極寒の中、投票日を迎えた総選挙の結果劇的だった。低投票率が懸念されたが最終投票率は80%を超え、史上最高を記録した。自公が200も議席を減らすとはどのメディアも予想しなかったし、私だってまさかと思っていた。事前の新聞報道では「自民単独で300超えも」とか「自公安定多数確定」などの見出しが躍り、連日これでもか、これでもかと与党有利の報道が続いていたが、あれはやはり自民党に恫喝された報道機関が泣く泣く世論誘導に協力させられていたのだろう。

選挙期間中に特別秘密保護後法が施行されたり、何とも嫌な雰囲気ではあった。「この国も本当に終わるのかな」と暗い気分になってはいたけれども、まだこの国の有権者は捨てたもんじゃない。理性と良心が勝利したということだろう。今後の焦点は連立の組み合わせがどう進むかだ。意外にも議席数を復活させた「民主」が政権の中核を担うことにはなろうが、前回国民を無視した「原発再稼働」や「消費税引き上げ」と言った裏切りを行ったことの愚を猛省して運営にあたって欲しい。

全員当選の「生活」と「社民」の発言力も無視はできまい。「民主」は今回積極的に「維新」と選挙協力を進めたが、「維新」は連立に入らないと既に表明している。またしても橋下は江田と共同代表として意見が合わないらしい。近く「維新」は解党になるだろう。橋下の自爆はもとより想像できたことであるので驚きはない。

60議席を獲得した「共産」が連立に加わることへ前向きな意向だ。「自社さ」政権を超える「民主」から「共産」まで幅広い大連立政権の調整が政権運営のカギになるだろう。日本版「オリーブの木」は何と命名されるだろうか。

原発の再稼働・推進勢力は絶対少数になった。民主党内の「連合」密着議員も、ここにきて「原子力村との決別宣言」を発表した。安倍政権横暴の象徴「解釈改憲」は組閣後速やかに取り消されることが、連立政権参加予定各党党首の会談でいち早く同意をみたことが明らかになった。特定秘密保護法案は施行を一時止めて、法律自体の破棄も含めて議論が始まるらしい。

何より喜ばしいのは東京電力を倒産させ資産を整理し、被災者への賠償と避難を早急に行うことで各党が一致したことだ。東電幹部の私有財産や天下り先へも債権の取り立てを行うらしい。これで原発事故被害者の方々には遅きに失したといえようやく手が差し伸べられるだろう。捻出できる東電関連資産の合計は8兆円近いという。派遣法の見直し(廃止)と、TPP不参加についてもほぼ同意が固まったようだ。今朝の報道では、名護市辺野古周辺から防衛施設庁と海上保安庁の職員の姿が消えたという。

一部議員の間からは「消費税廃止法案」の提案が議論になっているそうだ。所得税の累進課税最高税率を75%へ引き上げれば、消費税は不要とのシンクタンクの試算がある。自民党と経団連が主張していた「法人税」の引き下げは白紙見直しとなるそうだ。

超党派の「奨学金を考える議員連盟」は現在、日本学生機構が行っている有利子の「2種」奨学金の全廃を実現すると表明した。代わりに成績優秀かつ経済的に困難な学生には返還不要な「給付奨学金」を2万人の枠確保することを目的に、臨時国会で早くも議員立法として提出する。

一方「自民」は選挙敗北の責任を取って、安倍が党総裁の辞任を明らかにした。「この道しかない」道は故郷山口へ帰る一方通行の道だった。安倍は政界引退をほのめかすコメントも口にしている。「お腹がいたい」そうだ。

「産まないほうが悪い」とまたしても本音を吐露し総叩きにあった麻生も「総理までやってみたが、正直面白くなかったのでこれからは趣味の漫画を中心に福岡で活動したい」と発言。まずは自身の蔵書(マンガ)を中心に漫画喫茶「ア・ソウ」を始めるという。身の丈を知るとはこのことを言うのだろう。

おやじの横暴が乗り移り、放射性廃棄物の中間(実際は「最終」)処分施設について「最後は金目でしょ」と発言した石原伸晃はまさかの落選にうなだれ、記者会見にも姿を見せなかった。さすが環境大臣を歴任しただけのことはある。空気は読めるらしい。

法務大臣として11人の死刑執行命令に署名した谷垣禎一は、日弁連から「殺人罪」で告発され、落選を嘆く間もなく、今朝身柄を検察庁に拘束された。元法務省が職責により逮捕されるのは異例中の異例であるが、検察幹部は「いくら合法と主張されても11名の命を奪う行為は正当化できない。国連の勧告もあるので」と語っている。

予想もしなかった方向にこの国が変わりつつあるのかもしれない。

人間には夢がある。夢を実現する力もある。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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