米国が一機当たり6億円値下げしてF35戦闘機を日本に導入させた理由

2月初頭、防衛省は導入予定の戦闘機、ロッキード・マーチンF35ライトニング2戦闘機の価格を当初の160億円から一機当たり6億円安く購入することになった、と発表した。第2ロット、第3ロットが低価格化することはあるが、すでに契約を終えた戦闘機が納入前に減額するのは空前の出来事である。

背後にはトランプ大統領がメーカー対して「F35は高すぎる」とクレームをつけたからともされている。アメリカでは大統領の指示を受けて米軍に提供する値段を下げた実績もあり、日本にも波及した形だ。


◎[参考動画]航空自衛隊F-35戦闘機・初号機の初飛行映像(USA Military Channel – 2016/09/30公開)

しかし、ことはそう簡単ではないと軍事ジャーナリストは言う。

「F35の日本への提供価格が異常に高いのは事実なのですが、それ以上にアメリカは自衛隊の『アメリカ機離れ』を嫌ったのではないでしょうか。日本がF35を購入すると決めたのは2011年でした。航空自衛隊は戦闘機としてF4ファントム、F15イーグル、日米共同開発のF2の3機種を運用しています。このうち、F4はベトナム戦闘時の機体でそろそろ交換しなければならない。F4の代替として、また場合によってはF15の一部と交替する戦闘機としてF35が採用されたわけです。ところが、実用化は遅れに遅れ、日本への第1号機の納入はいまだに実現していません。しかも、当初100億円程度と見込まれていたものが、160億円に膨れ上がる始末。採用時に防衛省はいくつかの機種を選んでコンペを行うのです、F35はコンペの候補にすら入っていなかった。というのももともとF35はアメリカが中心になってイギリス、オランダ、カナダ、トルコ、オーストラリア、ノルウェー、デンマークがスポンサーとなって開発していたんです。もし、日本がF35を買うとしても、完成機を受け取るのは10年以上先になる。政府としてはそんなに待てない、という判断があったわけです。しかも、当時F35はまだ不完全で日本としてはアメリカ製のF22ラプターという戦闘機を第一候補として考えていたのです。ところがアメリカはF22は新鋭機で海外には出せないとして代替機を提案してきた。中にはF/A18スーパーホーネットを推すバカバカしい提案もあったぐらいです。F/A18は、自衛隊がF15を採用した時に提案されて不採用になった機体です。日本もなめられたものです」

かなりアメリカ外交が脆弱な姿勢が見え隠れする。この国の首相は、トランプが大統領になる直前、急遽渡米して、「娘さんのピコ太郎動画を見た」とごまをするていたらくだ。兵器の輸入についての弱腰も推してしるべしだ。

「しかも、F35のような戦闘機は自衛隊としては使いづらい飛行機なんです。F22ラプターにしてもF35にしてもステルス性を活かして敵機を先制発見して長距離ミサイルで撃墜するのが目的です。ファーストルック・ファーストシュート・ファースト・キルという言い方をします。ところが日本の場合は国籍不明機が日本に接近してきたら戦闘機が出て行って警告を与えて追い返すのが主目的です。不明機が戦闘機であった場合、実際にミサイルを打つまでいかなくとも自分が有利な位置につかなければいけない。F22は空中戦能力が非常に優れているため長距離射撃だけでなく、近接戦闘にも強い。ところが、F35はJSF(ジョイント・ストライク・ファイター)とも呼ばれる単一の機種で複数のミッションをこなすのが目的です。実際、アメリカだけでもF16ファイティングファルコン、艦載機F/A18ホーネット、攻撃機A10サンダーボルト、海兵隊の垂直離着陸機AVー8Bアドバンスドハリアーを代替する計画を持っています。日本は制空戦闘機が欲しいのに戦闘攻撃機を押し付けられたわけです」 (同)

では、そもそもなぜF35が採用されたのだろうか。

「それこそ謎です。コンペ終了1週間前になっても本命はわからない。ヨーロッパ共同開発のユーロファイター「タイフーン」などはブラックボックスをつけない、という破格の条件を出してきました。一方、自衛隊はF22ラプターをあきらめない。いざ、発表されたところ、絶対にありえないとされていたF35が採用されていた。政治的な理由でアメリカが何としても自国機を売りたかったのでしょう。いずれにせよ、結果的にですが、日本国内にF35用のエンジンから、機体の組み立て工場までが建設されることになった。シンガポールや韓国、オーストラリアにも日本の工場で作られた機体が供給される予定です。アメリカと他の国との間にどのような交渉があったのかも不明です。ただ、政治的には中国との関係を考えたためともいわれています。アメリカは最終的にF35を5000機以上作る考えでいます。現代の戦闘機は機体とエンジンがあれば何とかなるようなものではありません。高度なレーダー、電波妨害装置、複数の通信装置、数種類のミサイルと機関砲を制御するファイアリングコントロールシステムが必要になります。結果的に大量の電子部品を調達しなければならない。その時、中国製でない電子機器を供給できる国は多くない。そこで無理やり日本にねじ込んだ、ともいわれています」

 では、なぜ今になって値引きをしたのか。

「一つは開発の遅れがひどすぎるという点。価格が高いと日本でもアメリカでも議会はなかなか承認しません。ですが、そんなことで採用数が減っては国防にかかわります。米空軍ではA10サンダーボルト2を退役させる予定でしたが、退役を中止して後付けのレーダーや、赤外線暗視装置をつけて使用を続けています。F35は一億ドルしますが、A10は1,000万ドルで、すでに支払いは終わっています。より悲惨なのは海軍で海軍用のF35Cが入ってこないので一旦退役させたホーネットを再整備して現役に復帰させました」 (同)

なんとなく「からくり」が見えてきた。軍事ジャーナリストが続ける。

「昨年、日本でも三菱F2の後継をどうするか、検討が始まりました。アメリカとしてはF35を売り込みたいところですが、F35の遅れによって日本が独自開発するとか、他の機種を採用する可能性が増えてきています。ミサイルの分野ですが、日本には前例というか、前歴がありますから。現在、アメリカ軍機の主要な空対空ミサイルはAIM-120、AMRAAMという機種で、射程距離おおよそ百キロという長距離ミサイルです。ところが、開発段階でAMRAAMは高性能すぎるため日本に売却されないのだはないか、という憶測が流れました。そこで、日本としては独自に九九式空対空誘導弾、AIM-4を自主開発しました。AIM120より若干大型ですが、対艦ミサイルを撃墜するため破壊力が大きくなっています。これを見て慌てたのがアメリカですよ。防衛省に対して必死の売り込みをかける羽目になったのです。その甲斐あってか、昨年、小数の調達が発表されました。AIM-4は大きすぎて、F35のウェポンベイに収まらないという説があります。おそらくF35用にAMRAAMを使用するのでしょう」

ミサイルがキーとなっていたのか。確かに日本のミサイル開発はものすごいスピードで進んでいる。軍事ジャーナリストが続ける。

「第二は性能的な問題です。現時点でアメリカはF15イーグルと、F16ファルコンを併用しています。F15イーグルは登場したとき「すべての戦闘に勝つ」ことを目的とした戦闘機でしたが、3,000万ドルとあまりにも高価でした。そこで比較的、危険度の低い戦場には安価なF16を投入して上空をF15が守る「ハイローミックス」構想で戦闘を組み立てました。この二機種は同じエンジンを使用していますが、F15は双発、F16は単発です。しかし性能的には段違いでF15一機で、F16五機から六機を相手にできます。実はF22ラプターとF35も基本的には同じエンジンを使っています。F35の方が新しいだけあってチューンされパワーは上がっていますが、性能差がどれぐらいあるのか公開されていません。他方ではヨーロッパで事件が起こります。クルージング中のF22ラプターを見つけたユーロファイターが模擬空中戦を挑みました。結果はラプターの惨敗です。もちろん、実際にレーダーを使用した戦闘ではステルス戦闘機であるラプターが全勝していますが、ラプターすら日本が求める格闘戦能力に劣る。劣化コピーであるF35ではどれぐらいの戦力になるのかという疑問が生じます」


◎[参考動画]F-35ステルス戦闘機の垂直着陸・在日米軍岩国基地(USA Military Channel – 2017/02/17公開)

要するにF35はアメリカから押しつけられた産物だというのだ。しかもいっぽうでロシアの軍事航空機の技術もかなり進んでいる。

「やはり、F35の遅れと、性能に関係してきますが、いわゆるライバル機の伸びも懸念されます。ロシアではミグ29フルクラムの性能向上型が実用化されています。エンジン出力を増加させ、電子機器を刷新した機体です。一時期、ミグ29は実戦で電子戦能力不足からアメリカ製機に後れを取っていましたが向上型で差を埋めたとみられます。また、F15イーグルのライバルとも言えるスホーイ27フランカーの性能向上型はすでに中国に輸出されています。イーグルは上昇性能、加速性能などあらゆる記録を塗り替えたレコードホルダーだったのですが、今では軒並みフランカーに破られています。さらにロシアは今年中にステルス戦闘機PAK-FAの実戦部隊を配備すると発表しています。PAK-FAの動画がすでに公開されており、こちらはフランカーの機動力と運動性を向上させたステルス機という趣きです。また、長距離ミサイルの開発ではロシアが先鞭をつけており、AMRAAMではかなわない、という見方もあります。普通、このような場合、アメリカは数で圧すのが通例なのですが、生産は遅々としてはかどらない。ずいぶん遠回りしましたが、アメリカは今作ることができる最高性能の機を何としても多数、そろえなければならない。そのためにはメーカーも薄利多売で行くしかない。日本の工場をフル稼働させるためディスカウントしたのだと考えられます」

そんなわけで外交の遡上にあがったトランプ大統領が押しつけてくるF35。果たして自衛隊が購入するのだろうか。ここでも安倍外交の実力が問われる。妻に学校の利権を貪らせている場合じゃないのである。

(伊東北斗)

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鹿砦社は野間易通氏アカウント凍結解除をツイッター社に求めるものではない!!

 
 

 
一昨日(3月6日)本コラム掲載の「『平成の黒百人組』野間易通氏ツイッターアカウント凍結の一刻も早い解除を!!」に対して、ある読者から厳しいご批判を頂いた。読者のご意見は「このタイトルでは野間氏のツイッターアカウント凍結解除に利用される、文末も相応しくない。訂正すべきだ」というものであった。

鹿砦社特別取材班の見解は、6日の文章で明らかにした通りである。しばき隊、しばき隊に批判的な方双方に本意が伝わる(揶揄を含めて)ものだろうと考えていたし、概ねしばき隊に批判的な方からは好評を頂いた。だが抗議をしてこられた読者は真剣そのものであったので、あえて解説を加えておく。

あの文章が文字で表現していることと、意図していることをいかように理解するかは、幾通りもの解釈があってしかるべきだろう。しかし、われわれの真意は伝わるだろう、というのが書き手としての心情だった。もっとも、われわれの文章力不足で、その本意が伝わらなかったので抗議をしてこられた方はご立腹であったのだから、表現活動を行う世界の末席を濁すものとしては筆力の不足をお詫びするしかない。

そこで、誤解を解くためにあえて加えるのであれば、ネット上での集団リンチの如き行為をわれわれは忌み嫌うし軽蔑する。さらに野間氏がこれまで繰り返し行ってきた「名誉毀損」、「虚偽」、「本人の望まないプライバシー暴露」などの行為は、法に触れるか触れないかを別にしても、社会通念上許されざる行為だと判断している。野間氏の「罪状」をここでいちいち詳述はしないが、ほかならぬ鹿砦社自身が被害にあっているのであるから、この考えに揺るぎはない。

さらに付言すれば鹿砦社は「M君リンチ事件」を引き続き追っている唯一の出版社であることも思い起こしてほしい。このような状態で鹿砦社が野間氏に対して「親心」を持つ理由があるだろうか。よって6日の文章はその前提の上で読み解かれるとの期待があったが、筆足らずであったようである。

野間氏が常套手段として用いる「ネット上の集団攻撃」にも賛同しない(ここまで言わなければわかっていただけないか……)。このことも再度明言しておく。野間氏は攻撃者としては常連だが、同様な行為がどのような勢力によってなされても、ツイッターを利用している人に「集団加圧」を強いる行為には賛同できない。その例といっては失礼だが、昨年野間氏がアカウントを凍結されたのとほぼ同時期にアカウントを凍結され、その後新アカウントで復活した合田夏樹氏のアカウントが3月7日また凍結された。

両氏の凍結が時期を同じくしていることは、たまたまの偶然か、あるいは何らかの集団が一斉にツイッター社に抗議を送ったのか、はたまた、ツイッター社独自の判断なのかはわからない。わかっているのは昨年同様、しばき隊の最重要人物の野間氏と、しばき隊に批判的な言説を繰り広げてきた合田夏樹氏がほぼ同時期にアカウントを凍結されたということのみである。

 
 

 

合田氏は凍結に先立つ数日前にお子さん襲撃をほのめかすツイートをされていた、いわば現在進行形では確実に被害者であるが、アカウントを凍結された。抗議された方は「これでは野間氏のアカウント凍結解除の材料にされてしまう」と述べておられたが、私たちにそれほどの力があるだろうか。また表題だけではなく、文章を読めばそれが「揶揄」を含んでいると理解はしてもらえないのだろうか、との思いは残る。

何が理由かはわからないが、ツイッターアカウントの凍結劇の理由はブラックボックスの中で、その理由をわれわれが推測してもあまり大きな意味はない。一私企業の恣意的な判断に社会正義があるとは思えないし、ツイッター社の倫理や正義をそこまで信用する気にはなれない、というのがわれわれの感覚である。

しかしながら、われわれの表現力不足で誤解を与えたのであれば、6日の文章を上記のように改める。これで鹿砦社特別取材班の意図はお分かりいただけるものと信じたい。

(鹿砦社特別取材班)

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1年過ぎても裁判が始まらない福岡女子予備校生刺殺事件・現場の謎と二次被害

福岡市で女子予備校生が同じ予備校に通う少年に刺殺されるというショッキングな事件が起きて、1年が過ぎた。逮捕後に20歳になった元少年は起訴され、裁判員裁判で裁かれることになったが、まだ公判の日程は決まっていない。事件現場を訪ねたところ、元少年の行動に疑問を抱かせる謎が浮かび上がると共に深刻な二次被害の痕跡を目の当たりにした――。

朝日新聞2016年3月12日付
朝日新聞2016年3月26日付

◆謎めいている元少年の人物像

事件は昨年2月27日夜、福岡市西区姪の浜の住宅街の路上で起きた。女性が男に襲われているという110番通報があり、福岡県警西署の署員が駆けつけたところ、予備校生の北川ひかるさん(当時19歳)が血を流して倒れており、病院に搬送されたが、ほどなく死亡が確認された。

一方、北川さんと同じ予備校に通っていた犯人の元少年(当時19歳)は犯行後ほどなくして「知り合いの女性を刺した」と近くの交番に出頭。両手を血だらけにしており、いったん病院に入院させられたが、翌3月11日、北川さんの首などを刃物で刺したとして殺人の容疑で逮捕された。地検は元少年が逮捕後に20歳になったため、家裁に送致せず、精神鑑定を実施したうえで起訴。現在は公判前整理手続きが続いている。

この事件に関しては、成績優秀だった北川さんが事件後に難関の大阪大学法学部に合格していたことが判明して涙を誘った一方、犯人の元少年は人物像が謎めいている。動機一つとっても「彼氏がいないと嘘をつかれた」とか「バカにされたと思った」などと報道の情報は錯綜気味。起訴前に行われた精神鑑定でも一度、鑑定留置が延長されるなど、水面下でドタバタしているような雰囲気が感じられる。

産経新聞2016年6月9日付

◆犯行後、川に飛び込んだそうだが……

私はそんな事件がまもなく発生から一年になりつつあった時期、現場を訪ねてみた。すると、犯人の元少年が犯行時、思った以上に不可解な行動をとっていることがわかった。

事件発生当初の報道では、元少年は北川さんを刺した後、現場近くの川に飛び込み、その後に交番に出頭したと伝えられていた。この情報から元少年について、自殺しようとしたが死に切れず、自首することを選んだかのように思った人は少なくなかったろう。

しかし現場を訪ねたところ、元少年が飛び込んだ川というのは、写真のように船着き場になっている河口付近で、水深も浅そうに見え、飛び込んでも死ねるとは到底思えなかった。元少年が川に飛び込んだ目的が何であれ、合理的な思考ができない異常な精神状態だったのはたしかだろう。起訴前に精神鑑定を施されたのも当然だと思わされた。

元少年が飛び込んだのはこんな場所。これでは死ねない

◆被害者が倒れていた場所は今……

事件発生当時の報道を見ていると、北川さんが元少年に刺され、倒れていた場所には、多くの花が手向けられていた。ところが、その場所を訪ねると、二次被害の跡が見受けられた。花が手向けられていたあたりの民家の外壁に次のような看板が設置されていたのである。

〈この場所は私有地です。ものを置かないで下さい〉

北川さんが倒れていた場所は、写真のように奇しくも祭壇のように使える状態だったから、その死を悲しむ人たちはここに花を手向けていったのだろう。しかし、この部分は看板を出した家の人の私有地で、迷惑したのだと思われる。花を手向けた人たちに悪気はなく、心から北側さんを悼んだのだろうが、結果的に二次被害をつくることになったわけである。私が訪ねた際には花は一切手向けられていなかったが、おそらく二度と花は手向けられないだろう。

元少年は今、自分がしたことをどう思っているのか。私は福岡拘置所に勾留中の元少年に取材依頼の手紙を出し、面会に訪ねたが、案の定、面会を断られた。元少年は動機から何から気になるところが多いので、裁判を傍聴できたら続報をお伝えしたい。

被害者が倒れていた場所への献花は迷惑だったらしい

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

本日発売!『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

「平成の黒百人組」野間易通氏ツイッターアカウント凍結の一刻も早い解除を!!

 
 

   
3月5日正午現在、野間易通氏のツイッターアカウントが凍結されている。「鹿砦社特別取材班」は一刻も早い野間氏アカウントの凍結解除をもとめる。野間氏のアカウントが凍結されたのはこれが初めてではない。また凍結された理由もわれわれには不明である。しかし表現の自由が憲法21条で保障されている日本にあっては、あらゆる言論が封殺されたり、集団圧殺が行われたり、ましてや口を封じられることなどあってはならない。

野間易通氏は最近「のりこえねっと記者」としてご活躍の方でもあるが、今回のアカウント凍結はそのことが影響しているのであろうか。また野間氏は「集団リンチ」事件被害者M君の本名、所属大学などをたびたび掲載するなどしてM君から名誉棄損の訴えを大阪地裁に起こされている人物である(この裁判はすでに結審し5月26日に判決が言い渡される)。野間氏の「暴露癖」はなにもM君に限ったことではなく、彼が気に入らない人物には常套手段として用いてきた手法だ(鹿砦社刊『ヘイトと暴力の連鎖』『反差別と暴力の正体』ご参照)。

産経新聞2017年3月5日付
 
 

  
野間氏の書き込みには明らかな「名誉棄損」に該当するものも含まれ、野間氏はすでに一度敗訴を経験している(判決は確定済)。それでもツイッターにしがみつき度重なる凍結をものともせず、「独自」の発信を続けてきたのが野間氏である。敗訴経験がありながらも同様の名誉棄損を発信し続ける「確信犯的」行為(精神?)には、われわれ鹿砦社特別取材班も、立場はまったく異なるとはいえ、一定の尊敬とその「ぶれない」(森友学園の籠井泰典理事長同様の)姿勢に学ぶものが多い(かな?)。

そして、野間氏は「僕は軍隊を持っている」(外山恒一氏との対談)と自ら語っているとおり、いわゆる「しばき隊」のなかでは「尊師」と奉られている人物でもある。「しばき隊」の主たる武器はインターネット、とりわけツイッターだ。野間氏のアカウント凍結が続けば、一時に比べて激減したとはいえ「軍隊」の兵隊たちはどうすればよいというのだ。指揮官を失った兵卒が路頭に迷うじゃないか。そんな非人道的なことをツイッター社は認めてもよいのか。一人では何も発言する勇気も思想も哲学も持ち合わせなし、行動もできない「しばき隊」の兵隊が泣き寝入りするのを許すというのか!

彼らの多くはツイッター依存症であり、極言すれば「ツイッターがなければ何をしていてよいかわからない」市民たちだ。そんなか弱い市民に苦痛を負わせてはならない。野間氏のアカウントを一刻も早く凍結解除し、これまで通り彼独特の世界観から「しばき隊」の兵隊を「領導」しなければ、いらぬ混乱や最悪の場合には犯罪を誘発するのではないか。その証拠が「M君リンチ事件」である。野間氏の正しい「お導き」があれば「M君リンチ事件」は防ぐことはできたのではないか(そんなことはない!との意見も多いが……)。

唯一の救いはやはり野間氏がコントロールしている「C.R.A.C」アカウントは凍結されていないことだ。「しばき隊」の諸君!野間氏アカウント凍結解除までは、緊急避難的に「C.R.A.C」アカウントを参照しよう。

念のため申し添えるが、鹿砦社特別取材班は「M君リンチ事件」をメルクマールとし、引き続き「しばき隊」の病巣を、分析し抉(えぐ)り続けることを宣言する。「ヘイト」を金科玉条に浮遊する「下からのファシズム牽引部隊=黒百人組」の本質を追う。そのためにも野間氏の発信方法は確保されていなければならない。「ざまーみろ、野間凍結されやがって」などと表層だけで喜んでいる人がいるとすれば、それは鹿砦社特別取材班の立場とは違うことを明らかにする。われわれは原則的に彼らの病巣に切り込む。こちらの武器はネットでも、権威でもなく地道な取材だけだ。堂々と勝負しようじゃないか。そのために再度繰り返す。

「野間易通氏のツイッターアカウントの一刻も早い凍結解除を!!」

(鹿砦社特別取材班)

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埋もれた勇者──足立秀夫という男

足立秀夫(右)VS弾正勝戦。苦戦したが、際どい判定勝利。ベテラン弾正勝は強かった(1982年10月3日)
足立秀夫(右)VSタイガー岡内戦。西川ジムに移籍して3戦目はKO勝利。タイガー岡内は後に別団体でチャンピオンに就いた(1981年11月22日)
弾正勝戦。赤コーナーでインターバルを過ごし、会長のアドバイスを聞く(1982年10月3日)
強豪バンモット戦 。勇敢に攻めるもムエタイの壁は厚かった(1982年1月4日)
バンモットに敗れ、引き上げた直後、ヒジで切られる傷も痛々しい。しかし悩まないのが勇者(1982年1月4日)

チャンピオンに成れなかった選手でも、ファンに感動を与え記憶に残る試合を展開した名選手が過去に多く存在しました。そして毎度申します昭和50年代のキックボクシング低迷期の、モチベーションを維持し難い時代にも「明日(今後)は良くなる」と信じ頑張った選手とプロモーターが幾人もいました。

こんな時代にキックボクシング業界に踏み込んだ私(堀田)は撮影の為、足立秀夫というキックボクサーとしばらく行動を共にする機会を得ました。付き合った初めに感じたことは「キックボクサーって普通の人と同じ生活や人格なのだな」ということでした。怖い顔ながら面白いことを言ったり御茶目なイタズラをし、銭湯でとても活字にできない笑いを起こし、また人生観から厳しいことも言うことは当たり前ですが、決してヤンチャな風貌ではなく普通に街を歩く若者で、田舎から出てきたばかりの私にとってはキックボクサーのイメージが大きく変わった年になりました。これは足立氏だけでなく個人差はあれど、キックボクサー皆普通の人という感じでした。

1979年(昭和54年)4月、22歳になる年にデビューした足立秀夫は名門・目黒ジムで大きな期待を掛けられデビューから6連勝。子供の頃から気が弱いが、これを克服しようと走ることが得意だったことから自然と苦しい限界に自ら挑む精神を身に付け、マラソンでは常に一番になり、海上自衛隊在籍中、たまたまキックをやっていた隊員に誘われたことから目黒ジムを見学し、衝撃的にキックの凄さを実感したことから、いきなり自衛隊を辞めキックに転身。子供の頃からの走り込みで身に付いたパワーとスタミナでガムシャラに勢いだけで勝ち進むと、「この先はこれだけでは勝てなくなる、もっと強くなりたい、技術を磨きたい」とより一層そんな欲求に苛まれました。

しかし1981年(昭和56年)、キックボクシング業界は創設16年目を迎えて最大の危機に陥っていた時代でした。興行数は極端に減った中でも、“明日は良くなる”と信じ、技術を磨きにタイへ渡ることを決意。そのタイ修行中に出逢ったのが現地在住していた元・東洋フェザー級チャンピオン.西川純(目黒)氏でした。かつての創生期では沢村忠と二大看板となって戦っていた時代もある西川氏は、日本の選手の育っていない現状打破の為、ジムを始める計画を立てていた時期で、足立氏は日本で西川氏からムエタイ技術を学ぶことを望み移籍を決意。目黒ジムの系列から移籍の問題は無く、帰国後、西川ジムへ移籍したのは同年の夏でした。

そんな時期に日本のキック二大団体から分裂騒動が起き、“規模的”に第三勢力と言われた日本プロキックボクシング連盟が誕生し、西川ジムも加盟していました。

西川ジムは京成小岩駅から程近い路地にある共同アパートが選手の合宿所となり、当初は他のジムで間借り練習をしていましたが、以前から臨時にやっていた合宿所前の路地が練習の場となっていました。夕方から3時間ほどの練習に選手が集中し、路地が「ムエタイジムにそっくりなほど賑やかになった」と足立氏が言うほど。サンドバッグを吊るす柱が植え込みに建てられ、ラジカセで大音量で音楽を流し、選手のリズムを駆り立てるよくある練習風景。ミット蹴りの激しい音は路地を越えて広がり、立ち止まって見ていく通行人もいてテレビ放映が無くなった時代、「キックってまだやってんだ」という人もいたほどでした。初めて練習を間近で見た時は、足立氏の蹴りが速くて威力あって凄いこと。「プロの蹴りって凄いな」と思った瞬間でした。

迎えた1982年1月4日のバンモット・ルークバンコー(タイ)戦、1ラウンドから勇敢に向かう足立氏に「このペースなら勝てる」と囁いた西川会長。しかし来日4戦4勝のバンモットは怯まず調子を上げていき、足立氏は3ラウンドでパンチで倒されてしまいました。タイの元ランカーはやっぱり強く、負ける悔しさも観ている側もが感じた試合でしたが、「対バンモット戦は足立がいちばんいい試合をした」という評価がついて回る試合後の日々でした。ひとつ区切りがついた私の追跡撮影でしたが、次の課題を追って西川ジムにはその後もお邪魔しました。

そんな時期から1年あまり過ぎた頃、夕方の練習時に、おまわりさんが自転車でやってきました。

「近所から苦情が出ています。すぐやめてください。」

思えば通行人も遠慮しながら道を渡る日々。私が感じていた“キックボクサーは怖い人種ではない”という想いも集団で奇声を上げて練習していれば近所から見れば異様な光景だったのでしょう。“怖い人種ではない”この集団は試合が近いにもかかわらず納得し、直ぐに撤収しました。

ジムが無い頃の路上練習は、より集中的にそれなりの充実感があった(1981年12月27日)
1983年、初詣ロードワークを兼ねた初詣の帰り道。右は向山鉄也(1983年正月)
小岩の西川ジム風景。キツイ練習も充実した青春の時間(1983年8月10日)
小岩の西川ジム風景。「西川会長が持つミットが最も蹴りやすかった」とすべての選手は言う(1983年8月10日)
小岩の西川ジム風景。設備が整ったジムで思いっきりスパーリングも可能なことに感謝する選手たち(1983年8月10日)
小岩の西川ジム風景。後輩に声掛けアドバイス、ジョークも言うリラックスした瞬間(1983年8月10日)
一番印象深く、戦えるだけで光栄だった藤原敏男戦。足立秀夫は藤原敏男のラストファイトの相手となった(1983年2月5日)
藤原戦から3ヶ月後、目標としていた須田康徳(左)と対戦したがまたも敗れ去る。とはいえ足立にとっては充実した時期だった(1983年5月28日)

練習場を失っても足立氏は「ミット持ってくれる会長が居れば練習はどこでもできる。」と平然としたもの。西川氏が取った策は合宿所アパートの六畳間の壁を撤去した2部屋を練習場としてしまったことでした。さすがにどこでも練習はできる環境でした。いずれにせよ路上練習を長く続けるつもりはなかった西川氏は同年12月には国鉄小岩駅から200メートルほど離れたビルの一室を借り、設備整った西川ジムが本格始動しました。

ジム開きでは、足立氏は元ムエタイチャンピオン.藤原敏男氏をゲストに記念スパーリングを行なう貴重な体験をし、その時期に行なわれていたイベントが、1000万円争奪三階級オープントーナメント。分裂によって5団体に増えたキック界が総力を結集した一大イベントでした。過去何度も繰り返されての今度こそ“明日は良くなる”と信じた多くの関係者でした。

足立氏は4強に残り、準決勝で藤原敏男(黒崎)と対戦。150戦を超える、ムエタイ王座を制した藤原敏男氏には、その存在感だけで萎縮してしまう選手が多い中、いつもよりガードを高く上げ、スパーリング経験を活かし勇敢に攻める足立でしたが、軽く足払いで宙に高く舞わされるほど藤原敏男の動体視力とタイミングの良さ、当て勘に3ラウンドに隙を突かれた右ストレートで倒されました。その直後、伝説となった藤原敏男氏の引退宣言があり、足立氏は藤原敏男氏の最後の対戦相手となった話題に残る存在となりました。

藤原敏男氏と蹴りあったその経験はひとつの自信に繋がり、10日後に行なわれた香港遠征ではタイ選手にKO勝ち。「技も大事だが、心が充実することが最も重要」と語っていました。

飛鳥信也戦。ラストファイトとなった最後のリング。4年ぶりに衣笠真寿男リングアナにコールされる足立秀夫(1984年11月30日)

そんな香港連戦の中、同年5月にTBSキック(日本系)「最後のスター」と言われた須田康徳(市原)と対戦する日本プロキック・ライト級王座決定戦が実現。過去の分裂前の1981年9月に須田に挑戦する日本ライト級タイトルマッチを戦っている足立氏は“打倒・須田康徳”を目標に掲げ戦って来た現役生活でした。前回は僅差の判定負け。今度こその想いも叶わず、パンチで倒され3ラウンド終了TKO負けに終わりました。総力を結集したオープントーナメントが終っても業界の分散は続き、キック界の皆がいちばん途方にくれた時期だったかもしれません。それぞれが“明日を良くする目標”を持って道を切り開く中でも、足立氏に限らず選手のモチベーションの維持は難しかったでしょう。

そんな途方に暮れる中、ある実業家によって1984年(昭和59年)11月の統合団体が実現、一過性のオープントーナメントとは違い、定期興行が約束される日本キックボクシング連盟設立に至りました。ようやく本当の“明日は良くなる時代”がやってきましたが、足立氏はそれまでライバルを突き放し、上位へ挑戦し続けた現役生活、しかし次第に巻き返された昭和59年という年の、その設立興行に出場した足立氏でしたが、減量苦からくる体調不良で新鋭・飛鳥信也(目黒)にKO負け、引退を決意しました。

引退後に結婚し、後に故郷の静岡県袋井市に帰って焼肉店「東大門」を開店した足立氏。後々には焼肉店の隣に東大門ジムを設立し、選手育成も始めました。2000年代に入った頃のニュージャパンキックボクシング連盟興行で選手を連れて前日計量に現れた足立氏。笑顔で私と再会しました。この笑顔は現役時代には無かった穏やかな表情で「商売人は笑顔で居なくちゃ駄目だよ」と焼肉専門店の先輩から教えられたことから「笑顔で居るのが癖になっちゃったよ」と笑う足立氏。その影響はあるにせよ、ずいぶん表情も言葉も丸くなったものだと思う私でした。

地方に居てはなかなか選手も集まらない中、焼肉店支配人として二束わらじも大変でキックから遠ざかるも、今年You Tubeでその姿を見ることができました。昔と変わらない雑然としたジムの雰囲気、ミットの持ち方。こんな人があの時代を支えた一人であったこと懐かしく貴重に想うところ、かつて倒した相手が他団体でチャンピオンに成っていたり、空位王座が目立った他団体であれば足立氏はチャンピオンに成っていたことでしょう。加盟していた日本プロキック連盟ではチャンピオンには届きませんでしたが、“須田康徳を倒してこそ真のチャンピオン”と信じた現役生活に悔いは無く、「須田さんとも藤原さんとも戦えた充実したキックボクサー生活だった」と後に語っていました。

現在は息子さんが3人居て、皆成人しており、長男が消防士、次男が介護士、三男が警察官という何とも過酷な忍耐要る職種の息子さんたち。父親から受け継いだ忍耐心を持って挑んだ天職なのでしょう。もうすぐ60歳になるという足立秀夫氏。今は若い者に店を任せ、ジムに顔を出す時間を増やしたという。選手を育てるには時間は掛かるが、「また後楽園ホールに選手を送り込みたい」と日々頑張っています。

引分け勝者扱いながら変則的・翼吾郎を退ける(1983年1月7日)

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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大阪母子殺害事件は無罪確定? 被告男性が訴えていた大阪府警の拷問取調べ

2002年の大阪市平野区母子殺害事件で、一度は死刑判決を受けながら2012年に逆転無罪判決を勝ち取っていた大阪刑務所の刑務官、森健充さん(59歳・休職中)の第二次控訴審で3月2日、大阪高裁は検察側の控訴を棄却し、無罪判決を支持した。このことはすでに大きく報道されたが、実は見過ごされている重大な問題がある――。

朝日新聞2017年3月2日付
毎日新聞2017年2月27日付

◆乏しかった証拠

大阪市平野区のマンションの一室で住人の主婦(当時28歳)とその長男の1歳児が何者かに殺害されたのは2002年4月のこと。主婦の義理の父だった森さんは殺人の容疑で逮捕され、裁判では第一審で無期懲役、控訴審で死刑を宣告されたが、一貫して無実を訴えていた。そして最高裁が審理を差し戻した2度目の第一審でまさに起死回生の逆転無罪判決を獲得。検察がこれを不服として控訴したが、第二次控訴審で無罪判決が追認されたことにより、逮捕から14年余りの年月を経て、ようやく無罪が確定しそうな見通しだ。

この事件は元々、証拠が乏しく、現場マンションの階段踊り場の灰皿から見つかった森被告のタバコの吸い殻が事実上唯一の物証だった。しかし、その吸い殻は変色の仕方などから事件当日に森被告が吸ったものかは疑問が残り、本来はおよそ有罪の証拠にならないものだった。しかも第二次控訴審では、検察が逆転有罪を期して被害者の着衣などから採取した試料をDNA型鑑定したところ、森さんのDNA型は一切検出されず、逆に身元不明の第三者のDNA型が検出される結果に。このように審理の中では森さん以外の真犯人が存在する可能性まで浮上しており、無罪判決が維持されたのは大方の予想通りだった。

では、見過ごされている重大な問題とは一体何か。それは、森さんが捜査段階に大阪府警から「拷問」のような取調べを受けたと訴えていたことである。

森さんの取調べが行われた平野署
森さんの無罪を追認した大阪高裁

◆頭部にナイロン袋までかぶせられ・・・・・・

事件発生まもない時期から警察に疑われた森さんは、何度も平野署に呼び出されて「任意」で執拗に取り調べられていた。そして事件から約4カ月後の2002年8月には、睡眠薬を飲んで自殺するまで追い込まれ、一命を取りとめたあと、大阪府を相手に500万円の国家賠償を請求する訴訟を起こしている。結果的に森さんは請求が認められずに敗訴したが、この訴訟で森さんが訴えていた暴行被害の内容は実に凄まじかった。

何しろ、取調べを担当した3人の刑事は森さんを大声で怒鳴って自白を強要したり、顔や頭を殴る、下半身を足蹴にするなどの暴行をはたらいたばかりか、森さんの頭部にナイロン袋かぶせ、酸欠で気を失うまで追い込んでいたというのだ。結果、大阪地裁の第一審判決は「本件暴行の事実を認めるに足りる証拠はない」と森さんの主張を退け、森さんは控訴、上告も実らずに敗訴したのだが、本当にそれでよかったのか――。

この事件では、最高裁が審理を第一審に差し戻したのち、もっとも重要な争点だった「タバコの吸い殻」を大阪府警が紛失していたことが判明するなど、警察捜査はあまりにひど過ぎた。森さんが取調べで拷問があったと訴え、国家賠償請求訴訟まで起こしたことはあまり知られていないが、無罪確定が確実な状況になった今だからこそ、捜査の問題も改めてイチから総括すべきではないか。

いずれにしても逮捕から15年、死刑の恐怖に苦しめられながら、不屈の闘志で無罪を勝ちとった森さんがこれからの人生で幸多からんことを願う。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

7日発売『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

《本間龍19》国民投票で何が起きるか(2)不可欠な6つの広告宣伝規制

前回は、現行の国民投票法には広告宣伝活動における制限がほとんどなく、今のままだと電通を擁する改憲派が圧倒的に有利な状況を解説した。

◎[参照]国民投票で何が起きるのか(1)広告宣伝で与党が有利な8つの理由

このようなことを書いても、「それは広告費を伴う活動に限ったことだ。報道や討論番組は広告に関係なく中立なはずだから、宣伝広告費の多寡は関係ない」と考える人もいるだろう。

◆改憲派の宣伝広告を担当する電通の印象操作ビジネス

ところが、残念ながらそうはならない。実際の広告宣伝費の投下額に大きな差が生じた場合、民放各社は広告費の多い方に便宜を図る可能性が高い。また、実際にその放送現場を仕切るのは、改憲派の宣伝広告を担当する電通であることも忘れてはならない。つまりプレーヤーがジャッジの現場に立ち会っているのと同じなのだ。具体的には、以下のような印象操作の可能性が生じる。

《1》スポットCMの発注金額に大きな差がある場合、ゴールデンタイムなどの視聴率が高い時間帯に、金額が多い方のCMをより多く流す(ラジオも同様)。

《2》同じく発注金額が多く、かつ発注が早ければ、通常はなかなか獲得できないタイム枠(提供枠)のスポンサーになることも可能である。

《3》一見公平に見える討論番組でも、スポンサーに改憲派企業がつけば内容操作が可能。例えば改憲派は若い評論家や著名人を出席させるのに対し、護憲派は高齢評論家や学者ばかりを揃える、というように番組制作側による印象操作が可能。また、カメラワークによって映る表情や秒数で差をつけることも出来る。

《4》ワイドショーなどのコーナーでも、放映される時間(秒数)に差をつける、コメンテータの論評で差をつける、そもそもコメンテータも改憲派多数にするなどの操作が可能。

《5》同様に、夜の報道番組に改憲派のCMが多数入れば、それだけでその番組が改憲押しであるように錯覚させることが可能。また、報道内容でも放映秒数に差をつけたり、印象を偏らせたりすることが可能だ。

◆公平性を保つために不可欠な6つの宣伝広告規制

以上のように、特に電波メディアにおける広告資金量の差、発注タイミングの差は圧倒的な印象操作を生む可能性がある。では上記のような状況を防ぐ手だてはあるのか。それには、おそらく以下のような規制を設けるしかないだろう。

《1》あらゆる宣伝広告の発注金額を改憲派・護憲派ともに同金額と規定し、上限を設ける(キャップ制)。例えば、予め総金額を一団体5億円、総額で100億円などと規定し、両陣営ともその金額の範囲内で使用メディアを選定、その内訳を公表する。

《2》TVやラジオCMの放送回数を予め規定し、放送時間も同じタイミングで流す。

《3》先行発注による優良枠独占を防ぐため、広告発注のタイミングを同じにする。

《4》報道内容や報道回数、放映秒数などで公平性を損なわないよう、民放連に細かな規制を設定させ、違反した場合の罰則も設ける(努力目標では意味なし)

《5》宣伝広告実施団体(企業)の討論番組へのスポンサード禁止

《6》ネットメディアへの広告出稿に関しても回数・金額の上限を設ける

◆彼らの「善意」や「公平性」、「正義感」などは全く信用していない

しかし上記のような資金規正を設けても、結局は影響力が強いテレビとネットメディアへの広告費集中は避けられないだろうし、そこに細かな規制を設けるのは相当困難だ。であるなら、思い切って「テレビ広告は全面禁止」にした方が一番スッキリすると思う。これは、一番影響力があるメディアが「資金力の差」によって歪むことを予め防ぐためだ。

私は原発広告によってTVメディアが原発ムラにかしずき、原発を批判するニュースを一切流さなかった歴史を知っているので、彼らの「善意」や「公平性」、「正義感」などは全く信用していない。だから広告費をゼロにし、その影響力が偏らないようにするのがベストだと考える。

だが、テレビCMをゼロになどという提案は当然、民放連の強い反対に遭うだろう。それだけでなく、上述したように圧倒的有利な状況にある改憲派が、みすみすその優位性を崩す法改正に応じる可能性も非常に低い。その場合、護憲派はどうすべきか。手遅れになる前に、動き出すべき時に来ていると思う。

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

法務省、内閣官房が「テロ」の定義をしないまま法制化を進める共謀罪の真意

「共謀罪」──。なんともおどろおどろしい響きであるが、法務省によれば正式名称は「テロ等準備罪」ということに、今のところなっているようだ。2月28日の京都新聞は1面トップで「共謀罪」の全容が明らかになったと報じ、法案のポイントとして、
・犯罪を実行するために結合している「組織的犯罪集団」が対象
・現場の下見や資金・物品調達などの「準備行為」が要件
・死刑や10年を超える懲役・禁錮を定めた罪で共謀した場合の法定刑は5年以下の懲役・禁錮
を挙げている。また「犯罪実行前に自首した場合は刑を減免する規定を盛り込む」予定だという。要するに「チクれば罪を軽くしてやるよ」ということか。

しかし、それ以前に世間知らずの私は、「テロ」の正確な定義を理解できていない。「戦争」と「テロ」の違いは何か、「ゲリラ」と「テロ」の違いは何か、「集団リンチ」と「テロ」の違いは何か……。

◆法務省刑事局に「テロ」の定義を聞いてみた

そこで法案の作成にあたっている法務省刑事局に電話で聞いてみた。電話口に出たのはやや中京地域の訛りがあるアンドウという若い声の男性だった。

―― 「テロ」の定義や概念について教えてほしいのですが。
アンドウ氏 法務省は現段階で『テロ』の定義を持っていません。

―― え! 国会でこの法案については今法務大臣なども答弁されていると思うのですが。
アンドウ氏 まだ法案の作成段階なので、中身については決まっていません。

―― 新聞に「共謀罪の全容が明らかになった」と報道がありますが、まだ法案の作成段階なのですか?
アンドウ氏 まだ閣議決定をしたわけでもありませんし、法案を提出したわけでもないので……。

―― 閣議決定をしたわけではない、ということは法案の原案が出来上がっているということではないのですか?
アンドウ氏 そうですね。こちらでは詳しくわからないのですけれど。

―― この法案は議員立法ではありませんよね。ということは閣議決定待ちならば、もう提出予定の法案が出来ていないとおかしいのではないですか?
アンドウ氏 そうですね。

―― あなた、さきほどはまだ「作成中」だと言われましたが、間違いですね?
アンドウ氏 そういうことになりますね。

―― もう一度伺いしますが「テロ」の定義とはどのようなものでしょうか? 「テロ特措法」というのは既にあるわけですからその定義を教えて頂きたいのですが。
アンドウ氏 テロ特措法はこちらの管轄ではなく内閣官房の担当なので、そちらにお聞きいただく方がよいかと思います。

―― でも既に「テロ等準備罪」の原案は出来上がっているわけですよね?
アンドウ氏 そうですね。ただ、まだこれから変わる可能性もありますので。

―― 原案段階では国民に内容を開示して頂けないということですか?
アンドウ氏 まだこれから変わり得るものですので……

というわけで、「知らぬ存ぜぬ」の一点張り。でも「共謀罪」の原案がすでに作成されていることくらいは素人にもわかる。アンドウ氏は役職上、知り得なかったか、もしくは知っていても私には教えて頂けなかったかのどちらかであるが、新聞記者は詳細を知っているのだから、ふざけた話である。

しかし、驚いたのは「テロ」について法務省が「定義や概念を持っていない」と堂々と回答したことである。

◆内閣官房にも「テロ」の概念を聞いてみた

「テロ特措法」を管轄する内閣官房に聞いてくれと流されたので仕方なく内閣官房に聞いてみた。代表番号に電話をかけて「テロ特措法」を担当している部署につないでくれと告げると、かなり待たされたあとに、ドスのきいた声の男性が電話に出てきた。

「テロ」の概念を知りたい旨告げると、「それはこちらの担当ではなりませんね」という。「法務省に聞いたら内閣官房の担当だと言われたのでこちらに聞いたのですが」というと「『事態室』の担当でもありませんし、他省庁の担当ではないでしょうか」と回答が帰って来た。内閣官房には「事態室」なる部署が置かれていることを不勉強な私は知らなかったが、これはこれでまた驚いた。

◆「事態室」って何だ?

「事態室」は「周辺事態」=「周辺有事」=「戦争」を想起させる。念のため再度内閣官房に電話をかけて正式名称を尋ねたら「(事態対処・危機管理担当)付室」というそうだ。しかし不思議なことにこの「(事態対処・危機管理担当)付室」は内閣官房の組織図には掲載されていない。

別のページでは説明があるが、やはり怖い部署であることに変わりはないようだ。

役所で頻繁に経験する縦割り行政(あるいはそれをを盾に取った)による、責任転嫁、たらいまわしをされた挙句、予想通り「テロ」の定義や概念を行政機関から教えてもらうことは出来なかった。

これ「自体」が実に恐ろしいことではないか? 定義も概念も曖昧に「テロ」という言葉が使われているが、行政機関によれば「その定義はない」もしくは「どこかほかの省庁」しか知らないのだ。曖昧にして極めて高圧的な殺し文句である「テロ」。「テロ」の語感は決して、緩やかだったり、安穏としていたりはしていない。内容は不確かであるけれどもどこかに「のっぴきならない事件」、や「衝撃」の感覚を含んでいるように私は感じる。だから「テロ防止」といえば、大方の人が理由なく黙って従うのだ。

首都圏で電車やバスに乗れば、1年中「テロ特別警戒中です」のアナウンスが流れている。あれだ。毎日毎日「のっぴきならない」単語を聞かされているとそのうち耳が慣れてしまう。そして不確かな語彙に無感覚に従うようになる。

国自体が明らかにできない「テロ」は妖怪のような言葉で、どんな行為にでも拡大解釈できるだろう。法案の内容を論じる前に体がすくんでしまった。

◎[参考資料]「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
(朝日新聞2017年3月1日付より転載)

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の全容が判明した。対象は91の法律で規定した277の罪。政府の分類では、「テロの実行」に関するものはこのうち罪にとどまる。277の罪名は次の通り。

【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚せい剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃砲刀剣類所持等取締法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【航空機の強取等の処罰に関する法律】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】無許可廃棄物処理業等
【火炎びんの使用等の処罰に関する法律】火炎びんの使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質による強要行為等の処罰に関する法律】人質による強要等▽加重人質強要
【細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律】薬物犯罪収益等隠匿
【絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン等による人身被害の防止に関する法律】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器の移植に関する法律】臓器売買等
【スポーツ振興投票の実施等に関する法律】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産の流動化に関する法律】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律】海賊行為
【クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

ともに思想家で武道家でもある内田樹と鈴木邦男が、己の頭脳と身体で語り尽くした超「対談」待望の第二弾!!『慨世の遠吠え2』
残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

森友学園・塚本幼稚園の尋常でない表彰歴が意味するものは何か?

塚本幼稚園twitter(2013年2月18日)より
塚本幼稚園HPより

文部科学省初等中等教育企画課によると、塚本幼稚園ならびに籠井理事長が運営していた幼稚園関係者3名が文部科学大臣優秀教員に表彰されていたことが判明した。

そもそも文部科学大臣優秀教員表彰は2006年第一次安倍政権時代に発足した制度である。2006年は教育基本法が大幅に改悪された年でもあり、それに付随して導入された教育現場へのアメとムチともいえる。この表彰に当たっては文科省から全国の都道府県に推薦枠の割り当てがあり、国公立、私立学校(幼稚園から高等学校)別に人口比により推薦枠が割り当てられるという。私立学校については各県最低1名から大阪府では10名程度、東京都ではその倍程度の推薦枠が与えられているという。

塚本幼稚園HPより

森友学園(塚本幼稚園)の被表彰者は2008年と2012年に各1名、2008年には学校法人は違うものの籠井氏が理事長を務めていた「南港さくら幼稚園」(当時の名称)からも表彰を受けた人物がおり、実質的にこの問題にかかわった幼稚園教諭から3名が表彰されていたことになる。

文科省初等中等教育企画課によると、前述の通り私立学校への推薦枠は各都道府県1名から10数名とのことであるが、実際に推薦された人数は制度発足以来年ごとに、おおよそ40名前後であったそうだ。そうすると2006年の表彰制度発足から昨年までおおよそ400名の表彰候補者がいたという計算が成り立ち、その中から3名の「森友学園」関係表彰者が選ばれていたことになる。ちなみに受賞者のうち2名は2008年(自民党麻生政権時代)の表彰であり、残り1名は2012年(民主党野田政権から安倍政権へ移行した年)の表彰である。

単純計算で100倍以上の競争率をかいくぐり表彰を得ているのが「森友学園」の幼稚園教諭だということである。文科省初等中等教育企画課は「あくまで全国から推薦された先生を文部科学大臣が選考するものです」と回答してくれたが、文科省の方の口調は「森友学園」については突き放している印象を受けた。

瑞穂の國記念小學院HPより

どう考えても異常な割合だ。否、「異常な制度だから、当たり前」という人がいるかもしれないが、それにしても文科省をも包み込んだ1幼稚園(実質2幼稚園だが経営者は同じ)の受賞劇としては、あまりにも極端な数字にすぎるのではないだろうか。

2月28日森友学園に電話取材を行い「4月から瑞穂の國記念小學院は発足されるのでしょうか」と尋ねたところ「はい、認可を得ているので間違いありません」と電話口に出た女性は答えた。

認可は下りてはいない。現場で働く方のご苦労を考えながらも「安倍首相がんばれ! 安倍首相がんばれ!」と園児に洗脳教育を行っていた教育機関としては、当の安倍首相とともにしかるべき「責任」をとっていただきたいものだ。


◎[参考動画]福島伸享(民進)の質疑(2017年2月27日衆院・予算委員会)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

ともに思想家で武道家でもある内田樹と鈴木邦男が、己の頭脳と身体で語り尽くした超「対談」待望の第二弾!!『慨世の遠吠え2』
残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

《本間龍18》国民投票で何が起きるか(1)広告宣伝で与党が有利な8つの理由

2月13日、参院議員会館で「国民投票法の改正を求める会」の集会が開かれた。長きに渡り、世界各国の国民投票を取材されてきたジャーナリストの今井一氏が主催する会で、私も出席して意見を述べた。

法改正を求める、などというと何だか難しいことをやっているようだが、このままの国民投票法で投票を実施すると、あまりに不公平なことになるから法改正すべきだという提案で、要求は実にシンプルだ。

◆大抵の法案は通ってしまう与党絶対多数への危惧

2月13日「国民投票法の改正を求める会」集会の告知

国民投票法は2007年に施行された法律で、その実施は細かく規定されている。現状では、護憲派はまだ機が熟していないとして憲法審査会での引き伸ばしを図っているが、実際は国会発議に必要な3分の2以上の議席を与党(改憲派)が握っているのだから、現実的に言えば、明日国会発議があっても通ってしまう状況にある。秘密保護法もカジノ法案も野党は絶対阻止と言っていたが、成立した。与党が絶対多数を握っていれば、大抵の法案は通ってしまうのだ。

現行の国民投票法最大の問題点は、国民投票運動期間における広告宣伝に関して、「投票日から14日以内のテレビCM放映禁止」以外は、ほぼ何の制約もないことにある。

広告宣伝に投入できる資金の縛りすらない。つまり、カネのある方は期間中無制限に広告宣伝を打てるのに対し、そうでない方はメディアで何も主張できないことになる。

◆衆参選挙の対メディア宣伝費はおよそ100億円

もう少し具体的にいうと、国民投票が国会で発議されると、そこから最低60日、最長180日間の「投票運動期間」となる。衆参の選挙運動期間が約2週間なのに対し、かなり長い。そしてこの運動期間中、賛成・反対派共に、あらゆるメディアで無制限に広告を展開できることになっているのだ。

ちなみに、衆参の選挙でメディアに投入される宣伝費は100億円程度(選挙公営からの拠出の他、各政党独自の広告費を含む)であるから、少なく見てもその4~5倍のカネが投入されることになるだろう。

このように書くと、改憲派・護憲派双方が自由に宣伝合戦できるならいいではないか、と錯覚しがちだが、ことはそんなに単純ではない。なぜなら、予想される国民投票は与党(自民・公明)が主導し、好きなようにスケジュールを組み立てられる。つまり、広告宣伝における「メディア戦略」を早くから構想し、自分たちに一番都合の良いように展開できるからだ。では具体的に、どのようなことが起こり得るのか列挙してみよう。

《1》 改憲派は自民党を中心に結束して宣伝戦略を実行し、最初から電通が担当することが決まっているのに対し、護憲派はバラバラで何も決まっていない。改憲派は国会召集以前から周到なメディア戦略を構築することが可能である。

《2》 改憲派は国会発議のスケジュールを想定できるのに対し、護憲派はあくまで発議阻止が大前提のため、国会発議後にようやく広告宣伝作業を開始する。この初動の差が非常に大きい。

《3》 改憲派は自民党の豊富な政党助成金、経団連を中心とした大企業からの献金を短時間で集めて広告宣伝に使えるのに対し、護憲派は国民のカンパが中心となると思われ、集めるのに時間を要する。さらに、集まる金額も桁が違うことが予想される。広告代理店とメディアは支払い能力の有無を厳しく査定してから広告を受注するので、ここでもタイムラグが生じる。

《4》 改憲派は電通を通じて発議までのスケジュールを想定して広告発注を行い、TVCMのゴールデンタイムをはじめあらゆる広告媒体(新聞・雑誌・ラジオ・ネット・交通広告等)の優良枠を事前に抑えることが出来る。その際、電通は「自動車」「家電」などのダミーネームで広告枠を抑えるため、護憲派は察知できない。発注が遅れた護憲派のCMや広告は、視聴率などが低い「売れ残り枠」を埋めるだけになる可能性が高い。

《5》 もし投票日が発議後60日後の最も短い期間になった場合、改憲派は事前準備して発議後翌日から広告宣伝をフル回転(広告を放映・掲載)できるのに対し、護憲派がTVCMなどを放映開始できるのは(制作日数を考慮すると)どんなに早くても2~3週間後となり、その間は改憲派の広告ばかりが放送・掲出されることになる。この初動の差を埋めるのは至難である。さらに週刊誌や月刊誌などへの広告掲載は既に優良枠を買い占められて、ほとんど何も掲載できないまま投票日を迎える可能性すらある。

《6》 改憲派は雑誌関係でも国会発議予定日に照準を合わせ、「国民投票特集」のような雑誌タイアップ本、ムック本・新書・単行本の企画・発売を計画できるが、護憲派にそんな時間的余裕はなく、書店店頭は改憲派関連書籍によって占拠される。

《7》 改憲派は豊富な資金に物を言わせて大量のタレントを動員し、出演者が毎日変わる「日替わりCM」も制作可能。老若男女に人気の高いタレントや著名人をターゲット層に合わせて出演させ、「改憲YES!」「改憲、考えてみませんか」と毎日語りかける演出が出来る。

《8》 改憲派は国会発議のスケジュールに合わせて自前の番組枠を持つことも可能だ。MXテレビの「ニュース女子」のように、スポンサーが資金を出して制作プロダクションに番組を作らせ、テレビ局に持ち込む方式にすればよい。国会発議後、民放深夜枠やBS・CS放送の時間枠を買い切れば十分可能。

というように、初動の遅れが護憲派に壊滅的打撃を与える可能性が非常に高い。仮に護憲派が相当な資金を集め得たとしても、それを使う場所が全て事前に抑えられていたら、どうしようもないのだ。総金額で同じ広告費を投入しても、視聴率の低い時間帯にいくらCMを流しても無駄だし、購読率の低い雑誌や新聞の広告枠をいくら大量に買っても、やはり意味がないのである。

さらに、ことは広告宣伝だけに止まらない。巨額の広告費投入は、クロスオーナーシップで構成される日本の報道現場にも、大きな影響を与える可能性が高い。そこで何が起きるのかは、次回で解説しよう。

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』