝しました(2006年)。イスラエルが約束を守らないのだから、こうなるのも当然の流れです。ガザ地区では、ハマスが政権を握って現在に至っています。

イスラエル側は、引き続き〈入植〉を強化し、ガザ地区を封鎖するなど、パレスチナへの抑圧、空爆含む虐殺、入植と言う名の侵略をさらに激化させています。そして2023年の〈10.7前夜に〉至ります。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか? 京都での冤罪講演で伝えたかったこと

尾﨑美代子

4月24日、京都府部落解放センター4階大ホールで行われた第76期京都人権文化講座「さまざまな冤罪を取材して」に来てくださった皆様、どうもありがとうございました。私の知り合い10人を含めて100人ほどの方が参加されました。とはいえ、私の知り合い以外は部落解放・人権政策確立要求京都府実行委員会に加盟する各団体・企業の皆様で、皆さま、ピシッとしたスーツ姿の方が多く、ちょっと戸惑いました。

今回レジュメ・パワーポイントを作ったり、関係書籍を再読し、改めて「冤罪」は警察、検察により必死のパッチに作られていることに確信をもちました。レジュメに書いた二つの事件より、それを証明してみます。

◆青木恵子さんの東住吉事件

ひとつは、青木恵子さんの東住吉事件。1995年7月22日、大阪市住吉区の住宅で火災が発生。家には青木さん、同居男性、そして青木さんの長女、長男の4人がいたが、風呂に入っていた青木さんの長女が亡くなった。翌日の新聞は「風呂釜の種火が漏れたガソリンに引火した可能性がある」とあったが……。9月10日、青木さんと男性が任意で警察に連行された。

青木さんは火災の原因を知らされると考えていたが、取調べ室でいきなり「お前らがやったんだろ」と刑事に怒鳴られ、あげく男性が長女に性的暴行を行っていた事実をぶつけられた。青木さんはショックと同時に娘を守ってやれなかったことを悔やみ、一刻も早く留置場に帰り、娘のもとへ行きたいと考えた。そう死にたいと。そのため、刑事に言われるがままに、嘘の「自白調書」を書いた。

一方の男性は、長女に性的暴行を行っていたことを事件にしないかわりに、長女にかけていた保険金を欲しさに青木さんと共謀し放火したとの調書を書かされた。それはポリタンクに7リットルのガソリンを移し、車庫に撒いてライターで火をつけたとの内容だった。

裁判で2人は否認に転じた。しかし、自白調書がある。私が30年ほど前に読んだ冤罪の専門書に「日本の刑事司法は未だに自白中心主義だ」と書いていた。30年前に「未だに」と批判されていたのだが、その後も警察、検察はまず自白をとることに必死になる。もちろん自白だけでは有罪にできないが、自白をとったあとは、証拠や証言を捏造、改ざんしたり、嘘の鑑定書まで作って自白を固めるのだ。青木さんの裁判もそのため、1、2審で無期懲役が下され、最高裁で確定し、2人は服役した。

その後青木さん、男性は再審を請求。弁護団、検察側双方が、燃焼実験を行ったが、どちらの実験でも男性が自白した内容とは全く違う結果がでた。自白通り、ガソリン7リットル撒きライターで火をつけたならば、男性が大やけどを負ってしまう。しかし、男性は全く火傷を負っていない。男性の自白は殴る蹴られして強要されたものだった。そして2016年8月、2人に無罪判決が言い渡された。

火災があった青木さんの家
東住吉事件で行われた燃焼実験、弁護側、検察側共に男性の「自白」とは全く違う結果となった

ここでの問題点だが、検察は起訴前に「放火ではない」ことを知っていたのに起訴したことだ。というのも警察は、起訴前に男性の自白通りの燃焼実験を行って、自白は嘘と知っていた。でも検察は2人を起訴した。起訴内容は青木さんらが計画していたマンション購入の初期費用170万円欲しさから、娘を殺して保険金を詐取しようというものだった。しかし、火災が起きたとき、まだマンションのローンの審査は通っていなかった。通ったとしても170万は親から借りられた。なのに、わずか170万円のために、実の娘を殺すだろうか?

これについて、大阪地裁は判決分で、このような「こじつけ」を行った。青木さんが未だに憤っている個所だ。わずか170万円のために、娘を殺すだろうかとの疑問に裁判所は「そのために本件犯行を企てるというのは、いかにも不自然さが否めないし、他からの借り入れ等をも考えれば経済的な逼迫度はそれほどではないともいえる」としつつも、「被告人らが当時決して余裕のある経済状態ではなかったことは確かであり(中略)より楽な暮らしがしたいために、手っ取り早く大金が手に入ることを考えるということも、あながちあり得ない話ではない」。

そう、170万円のためじゃないのよ。1500万円の保険金で楽な暮らしができる、そのために実の可愛い娘を殺せれると考えるような人たちがいるということもあながちあり得ないことでもないのよと。このこじつけを固めるために、男性に「青木さんは浪費癖がある」というような嘘の供述まで言わせている。押収した青木さんがつけていた家計簿から「そんなことはない。お金について非常に几帳面な人だ」とみぬき、無罪を主張した裁判官も一人いた。しかし、合議制のため認められなかったことが、その裁判官の退任後明らかになっている。それほど、裁判官らも自分で証拠を精査せず、検察官の言いなりであるのだ。

◆西山美香さんの湖東記念病院事件

もうひとつは、湖東記念病院事件。西山美香さんが看護助手をしていた病院で、呼吸器で生き永らえていた患者さんが死亡した。のちに自然死とわかるのだが、滋賀県警が当夜当直の西山さんと看護師を管が抜けたのに放置した業務上過失致死容疑で厳しく追及、1年後、山本誠刑事が西山さんの担当になり、怒鳴ったり、椅子を蹴ったりし、西山さんを脅した。怖くなった西山さんは「管を抜いた」と自白させられ、殺人罪で逮捕・起訴された。

ここでは大量の自白調書が作成された。というのも、最初厳しかった山本誠刑事が、西山さんが山本のいうように嘘の自白をしたら、急に優しくなったからだ。しかも成績優秀な兄にコンプレックスを持っていた西山さんに「あなたも賢いよ」とほめてくれたので、どんどん恋心を抱いていった。

西山さんも公判で否認に転じたが、やはり自白調書がものをいう。そのため、有罪判決が下され、服役する。その後、再審で西山さんにも無罪判決が下されるのだが、この事件でどうやって西山さんを犯人に仕立てることができたか? 驚く内容だ。

捜査がすすみ、患者が亡くなった当日、やはり呼吸器の管が外れると鳴る警報音(アラーム)が鳴っていなかったことがわかった。すると、警察、検察は「アラームを鳴らさずにどうやって管を外せたか。患者に酸素を送ることを止められたかと必死に考え、呼吸器の技師にレクチャーしてもらったのが、消音ボタンの存在だった。管を抜くとピッとアラームが鳴り出すが、すぐに消音ボタンを押せば、音は止まる。それから60秒(1分)経過するとまた鳴るので、再度ボタンを押す。それを3、4回続ければ(3、4分経過すれば)患者は窒息死するというものだ。そんな機能を使用する必要もないから、病院内の看護師の誰一人知っていなかった。その機能を看護助手の西山さんだけが知っていたって、どんな冗談だよと誰もが思うと思う。

しかし、裁判官らは「ほほう、そういうことなのか」と信用した。というのも、山本刑事が作文した調書のなかの患者が亡くなる際の様子「目がギョロギョロ」「口をはハグハグした」との描写があり、そこにいた西山さんにしか書けない迫真に迫るものがあるからとした。患者は本当にそうだったのか? のちに弁護団はこれはうそだと反論する。患者は既に大脳が壊死しているため「目をギョロギョロ」「口をハグハグ」することは医学的にありえないというのだ。やはりこれは山本の作文だった。

弁護団の井戸弁護士によれば、山本の調書は、このように全編劇画チックなのだという。その例としてこんな作文がある。西山さんに「患者を殺害したときどう思ったか」などと聞いたのだろう。その西山さんの答えが「壁の方には追いやった呼吸器の消音ボタン横の赤色のランプが、チカチカチカチカとせわしなく点滅しているのがわかりました。あれが患者さんの心臓の鼓動を表す最後の灯だったのかもしれません」。おい、山本! チカが4つもついてるぞ。

ドラマでもよくあるが、「すみません、私が殺しました」と言ったのち、犯人は机に伏せて泣きじゃくるのが普通じゃないか。「そうですね、ランプがチカチカチカチカ……」なんて、チカを4回も言うか? 山本の盛りすぎた調書が墓穴を掘ってしまったようだ。

◆無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか?

それにしても、無実を叫ぶ被告人の声はどうして裁判官に届かないのか? 裁判官は、どうして検察の嘘を見抜けないのか? 検察を信用してしまうのか? それについては、レジュメの一番最後で、井戸謙一弁護士の2023年12月24日のお話を引用して説明しています。せっかくレジュメ、パワーポイントを作ったので、集い処はなでも一度お話会をやる予定。また、皆様のお近くでもお話会をやってください。よろしくお願いいたします。

開示させた日野町事件の「引き当て捜査」の写真のネガを精査すると、復路で阪原さんを後ろを向かせ自ら案内させていると偽装していた
高知白バイ事件、バスに乗っていた生徒、教諭、バスの後ろについた校長ら26名が「バスは止まっていた」と証言したが、裁判所は176メートル離れた対向車線から見た同僚警官の「バスは動いていた」を採用した

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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