明日発売『NO NUKES voice』16号 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

 
『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!

明日11日『NO NUKES voice』第16号が発売になる。特集は「明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す」だ。

50代以上の読者にとって「明治」は必ずしも「歴史」ではなかったのではないだろうか。戦争帰りの祖父や叔父の中に、まだ「明治生まれ」の人々が居たし、明治生まれの女性からは、「大正デモクラシー」を経験した自由さよりも、戦時の厳しい生活を潜り抜けた話を、たくさん聞かされた記憶がある。

今年は「明治一五〇周年」だそうだ。私たちが、辛うじて知っていた「明治生まれ」の人たちは、その青年期に大正デモクラシーを経験していたはずだが、私の限られた経験からは、明治生まれ=「頑迷」、「真面目」、「禁欲的」、「保守的」とのイメージがある。

◆日高六郎さんが亡くなった

そういえば、先日社会学者の日高六郎さんが亡くなった。日高さんには生前一度だけお手紙を差し上げ、お返事を頂いた(まだ私が高校生の頃だった)。その日高さんと後年一時的とはいえ、同じ職場に勤務することになろうとは想像しなかった。

日高さんとお話していると、戦中の著名人と極めて親交が深かったことに驚かされた。破格に博識で、人格も素晴らしい偉人だった。そして日高さんの肩のあたりには「自由の風」が吹いているように感じられた。日高さんは1917年、大正6年のお生れだった。

◆「明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ」(広瀬隆さん)

 
『NO NUKES voice』16号より

私たちは明治維新後に成立した「大日本帝国憲法」により、「臣民」となり、「日本国憲法」によって「市民」となった。この2つの憲法が成立する前の日本については、ずいぶん昔のように感じてしまい、「江戸時代」はあたかも「蛮族」が支配していた暗黒時代のように(例えば、サムライは立腹すると、すぐに時代劇のように「斬り捨て御免」で大立ち回りを連日演じているようなイメージ)刷り込みをされている部分がある。

「斬り捨て御免」は事実だが、連日の「大立ち回り」は後々「時代劇」が観客の目を、楽しませるために用意した演出に過ぎず、あんなことは実際には不可能だ(人を斬ると骨により日本刀の刃は欠けるし、まとわりつく、筋肉や血液でドロドロになり、「時代劇」で演じられるような、10人以上も「斬り捨てる」ことはよほどの名刀で、剣の名手でも不可能だと言われている)。

また、事実江戸時代には何度もの飢饉が起こり、農村では子女の身売りが多発したが、同様の悲劇は明治維新以降に何度も起きている。

つまり、私たちは、疑うことなく「明治以前の日本」が文明の遅れた国で、明治以降、日本は飛躍的に「進歩」したと、信じているがそれは本当なのだろうか? 政府をはじめ、各団体が主催して「明治150周年記念」行事が行われるようであるけれども、「明治」(明治維新)とはそれほど、素晴らしい時代だったのか? 今回はこの大テーマを、広瀬隆さんが詳しく解き明かしてくださる。題して「明治150年の驕慢(きょうまん)と原自連のウソ」だ。

史的観点の持ち方、事実を明示して、明治(明治維新)がなんとなく、想起されているものと大いに異なる史実を示したうえで、今日的な原発の問題へ論を落とし込んでゆく。権力や金脈を系図によって炙り出す「広瀬式」分析はロスチャイルドを描いた『赤い盾』などで有名である。本論文の中には、実際の系図は登場しないが、読者は広瀬氏の指摘に、これまで気が付くことのなかった、新たな発見をされるに違いない。

◆「東京五輪は21世紀の〈インパール作戦〉である」(本間龍さん)

 
『NO NUKES voice』16号より

150年前の称揚が盛んであるのであれば、2年後の「災禍」を無視するわけにはゆくまい。毎号広告の問題を玄人の目から眺める本間龍さんは「東京五輪は21世紀の〈インパール作戦〉である」、わたしは「原発事故隠しの『東京五輪』に断固反対する」を掲載した。本間さんと私は原稿を書く段階で、まったく打ち合わせを行っていない。にもかかわらず、本間さんと私の感じる問題点は、極めて近く、その危機意識も同様である。

原発の問題は「運動」として、「思想」として、「文明論」として『NO NUKES voice』は多角的な方向性と、行動により核心に近づくことができうることを、15号までを世に出す中で学んできた。本号の特集「明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す」は、過去から将来へと国家が奏でる欺瞞を、歴史軸を用いて串刺しにした。しかしもちろんそれだけではない。原発に直結する、また、一見直結しないように思われるが、大いに関連のある話題や論文を満載している。その詳細は明日ご紹介しよう。

『NO NUKES voice』16号より

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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ

[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年 
飯舘村「ハコモノ復興」の現実

[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語

[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 
3・11福島を忘れないロンドン集会

[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能 
飯舘村・山津見神社周辺を歩く

[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して

[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか

[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か

[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発は市民運動で止められる可能性
 首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……

《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」

《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
 モニタリングポスト撤去を許さない! 
私たちの「知る権利」を奪わないで!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発の運転延長を認めるのか?
 核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな

《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
 茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
 東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう

《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
 再度、新潟県知事選挙を勝ち取る

《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
 もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題

《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
 浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求

《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!

《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
 九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!

《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
 大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!

《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語

《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
 新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す    6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ) 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。