公園を出ようというところで電話が鳴る。弁護士事務所の事務の女性だ。
「離職票を発行するにあたりまして、先に解雇通知をお送りします。住所は××市でよろしいですか?」
「いやよろしくないよ。解雇の日付はまだ決まってないんだから。いつの日付で通知出そうとしているんですか。8月末なんて認めませんよ」
「でも、8月末で決まったとのお話でしたが」
「決まってないって言ってるの。会社と社員の合意がなければ、解雇は出来ないはずでしょう。私も、他の社員も8月末に辞めていないんだから」
「既に合意されている方もいらっしゃいまして……」
社長が逃げて早々、会社に来なくなった社員が数名、8月末で合意して解雇通知を受けたという。複雑な感情が湧いてくる。何故そんな簡単に、労働対価を放棄するのか。どうせ支払われないと思って、早めに失業給付を受け取ることを選んだのか。それとも既に、どこかのツテを頼って再就職でも決まって、さっさと縁を切ることにしたのか。

僧侶にはやはり、慈愛があった?
傷痍軍人。今はほとんど使われない言葉だ。戦争による戦闘によって、障害を負ってしまった軍人である。
私が小学生であった頃、1960年代。傷痍軍人が施しを求めるているのを見かけることが、稀にあった。
家の近くのちょっとした丘があり、公園になっていた。
傷痍軍人が座して、前に缶を置き、施しを求めていた。今のように義足の技術が発達していない。膝から先は、むき出しの金属の棒だった。
一緒にいた母は、私に耳打ちした。
「ああいう人にだって、できる仕事はあるはずだ」
なんの施しもせずに、母は通り過ぎた。
電子書籍による個人出版はどうなんだ!? 企業と揉めたライター奮戦記 5
その後の榛野氏とのメールもおかしな部分はあった。
『両作品とも若い方が書いている感じがしました。出版にあたり、お互いを守る為のお約束事などを話さなきゃいけないと思っています。簡単に言うと契約ですね』
このメールを読み、芳川氏は私の個人情報を一切話していないのだと思った。確かに作品の主人公はどちらも若い。そして、直してはいるが書いた時期は3年ほど前のものだ。だが、それだけで相手の年齢を決めつけている感じがした。
私のことをいくつぐらいだと思っているのだろう。確かに私は20代後半なので、若い方だとは思う。
とはいえ『お互いを守る約束事などを話さなきゃいけない』というような言い方は、10代……いや小学生に話すような物言いだ。そこまで稚拙な作品であったのかと当時はショックを受けた。『契約書に承諾頂いてからの販売となります』だけで良いのではないだろうか? とも思ったものだ。だが、榛野氏に本を読む能力など全く無いことは少しずつ分かってくること。若い子を描けば若い人が書いているぐらいにしか思って居ないのかもしれない。
社員株主が総会屋の代わりを務める、フジHD株主総会
6月27日、株式会社フジ・メディア・ホールディングスの株主総会が、台場駅近くのホテル日航東京で行われた。
総会開始に先立って、反リストラ産経労(労働組合・反リストラ・マスコミ労働者会議・産経委員会)と支援者によって、ビラ撒きやアピールなど宣伝活動が始まる。
ホテル日航東京入り口近くには、「フジ・メディアHD」の札を下げた、スーツ姿の男性達が横に並んでいる(写真)。彼らはなんのためにいるのだろうか? 時折、カメラをこちらに向けて写真を撮る。まるで、集会やデモの時の公安警察のようだ。
参加する株主たちは、次々にビラを受け取っていく。やはり投資家たちにとっても、会社がどんな問題を抱えているのかは、気になるところだ。
サッカーの「コン・フェ・デ杯」で日本が惨敗した理由
日本チームがブラジル、イタリア、メキシコと無惨にも3連敗し、アジアチャンピオンの誇りもなくとっとと予選負けした「コン・フェ・デ杯」。3試合で合計9点もとられる守備の甘さが指摘されている。
「問題は、ザッケローニ監督が、何度うまくいかなくても3-4-3のシステムを試すからだろう。このシステムに日本選手はとまどっている。簡単にシステムを変更してついていけるほど、選手どうしの連携はよくない」(スポーツ・ジャーナリスト)
ミャンマーの『民主化』は本当か!? ヤンゴンで生活してみた 30
軍事政権が『民主化』の道を歩み始めて2年7カ月。ヤンゴンなどミャンマー(ビルマ)の一部都市は、流入する外国資本の影響で、急速に変化を遂げている。
ではミャンマーの人々が、万人の平等を目指す民主主義を理解し始めたのか。今のところ、答えは否、である。
彼らは、ミャンマー政府主導の市場開放路線と、限定的な『民主化』政策に沿って、柔軟に仕事の仕方などを変えている段階だ。民族平等、貧困撲滅、賄賂のない商業環境などを実現するには、長い時間をかけて人々の意識が変わっていくことが必要だろう。
フクシマの声を踏みにじった、東京電力・株主総会
東京電力は6月26日、実質国有化された“新生東電”として初めての株主総会を、国立代々木競技場第一体育館で開いた。脱原発派の株主から柏崎刈羽原発(新潟県)など所有する原発の廃止を求める提案を受けたが、広瀬直己社長は「運転再開に向け、一層の安全性向上の対策を確実に実施したい」と早期再稼働を目指す方針に固執した。
株主提案は、脱原発を求める内容など過去最高となる15件が事前に寄せられたが、東電側は全てに反対し、総会でも否決された。
社長が夜逃げ! あるIT企業社員の手記 (29)
昼に会社を出たものの、中途半端に時間が余ったので、渋谷の家電量販店をブラブラする。掃除機の調子が悪いことを思い出す。売り場見てみるか。でも収入の当てがなくなったし、買い物は控えるべきか。
掃除機売り場に自動掃除機なるものが置いてある。丸くて、フライパンの円形部分だけみたいなのが、床中を自動で動き回って掃除するものだ。以前、社長が突然購入して会社の床清掃に使い始めたことがあった。大して広いオフィスでもないのに。値段を見たら8万円と書いてあり、腹が立って店を出る。
最近は家に帰っても気持ちが閉じこもりがちだ。帰る気分になれず、ボンヤリと歩いているうちに宮下公園に入る。昨年だかに改修されて、大分綺麗になっている。以前はホームレスやら、食い詰めていそうなアーティストがパフォーマンスをしていたが、今は静かだ。平日の昼間だからかもしれないけれど。彼らはここを追われてどこへ行ったんだろう。なんて思っていたら、いた。髪も髭も伸ばし放題で、顔が赤茶けた色で汚れているホームレスが、ベンチに座ってパンくずのようなものを撒いている。そのためハトが多数、彼の周りに集まっている。
下手なお経を聞きながら
お堂へ向かうために起ち上がると、「お経はそんなに長くやりませんから」と住職は言って笑った。
さすが、ビジネス坊主。よく分かっている。遺骨を墓に入れるための立て前として行うだけだから、お経などはいらないのだ。元市役所勤めの、俗人坊主のお経など長く聞きたくはない。
その後に行う「偲ぶ会」のほうが意味があるので、早く終わらせてもらうに越したことはない。
親戚縁者がお堂に入り、読経が始まる。父親の遺骨は、高い壇に乗せられている。
父の人生とはなんだったのだろう。
小さな建築会社を倒産させた父は、経営者として敗北者である。
地道にコツコツと仕事をしていても、行き詰まる人はいるだろう。
父はそうではなかった。経営が上手く行っていない時でも、毎日のように小料理屋で呑み、噺家や役者のタニマチになり金を遣っていた。まったくの、放漫経営だ。
資金繰りに困ると、私たち子供から金を借りた。高校生だった時の弟から100万を借りて、返していない。
母の弟が建てた祖父母のための家を担保に入れさせる形で金を借り、半分ほどしか返していない。叔父は、家を手放すことになった。
まったく、同情の余地はない。
電子書籍による個人出版はどうなんだ!? 企業と揉めたライター奮戦記 4
まず、榛野氏にメールを送ってみた。榛野氏は芳川氏からどの程度、私の情報を聞いているのだろう。私のイメージの芳川氏は神経質な部分もあるように感じる。個人情報などで揉めたくないと思い、作品だけしか送っていないような気がする。その思いも含め、初めてのメールを送るうえで、簡単な自己紹介文と電子書籍の出版をしてくれるということに対してのお礼のメールを丁寧に送った。
この時点では、まだkindleについて良く知らない。
不信感を抱いている芳川氏の紹介ということで、豊穣株式会社と榛野氏についてのリサーチに気をとられkindleについてのリサーチを行っていなかったのだ。今から思えば、kindleについても調べておく必要があった。Kindle Direct Publishing(KDP)は『個人出版』である。個人出版というのは、環境と知識さえ揃っていれば、誰でも気軽に無料出版できる……そのことさえ気付いていなかった。手続きや表紙制作の手間などもかかるが、どれも個人でできるものであり、わざわざ会社を通して行うものではないということも知らなかった……個人出版という言葉の意味さえ分かっていなかったため、Y.Nコミュニケーション、豊穣株式会社の2社で行うというのも含め、大掛かりな事業だと思い込んだ。
そのため『商業出版』の一種だと思い込み、個人出版を代行するというだけであるのに、大変、丁寧なお礼のメール榛野氏に送ってしまった。今思えばこのメールによって、榛野氏は私がまだkindleや個人出版について詳しくないと気付いてしまったのだと思う。多分、榛野氏はそういった人物を求めていたのだろう。