京大バリストと「無期限停学」処分を考える《4》

 

Kさんの緻密な分析に、私はほぼ全面的に賛同する。唯一大学入学者の経済的背景は、かつての「日本育英会」が「日本学生支援機構」という名の学生ローン(サラ金並のえげつなさ)会社になったことから、第二種であれば誰でも「貸与」という名の借金を受けることが可能となり、国立大学だけでなく、学費がさらに高い私立大学へも保護者の年収が200万円代の学生も通うことが珍しくなくなった。

非正規雇用の爆発的増大や、家族構成の変化といった社会的要因と、大学側の変化(学費高騰)が歪な形で結びついてしまい、結果として卒業後間もなく「借金の返済」に追いまくられる若者は急増している。気が付いたら400万~500万の借金を背負って大学を卒業していた、という悲劇は、30歳を待たずに自己破産をするという結末を既に産んでいる。

このように学生が大学で「普通に」学べない、「学ばさない」状態に陥れた理由の根源はKさんがご指摘の通り、「教育社会秩序の帝国主義的再編」が進んだことに他ならない。その咎人は枚挙にいとまがないが、とりわけ「小人閑居して不善をなす」を職務規定としているかの如き「文科省」の罪は重い。この連中が大学に押し付けて来る法律、通達、指導は根源に国家による高等教育機関の完全掌握という目的があることは明白ながら、他省庁と比較して「旨み」の少ない「文科省」(旧文部省)官僚の歴史的悪癖と言える。

従前、一応健全な私立大学経営者や国立大学の教員は、文科省のその様な性質を熟知しており、それなりの葛藤や、場合によっては一触即発という事件すら時には起きていた。しかし「一般教育の大綱化」に端を発する、一見大学に「カリキュラム編成上の自由を与える」ように見せかけて、他方では「自己評価自己点検」という全くの愚策を強要し始めた頃から、文科省の「不善」振りは際限が無くなった。国立大学を「法人化」=半民営化し、独自の資金調達を強いたことが、今日の年額54万円という学費の高騰に繋がっている。大学は、とうに「自主」や「自治」の精神など忘却の彼方といった有様であるから、文科省への抵抗など今日は皆無と言って過言ではないだろう。

それだけではない。昨年は東大が事実上の「軍事研究解禁」を宣言し、日本学術会議も「軍事研究」取り扱いの見直し(おそらく詭弁を弄して、「結果解禁」の結論を出すだろう)に着手。既に防衛省は各大学に研究資金をばら撒き始めた。

「科学技術の進歩は不可逆だが、人類の歴史は可逆である」と述べた先人が居た。
現在私たちは、まさに「逆行する歴史」を目の当たりにし、そのただ中に置かれている。その事を顕著に示すのが大学の現状だ。京大の持つ「自由」な学風を一瞬で吹き飛ばす猛烈な台風、中心気圧800ヘクトパスカル、最大風速90m級の化け物台風が接近している。気象庁の発表する天気図には表れないが、文科省が連発する「不善」の集合体がファシストたちの立ち上げる気炎と相まって勢いを増す悪質のエルニーニョとなり、文科省外部秘の「教育行政天気図」は、はっきりと巨大台風接近を示している。

 

巨大台風の接近は京大においては、熊野寮、吉田寮と西部講堂を吹き飛ばし、サークルボックスも跡形もなく消滅する。囲碁や歌舞伎、吹奏楽といった非政治的なサークル以外は台風通過後も再生することはない。勿論IPS研究所は巨大台風にびくともしなかっただけでなく、熊野寮跡地に「遺伝子・万能細胞研究所」を新たに増設することになる。この施設の資金提供には世界中の名のある企業が手を上げたが、結局内閣調査室と防衛省の直系という極めて例外的な研究所が誕生する。

その図は私の錯視だろうか。「バリスト」の肉感と響きが反響に次ぐ反響をもたらす日は可能だろうか。(了)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《冤死の淵で》荒井政男氏(三崎事件) 病魔に苦しめられながら訴え続えた無実

外部との交流を厳しく制限され、獄中生活の実相が世間にほとんど知られていない死刑囚たち。その中には、実際には無実の者も少なくない。冤罪死刑囚8人が冤死の淵で書き綴った貴重な文書を紹介する。4人目は、三崎事件の荒井政男氏(享年82)。

◆手記に滲み出る人柄

荒井政男氏は、1971年12月に神奈川県三崎市で食料品店の一家3人が刺殺された事件が起きた際、現場近くに居合わせたために疑われ、逮捕された。当時44歳で、横浜市や藤沢市で鮮魚店や寿司屋を営んでいたが、この時を境に運命が暗転したのである。

荒井氏は取調べで一度自白したが、裁判では無実を訴えた。実際、荒井氏の衣服に犯人なら浴びているはずの返り血が付着していないことや、現場に残された犯人の靴跡は荒井が履いている靴のサイズと異なることなど、荒井氏を犯人と認めるには矛盾が多かった。しかし荒井氏は1990年に最高裁で死刑確定し、再審請求中の2009年に82歳で獄死した――。

荒井氏は最高裁に上告していた頃、自ら上告趣意書補充書も執筆した

この間、荒井氏が獄中でどのように生きたかが記録された貴重な資料がある。支援団体「荒井政男さん救援会」が発行していた「潮風」という小冊子だ。これには、荒井氏が近況をしたためた手記が毎号掲載されていた。

荒井氏の手記は、いつも様々な人へのお礼や気遣い、ねぎらいが率直な言葉で綴られていた。

〈いつもパンフレットありがとう。救援、冤罪通信、やってないおれを目撃できるか、死刑と人権、ばじとうふうなどありがとう。甲山通信の山田悦子さんの無実勝利の闘いに獄中から熱い応援を送っていますよ。ごましお通信、利明さんの生きざまがわかります。よろしく伝えてね。フォーラム90のパンフは、死刑執行した後藤田正晴への抗議行動報告がびっしり埋まっていますね。とても力強く思いました。もう一人も殺させないようガンバリましょう〉(1993年5月15日記 潮風第12号より)

◆獄窓の鳥が支えだった

荒井氏の手記はこのようにいつも明るく、前向きな内容だった。とはいえ、死刑囚は外部との交流を遮断され、一日の大半を狭い独房で過ごす。その生活がいつ果てるともなく何十年も続く。そんな日々で荒井氏が心の支えにしていたのが、獄窓から見える鳥たちだった。

〈四月二十日ヒヨドリのピーコが、窓辺のしだれ桜の枝に止まって、四〇分近く唄っているのでいつものさえずりと少しちがうなーと思っていたところ、それがピーコのお別れの唄だと分かりました。翌日からヒヨドリ全員(十二羽位の一族)の姿が見られなくなった。どこかの寒い地方へ移動していったのでしょう〉(1994年4月27日記 潮風第16号より)

〈あのヒヨドリのピーコが今年も来てくれました。獄庭の木にとまってピーピーと高い澄んだ唄声を聴かせてくれます。とても心なぐさめられます〉
(1995年11月14日記 潮風第22号)

〈今日もスズメの親子が父さんの窓下に来て、ピイピイと子スズメを鳴かして父さんにエサのパンをくれというのです。けど、父さんはパンを持っていないのです(笑)〉
(1994年5月23日記 潮風第16号より)

〈父さんの窓庭のビワの木の実が鈴なりで黄色く熟して太陽の光に輝いています。何とムクドリの群れがきて半分ほど食べ散らかしていきました。そのおいしそうなうれしそうな姿にニコニコと見とれてしまいました〉(1995年6月17日記 潮風第20号より)

荒井氏は鳥たちと会話でもしているようなことを明るい筆致で綴っている。一見微笑ましい文章だが、鳥たちを心の支えにして途方もない孤独感と闘っていたことが窺える。

荒井氏が獄窓の鳥を心の支えに拘禁生活を送っていた東京拘置所

◆糖尿病で目も不自由に

獄中生活の後半、荒井氏は糖尿病に苦しめられた。しかし、闘病生活のことすらも明るく綴るのが荒井氏流だった。

〈血糖値が一一七でした。こんな数字になったことは近年にないことですから、父さんもやったーと、うれしく思いました。この告知をしてくれた看守氏もびっくりして共に喜んでくれました〉(1994年11月17日記 潮風第18号より)

しかし、併発した網膜症により視力が次第に衰えていくと、手記では、目の状態を嘆く記述が目立つようになる。

〈文庫本文字がすごく見づらくなりました。右目だけで読むのも疲れて視力が落ちたのではないかと思います。医務に診察を申し込みます〉(1994年12月1日記 潮風第18号より)

このように病魔に苦しむ中、荒井氏は強い憤りをあらわにすることもあった。それは、他の死刑囚が刑を執行された時だ。

〈十二月七日に妻と長男が面会にかけつけてくれた意味が一二月一日に(筆者注:他の死刑囚2人が)虐殺されたことについての緊急面会だったことがわかりました。二人も殺されたことは今日のパンフやビラを見て初めてわかった訳です。だからショックが大きいので、眠れませんのでこれを急いで書いています。もう夜中です。紙数も終りです。なんとしても三崎事件の再審を開始したいものです。無実なのに殺されてたまるか〉(1994年12月15日記 潮風第18号より)

無実なのに殺されてたまるか――。この最後の一文に、何物にも代え難い真実の響きを感じるのは、私だけではないはずだ。

◆遺族が受け継いだ雪冤への思い

荒井氏は結局、生きているうちに再審無罪の願いは叶わなかった。2009年9月3日、病気を悪化させ、東京拘置所で82年の生涯を終えたのだ。

しかし、荒井氏が亡くなってわずか25日後の2009年9月28日、今度は娘さんが請求人となり、第2次再審請求を行った。現在も雪冤を目指す戦いは続いている。(了)

※書籍「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)では、ここでは紹介し切れなかった荒井氏の様々な遺筆が紹介されている。

【冤死】
1 動詞 ぬれぎぬを着せられて死ぬ。不当な仕打ちを受けて死ぬ。
2 動詞+結果補語 ひどいぬれぎぬを着せる、ひどい仕打ちをする。
(白水社中国語辞典より)

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

 「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
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京大バリストと「無期限停学」処分を考える《3》 Kさんの書簡より

 

(前回に引き続きKさんの書簡より)

ここで問題となった。バリストの実態をみてみよう。
まずこのバリストだが、同学会のほぼ実態である京大の中核派が全国の拠点から活動家を集めて京大吉田南、かつての第三高等学校の跡地に或る教育用の一棟を入り口を立て看板やテーブル椅子などでバリケードをつくり入場できないようにしたものです。時間的にはせいぜい2コマ程度なのでしょうか。別段器物損傷、暴力行為、暴言などがあったわけではありません。大学の告発内容も授業妨害、業務妨害となっています。

経験的にはこの程度のことで刑事責任を問うのか京大よ!と言う感じです。70年当時の状況をこの基準でいけば毎年何百人という退学処分を出すことになりますね。バリストの理由は反戦ですが、其の本当の原因は、当局がこの数年間、同学会を含めて学生との対話を一方的に形骸化させてついには廃止し始めた事にあります。勿論このことは学生自治を最終的に葬り去ろうとする文部科学省の指示による事は間違いないでしょう。

2012年に中核派とノンセクトが休眠状態だった同学会を手続に則り再建したにもかかわらず当局は、既に実態が消滅した同学会が存在すると強弁して同学会を学生の団体と認めず同学会との話し合いを拒否してきました。またその数年後に社会思想系のサークルの非公認化を画策してきた。この策動は学生たちの力で阻止されました。

詳細:https://sites.google.com/site/protectclubact/home/zong-ren-jia-cheng-ren-qu-xiao-wen-tino-ji-lu

そもそも学生運動は戦後に占領軍により復活されて、憲法23条でその意義自体は認められが、その後の展開で学生自治は個別の法的根拠を得られなかった。このため学生は何事も実力と交渉で勝取るスタイルが歴史的にとられてきた。勢力が盛んなうちは良いが、一度衰退に向かえば時間的に余裕の或る当局が学生を追い詰めていくことになる。1980年代以降同学会の形骸化、背景にある社会主義勢力の国内外での凋落がこの動きの拍車をかけました。今回はまずは社会的に評判の悪いセクト,次は赤いサークル,最後は自主管理寮と手をつけてくるのが政府の作戦なのだろう。

◇教育学園闘争の社会的意味

少し変な表現だが、学生時代に言っていた「教育社会秩序の帝国主義的再編阻止!」がいかに重大な主張であったかを、最近実感するようになりました。大学をいくつか散策してもまるで砂漠の中を歩いているようです。タテ看もビラもなく、ガードマンが黙々と交通整理をしているだけです。学生さんたちも授業に縛られて生気に乏しいようにみえます。69年から70年のキャンパスが祭りだったと言う人もいます。全共闘運動が崩壊して支配層がまず手をつけたのは、学園からの批判的勢力の一掃でした。72年の学費値上げから大管法で、少しは残っていた学生運動は全国的に 窒息させられた。京大の学生運動も77年の学内派の懐柔と竹本処分断行により衰え始めた。

これらの文部省支配の攻勢はやがて教授会自治そのものにおよび、学園内でのリベラル派は次第に追い詰められて今日に至っています(2004年には国立大学法が施行され、2014年8月には学校教育法および大学法人法の改定に関する通知が出ました。通知は完全に教授会が無力化されて、学長に権限が一極集中していて、実質は官僚が全権を掌握する内容だった)。

さらに重大なことはこの変化自体が社会に重大な変化を起こしてきて今日に至ったということだ。当時私は基本的には社会改革への手段としてこのスローガンを理念的にしかとらえていなかった。繰り返しになるが学費は我々の頃、国立大学は月に千円だったのだからその後最終的には物価と比較して10倍になるとんでもない値上げが行われた。結果として大学では国立も私立も 豊かな家庭の子弟が多くなり、学園の多様性は減少していくことになった。学生も大きく変わっただけでなく、社会全体での流動性も失われていくことになった。このことの意味は大きくほとんどすべての社会的政治的事項に関係すると言っても誇張ではないでしょう。権力に批判的などの勢力も次第に抑えられてしまった。大学はボデーブローで追い詰められた。この動きは今も継続している。いずれにせよこの後どのようなものであれ社会改革には若く、創造的な人材が十分に必要だ。学園の自治と自由が復活することが必須の課題だ。学生の多様性が失われてきていることは 長い目で見れば、国民の力が大きく損なわれていくことになる。このままではその傾向がますます著しくなる。大事業をなすには多彩な人材が必要だ。「京大」をつぶしてはならない。

 

本件(バリストによる「無期停学処分」)は別段京大または学校関係者だけの問題ではありません。
とりあえず ともし火を守りましょう。どこででも良いですから 創意工夫を凝らし 処分反対の声をあげよう。
定形、不定形を問わず 決議や討論を全学、全国民に公開しましょう。
また教育的配慮として非公式に運動からの離脱と、学費の処分中の継続的支払いを条件に、処分の解除を検討する可能性を示唆した。これに対して同学会は反対声明をだし、反撃を宣言した。(以上Kさんからの書簡より)

(つづく)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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「非経済的」で「非人道的」な原発に真っ当な憤激を!『NO NUKES voice』第9号

◆「もんじゅ」も福島も国民負担──いつまでもなにを眠たいこと言うとんねん!

福井県小浜市明通寺の中嶌哲演住職。滲む憤りや悲しみの情感に、胸が痛む(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

「管理上の相次ぐミスで停止中の高速増殖原型炉『もんじゅ』(福井県敦賀市)について、現行計画に基づいて今後10年間運転する場合、国費約6000億円の追加支出が必要になると政府が試算していることが8月28日、分かった。既に約1兆2000億円をつぎ込みながら稼働実績がほとんどなく、政府は菅義偉官房長官の下のチームで、廃炉も選択肢に含めて今後のあり方を慎重に検討している」そうだ。

また、「東京電力福島第1原発事故で掛かる除染や廃炉、損害賠償などの費用のうち、国民の負担額が2015年度末までに4兆2660億円を超えたことが8月28日、分かった。日本の人口で割ると、1人3万3000円余り。東電は政府にさらなる支援を求めており、今後も拡大する見通しだ」らしい。

ちょっときつめの関西弁で表現すれば、「いつまでもなにを眠たいこと言うとんねん!」とでも唾棄されるだろうこのようなニュースを前に、私たち『NO NUKES voice』編集部は改めて、原発が避けがたく有する「非経済性」のみならず「非人道性」に憤激を抑えることができない。

“原発いらない福島の女たち”の黒田節子さん(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

◆正邪、善悪、犯人と被害者がひっくり返った現状が許せるか?

福島の事故現地に住む、あるいは避難した人びとが、相応に救済されるのであれば「1人3万3000円余り」の税金投入に異議を唱える気はない。でも全くそのようにはならず、被害者は切り捨て、復旧作業に携わる労働者からは多重請負による苛烈な搾取。

そしてあろうことか、事故を起こした東京電力が「黒字」を計上し、社員には高額なボーナスまで支給されている。どういうことなんだ。正邪、善悪、犯人と被害者がまるっきりひっくり返ったこの状態をあたかも、当然の図を見るように眺める為政者や東京電力の眼差しが、奇異でならない、許せないのだ。

座り込みを続ける斉間淳子さん。亡夫・斉間満さんは“原発の来た町”の著者として知られる(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

◆権利や命は闘い取るもの、「果報は寝て待て」では勝てはしない

事故が起きて原発の危険性が認識されたと思ったら「世界一厳しい規制基準」で「福島原発の汚染水は完全に湾内でコントロールされており、健康被害は、過去も、現在も、未来も起こらない」と言い放った、あの安倍首相の歴史的とも言える仰天演説は歴史によって裁かれることになるのだろうか。

いや、そんな時代を黙して待っている訳にはいかない。権利や命は闘い取るものであり、「果報は寝て待て」では勝てはしない。

◆「被曝を無視する(反)脱原発運動は、認識が不十分である」

『NO NUKES voice』第9号の特集は「いのちの闘い 再稼働・裁判・被曝の最前線」だ。私は多くの識者を取材する中で学んだことがある。それは「被曝を無視する(反)脱原発運動は、認識が不十分である」ということだ。本号でも小野俊一医師や井戸謙一弁護士、アイリーン・美緒子・スミスさんや全国の運動報告で指摘されている通りだ。

そこで冒頭の報道である。東電は4兆2660億円の国から(つまり我々の税金から)援助を得ておいて、「まだ足らない、もっとよこせ」と言っている。一民間企業である東電がなぜ倒産しないのか。健康被害の調査や対応にしっかり体制を整えているか。民間の例外的な診療所を覗いては皆無じゃないか。140人を超える若者が甲状腺癌手術を受けても「放射能との関係はありません」と。これが政府であり福島県の正式な声明だ。

日本で唯一稼働中の原発に運転差し止め判決を出した裁判官だった井戸謙一弁護士

◆多数の人々を殺し、追い込み、住む場を奪った東電が存続できる社会は公正か?

たとえば鹿砦社が資金繰りに困ったら国は無担保で金を「援助」してくれるだろうか。そんなことはありえないじゃないか。だから中小企業の経営者は月末、年度末に資金繰りに奔走するのだ。なぜ東電だけ特別扱いなのだ。多数の人を殺し、生活苦に追い込み、住む場所を奪った東電がどうして「特別扱い」を享受できるのだろう。私にはさっぱり理屈が解らない。

が、そのからくりを理解する鍵は『NO NUKES voice』第9号に織り込まれている。結構なページ数なので全てをお読みいただくのは少々骨が折れるかもしれないが、読者の皆さんには「ああなるほど」と首肯して頂けるに違いない。

まず知らなければ判断のしようもないし、自分の意見を持つことも出来ない。その一助になればと本誌を世に送り出した。私たちは何度も何度も同じことを伝え続けなければならないだろう。それほど簡単に世が激変するものではないことを知っている。先人たちも後ろ指をさされながら、多くの人びとに無視されながらも論を曲げず、数え切れないほど同じ話を繰り返してきた。その精神に真摯に学ぼうと思う。是非お手に取ってお読み頂きたい。

マイクを握る“伊方の家”の八木健彦さん。伊方反原発の中心的人物だ(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。


◎『NO NUKES voice』第9号・主な内容◎
《グラビア》
〈緊急報告〉最高裁が上告棄却! 経産省前「脱原発」テントひろばを守れ!
福島のすがた──双葉町・2016年夏の景色 飛田晋秀さん(福島在住写真家)
原発のある町と抗いの声たち 現場至上視点(3)大宮浩平さん(写真家)

《報告》持久戦を闘うテントから
三上治さん(経産省前テントひろばスタッフ)
《インタビュー》毎日の「分岐点」が勝負──脱原発への長年の歩み
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)
《インタビュー》脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の結集を!
菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)
《インタビュー》復活する原子力推進勢力 この国のかたち
吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

特集:いのちの闘い―再稼働・裁判・被曝の最前線

《インタビュー》稼働中原発に停止命令を出した唯一の裁判官 弁護士に転身しても大活躍
井戸謙一さん(弁護士)
《インタビュー》帰れない福島──帰還の無理、被曝の有理
飛田晋秀さん(福島在住写真家)
《インタビュー》ウソがどれほどばらまかれても被曝の事実は変わらない
小野俊一さん(医師、元東電社員)
《報告》原発作業とヤクザたち──手配師たちに聞く山口組分裂後の福島
渋谷三七十さん(ライター)
《報告》「原発の来た町」伊方で再稼働に抗する人たち──現場至上視点撮影後記
大宮浩平さん(写真家)
《報告》三宅洋平に〝感じた〟──参院選断想
板坂剛さん(作家・舞踊家)
《報告》みたび反原連に問う!
松岡利康(本誌発行人)
《報告》私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます
武石和美さん(原発避難者)
《報告》原発プロパガンダとは何か?(第7回) プロパガンダ発展期としての八〇年代と福島民報
本間龍さん(元博報堂社員、作家)
《報告》反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(8)
どう考えても、今のこの国はおかしいでしょう?
納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
《報告》原発映画のマスターピース 『一〇〇〇〇〇年後の安全』と『希望の国』
小林俊之さん(ジャーナリスト)
《提案》うたの広場 「ヘイ! 九条」
佐藤雅彦さん(翻訳家)
《提案》デモ楽――デモを楽しくするプロジェクト
佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
《報告》再稼働阻止全国ネットワーク 
原発再稼働を遅らせてきた世論と原発反対運動五年余 
熊本大地震の脅威+中央構造線が動いた+南海トラフ地震も心配

  『NO NUKES voice』第9号 8月29日発売! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線

3週間足らずで終わる五輪でなく100年続く原発事故を考える『NO NUKES voice』

 
本日発売開始!〈いのちの闘い〉『NO NUKES voice』第9号!

いよいよ今日!『NO NUKES voice』第9号が発売になります。今号も内容は盛りだくさんですよ。「被災地福島を忘れない」を合言葉にライター、編集部一同頑張りました!

◆唯一無二の脱原発雑誌へ

結局、予想以上の内容てんこ盛りになりました。有名な方だけでもアイリーン・美緒子・スミスさん、菅直人さん、吉岡斉さん、井戸謙一さん、小野俊一さん。自慢じゃないですがこれだけ幅広い人が一堂に反(脱)原発に集っていただける雑誌は『NO NUKES voice』だけじゃないでしょうか。2011年から2012年にかけては別冊宝島なんかも、結構一生懸命に原発関連のムックなどを出していましたが、その後さっぱりですよね。嫌韓の本にシフトしたりして、節操ないなーと思います。

でも『NO NUKES voice』はぶれません。巻頭を飾る報告がつい最近撤去されてしまった「経産省前テント広場」からの報告なんですから。夜の3時に強制撤去を行った行政権力は、昼間人々が行き交う時間に霞が関で暴力性を目撃されることを恐れたのでしょう。まさに、「寝込みを襲う」強制撤去でした。

巻頭グラビア「福島のすがた」より(飛田晋秀さん撮影)

原発事故からもうすぐ5年半です。詳しい技術者が口を揃えて「無理だ」と予想していた「凍土壁」は予想通り、凍りませんでした。「凍土壁案」は破綻しました。でもこれって、ゼネコンにお金を落とすために失敗することが分かっている工法をわざと採用したんじゃないでしょうか?

◆「福島のすがた」を撮り続ける飛田晋秀さん

今号では福島在住の写真家、飛田晋秀さんから「福島のすがた」を寄せて頂きました。任意の団体が発行する機関誌や会員誌以外に反(脱)原発を継続的に取り上げる媒体が見られなくなりました。

巻頭グラビア「福島のすがた」より(飛田晋秀さん撮影)

みんな忘れてしまったのでしょうか? リオのオリンピックで日本選手団は大活躍でした。見ていて楽しかったし感動しました。でも若い選手が「東京では是非金メダルを取りたい」というインタビューを聞くと何故か急に不安というか「さわさわ」した気分になりました。東京オリンピック……。
 
◆東京のインフラよりも福島の原発を!

できるんでしょうか? 東京オリンピック? 
やっていいんでしょうか? 東京オリンピック?
東北地方での競技開催も計画されていますが、それって事故隠しに利用されるってことじゃないですか?

巻頭グラビア「福島のすがた」より(飛田晋秀さん撮影)

何人の人達が現地で苦しい生活をしているのか。避難した人達への支援は来年の春で打ち切られようとしていますが、どうして勝手に加害者の東電や、国が決めるんですか?

原発とは関係ないけど、熊本地震の復旧も遅々として進んでいないじゃないですか?

「福島のすがた」を撮り続ける飛田晋秀さん

そんな中で「やったー! 内村団体も個人総合も金だ!」と私も喜んでいましたが、もう4年後が東京だと思うととても複雑な気持ちになりました。

そのことを今号で指摘して下さっている方がいます。どなたで、どのような内容かは本屋さんでお買い求めになってからページをめくってご確認してくださいね。

今号もかなりのボリュームですよ。岩波の「世界」や「文藝春秋」に重さは近づいてきました。内容? 絶対の自信ありです。夏休みの自由研究がまだ終わっていないお子さんがいらっしゃれば早速お求め頂いて、「原発の危険性」を保護者の方と一緒にあと2日で完成させてはいかがでしょうか。何よりも被曝の被害に敏感なのは若い人たちです。学校の先生も詳しく知っている人は少ないから、きっと注目浴びる事マチガイナシですよ!

さあ、お父さん、お母さん、御爺ちゃん、御婆ちゃん!
どなたでも結構ですから台風の風が強まる前に書店へ急ぎましょう!

(伊藤太郎)


◎『NO NUKES voice』第9号・主な内容◎
《グラビア》
〈緊急報告〉最高裁が上告棄却! 経産省前「脱原発」テントひろばを守れ!
福島のすがた──双葉町・2016年夏の景色 飛田晋秀さん(福島在住写真家)
原発のある町と抗いの声たち 現場至上視点(3)大宮浩平さん(写真家)

《報告》持久戦を闘うテントから
三上治さん(経産省前テントひろばスタッフ)
《インタビュー》毎日の「分岐点」が勝負──脱原発への長年の歩み
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)
《インタビュー》脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の結集を!
菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)
《インタビュー》復活する原子力推進勢力 この国のかたち
吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

特集:いのちの闘い―再稼働・裁判・被曝の最前線

《インタビュー》稼働中原発に停止命令を出した唯一の裁判官 弁護士に転身しても大活躍
井戸謙一さん(弁護士)
《インタビュー》帰れない福島──帰還の無理、被曝の有理
飛田晋秀さん(福島在住写真家)
《インタビュー》ウソがどれほどばらまかれても被曝の事実は変わらない
小野俊一さん(医師、元東電社員)
《報告》原発作業とヤクザたち──手配師たちに聞く山口組分裂後の福島
渋谷三七十さん(ライター)
《報告》「原発の来た町」伊方で再稼働に抗する人たち──現場至上視点撮影後記
大宮浩平さん(写真家)
《報告》三宅洋平に〝感じた〟──参院選断想
板坂剛さん(作家・舞踊家)
《報告》みたび反原連に問う!
松岡利康(本誌発行人)
《報告》私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます
武石和美さん(原発避難者)
《報告》原発プロパガンダとは何か?(第7回) プロパガンダ発展期としての八〇年代と福島民報
本間龍さん(元博報堂社員、作家)
《報告》反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(8)
どう考えても、今のこの国はおかしいでしょう?
納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
《報告》原発映画のマスターピース 『一〇〇〇〇〇年後の安全』と『希望の国』
小林俊之さん(ジャーナリスト)
《提案》うたの広場 「ヘイ! 九条」
佐藤雅彦さん(翻訳家)
《提案》デモ楽――デモを楽しくするプロジェクト
佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
《報告》再稼働阻止全国ネットワーク 
原発再稼働を遅らせてきた世論と原発反対運動五年余 
熊本大地震の脅威+中央構造線が動いた+南海トラフ地震も心配

  『NO NUKES voice』第9号本日発売! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線

『NO NUKES voice』第9号〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線!

8月5日の経産省前テント広場

連日最高気温が35度を超える「猛暑日」が続く今年の夏。3・11から5年が経過しても反(脱)原発運動の攻防は絶えることなく続いている。明日29日いよいよ『NO NUKES voice』第9号が発売になる。

◆持久戦を闘う──「経産省前テント広場」からの報告

猛暑に負けない「熱い」メッセージがこれでもか、これでもかと込められている。巻頭グラビアに次いで登場するのは、8月21日午前3時に突如「強制撤去」を余儀なくされた「経産省前テント広場」からの報告だ。

アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)

三上治さんの「持久戦を闘うテントから」は、「強制撤去」直前に寄稿された。最高裁判決を受け何時「強制執行」があっても不思議ではない状況で、「テント」を守り、闘い続けてきた方々の思想の奥行に触れることが出来る。テントが撤去されても闘いは終わらないことを強く印象づけられる、必読のレポートだ。

◆脱原発のための戦略──アイリーン・スミスさん、菅直人さん、吉岡斉さん

次いで登場するアイリーン・美緒子・スミスさんは水俣病に関わって以来、国内外で広く市民活動を担ってきた。米国スリーマイル島原発事故の後現地に入り、健康状態調査を行ったり、日本の原発についても長年反対運動に取り組んできた。彼女からは意外な視点が提供される。インタビューの表題「毎日の分岐点が勝負」にある通り、決して絶望しない、アイリーンさんの魂の強さを解き明かす鍵が語られる。また反原連と鹿砦社の問題について、第三者の立場から冷静な分析もなされている。

菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)

次いで菅直人元首相が本誌へ2度目の登場だ。6月に行われた菅氏の講演録が、「脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の集結を!」と力強い言葉で報告されている。事故当時の検証をいまだに続ける菅元首相は脱原発に向けた視野を欧州にも広げ、長期的に見れば「脱原発の戦いに負けはない」と断言する。その詳細は本誌で読者諸氏に直接触れて頂きたい。

九州大学教授吉岡斉さんは政府系の調査委員会などを数多く歴任した立場から、構造的にこの国の原子力行政が包含する問題点について俯瞰的なお話を伺うことができた。現時点日本における行政・電力会社を中心とした「原発社会」がどのように成り立っているかを理解するのに格好のテキストだ。

吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

◆日本で唯一稼働中の原発に運転差し止め判決を出した元裁判官・井戸謙一さん

そして日本で唯一稼働中の原発に運転差し止め判決を出した元裁判官で現在は弁護士である井戸謙一氏の登場だ。井戸氏からは原発問題は当然のことながら「裁判官の日常」や「司法改革」についての見解なども伺うことができた。

定年退官を待たずに弁護士へと転じ、物静かながら社会の矛盾を撃つ井戸弁護士の鋭利さは酷暑の中、心地よい知的清涼剤となろう。

◆福島と被曝の実態を暴くonodekitaさんこと小野俊一医師が本誌に登場!

ネットで絶大な人気を得ている医師小野俊一さんは個性的な発言が爆発。「ウソがどれほどばら撒かれても被曝の事実は変わらない」では、被爆の問題を中心に小野医師の最近の活動も報告される。

元東電社員から医師に転じた稀有な経歴の小野医師。菅元首相や東電の武藤・武黒(事故当時東電フェロー)への人物評価も容赦ない。そしてインタビューの最後は実に衝撃的な言葉で結ばれる。誰もが「そうなるのではないか」と頭をよぎったであろう、あの事態を小野医師は断言する。衝撃の結語も見逃すことはできない。

小野俊一さん(医師、元東電社員)

「原発作業とヤクザたち 手配師たちに聞く山口組分裂後の福島」はこの界隈の取材では定評のある渋谷三七十氏のレポートだ。他の寄稿とやや趣を異にした、しかしながらディープな現実の報告は「ヤクザ=悪」という固定化した観念で原発事故現場は動いてこなかったことを伝えてくれる。

写真家大宮浩平氏の「『原発の来た町』伊方で再稼働に抗する人達」が続く。8月12日に再稼働されてしまった伊方原発は避難計画の杜撰さや、熊本地震以降震源が中央構造線に移動しており、素人目にも「破局を招く」再稼働であることは明らかだ。

大宮氏は7月24日に現地で行われた再稼働反対集会に参加し、現地や全国から駆け付けた多くの人びとと邂逅し多くを学ぶ。大宮氏の真摯な姿が印象的な報告だ。

◆反原連としばき隊の欺瞞──松岡発行人が「みたび反原連に問う」!

さらに板坂剛さんの「三宅洋平に“感じた”」、そして近刊ですっかり『NO NUKES voice』名物となった感のある松岡発行人による「みたび反原連に問う」が続く。

鹿砦社vs反原連を含むしばき隊はもはや周知の事実だが、反原連HPに掲載された鹿砦社に対する名誉棄損書き込み削除に反原連は一向に応じる気配がないことから、またもや「松岡砲」出撃と相成った。願わくば原発同様、反原連の横暴も一刻も早く消えて欲しいものである。

原発事故被害による避難者「私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます」は原発賠償関西訴訟の原告でもある武石和美さんからの訴えだ。

岩波新書の衝撃作『原発プロパガンダ』著者・本間龍さんの連載では80年代の福島民報を大検証!

全国で原発賠償訴訟の原告は1万人を超えているという。大新聞やテレビはこの深刻な事態をしっかり報道しているだろうか。避難の困難さは避難者の数と同数存在し、どれもが同じではない。私たちもその事を決して忘れてはならないと胸に刻ませてくれる訴えだ。

◆衝撃作『原発プロパガンダ』著者・本間龍さんの好評連載は80年代の福島民報を大検証!

本誌ではおなじみ、元博報堂社員にして、「原発プロパガンダ」(岩波新書)の著者である本間龍さんは「原発プロパガンダとは何か」で福島民報の80年代を解析。

納谷正基さんは「どう考えても今のこの国はおかしいでしょう」とストレートな題で、高校生にラジオで語りかける優しさを備えながらきびしく現状を憂い、病巣にメスを入れる。納谷さんは冷静に怒っている。

引き続き常連の佐藤雅彦さん「うたの広場」。今回は「ヘイ9条」だ。新しい着想の「デモ楽-デモを楽しくするプロジェクト」でも佐藤氏の類い稀なる個性が爆発する。詳細は本誌をご覧頂きたい。

その他全国各地の運動情報も漏らすことなく満載だ。

締切りギリギリまで編集部が奔走し「多様性」確保を心掛けた、本号はこれまでよりもさらに、内容充実をお約束する。
発売は明日29日だ。迷わずお近くの書店へ!

40年以上にわたり伊方原発反対運動を続けて来た「八西連絡協議会」の横断幕(2016年7月24日大宮浩平撮影)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。


◎『NO NUKES voice』第9号・主な内容◎
《グラビア》
〈緊急報告〉最高裁が上告棄却! 経産省前「脱原発」テントひろばを守れ!
福島のすがた──双葉町・2016年夏の景色 飛田晋秀さん(福島在住写真家)
原発のある町と抗いの声たち 現場至上視点(3)大宮浩平さん(写真家)

《報告》持久戦を闘うテントから
三上治さん(経産省前テントひろばスタッフ)
《インタビュー》毎日の「分岐点」が勝負──脱原発への長年の歩み
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)
《インタビュー》脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の結集を!
菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)
《インタビュー》復活する原子力推進勢力 この国のかたち
吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

特集:いのちの闘い―再稼働・裁判・被曝の最前線

《インタビュー》稼働中原発に停止命令を出した唯一の裁判官 弁護士に転身しても大活躍
井戸謙一さん(弁護士)
《インタビュー》帰れない福島──帰還の無理、被曝の有理
飛田晋秀さん(福島在住写真家)
《インタビュー》ウソがどれほどばらまかれても被曝の事実は変わらない
小野俊一さん(医師、元東電社員)
《報告》原発作業とヤクザたち──手配師たちに聞く山口組分裂後の福島
渋谷三七十さん(ライター)
《報告》「原発の来た町」伊方で再稼働に抗する人たち──現場至上視点撮影後記
大宮浩平さん(写真家)
《報告》三宅洋平に〝感じた〟──参院選断想
板坂剛さん(作家・舞踊家)
《報告》みたび反原連に問う!
松岡利康(本誌発行人)
《報告》私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます
武石和美さん(原発避難者)
《報告》原発プロパガンダとは何か?(第7回) プロパガンダ発展期としての八〇年代と福島民報
本間龍さん(元博報堂社員、作家)
《報告》反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(8)
どう考えても、今のこの国はおかしいでしょう?
納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
《報告》原発映画のマスターピース 『一〇〇〇〇〇年後の安全』と『希望の国』
小林俊之さん(ジャーナリスト)
《提案》うたの広場 「ヘイ! 九条」
佐藤雅彦さん(翻訳家)
《提案》デモ楽――デモを楽しくするプロジェクト
佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
《報告》再稼働阻止全国ネットワーク 
原発再稼働を遅らせてきた世論と原発反対運動五年余 
熊本大地震の脅威+中央構造線が動いた+南海トラフ地震も心配

  『NO NUKES voice』第9号 8月29日発売! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線

「京太郎祭り」(角海老ジム)に見た40歳ボクサー、佐々木基樹の意地

◇S・ライト級8R

佐々木基樹(帝拳)× 岡崎祐也(中内)

8月2日に新宿フェイスで行われた角海老ジムの興業は暑さのなかでどれもエキサイティングな試合が展開された。ヘビー級ボクサーの前座とはいえ、かつて日本王者を極めた40歳の佐々木が2年半ぶりに復活。「左が伸びてくる」というランク8位の岡崎のパンチをことごとくかわしてまわりこみ、しのいで左フックや右フックをかまして、なんとか手数で岡崎を上回った。

佐々木は、「世界は無理だが、東洋や日本王者は狙える」として、長いブランクを経て復活した。

「こんな試合していたら日本を狙えへん」と、3-0の判定勝ちを納めたが、ご機嫌は悪いのなんの。

終了後に「今度は日本王者の岡田博喜がターゲットですね」というと、「当たり前やないですか」とご機嫌斜めだった。よほど、試合の展開が思いどおりにならないことが悔しかったのだろう。

それにしても、新宿フェイスのリングは狭いのなんの。それに、ふわふわとしているから、ボクサーは打ち合うしかない。

2Rでタオルを投げて勝った京太郎は、相手がクルーザー級なので、参考にもならない。主役の京太郎は、「来ていただいてありがとうございました」として次の試合は東洋太平洋王座かWBO王座を狙うとしているが「海外でやりたくない」という始末。

そんな風に主役が小さく見えたぶん、佐々木の戦いは、火花が散って会場を興奮のるつぼに巻き込んだ。

ただし、前座とはいえ、佐々木の試合は、まわりこんでパンチをかわしながら打つという点では、教科書のような試合だ。あとでじっくりとビデオを見て研究したいものだ。

「唯我独尊」がモットーの勝負師、佐々木は、なんと地下足袋でリングに登場、戦った。野武士のような男、佐々木基樹の今後にこうご期待あれ。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。

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京大バリストと「無期限停学」処分を考える《2》 熊野寮という特別空間

400名を超える学生が暮らす自治寮「熊野寮」には「自由」の空気が流れている。これだけの大所帯なので運営も一筋縄ではいかないだろう。社会や政治に強い興味のある学生も、そうでない学生も暮らす空間は、学生「自治」の最後の砦かも知れない。議論の中で私は「法政大学が監獄大学になるのに10年も要さなかった。京大は確実に権力からタ―ゲットにされていると思う。このまま行けば5年後この場所はないかも知れません」と懸念を述べた。この意見にはKさんも同意され、戦後経験したことの無い、弾圧と反動が今起こっていることについての認識で一致した。

 

議論は終息をみそうになかったが、頃合いを見て気を利かせた卒業生が缶ビールを差し入れしてくれた。熊野寮食堂に冷房はない。当日も扇風機が回っていたが滲み出る汗を抑えるまでの効果はなかったのでビールには助かった。懇談会はあらたまった「閉会」を宣言することなく「もう帰らんと家に着かれへんから」、「明日試験なので勉強して来ます」といって一人抜け二人抜け、また知り合いの顔を見つけた学生が、他の席に移動して行ったりで流れ解散となった。

この日驚いたのはKさんが実に多くの学生を良く知っており、またKさんも学生から認知されていることだった。ビールを数本開けた頃Kさんは「どうですか、この雰囲気は」と私に尋ねた。「いいですね。昔を思い出して懐かしいです」と私が答えると、Kさんは「ここにいた時代は、私の人生にとって何物にも代えがたいんですよ。ここで出会った友人たちが結局人生の中で最も重要な友人となりました」と隠し立てせず思いを語って下さった。

私はよくその気持ちが理解できるような気がした。ここで誤解を招かないように、Kさんの人となりについて若干触れておく必要があるだろう。Kさんは大学卒業後いくつかの企業で先端技術の関連業務に従事していた(現役時代は世界中を飛び回り先端技術者として世界にその名を知られていた)。定年後も独自でコンサルタント業をいとなんでいる。クライアントには海外の企業も多いそうだ。つまり彼は一般的な意味で「社会的に成功した」人物であり、仕事も趣味もない単なる「懐古主義者」とは全く異なる人物であることを強調しておく必要があろう(現役時代の収入は相当なものだったと想像される)。

そのKさんから思いを綴った下記の文章を頂いた。

京大正門には同学会やサークルの立て看板に混じって、ノンセクトの学生が出したと思われる立て看板が有った。「封鎖はオカシイ、でも停学処分はもっとオカシイ、学生に窓口がないなら実力行動は1つの手段だ」とありました。

1970年全共闘運動の終焉の年に京大に入った私にとっては、とうとう来るべきものが来たかであった。文部官僚がじわじわと大学を追い詰め、とうとう本丸に手を出してきました。広範な市民的活動が求められていると思います。

この事件に関しては既に京大当局は同学会を告訴して 関与した中核派が6名逮捕されたが、検察は3月に不起訴にしています。

詩人であり事業家でもあった故堤清二さんは戦後すぐの学生時代に共産党員になり分裂を経験したり、ご尊父との確執があったりして非常に懐の深い人でした。彼が社会思想関連の対談中で「やはり関西では 京大の存在が大きい」なる旨の発言をしています。

戦前京大は河上肇をなどのファシズムに抵抗した多くの知識人、社会主義者を輩出した。大学の自治を守ろうとした滝川事件は有名です。戦後では天皇事件をはじめ、以降綿々と継続しているリベラルの伝統は周知のことです。反原発の原子力研究者が無傷でいられたのも京大らしいといえます。その京大でおおきな反動が起こってきている、全容に迫ろう。

40年以上も前だが京大教養部で学生運動の片隅にいた。当時は三派全学連や全共闘の「実力闘争」は衰えてはいたが、京大では学生運動はそれなりに存在感を示していて、構内はそれぞれの革命を主張する人達でが入り乱れていた。日本共産党と新左翼系は鋭く対立していたが、まもなくその中で中核─革マル─青解の三つ巴の内ゲバが始まった。彼らとは少しはなれて、京大ではブント系が教養部と各学部でゆるくまとまり反帝国主義の旗の元、同学会を日共から奪還したりしてきた。全共闘の崩壊、連合赤軍の破綻、米中友好、などを経て、運動方針をめぐる本質的な亀裂が進行して深刻な事態になってきた。

そんな中で理不尽な暴力を受けたことはあったが、幸運なことに自身が相手の物理的な打撃を目的としたテロに手を染めることはなかった。自分史を語るのが本稿の目的ではないのだが、近年の学生運動を述べるための今の学生と環境を少し比較しよう。

◇経済生活
学費 1970年=12,000円/年 → 2005年=535,800円/年  35年で44.7倍。
この間に、給与5.0倍、白米12.6倍 学費に関してとんでもない値上げが継続してきたことは間違いない。給与との実感では学費は約10倍になっているはずだ。

当時家から定期的な送金がなかった私は自主管理寮にはいり生活費を抑えながらアルバイトを繰り返して何とか食べていた。さすがに学生運動家には無理だろうが、アルバイトだけで郷里へ送金していた人も寮には居たそうだ。文系であれば可能だっただろう。70年代初頭くらいまではこのように社会的な流動性が担保されていたと言えるのではないか。家の経済状況が相当悪い人でも国立大学にそれなりに入っていたことが解る。

現在の学費、入学金、下宿代などを考えると国立大でも入学時に約百万円かかることになる。京大以外ではほとんどの自主管理寮がなくなっているのだから、今大学進学志望者と、その家族は経済的に追い詰められていると思う。まるで新しい封建制が確立しているようだ。

 

◇学生生活
半世紀前との決定的な違いは その余裕のなさだ。当時は文系の学生などは、学生運動やサークル運動に参加しなければそれこそ 「デッカンショ」の世界で、一日中好きな勉強や読書にいそしむことができた。いまやどの講義も出席が単位習得と連動して厳しく管理されている。また英語教育を強化するとして、自習型のコンピューターシステムが導入されて課外での負担も増えているようだ。総じて今京大生はむやみに拘束されて疲れはてて不活発になっている。 (つづく)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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 「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

干されたベッキー、続く茨の道

「ゲスの極み乙女。」のボーカル川谷絵音の不倫疑惑が報じられ、休業を経て芸能活動に復帰したタレント・ベッキーが、復帰と同時に再開していたツイッターが、再び“休止状態”となった。そこには「報道されないナーバスな理由」が横たわっているという。

「ベッキーは1月に『週刊文春』誌面に個人的なLINEのやりとりが掲載されてから自分のスマホがハッキングされている可能性があるとして怯えており、ほぼプライベートでは、自分でインスタグラムやツイッターに投稿していません。本人が知らないところで、スタッフが肩代わりして書いていたのですが、これも『中傷のコメントが多すぎるし、ベッキーのスケジュールなどハッキングされるとどこに漏れるかわからない』として事務所サイドとしては、スタッフに『ベッキーの住居情報や、個人携帯の盗聴防備などセキュリティはしっかりしてほしい』と口を酸っぱくして言い含めていたようです」(芸能ジャーナリスト)

とくに7月末から何度も何度も送られてくる『川谷元夫人に謝罪せよ。川谷元夫人に謝罪せよ』と繰り返すメールは、迷惑メールとしてカットしても、アドレスを何度も入ってくるという代物でベッキーの耳にも届いていた。7月24日には、「27時間テレビ」(フジテレビ)に明石家さんまが電話出演させる粋な計らいを見せたが、「これも、『今、○○にいるだろう』と居場所を特定するようなブラックメールに怯えているベッキーの様子がさんまの耳に入り、元気づけようとして電話出演させたのでは…と囁かれています」(同)

ベッキー側は、いたずらメールやベッキーの個人メールを流出させようとするスパイウェアの駆逐などについて警察に相談する寸前だとも伝えられるが、「まだ犯罪要素を構成するメールが来てない」(事務所筋)として、被害届けの提出は見送っているそうだ。事務所に「ベッキーのツィター休止理由は」と聴いたが「担当者は不在」としている。16時52分(広報は富岡さん)

一説には、「ブラックメールを操って、タレントが活動できないようにしてもてあそぶネットカルト」にベッキーが追われているという説もある。

果たして、ライバル芸能プロダクションの策略か。それともアンチファンの嫌がらせか。

「いずれにしても、『27時間テレビ』でさえも視聴者からクレームが数十本入った。復帰はすんなりとはいかない」(放送作家)

「今度は、『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS)で中居正広に弁解の機会をもらったように、中居に『SMAP解散について』インタビューする役でもやるといい。恩返しということで、イメージがいいのでは」(同)

いろりの前でベッキーが中居に解散の理由を聞くわけか。そうしたウルトラC案に頼らざるをえないほど、まだまだ好感度が上がらず、ベッキー復帰へは茨の道が続く。

(伊東北斗)

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京大バリストと「無期限停学」処分を考える《1》

 

昨年10月27日、京都大学でバリスト(バリケードストライキ)が京都大学同学会(大学自治会に相当するが、京大当局は現同学会を公認していない)によって行われた。バリストは1つの学舎を午前中だけ封鎖し、その後当局職員や、バリストに反対する学生たちにより解除された。京大当局は威力業務妨害で京大生を含む6名に対しての被害届を警察に出し、6名は逮捕拘留された(6名とも不起訴)。京都大学が警察権力を利用するのは1958年以来だという。

「自由」の学風が全国に知れ渡っている京大だが、「ついに21世紀型安倍ファシズムとの並走を隠すことなく露骨に表出し始めた」と関係者は深い懸念を示している。そんな中、京大当局は、4学生の無期停学処分を発表した。

過日京大の熊野寮でOBを含めてこの問題についての私的な議論の場が持たれ、私も参加を認められたので取材に赴いた。

熊野寮で行われた懇談会には熊野寮出身で既に還暦を超えた卒業生Kさんをはじめ、1952年生まれの京大OBで俸給生活をへて自由人となり、再び京大に入学した外見上は「学生」のイメージとはやや異なる現役学生のLさん他、今回「無期停学」の処分を受けた学生や数名の現役学生が集まった。また卒業後間もない若者たちも参加した。

Kさんが司会役となり進んだ議論の中で京大に再入学したLさんは「京大当局1958年以来の半世紀ぶりの学生運動に対する処分を決行した。私は大学の自治と学問の自由への重大な侵害である今回の処分に反対します。7月14日京都大学は総長名で昨秋同学会が行った反戦バリストの処分を発表した。参加した同学会役員4名の無期停学処分であり、学内への立ち入りを禁止する厳しい内容だ」と京大当局の姿勢を厳しく批判した。70年代の京大を知っているLさんにすれば目前の弾圧には、言い知れぬ隔世の感を超える危機感を抱いていることが伝わった。

Kさんは司会に徹するだけでなく、「無期限停学」の被処分者となった同学会の学生とも活発に討論していた。Kさんはバリストに反対の立場ではなかったようだが、その戦術や総括についてはKさんなりの思いも強かったようで、被処分学生との間では闊達な議論が行われた。

 

一方バリストに対する学生の評価は、必ずしも高い物ではない、という側面も明らかになった。熊野寮で暮らす学生は、「ストをすることは同学会から聞いていたが あのようなものとは思わなかった。正直おかしいと思う」と語った。「あのような」とは外人部隊(他大学からのスト参加者)が多く、中核派が影響力を持っている大学の旗が並んだことと、事前に通知なしで封鎖と授業妨害が行われたことを言う。中核派の活動のように見えたことだろう。(同学会はストライキで安倍―山極体制と戦うとは通知していた)。これに対して「無期停学」被処分者の回答は、事前にストの全容を公開すると弾圧されるので 其の時期、詳細内容は発表できなかったと釈明したが違和感を述べた学生に納得されてはいないようだった。また「反戦のためにバリストをする意味が解らない」との疑問もあった。

この問かけに対してKさんは「同学会は学生の疑問に向き合う必要がある。反戦と現在学生がおかれている状況の関連を丁寧で精緻な論理で説明して、その意味を理解してもらわなければならないのだろう」と同学会の今後を見据えたアドバイスを表明し、それについて「無期停学」被処分者は納得していた様子だった。(つづく)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

  8月29日『NO NUKES voice』第9号発売開始! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線
 衝撃出版!在庫僅少!『ヘイトと暴力の連鎖』!
 「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』